魔に魅入られた少年の話   作:新参者基本読み専

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何とか十一月中に一回戦を終わらせて良かったです。



決戦と別れ

 今日が決戦日。今日、自分か慎二、どちらかが死ぬ。

 

 「決戦の時が来たな。お主は仮初であれ友とあ戦わねばならぬ。・・・つらいか?」

 

 ア―チャ―が声を掛けてくれた。そんなア―チャ―の気遣いに正直に答える。

 

 「つらいさ。これが夢であって欲しいなんて何度も思ったよ。でも、これは現実だし何より俺は立ち止まるという選択を捨てて前に進む事を選んだ。だから引くつもりはない」

 

 そうだ。あの時、前に進む事を選んでア―チャ―と契約し、この聖杯戦争に参加したんだ。だったら尚の事引く訳には行かない。

 

 「そうか。それを聞いて安心したぞ。決戦までまだ時間がある。マイルームで作戦を立ててから教会で改竄し、戦場へ向かおうかのう」

 

 ア―チャ―の提案で一度マイルームに戻った。マイルームに入ると、いつも通りの風景に一つ、新しい物が追加されていた。それは棚で、色んな茶器が飾られていた。ちなみに、これは藤村先生に頼まれていたみかんを渡したらくれた物で、ア―チャ―はとても気に入っていた。まあ、少し変わったがそれ以外はそのままなので決戦の作戦を話し合い、教会へ向かった。

 

 教会での改竄を終わらせ、一階に行くと言峰神父がこちらに気付くと、

 

 「ようこそ、決戦の地へ。扉は一つ、再び校舎に戻れるのも一組。殺し合う覚悟を決めたなら、闘技場(コロッセオ)の扉を開こう」

 

 声を掛けて来た。自分は迷わず、

 

 「問題ありません」

 

 そう答えると、神父は歪んだ笑みを浮かべ、

 

 「よかろう、若き闘志よ。決戦の扉は今開かれた。再びこの校舎に戻れる事をささやかながら祈ろう。---存分に殺し合え」

 

 そう言い横にずれると、扉はエレベーターの入り口に変わり、開いた。

 

 「勝つぞ、ア―チャ―」

 

 「無論じゃ」

 

 そう短い対話をし、扉の中に入った。

 

 

 何処まで降りるのだろうかと考えていると、中が明るくなり、視線を感じたのでそっちを向くと慎二とライダ―が居た。

 

 「何だ、逃げずにちゃんと来たんだ?ああ、そう言えば学校でも生真面目さだけが取り柄だったけ。でも、僕には勝てやしないよ。僕と僕のエル・ドラゴは無敵なんだからね」

 

 「まだ勝負は始まってすらいないよ。それに勝ち負けは戦いの最後に分かるものだ。始まってすらいないのに勝てないとか言わない方が良いと思うぞ慎二」

 

 「その通りじゃ。さて、貴様は運が良くても人との出会いの運はすこぶる悪いのうライダ―。・・・いや、フランシス・ドレイク(・・・・・ ・・・・)?」

 

 ア―チャ―がそう言った瞬間、慎二の表情は余裕から驚愕へと一変した。情報は完全に隠蔽出来たと思い込んでいたのだろう。

 

 「あたしは愉しく酔えればいいのさ。そもそもえり好みなんざあたしの趣味じゃないしね」

 

 「そうか。それが貴様のやり方ならわしは何を言うつもりはないが、つまらんとだけ言わせてもらおう」

 

 そう言って場が静かになったが、再び慎二がニヤニヤしながらこちらに話しかけようとしていた。内容は何となく考え付くが、

 

 「なぁ、この戦い「勝ちを譲れとかわざと負けないか?とかなら聞くつもりはないよ慎二」」

 

 もしやと思って行ったことだが、また当たってしまったようだ。慎二は口を開けてポカンとしていた。そんな中、ゴトンッと音が鳴り目の前の扉が開いた。どうやら決戦場に着いたようだ。

 

 「慎二、俺は全力で君を倒しに行くから」

 

 そう言って、先に扉の先へ進んだ。

 

 

 決戦場は沈没船なのだが、第二層にあったものとは比べもののない位の大きさだった。そして自分と慎二が互いに向き合うように立つと、サーヴァント達は臨戦態勢に入った。

 

