更新していたからなのかこっちより短編の方が結構読まれていた。
慎二を倒した次の日、教室で待機していると端末に着信音が鳴ったので見てみると対戦相手の発表というメールが届いた。
「ふむ、対戦相手が発表されたか。では見に行くとしようかの」
それに肯き、指定された場所へ行き、自分の名前を探すと、
「マスター:ダン・ブラックモア
決戦場:二の月想海」
「・・・ふむ、次の相手は君か」
そう言い自分に声を掛けて来たのは老人だった。軍人らしい黒い衣服に緑の鎧、迷彩服の様なカラーリングに白い髪と髭が特徴だった。本来年を取ると衰えを感じさせるが、このブラックモアという人物からはそんなものは一切感じなかった。
「若いな。実戦の経験等まるで無いな。だが相手の風貌に臆さない点とその覚悟を決めた目は評価できるが・・・、若干の迷いを感じるな。君の迷いが決戦日までに晴れるといいが」
そう言ってダン・ブラックモアは去っていった。
「今回の相手は老将か。前回の小僧なんかと比べものにならん相手じゃ。気を引き締めよ。お主との経験の差は天と地程あるが、勝ち目がない訳ではないからな」
相手がカスタムアバターを使っている時点で格上なのは慎二も同じだが、相手は情報の重さを理解しているだろう。その点の違いだけで十分慎二よりも強敵という事は理解できた。でも、一つだけ気になる事を彼は言っていた。若干の迷いを感じる・・・これが何を意味しているのか今の自分にはまるで分からなかった。
「分からん事を今考えても仕方なかろう。それにそういう事は戦いの最中に分かるかもしれん。今は目の前の事に集中せよ」
それもそうだね。多分もう少ししたらトリガーの件のメールも来るだろう、今はそっちに重点を置くべきなのかもしれない。彼の言葉の真意はそれからだ。
そう思いを固め、まず購買へ向かうため、その場を後にした。
一階に降りると遠坂が話しかけて来た。
「あなたの二回戦の相手、聞いたわ。もう現役じゃないけどダンは名のある軍人よ。西欧財閥の一角を担うある王国の狙撃手だった。敵の司令官を狙撃する為、匍匐前進で一㎞以上進む事なんて日常茶飯事。並みの精神力じゃ出来ない事よ。例えあんたのサーヴァントの宝具がどんなに強力なものだとしてもこのままじゃあっさりサー・ダンに殺されるわよ。対策は出来ているのかしら?」
「一回戦の時と同じ様に情報を集めてから考えるよ。それと一回戦で慎二は宝具を使ってきたけど俺は使わなかったよ」
遠坂の問いかけに答えると驚愕した表情で
「宝具を使わないで実力で勝ったの!?私はてっきり宝具頼みでライダ―を倒したと思ってたわ。ちょっと見直した」
そう遠坂は言って笑顔を見せた。正直ドキッとしてしまった。
「遠坂は笑顔の方が似合ってるね。かわいいよ」
そう言ったら遠坂は顔を一瞬で真っ赤にし、ア―チャ―は冷ややかな視線で此方を見、周りに居る他のマスター達はおおっ、と感嘆の声を出していた。何故?
「と、とにかく一回戦の時と同じだと思ってたら大間違いだってこと!!それだけは肝に銘じておきなさいよね!」
遠坂は顔を真っ赤にしたままそう言い放つと階段を走りあがっていった。何か変な事でも言ったかなと思い、
「俺、遠坂に何か変な事でも言った?」
「お主、将来大物になりそうじゃな」
「?有難うって言えばいいのか?」
「褒めておらぬよ」
呆れた表情でため息をついていた。何でさ?とにかく当初の目的通り購買に行こう。そして教会前の花壇でこれからの事を話そう。そう言って足を進めた。
購買の商品は少し増えていた。アイテムでは治療薬、礼装は癒しの香木というのだった。どちらも状態変化に対する物だった。そして今、教会前の花壇にいる。ここは殆どマスターやNPCが来ない所なので結構気に入ってる。
「この二つからすると、これから先毒などを使う相手と当たる可能性があるってことなのかな?」
「それは分からんが高かろう。備えあれば憂いなしと言うしな。だが今は目の前の敵の事だけを考えよ。目の前の敵さえ見えていない者がその先にいる相手を倒すことは不可能だからな」
確かにその通りだ。今はダン・ブラックモアとの対戦での事を考えよう。先の事はその時々で考えれば良い。そんなやり取りをしていると、
「ごきげんようよ」
声が聞こえたので振り返ると紫の髪と褐色肌が特徴的な少女が立っていたが、表情は人形の様な感じがした。てかいつの間に背後に?
