いろいろと至らない点が多いですが、ご意見ご感想お待ちしてます
どうしてこうなったんだろう……。そう思わざるを得ないのが俺の今の心情である。
俺の名前は片桐 久幸。こんなテンプレート的な紹介をするのはかなり気が引けるが、本当にごく普通の高校生である。
ごく普通の高校生とは言ったが、俺の日常は高校2年生が始まる前を境に大きく狂ってしまった。その要因が……。
「おーい! ひーさーゆーきー!」
「げっ」
来た。今日は俺の方が早起きをして学校に向かったというのに、あいつもう追いついてきやがった。
「どーん!」
「うえっ」
この朝からやたらとハイテンションな乗りで突っ込んでくる女の名前は、伊良 恵理洲(エリス)と言う、かなり変わった名前をしたやつである。
顔立ちはその辺のアイドルの倍もかわいく、スタイルも抜群で、胸もでかい。まさに芸能スカウトに見せたら10人、いや100人に1人の逸材と言われるほどである。
そんなこいつに朝っぱらからベタベタくっつかれるといろんな意味でうっとおしいのだが、あいつはそんなこともお構いなしである。
「今日は朝早かったねー。何か用事でもあったのー? ねぇねぇ」
こっちの都合お構いなしに俺の肩をブンブン揺らす。
俺の体の上半身に恵理洲の胸がストレートに当たる。その上わざとらしく擦り付けてくる。
はい、超柔らかいです。思春期真っ只中の高校生男子にはきっついきつい。
んで、じっと周りを見渡してみる。
予想通り周りの男子生徒達が物凄く白い目で睨んできている。少なくともイケメンは100歩譲って許せる。ブサメンとかDQNはこっち睨むなよ。お前らはどうあがいてももてるわけねぇんだからよ。
そんな感じで、半ば毒づきながら抱きつかれていると、恵理洲が思いっきり俺の頭をグリンと回してきた。あぶねぇな、ムチウチになったらどうすんだよ。俺の目の前には悪い顔をして、目がトロンとしていた。あ、やばい。これ来るぞ……。
「……ふふっ」
そう言って不敵に笑ったその瞬間。
恵理洲は思いっきり俺に口づけをした。
「ん!」
「……ん」
わからないと思うが、今10秒近く口づけされた。往来の人通りの前でがっつりと。通りかかる男子生徒の目線がより一層きつくなった気がした。
それを見た恵理洲はどこか意味深な行動を取り始めた。すると周りの男子生徒たちはまるで腑抜けになったようにフラフラと歩き始めた。
俺は恵理洲の顔を見ると、そこにはそれはそれは大変に悪い顔をした恵理洲の顔があった。
俺はため息をついてこれからまたしんどい一日が始まりそうな予感がしてならなかった。その時他の男子生徒の会話が聞こえた。
「おいおい、またやっているよ」
「すげぇよな、伊良ってさぁ。あいつ完全にわかってやっているからな。あいつ本当に悪魔なんじゃないか?」
……その男子生徒にこう言ったら果たして信じてもらえるのだろうか。
伊良 恵理洲は、本物の悪魔であると。
~隣の悪魔!~
本当にどうしてこうなったのか説明すると少し長くなる。
先に話した通り、こうなってしまったのは俺が高校2年生になる前の話である。
俺の家は普通の一軒家だが、両親が外国で事業を始めるらしく俺は今1人暮らしである。そんな中、春にいきなり隣に一軒家が建ち始めた。そこの住人が恵理洲含めた伊良一家である。
最初一見してみたら割と普通の家族にしか見えなかった。だって全員普通の一般人となんら変わらない顔つきをしていたから仕方なかったんだ。
異変に気付いたのは、奴らが引っ越してきた2日後のことであった。深夜の時間に俺が寝ていたら布団の中に何かがいる感触を覚えた。怖くなってめくるのをためらっていたら、その形が明らか人型だったのでなんだこれと思って布団を引っぺがした。
そこには何故か恵理洲がいた。
「……なにやってんの、お前」
そしたら恵理洲は満面の笑みでこう言った。
「貴方が欲しいの」
引っ越してきて2日目でいきなりベッドの中で告白されるという世界一わけのわからない状況が出来上がりました。
と、思ったら恵理洲は1回咳払いをしてこう言った。
「ごめんごめん。言い方が悪かったね。言い直すわ」
あぁそりゃよかったと思った矢先に恵理洲が言った一言は、
「貴方の感情が欲しいの」
