防衛大臣の夏目が声を轟かせる中、レレイは首を傾げながら『門』を閉じた。
その瞬間、地震が研究所を襲った。さして大きい揺れではなかったから伊丹は気にせずレレイに声をかけた。
伊丹「…………レレイ、今の世界とは未来永劫、永久に繋ぐなよ。こっちが滅びる」
とりあえず無事に済んだようで皆、胸を撫で下ろしたが、これで終わりではなかった。
伊丹「お、おい!なんだよ!?」
突然、伊丹は両脇から黒服に抱えられてしまった。しかも両手両足を四人がかりで。
周囲を見ると、大勢の白衣や黒服達が取り囲むように並んでいた。無表情で。
夏目が冷厳に言う。
夏目「直ちに検査です。身体に寄生しているものがないか、徹底的に調べなさい。」
廊下を引きずられていく伊丹。
伊丹「だ、大丈夫だから!何もくっついてないからっ、ホントだっ!俺は、俺は……無実だあぁぁ!!」
必死に声をあげる伊丹。だが、皆首を傾げていた。
夏目「何で無実?」
嘉納「ああ。あれこそが、お約束って奴だ」
そして伊丹は今、自衛隊中央病院にいる。
そして何故か、特地にいるはずの黒川もここにいた。
ある日、黒川は檜垣三等陸佐に呼び出され、自衛隊中央病院に行けと命じられた。
中央病院で彼女を迎えた院長、看護部長から「これを見てください」と、言われカルテを見せられた。だが、それには『防衛機密』というスタンプが捺されているだけで、住所等の必要事項が何も書かれていなかった。ただ1つだけ書かれていた事があった……。
黒川「伊丹耀司」
看護部長「そう。ここで経過観察することになった患者です。ですが、見ての通り何も書かれていません。貴方は見ず知らずの患者を名前だけで対応出来ますか?」
黒川「無理ですわ。『おつむは大丈夫ですか?一度脳ドックで調べて貰うことをオススメしますわ』と、申し上げる事でしょう」
院長と看護部長はその毒舌ぷりに若干ひいた。
無理もないだろう、第三偵察隊の人間ですら黒川の豹変ぷりに(毒舌)驚きを隠せないのだから。
環境は人を変える。たとえ短期間でも『特地』の戦場という環境に身を置けば人格に影響を与える。ましてや伊丹という個性豊かな人間の部下であったという経験は隊員に良くも悪くも多大な影響をもたらしていた。黒川もまたその一人なのだ。
そして彼女は悟ってしまった。『喰う 寝る 遊ぶ その合間にほんのちょっとの人生』だということを。
看護部長「私たちも、これじゃあ何も出来ないと。正直困りますと、言いました。そしたら、この患者をよく知るスタッフを送るからそれを使いなさいって、貴方が送られて来たんです」
黒川「なるほど、確かに伊丹二尉はわたくしの上司でしたから、ある程度は存じております。ですが、その程度で『よく知る人材』にされるのは遺憾ですわ」
看護部長「ですが、我々よりはマシです。正直我々では彼の看護というか管理というか……扱いはもう不可能でお手上げなんです。助けてください、この通り」
そう言って二人は頭を下げた。
黒川「どういうことですか?」
看護部長「彼の体内には異世界の謎の生物が寄生している可能性があるので隔離して観察するようにというお達しなんです。分かります?」
黒川は正気を疑うように怪訝な視線を向けた。
看護部長「私は正気です。正気のつもりですが少し、自分でも疑いたくなります。とは言え、特地に行っていた貴方なら、こちらではあり得ないような生物の一匹や二匹、向こうで見たのではありませんか?」
黒川「ええ、確かにそうですわ」
看護部長「でしたら、寄生生物がいてもおかしくありませんよね。本当に彼の体内にいるかは分かりませんけどね」
院長「……と言う訳で、彼の管理、監視をお願いしたいのです。よろしいでしょうか?」
黒川は二人の祈るような視線に負け、了承したのだった。
短くてすみません。
お読み下さりありがとうございました。m(__)m