慣れない部分が多いのでどうかご容赦を…
@月#日
ついに念願の息子が産まれた。
私の研究も一段落しそうだし、ようやく家内に構ってやることが出来る。
今までは辛い思いをさせてきた分、しばらくは楽をさせてやりたいものだ。
産まれた子は男だったので、予定通り名前は明(あきら)だ。
周りの人間の明かりとなるような人物になれという願いを込めた名前だ。
正直、父親になったという実感があまり沸かないが、友人も「だんだん出てくるものだ」と
言っていたし、問題無いだろう。
そう思いたい。
@月*日
今日、初めて我が子を抱いた。
赤子というのは何度か見たことがあるが、これほど脆そうなものだとは知らなかった。
多くのことを知った気になっていたが、知らないことはまだまだあったということか。
まだ家に連れて帰るわけにはいかないらしい。
実に残念だ。
@月%日
妻の具合があまり良くないらしい。
まぁ出産直後はホルモンバランスの乱れで体調を崩す者が多いらしいのでそこまで気にする必要は無いと医者が言っていた。
プロのいうことなのだから大丈夫なのだろうが、やはり不安なものは不安である。
@月&日
この症状を私は知っている。
これは私が研究している病原菌によるものの可能性が高い。
医師に無理を言って血液検査をさせてもらったが、案の定、α型のウイルスが発見された。
しかし、まだ衰弱とまではいっていない。
これならまだ間に合う。
しかし、あと何日か処置が遅れていたら妻は亡くなっていただろう。
たまたま知っている病で助かった。
しかし、いったいどこから感染したのか。
おそらく私が妻の見舞いをする前の滅菌が不十分だったのだろう。
これは研究室の洗浄室の構造の見直しをする必要がありそうだ。
「なんだこりゃ?」
朝起きてリビングに行ってみると、机の上には『Diary』と書かれた本が。
本って言うより、書物って感じの厚さだったが。
多分…というか、この家には俺と親父以外居ないし、十中八九親父の日記だろう。
そんな面白そうなものを俺が読まないはずもなく、手にとって読んでしまった。
うちの親父は研究者で、うちの近くの聖イシドロス大学で教授をしている。
やっぱ理系の教授らしく、堅苦しい文章で書かれている。
つーか、この部分って18年前の日付じゃねーか。
通りで分厚いわけだ。
このまま読んでいたい気もするけど、流石に学校に遅刻しちゃうか…
「おい」
「っ!?」
あぶねー、日記読んでるところ見られるところだった。
つーか、いきなり話しかけられたから身体の影に日記隠しちゃったよ。
バレたら怒られるな、こりゃ。
「そろそろ高校に行かないと遅刻するぞ?」
「ああ、そろそろ出ようと思ってたとこだよ。ってか、親父今日は準備するの早くね?」
「ああ…少し用事があってな…」
「へー」
よし、このまま何とか誤魔化してみせる。
「ん?ここに置いたはずだが…」
「え?何が?」
日記ですよね。僕の股の下にありますよ。
まぁ言ったら怒られるから絶対言わないけどな。
「いや…勘違いだったみたいだ。私はもう出るが、遅刻しないようにな」
「あいよ」
そう言って親父は出て行った。
本当に急いでるみたいだな。
ま、今はその用事の御蔭で助かったわけだけど。
でも、この日記どうすっかな。
ここに置いて行ったら、親父が帰ってきた時にバレるのが怖い。
部屋に置いとくのもなぁ…万が一って可能性もある。
なら…
「持ってくしか無いよな」
決して読みたいわけじゃない。
断じて違う。
幸い、リュックにはまだまだ余裕があるし大丈夫だろ。
教科書は学校に置きっぱなしにする派なので、リュックにはノート類しか入っていない。
それでも、日記は結構なスペースをとった。
「やべ、マジで遅刻しちまう」
いつもより増えた荷物を背負って、いつもどおり学校に向かった。
…そういえば、今日はテスト返ってくるのか。
まぁ自信あったし大丈夫だろ。
何とか間に合うかと思いのんびり歩いて登校する。
本当にこの巡ヶ丘市は本当にのどかだ。
風力や太陽光などの自然エネルギーで街の電力の3割を賄う、いわゆる…なんだっけ
とりあえず、何とかモデル都市ってやつだろう。
まぁ残りの7割は原子力らしいけどな。
俺は原子力反対派ってわけでもないし、災害が起こりやすい地域ってわけでもない。
別に問題無いだろう。
まぁ、一部のお年寄りがちょっと頑固っていうか、口うるさいっていうか…
すこし融通の聞かないところもあるけど、こっちを心配してのことなんだろう。多分。
亀の甲より、っていうくらいだし、俺はそこに関してはそんなに不快感が在るわけじゃない。
本当に住みやすい街だと思う。
この街に生まれてよかった、って言えるくらいにはこの街が好きだ。
なんてどうでもいいことを考えていると、割と時間がピンチだった。
慌てていつもの通学路を思いっきり駆け抜けた。
静かな通りだったせいか、やけに自分の荒い息の音や足音が響いた気がした。
学校に着いた瞬間にチャイムが鳴り始めた。
これはギリギリ間に合うか…?