ますますわけがわからなくなった。
「ちょ、ちょっと待て! なに人の家に深夜時間に尚且つ勝手に上がりこんでなにわけのわからないことを言っていやがる!」
「えーっとね。どう説明したらいいかな」
とぼんやりと恵理洲が考えていると、
「こら恵理洲! 勝手に何やっているの!」
と、いつの間にかというかどうやって入ってきたのか、そこには恵理洲の母親がいた。
「あ、ママ。ごめんね、我慢できなくなっちゃって」
「まったく……。あ、ごめんなさい片桐さん、うちの娘が」
「あぁ、いえ。あの、ところでなにかあったんですか?」
「えっと、それを話すには少し説明が必要になるんですが、とりあえず明日の朝、朝食を食べながらでもよろしいでしょうか」
と、言うわけで俺は恵理洲の家に朝飯を食いに行った。恵理洲の家は父親と母親と恵理洲の3人家族だった。俺は恵理洲の父親と向かい合う形でご飯を食うことになった。そして、父親がご飯を食いながら挨拶してきた。
「片桐さん、昨日は誠に娘がご無礼なことをしてしまいまして申し訳ない」
「いえ、大丈夫ですが、いったい何があったんでしょうか」
すると、父親は神妙な面持ちで話し始めたんだ。
「実はわれわれ一家は、悪魔の血筋を持っているのです」
「はい?」
わけわからないがとりあえず話を聞くことになったんだが、あまりにも長い話なので要点をまとめて話そう。
1つはここに悪魔が来た理由。その大昔、天使と悪魔の戦争があった。どんな理由で戦争があったかまでは知らないが、その戦争で、最近になって悪魔が勝利して、それによって悪魔が俺たちの世界に降り立った。
そして悪魔たちは人間の世界で何をしているのかと言うと、奴らは魂を集めて大魔王ルシファーに献上するらしいのだが、最近では人間の感情も魂と同様の役割を果たすらしい。(それでも意味が分からない)
恵理洲は後者側の悪魔として感情を集めていて、恵理洲はおとといで初めて人間の世界に来たため、早く感情を集めたかったため襲撃してきたと恵理洲自身がそう言っていた。そんなはた迷惑な。
そしてもう1つの理由。それは、人間の世界に入って経済やら生活の知恵やらを学ぶために来た。
いわく、魔界もなにやら財政難や難民が非常に増えたらしく、今の状態ではとてもまずいと感じたルシファーが人間の豊かな生活からなにか学べるのではと考え、人間と同様な悪魔を多数人間界に降りさせた。
それにしても大魔王ルシファー、何年も生きてきたはずなのに何とも現代人思考な大魔王なのだろう。
しかもその恵理洲、俺の高校で始業式が始まると同時に高校に入ることになったのだが、それがなんと俺の高校に入るって言ったもんだからびっくりよ。だからか、さっきっから恵理洲は俺の隣で腕を組んで離さないのは。
「えへへー、楽しみだなー。そう思わない? 久幸」
「いや、別に」
「またー。照れちゃってさー」
「照れてねぇ」
人の話を聞いてもくれないのかこいつは。そしてこれからが重要なことなのだが、俺は恵理洲の父親に1つ質問を投げたのである。
「なんでまた、こんな所にしたんですか? もしかして適当に決めたんですか?」
それを聞いたとたんに父親の顔が曇り始めた。なにかまずいことでも聞いたんじゃないかと思ったが、よし、と言う顔をしてこう言ってきた。
「我々がここに城をかまえたのには理由があるんです。それが片桐 久幸さん。貴方が要因だからです」
「え?」
俺が要因でここにした? 一体何のことだ? 俺は別に呪われる様なことをした記憶はこれっぽっちもないのだが。
「実は片桐 久幸さん。貴方が生まれる前に、悪魔の魂が入りこんでしまったのです!」
「は、はぁぁぁ!?」
どうだ、この1段階どころか10段階くらいすっ飛んだこの話。こんな話聞いて信じられるかと思ったら、こんな話を始めた。
「あれは数十年前のことでした。大魔王、ルシファー様が新たなる悪魔の子を作ろうとしていた時、悪魔にするために呪詛を掛けて悪魔の魂を組み込むのですが、その呪いの魂をルシファー様が誤って転んでしまったときに人間界に落としてしまって」
なにその大魔王らしからぬ凡ミス。
「その魂は全部で300個あって、その内の1つが久幸さん、貴方の体に入り込んでしまったのです」