 「はん、調子に乗りやがって。もうすぐ変えようのない現実ってやつを見せてやるよ。間違っても手を抜くなよエル・ドラゴ。この僕に歯向かった時点でかける情けなんて一つもないんだからな」

 

 「慎二、弱い犬程よく吠えるって言葉知ってる?第三者から見たらその言葉君によく当てはまってると思うんだけど?」

 

 「ハハハ!言われてるねぇ慎二。さぁて、この戦いを愉しむとしようか。正直あたしはあんた達を高く買ってたんだけどねぇ」

 

 「賊に高く買われても嬉しくないがな。この決戦にて貴様らという腐れ縁とやらを断ち切ってやるとするかの」

 

 「そいつは残念だ。さあ破産する覚悟は出来てるかい?一切合財派手に散らかそうじゃないか!---砲撃用意!」

 

 そう言うとライダ―は第二層での戦闘で見せた倍以上の数のカルバリン砲を出し勝負に出ていた。だが、今なら対応策が出来ているので問題ない。

 

 「藻屑と消えな!」「そうはさせない!」

 

 砲撃が始まる前に左手をライダ―に向けて構え、コードを紡ぐ。

 

 「CODE---hack(16)」

 

 その瞬間、左手から魔力の塊がライダ―に向けて放たれ、被弾した。

 

 「ハッ。こんなの痛くも痒くも・・・!?」

 

 ダメージが軽く、すぐに砲撃を始めようとしたが体が動かないことに驚いていた。それもそうだろう。このコードキャストは状況次第で相手の行動を妨害する術だからだ。そして、この一瞬を狙っていた。

 

 (ア―チャ―、いまだ!)

 

 (うむ!了解じゃ!)

 

 そう念話をすると、ア―チャ―は左手を構え、ドール戦で使った火縄銃を出すと、

 

 「魔弾・火柱」

 

 そう言い、引き金を引く。破裂音と共に放たれた弾は次の瞬間、炎を纏い狙った所へ一直線に向かう。

 

「はっ!どこを狙ってるんだい?そんなんじゃ「慎二ィイイイ!!後ろに跳びな!!」・・・はぁ?」

 

 こちらに悪態をつこうとしたが途中でライダ―が慎二に警告したが慎二はその意味が返事をした瞬間、ライダ―のカルバリン砲を中心に大爆発は発生した。自分達は距離が空いていたので大丈夫だが、ライダ―は大ダメージ確定だろう。

 

 「ここまでは良い流れじゃな。だがここからが本番だぞ。気を引き締めよ」

 

 そうだ。ここまでは作戦で立てた対策で何とかなっているが、勝負はまだ分からない。そう思いながらしばらくすると煙が晴れた。

 

 「いやぁ、驚いた。まさかあたしのカルバリン砲が利用されるとは思ってもみなかった。しっかしあんた、やっぱりセイバ―じゃなかったみたいだねぇ」

 

 「いつわしがセイバ―と言ったかのう?そっちの勝手な思い込みであろう?」

 

 ライダ―が出て来たので見ると、予想通り大ダメージを受けたみたいだ。しかも左腕はさっきの爆風で骨折したのだろうか銃を握っておらず、左側を中心に火傷等のダメージが目立っていた。ちなみに慎二は爆風で飛ばされたのだろう、ライダ―から離れた所で尻餅をついていた。

 

 「お、お前、セイバ―のくせに銃を使うとか反則だろう!?それとエル・ドラゴ!何大ダメージくらってんだよ!それでも僕のサーヴァントか!?」

 

 「そもそもセイバ―じゃないし反則でもないよ。君の勝手な思い込みに過ぎないけどね。それと、何のサポートもしてないのに色々言うのはおかしいんじゃないか?慎二」

 

 「そうじゃな。この戦いは情報も大事じゃが連携も必須よ。小僧、貴様はただ見ているだけで何もしておらん。そんな貴様がライダ―を責める事など出来ぬよ」

 

 「う、うるさい!エル・ドラゴ、宝具の開帳を許す!僕の力の程ってやつを見せてやれ!」

 

 「了解!!さぁ勝ちをいただこうかねえ!!」

 

 「させると思うか!」

 

 宝具・・・サーヴァントそれぞれが持っている切り札。決戦前に作戦会議をしていた時、ア―チャ―が言っていたのを思い出した。ア―チャ―はそれを阻止しようと銃で牽制したが、それよりも早くライダ―が上に跳ぶと一隻のガレオン船、黄金の鹿号(ゴールデン ハインド)と艦隊が出現した。

