「ん~……第一夜は……うん、問題なく終わりましたね。今日以降も何も無いと良いんですけど。次は、神社でしたっけ?」
次は確か翌日ぐらいのお昼頃、学校が終ってからでしたかね。そう時系列を頭の中で確認しつつ”子供の身にはハードワーク過ぎるよ”とも思いながら自宅の玄関を開ける。
「ただいまぁ、ってあれ?電気点けはなしで出て来ちゃってたのかな」
玄関を開けると家の中の電気が点いていた。出たのが夕方、特に点けて出てきた記憶も無いのだが。
「おかえりなさい、イツキ。どうやら何事も無く終ったようですね」
奥からやって来てそう言葉を発して出迎えてくれたのは……
「ただいま”リニス”。起きてたの?」
リニス。本来、この時期には契約を解かれて魔力不足によって体の維持ができなくなって消えていたと思われる存在……そして改変する気が無い私が、そんな末路を辿る筈だったリニスと共に居る理由はとても深い理由が――
ある訳も無かった。特にそんなものは存在して無くて、単純に”知らずに拾ってました”といった理由だ。
あれは確か1年ほど前、たまたま散歩していたら弱ってる猫が居たので拾って帰り、ヒーリングかけ治ったらまた野良に返そうかなとか考えていたのだが、数日間弱りっぱなしで一向に元気になる様子もなく、継続してヒーリングしてたらそこから魔力を取り入れたのか、気がついたら人型になってました。
「えぇ、まぁ。一応助けて貰った身分ですし現在の仮契約主ですからね。私が今こうしていられるのもイツキのお陰。ですがそれでもイツキはまだ小学生ですから心配しますよ」
「えっと、心配してくれるのはありがたいですけど、私の素性と中身について説明しましたよね、リニス?」
「はい、私が人型に戻れたときに。ですが、貴女の持つ力や前世といったものがどうであれ……見た目ただのちいさな女の子ですし? それとこれとは話が別です(……それにフェイトも今頃はイツキと同じくらいでしょうし」
左様ですか。最後よく聞き取れませんでしたが、悪い気はしませんし別にいいです。人の厚意というものは受け取っておくものです。
因みにこの世界が”物語”で在ったという事は一応伝えていない、正式な使い魔契約を行ってる訳ではないので精神リンクで伝わっても居ないはず。
「それで? 今回は一体どういった問題を起こして来たんですか?」
「え? 私が起こした事前提なの? 失敬な、巻き込まれはするけど自分から巻き起こした事はないよ!」
リニスから私への信頼度が低い気がします。コレでも結構色々してるのに。誠に遺憾である。
「そうですね。何かしらに巻き込まれてますね。この前なんかは『何か買って来る!』っと颯爽と出て行ったきり何時までも戻らないので念話で話しかけたら『何か強面のオジサン連中に女の子二人と一緒に攫われました』と返してきたりとか」
うぐっ。そ、それは仕方なかったんですよ。色々事情があったんですよ。あえて言うなら今夜とは違い、それは純粋に巻き込まれたんですよ。
「それでも、イツキのすることは結局は誰かの為に成ってますので許しますし、容認もしますよ。ですが、同時に心配もしますので言える範囲で構わないので教えてくださいね。それにいつでも力に成りますので」
「大丈夫、伝えれる事は言葉で伝えてますよ。それにちょっと今後やってほしいこともあるので、その時に頼らせてもらいますよ」
そう、表舞台には極力立ちたくない私。どうしても他の協力者を用意しておく場面が存在するのだ。
「っで、今日は何をしてきたんですか?」
ブレずに尋ねてくるリニス。それ程心配するぐらい私ってば頼りない?