「でもちょっと待ってください。悪魔の魂でしかも俺の体に入ったと言う割には何の変化もなかったですけど」
「悪魔になると言っても、悪魔が誕生するのは生を受ける前に我々なりの誕生の儀式をして、初めて悪魔となって誕生するのです。貴方が生まれたときには周りに悪魔が少なかったため、今まで何事も起きなかったのですが、今や簡単に悪魔が入り込める時代になり、もっと貴方を狙う可能性も出てきたと言ってもいいでしょう」
「それで、俺が悪魔になったらどうなるんでしょうか?」
「これは憶測なのですが、今回ルシファー様は次世代の大魔王を育てるために、1つだけ魂に強力な呪詛を使いまして、その魂がどんな人に入ったのかまだわかっていないので、もしかしたら久幸さんの体の中に……」
「うげ……。それってまさか、まずいことが起こるんですかね?」
「うーん、それはよくわかりませんが、普通程度の悪魔の魂と人間が混合した場合、力は悪魔の半分以下になると書いてあったのでさほど影響はないかと思いますが、仮に久幸さんにルシファー様次世代の大魔王クラスの魂となるとどうなるのか。そもそも人間と悪魔の両方の魂を持った事など過去にない例ですし」
それを聞いた俺はどこか冷や汗が流れるように感じた。さらに、
「その上最近は悪魔の魂を狙った悪魔が多発しまして。ましてや久幸さんは次世代の大魔王を引き継ぐかもわからない魂を持っているかもしれませんから大変危険な状態かもしれません」
それを聞いた俺は項垂れたね。なんだってこんなことになったんだか。そんなぐったりとした状態になっていると、恵理洲が抱きしめる力を強くしてこう言った。
「だからぁ、私が守ってあげるって言っているのよ」
そう言った恵理洲の言葉に父親はこう言った。
「うちの娘恵理洲はこんな性格ではございますが、戦いにおいてはその辺の悪魔より一歩も二歩も違う故に、久幸さんをお守りするには十分かと」
「もーパパったら少しは私を信用してもいいんじゃないかな。大丈夫、久幸には指一本も触れさせないからさ」
それは大変に喜ばしくもあり、頼もしいお言葉ではあるが、そのあとにすごい一言を言ってきた。
「だからさ、今度一緒にデートしよ。ね、いいでしょ!」
「あぁ?」
「あとねぇ、一緒に学校行ってー、一緒にお昼ご飯食べてー、一緒にお風呂入ってー、一緒に寝るの!」
「い、いや、あの、おい待て」
その時の恵理洲の顔は目が輝きにあふれていたね。それを見た父親はこう言った。
「いやぁ、大変申し訳ない。それでは娘のことをよろしくお願いします」
なんか勝手に話を進められたが、丸腰で他の悪魔にやられるよりかはずっといいかと思い、思わず、
「は、はい」
と言っちゃったわけである。こうして、悪魔との日常生活が始まってしまったと言うわけである。
さて、場面を今に戻そう。
俺はあの時、恵理洲に少し付き合えばいいかと考えていた。が、その考えが少し浅はかだったようだ。恵理洲はとにかく人が考えるよりはるかにマイペースである。周りの視線を気にしないのである。
今だってお昼の時間なのだが、教室で飯を食っている最中であり、俺と恵理洲が一緒に食っているところである。
なぜか恵理洲が俺の膝の上で座っているが。正直重い。そして食いにくい。
「んー、おいしー。流石久幸の作ったお弁当だねー」
こいつはこいつで何にも気にせず人の弁当を勝手に食いやがるし。
「ねぇ久幸。私のお弁当食べるー?」
悪魔の弁当、どんなゲテモノ料理かと思う人もいることだろう。
ところがどっこい、めちゃくちゃ普通である。
普通の白米、卵焼き、プチトマト、ハンバーグ、そしてフルーツサラダ。と言った感じにその辺の人間の食べ物と何ら変わりがないのである。
「フルーツサラダはねー、オリ○ン弁当でおいしそうだったから買ってみたのー」
普通の人間になり済ましているからって悪魔がオリジ○弁当って言わんでくれ。一緒にいるのが悪魔って感じなくなるから。
「久幸のお弁当のお礼に私の卵焼きあげるー」
そう言って箸で卵焼きを持ち上げて、
「はいアーン」
と言い始めました。
「いやここに置けよ」
と言って俺の弁当のふたを差し出すが、
「アーン」
と言ってきかない。ついでに目がキラキラしている。それを見た俺はゆっくりと口を開けた。要するに負けました。
