私はお姉様の謎に付いて考えていると、それを遮るような爆音が響いた。そうだ、今は来六さんとグレイフィア様が戦っていたのだった。そちらの方を見ると、二人は激しい戦闘を繰り広げていた。と言っても、来六さんはグレイフィア様の攻撃を凌ぐだけで、一度も攻撃していない。一方、グレイフィア様は魔力弾に近接格闘と普通の悪魔なら数発で倒してしまうだろう攻撃をしている。私なら防ぐ所か初撃で倒れてしまうだろう。しかし、来六さんは魔力弾を紙一重で避け、蹴りや拳は硬化した腕で防ぎ、時には受け流す。それも片足が使えない状況でだ。最早、ポテンシャルだけなら魔王クラスだろう、だが、それでも攻撃をしない。チャンスなら何度も有ったのにも関わらずだ、来六さんは戦わずに勝つとグレイフィア様に言った。まさか、本当にそれをするつもりなのか?しかし、あのグレイフィア様相手にどうやって?そんな事を考えていると、戦況は急変した。
「いつまで攻撃をして来ないのよ‼」
グレイフィア様は拳で上段を執拗に狙い、その隙に怪我をした脚を踏みつけた。
「ぐっ⁉」
「隙が出来たわよ‼オラァ‼」
踏まれた来六さんの顔は痛みで歪み、ガードが緩んだ事を見計らい、グレイフィア様の鋭いストレートが顔に直撃した。相手の弱点を的確に狙う。流石、歴戦の戦士だろう。そこからグレイフィア様の猛攻が始まる。殴られた来六さんは衝撃で吹き飛ぶ筈だが、脚を未だに踏まれて、いきよい良くその場に仰向けに倒れる。後頭部から倒れた来六さんに、グレイフィア様は馬乗りになりそこから胸ぐらを掴み、これでもかと顔を殴る。
「ほらほら‼反撃しなさいよ‼このままだと、綺麗な顔が歪むわよ⁉」
「ぐっ⁉がっ⁉」
挑発しながら殴るグレイフィア様、しかし、来六さんは反撃せず、只、殴られる。無情に殴られる来六さん。次第にグレイフィア様に返り血が付き、来六さんの顔は酷く腫れる。
「、、、、、、っ‼」
その有り様に、ゴゥーマさんは私のスカートの裾を掴み、震えながら目を瞑っていた。椿姫も悲痛な顔でそれを見ていた。私もこれ以上見ていられなかった。しかし、そんな私に毛利さんが言った。
「見てられないか、ソーナ嬢?」
「っ⁉そんなの当たり前です‼皆さんは、どうして助けようとしないんですか⁉」
「言ったろ?来六が意地を貫いてるんだ。だったらそれを見守るのが俺達の役目だ」
「さっきから意地って、なんなんですか‼そんなものを貫く事に何の意味があるんですか‼それで死んだら意味が無いじゃないですか⁉なのに、皆さんは‼それでも友人なん、、、、、、っ⁉」
私は気づいた。毛利さんの組んでる腕に自分の爪が食い込んで血を流している事に。良く見れば、如月さんも拳を震わし、サイタマさんも唇を噛んでいた。そうか、皆さんは本当は助けに行きたいのだ。それを我慢している、それなのに私は一人喚き散らして。
「本当に、彼は良い友人を持っているんだね」
「サーゼクス様。そうですね。なのに、私はそれを知らずに、、、、、、」
自分の浅はかさを恥じる私に、サーゼクス様は肩を手を置き言った。
「これに関しては仕方ないのかもしれない。これは云わば、男の性だからね。女性の君には理解し難いだろう」
「サーゼクス様も、来六さんの意地が分かるのですか?」
そう聞くと、サーゼクス様は微笑みながら来六さんを見て言った。
「あぁ、分かるとも。それこそ僕は『あれと同じことをしたのだから』」
「え?それはどう言う、、」
「ソーナ、どうやら彼方も何かあったようだ」