階段を3段飛ばしで駆け上がり、そのままの勢いで教室に飛び込む。
「あっぶねー」
「残念だけどギリギリアウトよ、風間くん」
Oh,Jesus…
「風間くん…今週二回目よ」
「いや、先週はお年寄り助けてたんすよ」
皆の前に立たされた俺を怒っているのは佐倉慈先生、通称めぐねえだ。
まだ教師になってからそんなに日が立っていないのか、学校の教師陣の中では最も若いほうだ。
そのせいか、生徒からの人気はかなり高い。
まぁ、年の近い先生だし、考え方も近いのだろう。
ちなみに科目は現代文。ボク、ゲンダイブン、ダイスキー
さて、そんなめぐねえだが、あだ名で呼ばれている時点でそんな厳しい先生ではないというのが分かるだろう。
ぶっちゃけ、怒られているけど全く怖くない。
むしろ、何か可愛いとは殆どの生徒の意見である。
「はぁ…じゃあ今回はどうして遅れたの?」
「この街の素晴らしさを実感してたら遅刻しました」
正直に話すと、後ろのクラスメイトたちから笑い声が漏れる。
本当のことを言ったのに…
「はぁ…後で先生の所に来てくれる?」
「うぃっす、めぐねえ」
「もう…佐倉先生でしょ?」
「すんません」
一応申し訳無さは1割くらいは感じているので、謝ってから席に戻る。
席に戻る途中にクラスメイト達が「流石風間だ」やら「将来の市長はお前に決まりだな」やら煽ってくる。
やかましいわ。
いちいち相手をしていても疲れるだけなので適当に返事をして席に戻る。
俺の席は分かりやすい。
なぜなら…
「おう、丈槍。また湿気たツラしてんのか?」
「あーくん…」
目立つ桃色の髪にとんがった耳が生えたようなデザインの黒い帽子、全体的に幼い雰囲気を纏った少女…
丈槍由紀の横の席だからだ。
彼女はなんていうか…高校生にしては幼すぎる少女だ。
そのせいか、クラスでは孤立気味で、馬鹿にされるというか、嘲りの対象になっている。
そのせいか、普段から表情が暗い。
もっと笑ってれば、マスコット的な存在になれる気がするんだけどな。
俺はイジメとか、そういう陰湿な質のものがあまり好きではない。
だから普通の1クラスメイトとして関わっている。
「なんだ?また弁当でも忘れたか?」
「違うよぉ…今日テスト返ってくるじゃん…」
「ああ、現国のがな。そんな出来なかったのか?」
「うん…」
こんな感じの会話、何回目だろうか。
丈槍は見た目相応というかなんというか…
あまり頭がよろしくない。
だから時々、俺やめぐねえが教えてたりするのだが…
つーか、テスト前に少し教えた気がするんだが?
そのことについて文句を言おうとしたが、めぐねえの恨みがましい視線を感じたので黙ることにした。
さて、今日も1日頑張りますか