そして卵焼きは俺の口の中に入って行った。うん、うまい。俺の作る卵焼きと同じで味付けに砂糖を使っている。いいことだ。いや別にどうでもいいわけだが。
周りの連中はもうそれはそれはすげぇ目つきになっていた。何というか、もし嫉妬で人を殺せるのなら一瞬で俺は即死するのではないかと思えるレベルである。てかそんな顔をするくらいなら代わってくれ。
恵理洲はその様子を見ると、ニヤリと笑みを浮かべて手を軽く動かした。すると周りの人間が朝見た光景と同じように急に腑抜けになった。これが恵理洲が感情を回収したということである。
「ウフフ。本当に人間って単純よねー」
それを見て俺は溜息をつかざるを得なかった。俺は野暮ながら聞いてみた。
「お前さ、まさかこんなことをするためにわざわざ必要以上に抱き付いているとかないよな」
すると恵理洲は頬を膨らましてきてこう言った。
「もう。私がこんな恥ずかしいことをしているのが、仕事のためだと思っていたの? ひどいよ」
「あぁ、いやそういうつもりじゃ……っておい、なにしやがる」
恵理洲は俺の真正面に向かい合ってきた。なんかこうアレに見えるがアウトなのでやめておく。
恵理洲は朝に見せた時よりさらに妖艶な笑みを浮かべて、顔を俺の耳に近付けて小さな声で話し始めた。
「私だって好きでもない男にこんなことをするわけじゃないのよ? こんなことするの、久幸だけ」
そう言って恵理洲は俺の耳にアマガミしてきた。
「ギャッ……、こっこら、恵理洲っ、やめろ……」
「フフフ、久幸ったら顔を真っ赤にしちゃってかわいいんだから。口ではそう言っていても本当はどう思っているかな~」
そう言いながらじーっと俺の顔を見続ける恵理洲。そしてその距離は徐々に近づいてくる。ま、まずいこれは、いやもう本当に勘弁してくれ。人が見ている前でこんな……。
と、思っていたら隣から声がかかってきた。
「……なにをしているのかしら」
俺と恵理洲、同時に振り向いたらそこにはある人が立っていた。
この人は学園の生徒会長の平良 樺燐って言う人で、1個上の先輩である。まぶしいくらいの美人でメガネがよく似合う人であり、学園全員の憧れである。俺もこの人には憧れていてお近づきにはなりたいと思っていたが、全然そんな機会は無かったのだが、恵理洲と一緒にいるようになってからやたらと絡んでくるようになった。それが良いことなのか悪いことなのか心中複雑ではあるが。
「あのねぇ、学校内でふしだらな行為はやめなさいっていつも言っているでしょう」
「す、すいません。今ひっぺがすので。おい、恵理洲、もうやめ……」
この時の恵理洲の顔は女の子がする顔ではなかったと言っておく。その状態のまま降りた恵理洲はそのまま自分の席、と言っても俺の右隣の席に戻った。
「片桐君。今後は調子に乗らないようにね。それじゃあ勉強頑張って」
「は、はい、ありがとうございます」
そう言って樺燐先輩は去って行った。
その際何故か俺には樺燐先輩の表情がとてつもなく悪い顔になっているように見えた。
俺は恵理洲に話しかけようとしたが、当の恵理洲はものすごく恐ろしい顔をしながらブツブツと呟いていた。この時聞こえたのは、
「アイツ絶対許さない……。いつか骨も残さないんだから……」
……聞かなかったことにしよう。
それにしても、いきなりだな。まさか樺燐先輩がこっちにくるなんて。この人滅多に学園の見回りなんてしない人だって聞いているはずなんだが。
別の日。いつものように恵理洲と2人で登校したわけだが、俺が下駄箱のドアを開けたらなにやらパラッと何かが落ちてきた。拾い上げてみると付箋の手紙であった。何だこれと思ってとりあえず鞄の中にしまった。
「久幸? どうしたの?」
「いや、何でもない。ちょっとトイレ行ってくる」
「ふーん。手伝おうか?」
「バカかお前は!」
バカは放っておいてスタコラサッサとトイレに向かった。大便器に入って、例の手紙を開けた。そこにはこう書かれていた。
『片桐 久幸君へ。今日の放課後、生徒会室で待っています。平良 樺燐』
……。おい、何かの間違いか? 樺燐先輩からの手紙で、その内容が放課後の教室で呼び出し? ……マジで? 嘘だろ。これはまさか、告白!?