サーゼクス様の言葉に私は振り向くと、グレイフィア様は荒い息遣いで来六さんの胸ぐらを掴み、来六さんは見るも酷い姿ではあるが、息はあるようだ。端から見れば、グレイフィア様の圧勝だろう。しかし、しかしだ。何故か私にはそう見えなかった。何故なのか分からない。だが、グレイフィア様が追い込まれているように見えた。肩で息をしているグレイフィア様は暫く何もせずいたが、ゆっくりと口を開けた。
「なんで、、、、なんでよ」
「、、、、、、」
「なんで、攻撃をしない‼さっきから殴られ続けて、反撃なら何度も出来た筈なのになんで⁉」
まるで、癇癪を起こした子供のように叫ぶグレイフィア様。それを来六さんは黙って聞いていた。
「何よ、その目は、、、、、、そんなボロボロの癖に、脚も動かない癖に、、、、、、もう、動けないのに‼何か言いなさいよ‼」
ヒステリックな怒鳴り声と共に拳が来六さんの顔に突き刺さる。何度も、何度もそれは繰り返される。しかし、そんなグレイフィア様の顔は泣きそうな顔であった。そして、次第に拳に力が抜けていき、最後には撫でるような拳が顔に触れた。
「何でよ、、、、、、、なんで貴方は」
グレイフィア様は我慢できずその場で泣いた。そんなグレイフィア様に来六さんは、掠れた声で弱々しくもはっきりと言った。
「あ、貴方、、、、、、は、瀬良、、、さんの友人、、、、、、だから、、」
「え?」
「瀬良さん、、、、、、をそこま、、、、で大切に、、、、思ってる、、、、、人を、、、っ‼、、傷つけたくなかった、、、」
来六さんはそう言って、立ち上がろうとした。しかし、腕に力が入らずに、その場で崩れる。それを支える人が居た。
「グレイフィア。この勝負、君の負けだ」
サーゼクス様だ。サーゼクス様はそう言いながら来六さんに肩を貸して立ち上がる。
「サーゼクス‼私の負けって、私は負けてないわ‼敗者はそこのボロボロの虫よ‼」
グレイフィア様は、サーゼクス様の審議に不満を言う。そんなグレイフィア様に優しく諭すように言った。
「確かに、端から見たら彼が敗者になるだろう。しかし、心はどうだい?」
「心?」
「彼は君を一度たりとも攻撃していない。なのに、君は終盤追い詰められていた」
「っ⁉」
「それは彼の覚悟、此処では意地と言おう。彼の戦わずして勝つ。その意地の本気さに恐れを感じたのではないかい?言うなれば、戦わずにして勝つだ」
そう言って、サーゼクス様は来六さんを見た。来六さんはボロボロに成りながらも、一度たりとも引かなかった。そんな来六さんにグレイフィア様が恐れた。だから、最後グレイフィア様は追い込まれたのだ。
「っ、、、、、、‼けど、私は‼」
それでも納得がいかないグレイフィア様が抗議をしようとした時、背後から魔力を感じた。振り向くと其処にはレヴィアタンの魔方陣が見えた。レヴィアタンの魔方陣。それを使えるのはこの世に一人しか居ない。
「ヤッホー☆毛利君、いきなり重要な話があるってメール来たけど、どうしたの❓」
、、、、、、お姉様⁉なんで⁉此所に私は驚くと、あることを思い出した。そうだ、本来なら来六さんがお姉様に告白する事になっていた。しかし、サーゼクス様やグレイフィア様が来てこんな事になったから忘れていた‼
「ん?あ、ソーナちゃん達だ♪ソーナちゃーーーん‼元気してた?椿姫ちゃんにゴゥーマちゃんも元気ーーー?」
しかし、お姉様はそれを知ることもなく、私に抱き付いた。相変わらず鬱陶しいと思うが、それよりも、お姉様に先程のことが知られたら不味い‼それを知ってか、椿姫と如月さんが私の後ろで来六さん達を隠していた。ナイスです、二人共‼
「お、お、お久しぶりです、レヴィアタン様。き、今日はお日柄も良く、、、、、、」
「ハ、ハハハ、久しぶりだね瀬良さん」
ちょっと⁉二人共何ですか、そのあからさまな誤魔化し方は‼もっとバレないように自然に、自然に‼
「ん?どうしたの二人共、何か会ったの?」