「なんか変な獣が発生してたので、眺めてきました。今日は眠いので詳細はまた明日ね」
ソレに対し私は簡潔に答え寝室へと向かうのであった。後ろでリニスが何か言ってるけど明日ね、明日。
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「ふぅ……ここなら落ち着いて話せるだろう」
あの騒動があった動物病院から少し離れた公園で少年はそう切り出した。近くにはベンチに腰かけている少女と、その膝上にはフェレットが居る。
「色々な事が起こりすぎて、つかれたよぉ……」
肩を少し落として少女は呟く。フェレットが喋ったり、得体の知れないモノが襲い掛かってきたり、見知ったクラスメイトまでもが未知なる力を行使し、挙句自らもそれに似た様な力を使ったのだ。あまりにも衝撃的なことが続いたのだから当然だろう。
「しかし、街への被害も少なく、誰も怪我が無くてよかった」
「そうですね。一歩違えば、あの辺り一帯が破壊されて誰かが大怪我していたかもしれない程、あの思念体は強かった」
少年とフェレットはそう話し合う。街への被害など動物病院だけに止まり、それさえも塀の一部が車の衝突により壊れた程度ですんだのだ。
「さて、少しは落ち着いてきただろうし。喋れるのであれば、名前を教えて貰ってもいいか? フェレット君」
少年は”自分は貴方の名前を知らないから教えてくれ”という風にそう切り出し振舞う。
「あっ、ハイ。僕の名前はユーノ・スクライア。スクライアは部族名ですので、ユーノです」
「よろしく、ユーノ。俺の名前は番神悠次。ユウジって呼んでくれ。それで君を抱えてるのが」
「わ、私は高町なのは。なのはって呼んでね」
少年と少女――悠次となのはと、一匹――ユーノは挨拶を交わす。本来、子供がこのような夜中にも等しい時間に公園で話し合うのはありえないが、事情が事情だった故に仕方のない事だろう。起こった事これからの事などを少し話し合い、時間も時間なのでと話を切り上げ各々が帰路につこうとする。そんな時ユーノが最後にと口を開く
「あっ、最後に一つだけ聞きたいことがあります。今日あの場所で結界のようなものが張られている感じがしました。アレはユウジが?」
「結界? 何のことだ? 俺があそこに着いたのはなのはとユーノが襲われそうになっていたあの瞬間だぞ。それに結界なんてあったか? 全く感じなかったが」
「そうですか……だとしたら僕の勘違いかもしれないです。忘れてください」
「あぁ、そうする。だが一応、気にはしておいた方がいいかもな」
そう悠次とユーノは受け答えする。事実、あの場にはここにいる3名以外も居たのだが、まだ彼等はそれに気が付くには至らない様である。
「それじゃあなのは、また明日な。ユーノも機会があればまた細かい説明もしてくれ」
「うん、また明日ね、悠次君」
「僕からも回収の手伝いをお願いしているので聞かれたことは答えますよ」
挨拶を交わし今度こそ、それぞれが帰ってゆく。
「(それにしても……)」
なのはは考える。他の二人は気にもしていなかったし話題にも上がらなかったので黙ってはいたが
「(あの、誰かに見られているような、見守られているような感じはなんだったんだろう……)」
確実に気が付いていた。感受性の高さゆえか、それとも持ち得た素質の高さゆえか。欠片でも気が付かれていた事を、その現場を見ていた者はまだ知らない。
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……朝からリニスに問い詰められて大変でした。
しかし、話したところで本当に信じて貰えてるのか怪しいですからねー、子供の妄言と捉えられてる気がしないでもないですし。子供扱いが全く抜けてくれないのが証拠ですかね。ロストロギアのくだり辺りぐらいは信じていてくれれば、この先やって欲しい事があるので楽なんですけど。
「……っとここ数ヶ月、海鳴市の周りでちょっとした事件や事故が続いているようなので、皆登下校時には十分注意してくれー。昨日の夜には動物病院の辺りで事故も在ったそうだからな、気をつけろよー」
案外、私というイレギュラー等が在っても、基本は変わらないということですかね。やりすぎない程度なら、介入も行っても平気そうですね……そういえば昨日既に介入された後ですね。
なのはちゃん達(+男子2名)の集まりは……なのはちゃん(+男子1名)が誤魔化しと説明してますね、ここも流れ通りで良い事です。そして次に事が起きるのはズレなどが無ければ今日ですよね。体感する身に成るとハードですね。一応リニスに連絡しておかないと。
『(リニス、ちょっといいですか?)』
『(大丈夫ですよ、イツキ。どうしたんです?)』
『(今日の帰りにちょっと寄り道していきますというのと、何か欲しい物が有れば買って帰りますよという連絡です)』
『(わかりました。特に欲しいものもないですよ。強いて言うならば”寄り道せずに帰ってきてください”ですかね)』
『(ははは……それはちょっと……そ、そうだ、リニス、猫形態に戻れたりする?)』
『(ハイ? 出来ますけど、それが何か?)』
『(いえ、今朝伝えたことの証明じゃ無いですけど、今この街で起こってることを実際に見てもらおうかと。そんな訳で放課前に連絡飛ばしますので学校まで来てください)』
『(ハイハイ。それでは連絡まってますね)』
うん、なんでしょう。軽くあしらわれた感じが否めない。お願い、信じて、私の言ってること。まぁ隠し事は在るけど、それでも伝えたことは真実が多いから!
