みなさま、良いお年を。
「さてさて、みなさまみなさま」
パンパンと手を叩く翠の前には大勢のアイドルか横たわっていた。
「……翠さん、どうしてそんなに元気があるにゃ……」
「たかだかクリスマスイベをやっただけではないか。この間のハロウィンと一緒ぞ」
「……短い期間で密度の濃いことやってると疲れるよ」
なぜ、横たわっているのかといえば先ほど前川が言ったように、クリスマスイベを終えたからである。
面白おかしくしすぎたせいか、ハロウィンと同様……いや、それ以上に濃いイベントとなっていた。
そのためアイドルたちだけでなく、プロデューサーや関係者たちも多少の差異はあれど疲労の色が見えた。
「残念ながら、君たちに告げなければならないことがあります」
『…………聞きたくない』
「んな口を揃えて言わんでも……」
顔だけを翠に向け、ほぼ全員のアイドルが口を揃えて答える。
口調は少し悲しげであるのだが、翠の表情はものすごい笑顔を浮かべている。
「だが、伝えねばならぬのです。それが仕事なのですから……!」
意味もなくガッツポーズを決めながらそう声を大にし、ふははと笑い始める。
「言っとくが、ハロウィンとクリスマスなんて目じゃないほど忙しいよ。今年お世話になった346の大掃除と、年末の十二月三十一日に来れるアイドルだけでいいけど年越しライブやるから」
何をやるか聞かされたアイドルたちは誰も返事をしなかったが。
「…………はぁ」
「…………仕方ないわね」
「…………よっこいしょ」
声を出しながら各々立ち上がる。
「そういうことなら、やらないわけにはいかないじゃないですか」
「そうそう」
「翠さんが珍しくまともなことを言いましたね〜。来年は何が起こるのやら不安でいっぱいです」
近くにいる人たちでわいわいと話しながら、さりげなく翠をディスっていく。
自覚はあるのか、ときどき抉られるようなことを言われて『うっ……』と梅いたりしているが、そのようなことがあるたび、徐々に翠の口角が上がっていく。
「それほど口が開けるんなら、みんなまだまだ余裕だね。年越しライブの時間を伸ばそうか」
そういうや、何かを言おうとしていたアイドルたちを横目に携帯を開き、どこかへ電話をかけ始める。
どれだけ阻止したい気持ちがあろうと、仕事の電話を邪魔することだけはいけないということが分かっているため。
翠が電話をしている姿を指咥えて見ていることしかできないでいた。
「みんな、よかったね。許可がでたよ」
物凄くいい笑顔であるはずなのに、どこか威圧を感じる表情に。
アイドルたちは先ほどの行動を後悔していた。
「ちなみに、チミっ子たちは年齢と法律って枠にはまってしまったため……残念なことに残念だ」
両手両膝をついて項垂れながらそう言う姿を見て、チミっ子たちは内心で喜び。それに気づいた参加させられるであろうアイドルたちは羨ましそうな目を向ける。
しかし、続けられた言葉にチミっ子たちは肩を落とし、大人(笑)であるアイドルたちは犠牲者が増えることに笑みを漏らす。
「さっきの電話で年越しライブは三十一日の昼間から始めるように頼んだから。……時間まで、みんなで参加できるな!」
「い、今からそんな変更、よくできたね……」
「俺だもの」
『…………ああ』
たった一言であるが、妙な説得力に思考を捨ててみなは納得する。
「まー、なんにしても……イベント前日までは大掃除とレッスンやなぁ」
しみじみと呟いたセリフを聞き。これからのことを考えたのか、どこか悟ったような目をしたアイドルたちがそこにいた。
☆☆☆
大晦日まで。
「翠ぃぃぃい! 言った張本人が何サボってゲームしてやがるぅぅう!?」
「杏ちゃんも一緒にゲームしちゃメッ! だよぉ!?」
掃除をサボってゲームをしては見つかり。
「おぉい!? なんで毛布被って気持ちよさそうに寝てるんだよぉ!?」
