仮面ライダーゴースト〜命を燃やす少年少女〜 作:Purazuma
「何だ……!?何が起こってるんだ!?」
前方から吹く強風で飛ばされないように体に力を入れながら、前を向いた。
世界を侵食している結界。それは……優香から発生していた。
「な、何これ……優香ちゃん!」
まどかとさやかとマミさんの三人も同じく、体を小さくして風に耐えている。
やがて風は収まり、何度も見た光景が目に飛び込んできた。
よく見覚えのある。対峙してきた風景。
「魔女の……結界……!?」
「眼魔だよ。」
横から聞こえたキュゥべえの声。その意味を理解するのに数秒必要だった。
眼魔、と言ったのだ。眼魔の、結界。
「どういうことだよ……優香はどこにいったんだ!?」
「優香なら、目の前にいるじゃないか。」
「「「「へ……?」」」」
キュゥべえの言葉に唖然としながら俺達は錆び付いたロボットのような動きで前方に顔を向けた。
そこにいたのは、真っ黒な少女だった。
頭から、つま先まで、全身が黒い。表情も読み取れない。
こんな奴を見たことがある。
今まで戦ってきた……………………
「眼魔……」
目の前にいるのは、間違いなく眼魔だ。
なら、何だ?あれが優香だって?
「何を言って…………」
「気をつけてね幽斗、来るよ。」
「……!天空寺君!!」
少女の姿をした眼魔が魔力弾を放ってきたのを、マミさんが叫んだところで気が付いた。
体を捻り、倒れこむようにしてそれを躱す。
「脱出を!」
マミさんが変身し、結界の出口を開こうとしている間、俺はずっと放心状態だった。
キュゥべえの言ったことが、理解できない。
優香が眼魔に……優香が…………
「幽斗!」
さやかに手を引っ張られ、我に返った。
後ろの眼魔を見つめた後に、俺達は結界の外へ飛び出した。
「キュゥべえ…………説明して。」
脱出後。変身を解いたマミさんが混乱する思考を振り払い、頭を抑えながら言った。
俺はよろよろと立ち上がり、真っ白になった頭のまま視線をキュゥべえに向ける。
「そういえば言ってなかったね。今から説明するよ。」
キュゥべえは俺達に背を向け、ゆっくりと回り、円を描きながら話し始めた。
「簡単に言うと、君達が持つソウルジェム、及びアイコンは、君達の魂を抜き取った物なんだ。」
「……何だって?」
「そして、魔女と眼魔。あいつらは魔法少女と仮面ライダーの成れの果て。」
思考が追いつかない。頭の中が整理できない。
魔法少女が魔女で、仮面ライダーが眼魔になる?
「だから幽斗、君が今まで戦ってきた眼魔は、過去の英雄本人という事になるね。ほら、数が少ないって言っただろう?」
待て。
待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て
「魂が別にあるということは、体がいくら傷付いても問題無し。だから君達は、安心して魔女退治ができるんだ。」
つまりそれは…………
魔法少女が魔女と戦い、魔力を使い果たし魔女に……そしてキュゥべえがさらに魔法少女を増やす。
仮面ライダーに関しても同様…………
俺達のしてきたことは……全部…………全部…………
「ふざけないでよ!」
マミさんがヒステリックな声を上げ、キュゥべえを睨みつけた。
「私達は今まで……何のために戦ってきたのよ!こんなの…………」
「やっぱり、君達は決まっていつも同じ反応をするね。」
動き回ってたキュゥべえが立ち止まり、不気味な瞳をこちらに向けた。
「何が不満なんだい?僕は君達の願いを叶えた、その代償として君達は戦う宿命が与えられるとは言ったよね?」
「キュゥべえ……お前は……お前はぁ!!!」
湧き上がる怒りに耐えきれず、キュゥべえを両手で掴み、乱暴に持ち上げる。
「……騙してたのか?」
俺達を。
魔法少女と、仮面ライダーの真実を隠して…………こいつは……!!