介入、自分の力で頑張るしかないのかな。
「……きちゃん、いつきちゃん? 聞いてる?」
「んぅ? あれ? 誰もいない?」
「移動教室だからみんな行っちゃったよ。私たちで最後だから行こう」
「あっ、ちょっと、待って」
周りから見ても不自然の無いように、出来るだけ自然に、モブAとして過ごすんだ、少なくともStSまでは。それまで表舞台に出て注目されるのは避けて行きたい、そう決めたんだ。
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~時は移って放課後~
学校の周りで既に猫形態で待っていたリニスを拾って頭の上に乗せつつ、とりあえず商店街まで移動する。
『……っで? 来ましたが、何処に行くんですか?』
『ん~神社、かな? 感じない? 魔力が暴走しているようなモノを』
私はまだ感知系得意じゃないんですよね。デバイスに任せれば何とかなる気がしますが頼りすぎは良くないですし、あまり頼りたくないです、コイツに。
『自分で無理なら、俺に頼っても……いいんですぜ?』
『うっさいわ! なんですかそのキャラ付け! そんなだから頼りたくないんですよ! ただでさえまだ私の中で折り合い着いてないんですから!』
面倒くさいのだ、この私専用のインテリジェントデバイス、アマルサムト:愛称アルサナ。今世の両親から貰ったものだが何故か人格AIが前世の私なのだ。何をした、あの自称神。こんなサプライズ欲しくなかった。そりゃ戦闘面では的確すぎる相棒になると思いますけども……
『まぁ俺もちょい複雑だがなぁ。直前までの記憶は一緒なのに、気がついたら俺はデバイスになってたしな。でも気にすんなよ? 俺は自身がコピーで偽者ってわかってるからな。出来るなら自分で動ける
『……すいませんでした、ちょっと無神経でしたね。でもソレも多分何とか成ると思いますよ? 自分で言うのもなんですが、やっぱり私達は”特殊”ですからね。”あれ以降”まで待ってください、私が責任もって頑張ってみますので』
『期待せずに待つよ。ソレまでは俺も只のデバイスとして全力を尽くすからな』
元が同じなのだ。なんだかんだ言いつつも、気が合うのは当たり前だ。そんなやりとりをしていると、頭の上のリニスがてしてしと叩いてくる。
『コントやってないで、何処か行く所があるんじゃなかったんですか? イツキに言われたとおり、ちょっと探してみたらアッチの小山の方から何か感じますね』
『だな。ちょっと急いだほうがいいかも知れねぇぞ? まだ暴走はしてないが危ない状態だ。先に行っておく必要があるだろ』
『え……コントって……酷い。っじゃなくて、それホントですか、アルサナ!? 先に行って隠れないといけないのに!』
急がなくては。ただでさえ追加が一人、そしてまだ判明していないのが一人居て動きづらい状況なのに。今回や次で介入してこないとなると、あちら側の陣営か、そもそも関係なかったと見ていいでしょうね。
そんな風に考えつつも私は神社まで急ぐのであった。
「ふぅ……間に合いましたね。さて、あとは階段を登って隠れる場所は……屋根の上でいっか。近いけど大丈夫でしょう。アルサナ、今のうちに私とリニスに
『あいよー。ってかデバイスの俺に頼らなくても自分で発動できるだろうに。昨日なんて遠いからって慢心して掛けなかっただろ』
神社への長い階段を上りつつ、他愛もないやりとりをする。
「あの距離で勘付かれる訳ないじゃないですか。それに今は結界の練習も兼ねてるのでそっち優先ですよ」
『あぁ~……言いにくいんだがな? あの組みあがり具合だと、多分バレる奴にはバレてるぞ? おそらくユーノにはな。それに実はリニスも気が付いてたんだろ?』
そう告げてくるアルサナ。え? あれ駄目だった? 自分なりに結構自信あったのに。
「そうですね。全体として感じれば、まぁわかりにくかったですが、綻びがちらほら在りましたし、途中からハッキリとわかるようになりましたしね」
おそらくなのはちゃんのセットアップ時の魔力奔流の所為だろう。あれにあてられて全体的に綻び、組み込んだハイドの術式が剥がれたのだ。
「う~ん、更に要研鑚ですかね。っとと、あちゃーもう暴走しちゃってましたか。リニス、アレが今この街で起こってる事の一部です。アルサナ、あのわんころにあの子が来るまでバインドを。私はこのお姉さんをそっちの木に寄り掛けて
「あんなモノが発生したりしているのですか」
少々驚いた様子のリニス。今朝アルサナの映像で昨日の毛むくじゃらも見せましたよね? あれでも信用なかったんですか?