「私はラニ、あなたや他のマスター達と同じ聖杯を求めて参加した者です。警戒しないで下さい。私は対戦者でないので大丈夫ですよ」
そう言ったので少し緊張を解く。だが今は対戦たいてではないがこの先戦うかもしれないので最低限の警戒はしておこう。
「あなたを照らす星を見ていました。他のマスターも同様に詠んだのですが、あなたの星だけが霞に隠れて詠めませんでした。こんなことは初めてです」
そうは言われてもなあ・・・。自分の名前以外まるで思い出せないのにそんな事言われてもそれがどういう事なのかピンと来ない。
「では単刀直入に聞きます。どうか答えて欲しい、あなたは何なんですか?」
うん、こっちにはお構いなく進めるのね、何となく分かってたよ。それはともかく何者なのかと聞かれている以上、答える事は決まっている。
「岸波白野、一人のマスターだ」
他の事は思い出せないがこれだけは言える。なのでそう答えた。
「確かにそれ以外わしらが言える事は無いな。小娘、それを聞く必要性があるのか?」
ア―チャ―がラニに質問した。確かに何かあるのか?
「師は言いました。『人形である私に命を入れる者がいるのか見よ』と。師の言った事の意味を知るためにはもっと人間を知る必要があるのです。他のマスター達やブラックモア・・・そしてあなたの事を」
(ラニは自身を人形って言ってるけど、パッと見た感じそんな風には見えないけどなぁ)
(それだけ精密に造られたという事だろう。驚きを隠せんな)
そんなやり取りを念話でしているとラニが
「協力を要請します。
(どう思う、ア―チャ―?)
(うむ、こちらの情報がこの小娘から漏れる可能性が無きにも在らずだが、対戦相手の情報が知れるのは大きい。それとお主はまだまだ弱い。向こうが協力を要請してくれるならそれを受けた方が良いな)
ア―チャ―の言う通り自分はまだ弱い。一回戦はほぼ慎二の自滅の様なものだから運が良かったに過ぎない。まあ運も実力の内というが、これから先はそうは行かないだろう。
「分かった。でもどうすればいいんだ?」
「何か彼の遺物を見つけたら私に見せて下さい。星の巡りの良い晩に詠み、あなたに情報を提供出来ると思います」
彼の遺物、ブラックモアのサーヴァントの何かなのか?少なくとも自分は彼のサーヴァントを見ていないのでどう入手するかが問題だな。
「では、ごきげんよう」
ラニが別れの言葉を告げ終えた直後、突然風が吹き荒れ彼女のスカートを捲りあげ、衝撃の光景が目に入った。
「」
「」
あまりの衝撃に絶句してしまった。それは隣にいるア―チャ―も同じだった。
「・・・ごきげんよう」
だがラニは気にした様子もなくもう一度告げると校舎へ戻っていった。
「・・・ア―チャ―」
「・・何じゃ?」
「・・・・世界って広いんだね」
「・・・・そうじゃな」
そんなやり取りを暫く呆けていた。
その後、アリーナに向かう途中、トリガーが出来たというメールを確認し、アリーナの入り口近くまで行くと話し声が聞こえた。一つはダン・ブラックモアだが、もう一つの声は初めて聴くな。
「奴のサーヴァントかもしれん。情報を話してくれるやもしれんから耳を澄ませ、息をひそめよ」
ア―チャ―が小声で話したのでその通りにした。
「二回戦の相手を確認した。まだ若く、未熟な少年だったが戦士に相応しい者だった。一回戦のようにはいかんぞ。油断はするな」
「へいへい、分かってますって。どんな相手だろうとやる事は変わりませんよ。シンプルかつ手加減なしで殺りますよ。ま、ともあれ一回戦で戦った連中より精神的にマシなんじゃないすかね」
「戦場でそんな考えをしていると足をすくわれるぞ。この戦いは連携が肝要だ。私の指示に従え」
「はいはい、分かりましたよ」
そう言ってアリーナに入っていった。
