毛の生える槍……?違う、獣の槍だ!   作:トッシー

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毛の生える槍いや獣の槍ってワンパンマンにとっては…。
そんな妄想を書きたくて…。




古の昔、人里離れた夕刻の地に封印されしは一本の槍

 

闇を切り裂き邪を祓う槍の名は

 

「毛の生える槍!」

「獣の槍だってんだろうがッ!!!」

「うるせえっ!」

 

これは夢ではないだろうか?

俺は今、この上ない感動に身を震わせていた。

だというのに腐れ妖怪が水を差しやがる。

俺はふさふさとした流れるような長い我が黒髪を撫でながら涙を流した。

 

突然だが俺は蒼月潮、趣味でヒーローをやってるものだ。

芙玄院と呼ばれる由緒正しい寺の息子である俺は、妖怪変化の類の存在を父親に信じ込まされてきた。初めは信じなかったがある日、俺は本当の妖怪に遭遇する。11歳の頃だ。

この時、全く歯が立たずに殺されかける事になったが、通りすがりの霊能力者に救われ命を救われたのだ。

 

この時だろう。

俺の生き方が決まったのは。

その日から俺は、正義の味方を目指してトレーニングの日々が始まった。

雨の日も風の日も、俺は一日も休むことなくトレーニングを続けた。

そのトレーニングとは、腕立て伏せ、腹筋、スクワットをそれぞれ100回。

そしてランニング10キロという壮絶なものだった。

特にエアコンを使わないで過ごすのが大変堪えた。

 

それから三年、俺はイメージ通りの動きが出来るようになった。

妖怪をワンパンで倒せる程の圧倒的な力。

俺は正義の味方としての力も手に入れたのだった。

しかしその代償は決して安くはなかった。

気が付けば俺は…、

 

「髪がなくなってたんだ…」

 

親父には大層笑われた。

母ちゃんは知らないけど親父の髪はフサフサで禿る気配がない為、俺は全く心配していなかった。だというのに俺は中学二年、14歳にして毛根が全て死滅してしまったのだ。

最大の自慢であった太く男らしい眉も根こそぎ無くなってたんだ!

 

寺の息子だから問題ないと周囲に爆笑されたし馬鹿にもされた。

 

しかし髪の神様はそんな俺を見捨てていなかったのだ。

 

なんと俺の家の蔵の地下室から『毛の生える槍』が見つかったのだ!!!

 

俺はこの日の感動を生涯忘れないだろう。

 

「だから!そのくそったれな槍は獣の槍だって言ってんだろう、がぁっ!!!?」

 

襲いかかってきた妖怪に、いつものようにワンパンで始末しようと拳を振るう。

しかしその寸前で毛の生える槍が勝手に動き出し、妖怪の眼前にその切っ先を向けた。

地下室に差し込んだ日の光が妖怪の顔を照らした。

俺の倍以上の巨躯に野生の虎を思わせる貌。

毛の生える槍が500年間、この場所に封印していた妖怪だ。

抜いてくれというから抜いてやったら襲いかかってきたんだっけ?

殴ろうとした瞬間、毛根が復活したものだから感動して忘れていた。

 

妖怪は毛の生える槍に対して凄まじく怯えていて、なんか愛嬌さえ感じてしまう。

今までワンパンでぶっ飛ばしてきた妖怪とは、なんだか違う気がする。

 

「きゃああああああああっ!!!」

 

その時だった。庭から悲鳴が聞こえてきたのは。

二人の女子の悲鳴は俺のよく知る声だった。

二人とも俺と同じ中学に通っている女子であり、片方は幼馴染みだ。

忘れてた。そういえば借りてたノート返す約束してたな…。

 

「…ちっ、俺の妖気に惹かれて低級の雑魚が集まってきやがったな」

 

気配からしてかなりの数のようだ。

毛の生える槍が俺の手の中で震えて警告してくる。

 

―分かる、

 

槍が教えてくれる。

この槍の由来と使い方を…。

 

「おい、ありゃ、お前の妖気に引き寄せられたんだったな?だったら責任とれ」

 

「はぁ!?なんでわしが人間なんぞを助けにゃならんっ!!それよりの小僧っ!おめえを喰ってって、ひぃっ!?分かった!分かったからその槍を引込めろっ!!」

 

俺は妖怪の尻尾を掴むと外に向かって放り投げた。

同時に俺も跳躍、空中で眼科に広がる妖怪の群れを睨み付けた。

女子二人は、どうやら家の中に避難して無事のようだが、扉が破られるのも時間の問題だ。

 

「…ちっ、雑魚が集まって巨大化してやがる!」

「デカいのは俺がやる!お前はこれ以上、妖怪が合体するのを抑えろ!」

「…ちぃ、わかったよ!」

 

妖怪は空も飛べるようで、宙を自在に舞うように飛び、妖怪の群れに向かって炎を吐く。

凄まじい火炎によって焼き尽くされていく妖怪。

俺も負けじと巨大な妖怪に向かって、自慢の拳を振るった。

 

ぐちゃっ

 

「は?」

 

それは妖怪の呆けた声だった。

俺の拳がふれた瞬間、巨大な妖怪は肉片をばら撒きながら吹っ飛んだ。

吹っ飛んだ肉片や体液は遥か天空へ、そして数秒後には完全に見えなくなっていた。

 

「おまえ…、槍は?」

 

それは槍を使わなかった事に対する疑問か?

それとも俺のような子供が拳ひとつで巨大妖怪を粉砕した事か?

その妖怪は鋭い爪を伸ばした指で俺を指さして間抜けな顔を晒していた。

 

はらり、

 

「いや、俺は槍なんか使ったことないし…って?」

 

はらり、はらりと黒い線が落ちていく。

これは髪の毛?

髪は長い友達の筈、嘘だよな?俺の友よ!

俺を残してまた逝くなんて、そんな事あるわけないよな!?

 

「そりゃ化け物が居なくなったんだ。槍もおとなしくなるだろうよ」

「お前が居るじゃねぇか」

「槍は妖怪の悪意だとか敵意に反応して動くんだよ」

 

俺は必至で抜け落ちていく髪を抑えながら妖怪に詰め寄る。

 

「じゃあ妖怪が来ればまた俺の髪は生えるのか?」

 

そういえば此奴の妖気は他の妖怪を呼ぶんだったな…。

 

「じゃあな」

 

「まて」

 

俺は去ろうとする妖怪を抑えつけた。

 

「な、なんだよ!手伝ったんだしもういいだろうがっ!!」

「ふざけんな!責任は最後まできっちり取らせるからな!」

 

正直ワンパンで終わらせればすむ話だが、俺にはこの妖怪を殺す気には何故かなれなかった。こいつといれば俺の髪は復活する。

そのカギはこの毛の生える槍と虎のような妖怪だ。

虎のような妖怪か…。

 

「よし、これからお前を“とら”と呼ぶぞ。貌とかそっくりだしな」

「はぁっ!?何を勝手に、嫌だぞわしは!?」

 

(クソ…、人間め…、こうなったら憑りついて隙を見て食ってやる。絶対に喰ってやるからな…)

 

(とらを連れてりゃまた妖怪に襲われる。そうすればこの槍がまた髪をくれる。正義の味方としては心苦しいが、髪は長い友達、そう!これは友達の為、正義の味方として友達の為に動くのは間違ってないしな!)

 

それぞれの思惑を胸に奇妙な関係が始まるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く?




アニメでワンパンマンとうしおととらが面白くて妄想を止められませんでしたw

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