 

 「あたしの名前を覚えて逝きな!テメロッソ・エルドラゴ、太陽を落とした女ってな!」

 

 そう言って右手に持っていた銃を放つと一斉砲撃が始まり、周りは煙に包まれ、炎の海と化していった。

 

 

 

 「ははははは!これが僕の力だ!岸波のくせに僕に勝つなんて不可能なんだよ!」

 

 黄金の鹿号の船首で炎の海と化した戦場を見下しながら慎二は高笑いをしていたが、隣にいるライダ―は、

 

 (さっきのダメージで本来の威力より落ちている。もしかしたら・・・)

 

 痛みに耐えながら冷静に状況を分析していた。すると、

 

 ストンッ

 

 背後に何か音がした。ライダ―はそれを確認しようと振り返ると目にしたのはさっきまで下の戦場にいたはずの岸波白野達だった。応戦しようと構えようとしたその時、

 

 「隙だらけじゃよ」

 

 その言葉と共に銃弾が貫いた。

 

 「やれやれ、これはしてやられたねぇ」

 

 そう言いながら仰向けに倒れた。

 

 

 倒れたと同時に黄金の鹿号は消え、景色は元の戦場に戻っていた。だがよく見るとさっきの一斉砲撃の傷跡が残っていたが、それ以外はそのままだった。

 

 「は・・・?おい、何してんだよ。立てよライダ―!何寝てんだよ!?それと何で宝具を消したんだ!?さっさとあいつらを叩きのめせよ!」

 

 「あ―それは無理だ。さっきの一発で心臓を打ち抜かれてるし。これ以上の戦闘の続行は出来ないよ。それにこの体もそろそろ消えるっぽいしね?」

 

 「ふざけるな!勝手に一人で消える気か!?僕はお前のせいで負けたのに!」

 

 「・・・・ああ、あたしのせいかもね。実力、天運、はたまた執念、こっちの油断。負けた原因はいくらでも口にできるが・・・ま、何でもいいさね。人生の勝ち負けに真の意味での偶然なんてありゃしない」

 

 数多の海を越え、幾度となく戦火を交えてきた彼女だからこそ言えるその言葉はとても重く感じた。多分、この言葉の重さを慎二は理解できていないだろう。

 

 「敗者は敗れるべくして敗れる。こっちの方が強いように見えても、きっと何かが劣っていたんだよ。あたしも、あんたもね」

 

 「な、なに他人事みたいに言ってんだよ!僕は完璧だった!誰にも劣ってなんかいない!くそっ、こんな筈じゃなかったのに・・・とんだ外れサーヴァントを引かされた!僕が負けるなんて・・・こんなゲームつまらない、つまらない!」

 

 「見苦しいのう。勝ちの分かった勝負程つまらんものはないというのに。見ていて吐き気がする。(マスター)さっさと校舎に戻るとしよう。ここに居る意味も価値もない」

 

 そう言ってエレベーターの方へ踵を返し、歩き始めた。自分もそれに続く。

 

 「あ、ま、待てよ、おい!お前に話があるんだ」

 

 慎二の声を聞いて自分は歩みを止め体ごと振り返る。ア―チャ―も歩みを止めているが背を向けたまま視線は慎二を見ている状態だ。

 

 「僕に勝ちを譲らないか?だだ、だってほら、君は偶然勝っただけじゃないか!二回戦じゃ絶対に、100%負ける。でも、僕ならきっと勝ってみせる」

 

 その提案にため息が出てしまった。やっぱりさっきのライダ―の言葉の重さを理解出来ていなかったらしい。それは偶然と言った時点で明らかだ。それにさっき自分が言った事すら理解出来ていなかった事に呆れてしまう。

 

 「慎二、俺は決戦前に言った筈だ、そういうのは聞かないと。それに二回戦じゃ負けるなんて根拠もない。絶対だとか100%とかそういう約束された勝利なんてないって俺は最初に言ったんだけどね」

 

 そう言って慎二に背を向け、エレベーターに向かって歩き出す。しかしア―チャ―はその場に留まっていたのが不思議だった。

 

 「あ、オイ待てよ!こんな簡単な計算も分からないのかよ!聖杯を分けてやるって言ってるのに!・・・ヒィ!」

 