「な、何もごさいませんでございます⁉」
「は、ハハハハハハ」
だから‼あからさまですって⁉バレますから‼いくらちゃらんぽらんでも此所まで不自然だとお姉様気づきますから‼ 私は一人冷や汗をかいていると、毛利さんがお姉様に話し掛ける。
「お、おぉ、瀬良嬢」
「あ、毛利君ヤッホー☆それでそれで?今日はどうしたの?」
「それなんだが、今日、瀬良嬢が好きなミルキーの劇場版で売られる限定グッズのサンプルが届いてな。良かったら、瀬良嬢に渡そうと思ったんだ」
「劇場版限定グッズ‼いるいる‼ありがとう、毛利君☆」
な、ナイスです‼いつも馬鹿しかしていないのに、今は毛利さんが救世主に見えます。そして、毛利さんはお姉様をこの場から離そうとしている。良しこれでどうにか、、、、、、しかし、私は、忘れていました。最初に居たメンバーで今居ない二人を。
「毛利ーーーー‼急いで取ってきたぞ、救急箱‼」
「救急車も呼んだぞ‼これで、来六の怪我をーーー‼」
「馬鹿野郎ーーー‼なんで、今来やがった‼」
そう、それは首領パッチさんと天の助さんでした。二人はどうやら、来六さんを案じて手配してくれたのでしょう。してくれたのは有りがたいですが、有りがたいですが、、、、、、、タイミングが悪すぎですよ‼⁉
「え?来六君?怪我?」
その瞬間、辺りの気温が下がった。6月半ばなのに、肌寒くなり、鳥肌が立つ。私はその冷気の中心を見た。それは案の定お姉様だった。
「来六君、怪我したの、、、、、、?」
「あ、あのな瀬良嬢、これには」
「おう‼それも瀕死の重傷だ‼」
「あのターミネーチャンが、来六をボコホコにしたんだ‼」
「あのターミネーチャン?」
お姉様が振り替えると、其処には固まるグレイフィア様とサーゼクス様。それにサーゼクス様に持たれているボロボロの来六さん。
「サーゼクスちゃんに、グレイフィアちゃん。どうして二人が人間界に?それよりもなんで、来六君はそんなにボロボロなの?」
顔を伏せながらお姉様は、二人に問いただす。その際、魔力が漏れだして、先程よりも冷たい冷気と共に、お姉様の足元がピシリピシリと凍りだす。
「せ、セラフォルー⁉これはだね、、、、」
「セラ⁉いや、えっと、あのね、、、、、、」
「あの瀬良、、さん、こ、れは、、、、、」
三人は焦りながら言い訳しようとした。しかし、お姉様から漏れる魔力は止まることはなく徐々に広がる。って⁉毛利さん‼毛利さんが、徐々に凍ってる⁉
「ねぇ、なんで居るの?なんで来六君はボロボロなの?なんでなの、、、、、、」
「それはな、アイツらが来六がおまえに会うのが気に入らないから、引き離そうとして」
「それで、来六はあのターミネーチャンと決闘したんだ‼あ、俺らは立会人だから、手を出してねーぞ」
『馬鹿野郎ーーー‼』
あの馬鹿二人とお姉様を除いた全員が叫んだ。なんなんですか⁉私達が必死に隠そうとした事をものの見事にバラして、わざとですか⁉わざとですよね⁉
「へぇ、、、、、、、そうなんだ」
、、、、、、、、、、、、不味い。お姉様が本気で怒ってる。こうなったら最後、全員凍り漬け待った無しです。私は青ざめながらお姉様を見る。お姉様は嵐の前の静けさのように黙っている。そして。
「、、、、、、ざ」
『え?』
「全員、正座‼サーゼクスちゃんもグレイフィアちゃんも、来六君もソーナちゃん達も正座‼」
涙目になりながら叫ぶ、お姉様。私達は全員正座した。そして、お姉様は延々と泣きながら説教された。
はい、ギャグさんは見事、帰還を果たしました‼(白目
あれ?帰還はもうちょっと後だと思ったんだけど、可笑しいなーーー?
次回はエピローグかな。そして次は、夏‼新キャラ‼甘酸っぱい恋?です‼では‼