『ごめんね、片桐君。急に呼び出して。その、こうまでして呼び出したのはね、2人っきりで話がしたかったの。それで、その……もう! 急かさないで! 私、その……貴方の事が好きです。だから付き合ってください』
と、ここまで考えてありえねぇと考えた。だってなんでなんの手応えもねぇのに告られるんだよ。アホなこと考えるんじゃなかった。
教室に戻ると、恵理洲が手を振って来た。
「おかえりー。ずいぶんと長かったねー。やっぱり手伝えば良かったかなー?」
「あのなぁ、俺は老人じゃねぇんだよ……。あ、そうだ恵理洲。今日の放課後は1人で帰ってくれ」
「え? どうして?」
「ちょっと野暮用が出来て」
「……ふーん?」
恵理洲はジロッとした目で俺を睨みつける。
「な、なんだよ」
すると恵理洲は鞄を開けてなにかを取り出した。それは十字架のキーホルダーだった。ただ、どこか黒みがかかっていてなんか不気味である。
「なにこれ」
すると恵理洲は周りをキョロキョロと見回した後に俺の耳元に近づいて話し始めた。
「久幸、これ。今日家に帰るまで絶対に肌身離さずに持っていて」
「あぁ? なんでだよ」
すると恵理洲は真剣な顔つきのままこう言ってきた。
「すっごく嫌な予感がするから、念のためにね」
そして放課後になった。俺は例の生徒会室に向かった。ノックして部屋に入ると、樺燐先輩だけがいた。
「あ、片桐君。ごめんなさい。急に呼び出して」
「いえいえ。ところで今日はどうしたんですか?」
すると、樺燐先輩は急に距離を縮めてきて、
「もう、そんなに急かさないで頂戴」
と言ってきた。あれ? これまさか……。
「あのね、今日ここにあなたを読んだのはね、2人っきりでお話がしたかったというか、言いたいことがあったの」
お、おう。これも俺が妄想していた通りだ。
「あのね、片桐君。よーく聞いてね。私……、私ね……」
先輩の顔が紅くしていくのが見える。俺はそれに見とれて思わず生唾を飲み込んだ。ま、まさか本当に告る気なのかと思い胸の高鳴りが最高潮に達する。そして、先輩が口を開いた。
「貴方の魂が欲しいの!」
…………………………は?
な、何て言った? 俺の魂が欲しい? おい待てよ、まさか、まさかこの人!
と、思考が完全に停止している隙を突かれ、俺は先輩に押し倒された。
「せ、先輩! まさかあんたは!」
すると、樺燐先輩は恵理洲のように妖艶な笑みを浮かべて話し始めた。
「そう、私の本当の名前は、ヘラ・ミセリア・カリン。貴方のご想像通り悪魔の子よ」
「や、やっぱり……。けど、どうして急に。今までそんな素振り1回も見せてこなかったくせに」
「それはね、この機会をずっと待って来たからよ。あの小娘が来る機会をずっと」
「小娘? まさか恵理洲のことですか」
「そう、私の宿敵、イラ・ベリアル・エリスに一矢報いるためにね。それに貴方の魂を献上すればルシファー様も大変に喜ばれるし一石二鳥になると言うわけ」
「じょ、冗談じゃない! 俺はまだ死にたくない!」
そう言って俺は先輩をはねのけて、ドアから出ようとした。ところが、どういうわけか出られない。出られないと言うより、ドアに触れないのである。
「無駄よ。ここには貴方が入った瞬間に結界を張るように細工させてもらったわ。貴方はもうここから出ることはできないし、もちろん誰の侵入もできないってわけ」
そして樺燐先輩は壁に手をついて逃げれなくした。所謂壁ドンと言うやつである。でもこれ普通は逆だろ!?