 こちらに近づこうとしていたのだろうが、途中で悲鳴が聞こえたのでもう一度振り返ると慎二は顔を真っ青にしてその場で尻餅をついていた。答えは簡単。ア―チャ―が慎二の足元を銃で撃っていたからだ。

 

 「調子に乗るなよ餓鬼が。勝者に勝ちを譲れと?貴様どれだけ相手を見下しておるのだ?」

 

 普段自分に見せる彼女とは違い、その言葉と気迫には怒りと殺意が込められていた。自分もその気迫に恐怖を感じざるを得なかった。

 

 「それ以上はやめておきな慎二ィ。今更何をしようと勝敗は決してるし、何より惨めに見えるだけだよ?」

 

 「う、うるさい!僕はお前のせいで負けたんだ!」

 

 「いい加減黙れ。そして認めろ。貴様の敗因は貴様自身にあると」

 

 そう言うとア―チャ―は慎二に背を向け、自分の方へ歩み寄ってきた。

 

 「くそ!!良いか岸波!こんなゲームで勝ったからって調子に乗るな・・・・・ヒ、ヒィィィイ!な、なんだよこれっ!ぼ、僕の身体が崩れていく!?し、知らないぞこんなアウトの仕方!?」

 

 右腕が黒く変色した状態でそう慎二が言った瞬間、赤い壁が自分達と慎二達の間を遮った時、慎二達の側が赤く染まり、慎二の身体が右腕同様黒く変色し、紫の亀裂が慎二を蝕んでいった。これが敗者の末路、電脳死。今回は勝ったが、これからの戦いで自分が負ければああなるのか。

 

 「聖杯戦争で敗れた者は死ぬ。あんたもマスターとしてそれだけは聞いてたはずだよ慎二」

 

 そしていつの間にか立ち上がっていたライダ―も同じだが、慎二より蝕まれている個所も多く、浸食速度も慎二より早かった。

 

 「はぁ!?し、死ぬなんてそんなのよくある脅しなんだろ?電脳死とかそんなの本当なわけ・・・」

 

 「そりゃ死ぬだろうさ。戦争に負けるってことは普通死ぬだろ?戦争を舐めてんのかい?大体ね此処に入った時点でお前ら全員死んでいるようなもんだ。生きて帰れるのはホントに一人だけなんだよ」

 

 そう、慎二は気付くキッカケはたくさんあった筈だが、自己陶酔による現実逃避でそれらを見逃していた。それ故にこの結果を招いたと言っても過言ではない。

 

 「な・・・やだよ。今更そんな事言ってんなよ!ゲームだろ、これゲームなんだろ!?なあ!!?」

 

 「いいや、これは現実さ。仮想(ゲーム)だと思ってんのはあんただけだよ。あの坊や達でさえ死を覚悟していたんだしね」

 

 「う・・・嘘だ。嘘だよな?嘘って言えよ!!なあ!?ああ・・・止まらないよコレ!サーヴァントはマスターを助けてくれるんだろ!?何とかしてくれよ!」

 

 「無理無理。ルールは絶対だ、例外なんて無いよ。だが別に文句を言うような事じゃないだろ?最後は聖杯戦争とか関係なく全員あの世行きなんだからな!」

 

 そう言って豪快に笑うライダ―。そして現実を突きつける。

 

 「一番初めに契約した時言ったろう、坊や?『覚悟しとけよ、勝とうが負けようが悪党の最後は笑っちまうほど惨めなもんだ』てねぇ!」

 

 そう慎二に言った後、ライダ―は自分達の方を見た。もう身体のほとんどは蝕まれ、顔も半分以上亀裂が走った状態ゆえ、こっちを満足に見る事も出来ていないだろう。

 

 「しっかしあんた達には驚きだよ。この短期間でこれだけ強くなるとはね。うちの雇い主(マスター)の慢心も含め予想以上だ。それと、どうやってあたしの船に乗れたんだい?」

 

 「あれは運が良かった、そうとしか言えんな」

 

 そうだ。本当に砲弾に当たっていてもおかしくなかった。たまたま運が良かった、それ以外に言葉が見つからなかった。(方法が無かったので、ア―チャ―が自分を抱えて飛んで行ったに過ぎない)

 

 「ハハハ!そっちもそれなりの運を持っているってことかい。ともあれ、よい航海を。次があるならもっと強くなってあたしを愉しませてくれよ?それか坊やと契約するってのも案外悪くないかもねぇ?悪党とかは別に坊やは原石だから、その輝きがどんなものか見てみたいしね」