「杏ちゃんもなんで一緒に寝てるのぉ!?」
サボって寝てるのを見つかり。
「ど、どうしてお茶してるんですか!? 私も混ぜてください!」
「かな子ちゃん!? 掃除に連れ戻すんだよぉ!? 杏ちゃんもお菓子食べてないで掃除しようよぉ!?」
お菓子食べてお茶飲んでるのを見つかり。
サボる度に毎回違うアイドルに見つかっては掃除に戻されていく。
毎度付き合わされている(付き合っている)双葉も諸星に見つかっては回収されていく。
……実際は業者の方が掃除してくれるのだが、翠が感謝の意を込めて多少は自分でするようにと言ったのである。
まあ、その本人がサボってるわけであるが。
レッスンも指導をするだけで自身はクッションに埋もれていたりする。
「さてさて、みんなが力を合わせたおかげで346も綺麗になり、清い心で大晦日のイベントに……」
「サボってたやつが何言うか!」
「詫びろ詫びろ!」
「お菓子が欲しいです!」
イベント前日。
一つのまとめとして皆の前に立った翠が言葉を発するが、全員からいろいろと言葉が投げかけられる。
主に、掃除をサボっていたことであるが。
「わかったわかった。皆の要望は大晦日から年明けのイベントが終わった後に聞いてやるから」
言質は取ったと、歓声が上がる。
その歓声が収まるのを待ち、再び口を開く。
「みんなの気合も十分のようだし、明日は大いに騒いで盛り上がって盛り上げて! いい年にしようぜ!」
『おおっ!』
翠が拳を天に突き上げるのに続き、みなも声を大にしながら拳を天に突き上げる。
☆☆☆
「残す時間も後わずか。みなさん、今年はどんな年だった?」
ステージの中央で。
翠は一人で立ち、観客に。そしてテレビの向こうで見ている人に語りかける。
「来年も悪い日、良い日とあるだろうが……俺は俺のまま、いってやろうじゃないの! ってことで残り十!」
「ちょい! 翠さんトーク下手ですか! わざとですか!」
ステージわきや他にも色々な場所から慌ててアイドルたちが出てくる。
「五!」
「四!」
『三!』
『二!』
『一!』
『Happy New Year!』
皆の声が合わさり、新年を迎える。
「それじゃみんなで新年の一曲目を歌おうか!」
有名で、ほとんどの人が歌詞を覚えている曲が流れ始める。
そしてアイドル全員、観客全員、ファン全員がそれぞれの思いを胸に、歌を口にする。
疲れているにもかかわらず。
このステージに立てなかったチミっ子たちもテレビを羨ましそうにして見ていた。
数年後には自分も一緒に立っていることを想像しながら。
☆☆☆
一月一日。昼。
イベントに参加したアイドル全員全員が346に集まっていた。
当然、チミっ子たちもである。
イベントに最後まで参加していたアイドルたちはそのまま打ち上げなどをして……寝ずにここに立っていた。
チミっ子たちも寝不足からか、時折目をこすっていた。
「みんな、悪いね」
そこへ呼び出した本人が現れる。
「あけましておめでとう。去年、みんなにとても助けられて嬉しかった。また今年も迷惑かけたり、いろいろと遊んだりするけど……今年もよろしく」
どこか照れたようにそう言う翠の姿を見て。
アイドルたちは呆けたような表情でポカンとしていた。
「え……なにさ、その反応……」
なんの反応もなく、翠は居心地悪そうに視線をせわしなく動かす。
アイドルたちはクスリと笑みをこぼし。
顔を見合わせてタイミングを計り、元気な声で。
『こちらこそ、よろしく!』
明けましておめでとうございます。
なんだかんだでここまで続くとは自分で思ってなかったり思ってたり。
話の途中でありました『一曲目』ですが、みなさんがデレマスのなかで好きな曲で。別にそうでなくても構いませんが。
今年もぐだぐだと間が空いたり空かなかったりの投稿かと思いますが、長くよろしくお願いします。
最近は新しく二次創作を書きたい欲求に駆られてますが。