樺燐先輩の目つきは恵理洲と同様にとろんとした目つきになっていて吸い込まれそうな感覚すら受けた。そして、先輩は目を瞑り始めていきなりキスされた。
「ん」
「んんんんんんん!?」
表現しづらいが、恵理洲よりすごく上手い。そして長い。何秒経ったか分からないが多分30秒近くはキスされている。その内に俺の体から力が抜けていく感覚を覚える。抵抗しようにも少ししか体を動かせない。
そして樺燐先輩がようやくキスを終えて話しかけてきた。
「フフフ、そうやって抵抗する姿、最高にかわいいわ。前々から貴方のことはかわいくて素直な子だと思っていたけどこうやって真近くで見ると本当にかわいいわ。顔まで真っ赤にしちゃって」
う、嬉しいはずなんだが今のこの状況これっぽっちも嬉しくねぇ!
「大丈夫、さっきのキスで痛みはないに近いだろうから安心して。それじゃあ、片桐君。さようなら」
そう言って先輩はどこからか出したのか槍みたいな突起物で俺の胸めがけて思いっきり振りかぶってきた! も、もう駄目なのか!?
だが、樺燐先輩の槍は俺の胸を通ることはなかった。
「な、なに!? こ、これは!」
樺燐先輩が動揺したその時、けたたましい爆音が生徒会室に響いた。ドアは完全に吹っ飛んで、部屋中に埃が舞った。なんだと思ってよく見てみたらそこには、恵理洲がいた。
しかし、様子がおかしすぎる。目は完全に殺気立っており、頭からは角が生えているし、背中には黒い翼が生え、手には槍みたいなものを持っていた。これを見る限り誰でも察しが付くが、恵理洲は今、完全にブチ切れていた。
「カリン……。見つけたわよ」
「フフフ、やはりこの結界をいとも簡単に破るとはさすがは私の宿敵ね。エリス」
「恵理洲……!」
「念のために持たせといたお守り、久幸に持たせといて正解だったわ」
「道理で片桐君に私の攻撃が通用しないと思ったわ。エリス、やはり油断ならないわね。頭悪そうな性格しているくせに」
すると、恵理洲のこめかみがピクッと動いて、そのままキレはじめた。
「誰が頭悪いって!? 言っておくけど私この前の小テストなんて98点取ったんだからね!?」
「あらあらぁ? 小テスト程度で100点も取れないのかしら? 私は小テストくらい100点なんて余裕で取れるわよ」
「それはあんたが勉強しかしないぼっちだからでしょ」
「ぼ、ぼっちですってぇ!? 失礼ね! 私にもちゃんと友達くらいいるわよ!」
「どうせ男友達でしょ!? あぁそうかぁ! あんたぼっちじゃなくてビッチなんでしょ!」
「ビッ……!? 誰がビッチですってぇ!?」
緊迫した様子から一転。一気にただの小競り合いになった。とりあえず、よい子のみんな。最後の言葉は覚えるんじゃねぇぞ。
これ止めないとまずいよな……。
「お、おい2人とも……」
「「久幸(片桐君は)は黙ってて!!」」
2人のものすごい剣幕に俺は黙るしかなかった。 我ながら弱すぎる。
「大体よくも私の久幸を寝取ろうとしてくれたわね……。絶対に許さないんだから。やっぱりあんたは骨も残さないわ」
「ふん。こんなかわいい男の子、あんたみたいな阿婆擦れにはもったいないわ。方針変更ね。このままエリスを倒して片桐君をペットにして一生かわいがってあげるわ」
なにそれ魅力的……。いやいや。
そうして2人は明らかに力を溜めていた。そして手にまた槍が握られていた。
そして2人は互いに狙いを定め始めた。おい、これまずいんじゃねぇのか!? そして、
「「くらえ!!!」」
そう言って2人は槍を相手にめがけて投げた。その時、俺の上着の胸ポケットが光り輝き始めた様に見えた。そして俺の体になにか電撃が走った感覚を受けた。そして俺はそのまま2人の間に入って行った。俺の体は2つの槍に直撃した。
「え!? ひ、久幸!?」
「ちょ、片桐君!? 何考えているのよ!?」
2人が何か言っているが、俺はそんな事を気にせず立ち上がった。すると2人は、