「今の会話だけじゃどのクラスか分からなかったね」
「そうか?少なくとも正攻法を得意としている感じはせんかったぞ。どうする?入ると鉢合わせるが」
トリガーとか鍛錬などの事もあるから入らない訳には行かないだろう。いざとなったら全力で耐えて何とかやり過ごすしかないな。そう話し、アリーナに入った。
アリーナに入った瞬間、纏わり付くような空気に直感が告げた。
立ち止まるな、早くここから離れろ。
「毒を仕掛けて来るとはな。しかもこのアリーナ全体となると奴の宝具によるものであろう。このくらい大規模であれば基点がある筈じゃ。それを見つけ破壊するぞ」
了解。しかし即効性の毒じゃなくて良かった。全身に行き渡る前に早く見つけよう。でも視界の景色は白、黒、紫という何とも不気味で恐怖を煽る。だがアリーナの壁から向こう側が見えるから事細かに探す必要が無いのが幸いだ。これならすぐ見つけられそうだ。
少し進むと矢が刺さった樹が見えた。
「あの樹が基点だろうな、さっさと壊すぞ」
奥の方でなくて助かったけど、少なくともダンとあのサーヴァントがいるかもしれない。警戒しておかないと。
一の月想海の一層にいた
「気づかれぬうちに近付いて情報を得るとしようかの」
その意見に賛成だ。話が聞こえる場所まで移動しよう。息をひそめて二人の近くまで足を進めた。
「これはどういう事だ?」
「へ?どうもこうも旦那を勝たせる為に結界を張ったんですが?」
ダンの詰め寄った質問に緑色の外套を羽織った青年は何の悪びれもなく返答した。
「決戦まで待ってるとか正気じゃねーし?奴らが勝手におっちぬんなら俺らも楽で万々歳しょ?」
「誰がそのような真似をしろと命じた。死肉を漁る禿鷹にも一握りの矜持はあるのだぞ」
ダンの怒気が強くなった。この二人は自分が望む戦い方が極端と言っても良い程正反対だ。
「イチイの毒はこの戦いには不要だ。決して使うなと命じた筈だが・・・どうにもお前には誇りと言うものが欠落しているな」
「誇りねぇ・・・・・、俺にそんなもん求められても困るんですけど。ってか、それで勝てるならいいんですけど?ほーんと、誇りで敵が倒れてくれるならそりゃ最強だ!だが悪いね、俺はその域の達人じゃねぇ訳で。きちんと毒を盛って殺すリアリストなんすよ」
「あ奴の言い分は分からんでもないな。戦は常に正々堂々と戦うものではない。奇襲も勝つ為に必要よ」
ア―チャ―の言う通り現実とはそういうものなのだろう。ダンもその事は理解しているのだろうが騎士足らんと戦うことを望んでいるからこそ揉めているのだろう。
「ふむ、成程な。条約違反。奇襲。裏切り。そう言った策に頼るのがお前の戦いか」
ダンの声のトーンが一段低くなった。それを表すとしたら侮蔑、落胆等を感じた。
「今更結界を解け、とは言わぬが次に信義にもとる事があった時はー」
「はいはい」
ダンの疑念の籠った言葉に渋々返事をする声を最後に二人の気配が消えた。退出したのだろう。さて、今のうちにあの樹を破壊しよう。
基点を壊し、一回戦の時と同じ様にトリガーの入手とエネミーを倒しての鍛錬をしてキリの良いところでアリーナを出てマイルームへ戻り、今日の事を振り返る。今回の相手は主従関係に亀裂が生じていた。
「毒を使いこなす相手か。まだクラスを絞れる段階ではないな。だが焦らずに行くとしようかの」
ア―チャ―がそう言った後、明日する事等の確認をし、少し喋って横になった。毒を受けた影響で体が思った以上疲弊していたのだろう。すぐに深い眠りへと落ちて行った。
少しずつ頑張って更新していきますので応援お願いします。
ちなみにセミラミスと組んだらどうなるのか興味はありますが多分自分では書けないと思います。FGOでも実装して欲しいですね。