「聞かれなかったから、言わなかっただけさ。」
体の力が抜ける。
俺の手をすり抜け、キュゥべえが地面に着地した。
「それじゃあ、あたし達の体はどうなってるのさ!」
さやかも、かなり取り乱している。
魂を抜き取り、ソウルジェムとアイコンにする…………ってことは…………
「あたし達……ゾンビにされたようなものじゃんか!」
そうだ。
俺達は''願いと引き換えに魂を売った''ってことだ。
もちろんそんなものは、俺達が望んでやったわけじゃない。
全部キュゥべえの思惑通り…………
「はあ……やっぱり君達もそうなのか…………わけがわからないよ。」
今まで、心強い味方だと思っていた。そう考えるのは早すぎたんだ。
「どうして人間は、魂の固執にこだわるんだい?」
キュゥべえは、敵だ。
「優香ちゃんは……どうなったの?」
不意にまどかがそう言った。
まどかもまた、受け入れられないんだ。俺だって…………
「さっき言った通りだよまどか。優香は仮面ライダーとしての役目を終えたんだ。今は眼魔になってるよ。」
許せない。
こいつは……絶対に…………!!!
《アーイ!》
「おっと……やる気かい?」
ゴーストドライバーにオレゴーストアイコンを装填し、レバーを操作する。
「変身!」
《カイガン!オレ!レッツゴー!覚悟!ゴ・ゴ・ゴ・ゴースト!》
「キュゥべええええええええええっ!!!」
ゴーストドライバーからガンガンセイバーを取り出し、斬りかかる。
刃が迫って来ているというのに、キュゥべえは動じない。その姿が一層不気味に見えた。
「なっ……!?」
ガンガンセイバーの刀身が、キュゥべえに到達しようとした瞬間。それは''白い手''によって阻まれた。
白いボディに漆黒のパーカー。左手に取り付けられたメカメカしいブレス。
「お前は……さっきの……!?」
「うん、ネクロムの動作は問題無しだね。」
ネクロム、と呼ばれた白い仮面ライダーは、ガンガンセイバーを弾き、俺に蹴りを入れてキュゥべえから離れさせた。
まるで、キュゥべえを守るように。
「君達には、ネクロムの戦闘テストに付き合ってもらうよ。」
キュゥべえがそう言うと、ネクロムはゆっくりと俺に近づいてきた。
誰が変身しているかもわからない奴に俺は、生気を感じることはできなかった。人形のような…………
「くぅ……!?」
凄まじい速さで拳を突き出すネクロム。
神経を集中させて、なんとかそれをいなし続ける。
「マミさん!まどかとさやかを頼みます!!」
「っ!?天空寺君!?」
「幽斗!?」
俺はネクロムにしがみつき、下半身に力を入れた。
なんとかして、こいつをまどか達から離さないと…………!!
「う……おりゃああああああ!!!」
そのまま周りの建物の屋根を飛び越え、できるだけ遠くに行くようにネクロムと俺自身の体を移動させる。
さっきいた所とはまた別の、人気のない路地裏。
着地と同時にネクロムを放り投げて、距離をとる。
こいつは恐らく強い……もしかしたら雄也よりも……
「くそっ!」
ネクロムは俺に考える時間を与えてくれなかった。
すぐに体制を立て直し、俺に襲いかかってくる。
「お前は……何でキュゥべえに従っている!?お前は誰なんだ!?」
「…………」
「答えろ!!!」
いくらガンガンセイバーを振り回しても、当たるのはおろか、かすりもしない。
そうしてるうちに、奴は一つ、緑色のアイコンを取り出し、左手のブレスに装填した。
《イエッサー》
《テンガン》《グリム》
《メガウルオウド》
英雄……アイコン…………!?