「な!?」
「か、片桐君あなた……!?」
何故か驚いたような素振りを見せたがそのまま2人に対してこう言った。
「2人とも、正座」
と言うわけで、とりあえずバカ悪魔2人を説教して30分。いい加減疲れたのでこの辺で打ち切った。そしていい加減気になるのは、なぜか2人ともポカンとした表情を浮かべていることである。
「……どうしたんだよ2人とも」
すると、恵理洲が思いきった表情でこう言ってきた。
「えっとね、久幸。こんなこと言うのはあれだけどさ、ちょっと頭のてっぺん触ってみてくれないかな」
なんでだよと思ったけど、とりあえず触ってみる事にした。すると、なにか堅いけどどこか柔らかい感触があった。
「とりあえず、はい手鏡」
そう言った樺燐先輩から手鏡を受け取ってよく見ると、本当に頭からなんか動物の角みたいなものが生えていた。
「なんじゃこりゃああああああ!!」
それを見た、樺燐先輩は体を乗り出してこう言った。
「これではっきりしたわ! 片桐君、貴方はルシファー様に選ばれた、次世代の子になる魂を持った人間よ!」
マ、マジかよ……。よりにもよって俺に入っていたなんて……。最悪だ。
「それにしてもおかしいなー。どうしていきなり久幸の悪魔がいきなり反応したのかな」
すると樺燐先輩は俺の上着のポケットをまさぐり始めた。そして例のお守りを出した。
「これじゃないかしら。原因は」
「あ、それルシファー様に貰ったお守り」
ルシファー様に貰った? もしかしてだけど、多分原因それじゃねぇのか。それが当たったのか樺燐先輩はため息を1つついて、
「間違いないわ。ルシファー様は片桐君がルシファー様が選んだ次世代を次ぐ魂を持ったとにらみ、すぐ近くに引っ越させた恵理洲にこれを持たせた。そしてこれは憶測だけど、私とエリスの戦闘を見て悪魔としての本能が呼び覚ましたのよ」
「えぇ……。じゃあこれからどうするって言うんですか」
そう言った俺を後目にして2人は、
「ちょっと待ってて」
と言って隅でひそひそ話を始めた。
そうして話がまとまったのか、2人は俺の方に向いた。
「あのね、久幸。久幸がルシファー様の魂と同じってことがわかった以上、これからますます危険な目に会うと思ったの」
「だからね、私たち一旦同盟を組むことにしたの」
「同盟?」
「そう。これから久幸が人間と悪魔を共存させるのに重要な架け橋になると思ったから、その力が完全になるまで私たちで守るっていうことにしたの」
「架け橋ってどういうことよ」
「簡単よ。片桐君、貴方を魔界に向かいいれて私たちどちらかと結婚するの」
「ええええええええええええ!!?」
またいきなり話が数段吹っ飛び始めやがったぞおい! というか結婚ってどういうことだよ!?
「魔界に貴方が来て、人間の知恵を教え込んでルシファー様に高く気に入られればもっと悪魔は人間界に住みよくなるわ」
「それでなんですか、人間滅ぼす気ですか!?」
「いやいや、その気はないよー。悪魔がこの世界と共存すれば多少の均衡も取れると思うのよ。私たちだって別に命まで取る様なことはする悪魔ばかりじゃないし」
「それに、片桐君の力が完全体となればその辺の悪魔なんか相手にならないくらいの力を持つわよ。まぁルシファー様には劣るだろうけど」
そういう問題じゃあないんだが。そもそも俺は魔界に行くとは言ってないし。
「それとも……、久幸は嫌? 私と結婚するのは」
「ちょっと、私を省かないで頂戴。まさか片桐君、あれだけ情熱的な目を向けて私と結婚するなんて嫌とでもいうの?」
「い、いや、そういうわけでは」
恵理洲はふーんと言う顔をしてまたしてもとんでもないことを言った。
「まぁ、選びきれないって言うなら重婚もいいんだけどなー」
「じゅっ……!?」
「あら、魔界では二股、三股くらいは頻繁にあるわよ。ルシファー様なんてもう何人の女の人を抱いたか」
さすが魔界。節操なしにもほどがある。ってそうじゃねぇ!