 

 最後の最後に、そんな話を笑顔で語りながらライダ―、世界一周を果たした海賊、フランシス・ドレイクは消滅した。そして慎二の未来もこれで確定した。

 

 「お、おい!何勝手に消えてんだよ!助けてくれよ!そんなのってないだろ!?そ、そうだお前!お前が助けろよ!お前が負けないからこんな事になったんだぞ!?責任とって早く助け・・・ひ、消える!やだ、やだよ!友達だろ?友達だっただろ!?助けてくれよぉ!」

 

 ライダ―の消滅を目の当たりにし、必死に助けを求めてくる。だが、

 

 「無理に決まっておろう?この壁はわしらサーヴァントでも壊せんからな。仮に貴様が助かってもサーヴァントがおらぬのにどうする気だ?どっちにしろ同じ結末に過ぎん。諦めるんじゃな。いくぞ主」

 

 そうア―チャ―は冷たく言い放ち、エレベーターへ向かう。自分も少し遅れて歩み始めると、

 

 「お、おい、待ってくれよ!助けてくれよ!!」

 

 「慎二、彼女がああいった以上、助けられるようなルール等は無いという事だ。俺に出来る事は何もない」

 

 そう言った後、少し間を空け、

 

 「君からの怒り、憎しみ、恨み等は甘んじて受けよう。でも俺だって死にたくない。・・・・さようなら、慎二。他の場所で出会っていたら、本当の親友になれたのかもしれないね」

 

 別れの言葉を告げ、ア―チャ―の待っているエレベーターへ歩き始める。

 

 「そんな・・・おい!待て、待ってくれよ!!あ、ああ、あああ---!なんで?おかしいぞこれ!こちら側の体にまで感覚が流れてくる。僕が死んでしまう!助けてよお!本当の僕はまだ八歳なんだぞ!?こんな所でまだ死にたくな」

 

 -消えた。間桐慎二という全てが、完全に。ひとかけらの痕跡もなく・・・・・残ったのは勝者のみ。

 

 こうして聖杯戦争の一回戦は幕を閉じた。

 

 

 校舎へ戻ってるエレベーターの中で、目を閉じると思い出すのは、

 

 「たすけてよお!本当の僕はまだ八歳なんだぞ!?こんな所でまだ死にたくな」

 

 最後に聞こえた慎二の悲鳴の声だ。背を向けていたから顔は見えなかったが、泣き崩れていたんだろう。そう思っていると、

 

 ポタッ

 

 何か水の様なものが落ちた音が聞こえたので目を開けると、目から涙が零れ落ちていた。戦う覚悟を決めたはずなのにと思いながら涙をふくが、とめどなく流れ始めた。

 

 「主、泣いておるのか?」

 

 ア―チャ―が心配するかの様に声を掛けて来てくれた。

 

 「覚悟はしたはずなのに、おかしいよね?自分でも分からないよ」

 

 涙を拭きながら答えると、ア―チャ―は優しい声で

 

 「良い。お主は友と殺し合うというつらい立場にいたのだ。涙が出るのも無理はない。校舎に戻るまでの間、存分に涙を流すが良い」

 

 「!!?」

 

 その言葉を皮切りに、一気に涙があふれ出た。ア―チャ―に背を向け、声を押し殺して泣いた。何故涙が出て来たのか、今なら分かる。理由は罪悪感と後悔だ。慎二を助けられなかった事への後悔、何も出来なかった事への罪悪感。それが一気に心を満たしたからだ。

 

 「その涙、悲しみは背負ってゆくが良い。勝者が敗者に出来る事なぞその人物がいたという事を忘れない、それぐらいしかないから」

 

 分かった。今の自分にはそれしか出来ないというなら、それを行おう。自分が負けるその時まで、自分が倒した相手を覚えておこう。そう決意すると涙が止まり、それと同時にエレベーターが止まった。

 

 「さぁ、マイルームに戻り、明日に備えよう。次も勝つぞ!」

 

 そう笑顔で言い、手を差し伸べてくれたので気持ちが少し軽くなった気がした。その手を握り、マイルームに向かった。




感想、コメントお待ちしてます。多分返すのが遅くなると思いますが・・・
これからも頑張って投稿していきますので応援宜しくお願いします。
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