原作ちょい前
始業式から数日後のことだった。前任の事はもう誰の口からも聞かれることもなくただ普通の日常が始まっていた。と思うのは事情を知らない大多数の市民たちであって、事情を知っているもしくはその当事者たちには激動の始まりだったかもしれない。そして杜宮学園中等部で新米教師をしているマクバーンは、と言うと・・・。
「今日もお疲れさん。楽しく・・・はなかったかもしれんが、学生の本業終えることができたな。帰りの
クラスメイト30人を見渡すが誰からも声は上がらない。と、思い出したかのようにマクバーンが口を開く。
「俺からは警告って言うか忠告?のようなものだ。最近杜宮市で不審な事が立て続けに生じている。驚かすつもりはないが数日から数週間の割合で神隠しが多発している。運良く発見された人もいるが、そのまま・・・という人も中にはいる。で、発見された人の話は曖昧なところもあるが、覚えているのは二つだけ。一つは赤い扉が開きそこに吸い込まれたという点。もう一つはその中で怪物と思われる何かに追いかけられて命からがら逃げ気づいたら外で救出されていたということだ」
「・・・・・・」
表情が暗くなっていたり、青ざめている子もいた。慌てて手を振って落ち着かせようとする。
「赤い扉を見たらその場をすぐに立ち去れ。吸い込まれる前に俺に連絡しろ。サイフォンの緊急モードは覚えているな?画面のどこでもいいから素早く三度タップしろ。そうするとどこにいるか瞬時にわかるからあとは俺が何とかする。・・・まぁ大切な皆を置いて逃げるなんてことはしないし、俺もあれから調べて助けてくれそうな人も見つけたから安心してくれ」
「・・・」
「俺からは以上だ。号令を!」
ハッと気づいたかのように号令をかけそのHRは終わった。先程までの暗い表情はなく、俺を見て握りこぶしを振り上げそれから教室の扉をくぐって去っていった。少しばかり信頼してくれているのかな、と思う一幕だった。
「さてと・・・俺は職員室に行って報告を纏めてから気分転換にでも繰り出すかな?」
とても楽しいとは言えない職員室での仕事を終え、マクバーンは軽食系の店を探していた。
「・・・・・・」
「お客さん、ここらじゃ見かけない顔ですが・・・観光客か何かッスか?」
無言で飲んでいるとカウンターごしに声をかけてきた青年。少し若い成人する前、高校生ぐらいだろうか。マクバーンが声を出さない事で間が持たなくなったのか声をかけてきた。
「あん、最近こっちに来てね。それで仕事帰りに一杯っていうわけじゃねぇが食ってるってわけよ。・・・それにしたってあんた若いな?」
「あぁそうっすね。一応学生です。ちゃんとバイトの手続きはしてるっすよ」
指でこめかみ辺りをポリポリとかく。感心したが時間が時間だ。高校生にしてもバイトの時間を過ぎているだろう。
訝しむ顔を見たバーのマスターが横から口を挟む。
「今日だけですよ。少し忙しかったんです。いつもではないので・・・ね」
何が『ね?』なのかは知らないが青年の顔はどこかで見覚えのある顔つきをしていた。それでちょいと聞いてみる。
「あんた、身内に九重さんっているか?」
「・・・・・・はっ?」
「その様子じゃ知ってるな」
クスクスと笑いがこらえることができずに漏れる。正面にはキョトンとした表情を浮かべるバイト青年。多分九重さんに近しい関係かもしれない。
サイフォンを懐から取り出し九重
「それともソウスケさんに一報入れようか?そのほうが君に薬になるんじゃないかな?クックックック・・・」
ちょっと顔を歪めて悪人っぽく笑ってみる。店内の温度が少し下がったような気がした。俺は熱を上げるほうが得意なんだがな。
「あ・・・ああっ」
「・・・冗談だ、青年。あんたは学業をおろそかにしていないんだろ?」
「(・・・コクコク)」
真顔で返されたので信じてみることにした。で、話題を変えるために今までやっていなかった自己紹介をしてみた。
「忘れてたな少年。俺の名はマクバーンだ。ファミリーネームはないからそのままマクバーンと呼んでくれ。職業は、杜宮学園に併設されている中等部で今春から教師をやっている。ソウスケさんと永遠とは仕事を紹介する関係で知り合ってな、今のところ仲は良いと思う。出来れば少年の名を聞いておこうかな?」
「・・・お、俺は
「そうか。んじゃコウって呼んでもいいか?」
自分の中で名前を忘れないように繰り返し口ずさみ、コウと呼んでみるとしっくりきたので本人に了承を得る。
「勿論ッス」
「学業とバイトを両立してるんだったら問題は無ぇ。俺が止めんのは学業を放ったらかしにして金に走ることだ。成人しているんだったら仕事の鬼になっても構わないだろうがコウの本業は学生のほうだろ?」
「そうッスね。学生ですから・・・」
「それじゃあコウ君。今日は上がってもらって構わないよ。本当に遅くまでご苦労さん。彼の言うとおり学生なんだから明日に響いたら大変だ」
マスターもマクバーンの言うことに乗っかってくる。店内を見渡すと段々と落ち着いてきたのか、客も支払いをしている最中の二人組を除けばマクバーンしかいなくなっていた。
「分かりました。お疲れっした」
バイトで使っていたエプロンを脱ぐと、パーカー姿になったコウはマスターとマクバーンに挨拶をしてバーを後にした。
「あなたとはこれから長い付き合いになりそうです。今後ともよろしくお願いします」
「おおぅ。よろしく頼むな、マスター」
酒は飲んでいなかったが、ノンアルコールを注がれたのでそのコップをマスターの方に向けて挨拶とした。コウを見送ってから数分後にマクバーンもそのバーを後にしたがコウが自宅の方向とは別の道を行くのを遠目に確認した。そしてその前には、不良と少女が一緒になって歩いているのがかすかに見えた。
コウの人となりについて永遠は、お人好しですぐに問題に突っ込んでいくタイプと言っていたのでマクバーンも気になった。ソウスケさんのところで数年前までは稽古に励んでいたようだが、今はしてはおらず学業&バイト生活を送っているようだ。
「ったく、俺の性分じゃなかろうに・・・。こっちに来てから俺も他人の言動に首を突っ込んでばかりだ・・・」
ガシガシと乱暴に頭をかき、それからコウらが行った高架下のほうへ歩いて行った。
二週目途中で放置しているのでプレイしてからこのあとの展開にどう混ぜていくか検討します。