天界の生態系は人間界と大きく違っている。例えばそこらに生える植物にしても、色鮮やかな葉っぱを持つものがあったり、かと思えば見事なまでに毒を主張する植物も見られたりした。ここでは私のサバイバル技術は通用しなさそうだ
私が道を歩いていると奇妙なものを見つけた。周りより草が少ないだけの獣道の端に緑のぶよぶよしたものがあった。
これが話に聞くスライムというものであろう。天界ではポピュラーな生物で、地上においてはモンスターと呼ばれる類のものである。。
この世界の生物(モンスターと呼ぶことにする)には一定の法則がある。
この世界はミッドガルドを中心として広がっている(とされている)。中心付近、すなわちミッドガルド近郊ではいわゆる下級モンスター、スライムやゴブリンといった者たちが生息する。逆に世界の果てでは上級モンスター、ドラゴンやリッチといった、いわゆる化け物が生息する。
さて、スライムの話に戻るが、下級モンスターにもかかわらず世界の果て付近にまで存在するらしい。それはスライムの持つ特性が大いに関係している。
スライムは組成によってずいぶんと性質が異なる。火山の付近で育てば火を吐くスライムが出来上がるし、水分の多い土地で育てば普通よりもゆるゆるのスライムが出来上がる。
それによって性格も変わってくる。大抵は温厚な性格で、こちらから攻撃を仕掛けない限りは向こうが危害を加えてくることは無いが、前述した火山育ちのスライムなどは気性が荒く好戦的であるそうだ。
ここは草原である。そんな気性の荒いスライムは存在しないだろうと思い、すぐそばを通り過ぎようとした。
ブン!!
その認識は甘かったらしい。そのスライムは勢いをつけて突進してきた。とっさに反応しこれをかわしたが、明らかに敵意を持っているのが見て取れた。
私は本来殺生を好まない。無論生態系を出来るだけ崩さないように探検をするのが私のポリシーであるし、なにより折角生まれてきた命をこの手で刈り取るのは、自らが食すためでなければなるべくしたくない。このスライムという生き物は、煮ても焼いても食えそうにない。
だがそうも言っていられなかった。今にも飛び掛ってきそうである。こちらの武器は先ほどの店で買ったナイフと持ってきたサバイバルナイフくらいである。迷わず買ったナイフを手に取った。
スライムが再び飛び掛ってきた。私は上半身を横にずらして避け、すれ違いざまにナイフで切りつけた。
ぬるり、という感触と共にナイフがスライムの体を切り裂いたかに見えた。が、スライムには傷が出来た様子は無かった。
そもそもスライムに刃物など効くのだろうか?
相手は軟体生物である。ナイフで切りつけたところですぐに元に戻ってしまう。生物なので死は訪れるのだろうが、刃物で対処できない生物がいるとは思いもしなかった。
スライムの体当たりを交わしながらどうしようかと頭を悩ませていると、ふと思い出した。そういえばもう一つ武器があるではないか。
『魔法』
そう、風を起こす魔法が私にはあったのだ。
スライムは懲りずに突進してきた。しかし、私は避けなかった。ナイフを前にかざし、ボタンを押して点火した。そして私は、脳に刻み込まれたルーンを、唱えた。
ごぅ!!
私の手から風が吹き荒れ、それは炎を巻き込んでスライムに襲い掛かった。炎と風はあっという間にスライムを包み込んだ。
さしもの軟体生物も炎には弱いらしく、ほんの数秒で灰になってしまった……。