《ファイティングペン》
本のような形をしたゴーグルと胸部に、付けペンを模した肩と袖。
グリム……ドイツの文献学者……
「うおっ……!?」
ネクロムの肩にあるペン先が伸び、不規則に動く。
連続して襲いかかってくるそれらに、俺は成す術もなく攻撃を受けてしまった。
咄嗟に英雄アイコンを取り出そうとするが、やはりそんな暇は与えてくれない。
「強い…………!」
何なんだ……こいつ…………!
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「魔法少女が……魔女に…………」
このまま戦い続けたら……さやかちゃんも、マミさんも…………
魔女に?
「こんなの……こんなのってないよ…………あんまりだよ…………」
私達が倒してきた魔女は全部…………元は私達と同じ…………
さやかちゃんはどうなるの?
マミさんはどうなるの?
幽斗君は…………どうなっちゃうの?
「そんな……嘘よ…………」
私達はただただ、下を向いて現実から目を背ける事しかできなかった。
私、また何もできずに…………
「辛そうだね、まどか。」
重い空気の中、キュゥべえだけがいつもの調子でテレパシーを送ってきた。
「でも、君なら運命を変えられるよ。君が望むのなら、どんな願いでも叶えられる。」
「本当……?」
私が願えば、優香ちゃんも、さやかちゃんもマミさんも…………幽斗君も…………
みんなの体を元に戻せるの…………?
私が魔法少女になれば…………
「いいよ、私、魔法少女に……ーーーー」
「その必要はないわ。」
金属が弾ける音と、キュゥべえが引き裂かれる音が、目の前から聞こえた。
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《ダイテンガン》
《グリム》
「くっ……そ…………!!!」
ネクロムが腰を低くして構え、エネルギーを溜める。
奴はオレゴーストアイコンを破壊して、俺を文字通り''殺す''つもりだ。
死ねない。
まだ死ねない。
ーーーーーーーーーーーーどんな願いも叶えられる。
そうだ。
アイコンだ。
英雄のアイコンを十五個集めれば。そうすればもう一度願いを叶えられると、キュゥべえはそう言っていた。
ならばやる事は一つだ。生き延びて、必ず。
「俺が、みんなの命を守る!!!」
《オメガウルオウド》
禍々しいオーラを纏ったペン先が、ネクロムの肩から俺に向かって一直線に伸びた。
生きる。
生きる……!
生きる!!!
生きて願いを…………!!!
《ダイカイガン!フーディーニ!オメガドライブ!》
俺の目の前に、無数の鎖が束となって壁が出来る。
その鎖の壁が、俺を襲う二つのペン先を防いでくれた。
「杏子!!!」
「ちっ……!はいはいわかったよ!!」
と、ほぼ同時に俺の体にも何かが巻きつけられ、一気に上へと引っ張られる。
今の声は…………!?
「ったく!めんどくさいなあ!」
空中に放り投げられた俺を抱えるようにして受け止めたのは、赤い髪の少女だった。
そして、もう一人、助けてくれたのは…………
「雄也……?」
空中に浮かぶ、翼のように展開された四つのタイヤ。
マスクには鎖の模様が浮かんでいる。青い仮面ライダー。
間違いなくスペクター、深海雄也だった。
「すぐ離脱する!!」
雄也がそう言うと、俺を抱えている少女も地面を蹴り、ネクロムから離れるように建物の上を移動した。
「何で雄也が!?」
「ああもう!暴れるな!!」
と、少女に一喝され、ビビってしまう自分が情けないと思う。
「くそっ……追いかけてきやがった……!」
雄也は俺の近くまで寄り、ドライバーからガンガンハンドを取り出し、構えた。
「杏子、幽斗を降ろせ。」
「りょーかい。」
「うわっ!?」
急に離されたので少しバランスを崩す。
俺の体を縛っていた物は、魔法で変形させていた槍だったらしい。
槍を持った少女は赤い髪を翻し、雄也と同じ方を睨む。
その視線の先には、俺達を追いかけて来るネクロムが見えた。
「話は後だ、幽斗。今はあいつを倒すぞ。」
次回、ゴースト&スペクター&杏子vsネクロム!!!