「ま、まてよ。俺はそんな器量なんてないし、なにより重婚なんて」
「なーに言ってるのー。ルシファー様の次世代になるかもしれなくて、しかも人間なのよ? これだけでも価値があるのに」
「会長だってたくさんの男子生徒に熱のある視線受けているんですから、それでいいじゃないですか!」
「あんな儲けの種にしかならない連中なんて興味ないわよ。……というかその言い分だと私とは結婚したくない言い方ね」
「だって殺されそうになりましたし」
それを聞いた樺燐先輩は両手をついてがっくりとうなだれた。恵理洲はそれを見てキャハハハと笑って俺に抱きついた。まぁ自業自得だよな。俺は知らない。
それを受けた、樺燐先輩は恵理洲を引っぺがしてまた俺を押し倒し始めた。
「こうなったら、体で誰のものか教えてあげないといけないみたいね。覚悟なさい」
「あー! こらカリン! ずるいわよ!」
そう言って2人は制服を脱ぎ始め、2人とも上半身が下着姿になった。恵理洲の胸は言わずもがとても大きいが、1番驚いたのが樺燐先輩である。着やせするタイプなのか、Yシャツを脱ぐと 恵理洲と引けを取らないくらいの胸が出てきた。しかも黒色のブラがさらに性欲を掻き立ててくる、って冷静に解説している場合じゃねぇ!
「ちょちょちょちょ!! 何してんだよ2人とも!」
「だから、片桐君が誰のものかちゃんと証明するためよ。大丈夫、天井見つめていればあっさり終わるわよ」
「もー! 久幸! 私を忘れないで!」
「それじゃあ、いただきます」
「う、うわあああああああああああああ!?」
そこから大変申し訳ないが俺の意識は完全にプッツリと消えたのであった。
「……暑い」
「そうかなぁー。魔界の夏に比べたら全然たいしたことないよ」
「そうね、涼しいくらいだわ」
「俺が暑いんだよ……」
なんてったって今、恵理洲と樺燐先輩が思いっきり抱きつきながら登校しているんだからそりゃあ暑いはずである。
「いつまでこうしているんですか」
「私が3年の教室に繋がる階段に到着するまで」
「ずっと!」
「恵理洲、勘弁してくれ」
「それはずるいわよ、エリス」
「だから、今日のコイントスで夜の行動全部あんたにやらせるんじゃない」
「おい、聞いてねぇよ」
「今朝決まったからね~」
そんなくだらねぇこと言っていると、また周りの野郎共のきっつい視線が突き刺さる。このクソ暑いのに鬱陶しいったらない。
んで恵理洲は相変わらず楽しそうに感情を回収する。そして、最近になって樺燐先輩も感情を集めるようになったのか、恵理洲と同じ行動をするようになった。
「ふぅ、これはこれで楽ね。感情は魂よりも半分以下の値になるけど仕方ないわね」
「でしょ?」
「もっと効率のいい回収の方法はないのかしら」
「だったら今日の放課後一緒にご飯食べよ。あたしとカリンと久幸の3人で」
なんかもう昨日見たあれが嘘みたいな光景に見えるため思わず本音が漏れた。
「……仲いいな、あんたら」
すると2人はニッと笑って、
「「だって好きなんだもん(の)、久幸(片桐君)が」」
よくもまぁ臆面もなく言えるものだ。
これから先、俺の力と言い、この2人と言い、俺の人生はどうなるのか全く分からない。それはもう、隣の神(悪魔)のみぞ知るのだろう。
「あ、ねぇ片桐君。行ってきますのキスは?」
「久幸! それ私にも!」
「やかましいわ!」
END