『了解っと。しかし、全部俺がやってもいいんだぜ? どういう風にしようとも、リニスの維持も含めて、全部お嬢の魔力だからな。いざって時に切れない様に少しでも節約をだな』
「わかってますけど、それを踏まえても貴方ならわかるでしょう? ”まだこの時点では大丈夫”だと」
『……まぁ、そうだな。逆にこの時点である程度経験積んでおかねぇとこの先あぶねぇな』
この時点まではまだ平気だ。次は街へ、その次以降は人的被害まで出てしまう。防御/回復に重点を置いて練習してきたのでそちらは大丈夫だが、次の事件までに自衛の為にも攻撃にも意識を向けなくてはいけない。少なくとも、私自信が蒐集される気は微塵もないのだ。
それに個人的な理由でジュエルシードも最低3個ほどは確保したい。
「なんでもいいですが、誰か来ましたよ? それと、もう一人近づいてくる反応があります」
もう来ましたか。
「アルサナ、バインド解除。後、昨日の例があるので、危なくなったらいつでも展開できるようプロテクション待機で」
『まかせな』
「イツキは何もしないのですか? 貴女ならなんの危険もなく瞬間的に終わるでしょう?」
さも当然のように言い放つリニス。貴女は信用してくれているのかしてないのかわからないですね。
「私では駄目なんですよ、この一連を解決するのは。”在り得てはいけない”とまでは言いませんし、自己否定に繋がるので言いたくないです。でも、私はまだ”傍観者”で居るべきなんです」
「……どういう理由があってそう考えるのかは解りませんけど、少なくとも今の私にとってイツキは”在り得てはいけない”存在なんかじゃないですし、大切な人だと思いますよ」
「ありがとう、リニス」
「いえ、ですが、一応、なぜ傍観者であろうとしているか聞いても?」
「え? だって事件に関わるのって面倒じゃないですか」
「……聞いた私が愚かでした。ちょっとでも配慮した私に謝罪してください」
「えぇ!?なんで!?」
そんなやり取りも、大切な時間なのだ。場合が場合じゃなければ。
『……二人とも、アッチ、そろそろ終わりそうだぞ』
「「え?」」
アルサナに言われて見てみれば、もう封印を行うところだった。どうやら、来たのは番長君だったようだ。前衛後衛がしっかりと別れているからなのか、特に怪我もなく、問題なく終えようとしていた。
「あれが、この一連を解決する人たちですよ、リニス。本来ならばあの白い子だけなんですけどね」
「へぇ、そうなんですね。わかりました。それはそうと、傍観者であろうとも、あくまで主体をあの子たちに任せる様にすればあの中に混じって近くで助けてあげれるのでは?」
「あれに混ざるつもりはありません。それに、必要があれば助けますよ。ですが、大丈夫ですよ”今暫くは”、ね」
そう、まだ暫くは大丈夫なのだ。それに彼女に必要な”経験”を無くすわけにはいかない。
「さて、あの子たちも行ったようですし、私たちも帰りますか。何か晩御飯にリクエストとかあります?」
「イツキが作るものであれば、なんでも」
「ハイハイ、わかりました。昨日はお肉でしたし、魚にしますか」
まだ、何も起こす必要はない。暫くは自己修練と掠めてもいいジュエルシードの確保の事を考えよう。
……それにしても、もう一人の様子見はどうしよう?