怠け癖の王子はシンデレラたちに光を灯す   作:不思議ちゃん

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アニメ一期がアレで終了となります。2年弱かかってアニメ一期終了……計算したら月に2、3話(記念話などは除く)


通算UA二十五万突破記念話

「あー……暇だ。面白いネタも思いつかねぇ……」

 

 とある日。

 346内にあるカフェにて。

 翠は珍しく甘いコーヒーではなく、メロンソーダをストローで飲んでいた。

 

「ってことで、なんか面白いことやれ」

「お願いじゃなく命令なんですね……」

「ふふん! かわいい僕を見ているだけで退屈なんてどこか痛い痛いっ! アイアンクローは受け付けてません!」

「なんだなんだ☆ ボーナスでもくれるのか☆」

 

 バイト中であるのだが、店長の許可は取られてあるため逃げられない安部。そして仕事が終わって戻ってきたところを捕まった輿水と佐藤。

 

 夏の暑さが続く中、約束もあって奈緒にこき使われている翠は仕事でクタクタであった。

 そのため、疲れているから頭が働かない。

 面白いことが思いつかない。

 なら、面白い人に面白いことして貰えばいい。

 ということで、偶然にしても面白いたちがこうして集まっている。

 

「そうだな……しゅがは。俺の退屈を吹き飛ばしてくれるなら払ってやってもいい」

「お☆ マジか☆」

「そ、それって私たちも貰えるんですかっ!?」

「別に金じゃなくてもいい。ようは出来る限りのことでなんでも1つ言うことを聞いてやる」

「それならこのかわいい僕の楽勝ですね」

「俄然やる気出た☆」

「菜々も頑張っちゃいますっ!」

 

 初めは嫌そうな顔をしていた安部だったが、思わぬ報酬にグッとこぶしを握る。

 

「いや、ちょっと待て」

「どうかしたんですか?」

「お金払わないとかなしだゾ☆」

「かわいい僕の魅力に勝負は決まったんですよ!」

 

 いざ、始めさせようとしたところで。

 翠は待ったをかけ、どこかへと電話をかけ始める。

 

「奈緒。俺なんだがさ。……うんうん。……面白いこと思いついて。あ、ちょっと待って」

 

 3人が電話をしている自分に注目しているのに気づき、ジェスチャーで座って待っているように伝えると席から離れ。

 そしてチラチラと3人に目を向けながら奈緒と会話を続ける。

 

「お待たせお待たせ」

 

 それから15分と、短くない電話を終えた翠がようやく戻ってくる。

 1分後には待つのに飽きていた3人。各々好き勝手に注文し、安部がお菓子や飲み物を運んで軽い女子会を開いていた。

 

「先ほどの話だが、全員に金をやろう」

「本当ですかっ!?」

「それマジか☆」

「かわいい僕にはなんだか嫌な予感がするのですが」

 

 さすがと言うべきか、これまでからかわれてきた輿水は翠の笑顔を見て不安を胸に抱く。

 であるのに、同じく今までからかわれてきた安部は金に意識が向いて気がついていない。

 この差は果たしてなんなのだろうか……。

 

「だが、それは今じゃない。また後日に連絡入れるから、その時によろしく」

 

 先ほどまでの怠そうな雰囲気は何処へやら。メロンソーダを飲み干し、伝票を手にろくな説明もなく。会計を済ませてさっさと何処かへ行ってしまった。

 

「ねえ、2人とも。なんだか嫌の予感がするのは気のせいだよな☆」

「かわいい僕も嫌な予感しかしないです」

「菜々もです……。さっき電話してたのも奈緒さんですよね……」

 

 顔を見合わせた3人はため息をつく。

 そんな姿であるが、何処と無く楽しそうに見えるのは……きっと、気のせいではないだろう。

 

☆☆☆

 

「それで、面白いことってなんだ」

「本当はもっと大きなことをやりたかったんだが時間とか準備とか間に合わないからまた今度にして。面白いことは面白いことよ。主に俺にとって」

 

 翠が向かった先は奈緒のデスクであった。

 他にも何人かプロデューサーが作業しているが耳は翠と奈緒に向けている。

 

「また、俺による俺のための企画をやろうかなと」

「自分のためだと言うのに数字が取れるのが腹立つが……まあ、話を聞こう」

「さっきまでカフェで暇してたからウサミン、かわいい僕、しゅがはに面白いことをやってもらおうと思ってたん」

「なら、今からでも仕事いれるか?」

「それは遠慮しとく」

 

 手帳を開いて何処かへ電話かけようとする奈緒をマジトーンで止めた翠。そのまま勝手に引き出しを開け、そこにしまわれてあった棒付き飴を食べ始める。

 

「そんでさ。やってもらおうとした瞬間、思ったわけよ。反応の良いやつ集めて絶叫ツアー」

「ふむ……誰を集めるか決めているのか?」

「取り敢えずさっきの3人は確定として、美嘉、駄猫、の5人で十分かな。これ以上増やしても1人の見せ場減って微妙になると思うし」

「それぞれのプロデューサーとテレビ局に連絡はしてやる。何やるか決めとけよ」

「ふふん。もう半ば決まってるもんね!」

「なら、それをまとめておけ」

「あいあい」

 

 席を翠に譲った奈緒はどこかに電話をかけながら歩いて行ってしまった。

 残された翠は奈緒のパソコンに触れ。考えていた案とやらを書き出していく。

 

 書いている途中で浮かんだ案もどんどんいれていき、ふとした時にいらないなと思った案を消していく。

 それが何回か繰り返され、案がまとまる。

 あとはそれぞれにどれだけ時間がかかるか、必要なもの、順番はどうするかを考える。

 

 奈緒が戻って来る頃にはそれらも仕上がっており、プリントに印刷して手渡す。

 

「んで、どうだった?」

「特に問題はないな。これも後で常務に持っていくとして、プロデューサーにも話は通してある」

「他のアイドルと共演でバラエティーって伝えてある?」

「ああ、大丈夫だ」

「ふふふ、今から楽しみだ」

 

 楽しそうに翠が笑った時。出演が決定してしまった5人がクシャミをしたり辺りを見回したのは偶然であろうか。

 

☆☆☆

 

 数日が経ち。増えた仕事に文句を言いながらもこなしていった翠の待ちに待っていた日がやってくる。

 

「5人ともテンション低いけど大丈夫?」

「みく、Pちゃんにバラエティーの仕事って聞かされた時は疑問しかなかったけど……ものすごく納得したにゃ……」

「あたしもバラエティーの仕事なんてほとんど無いから珍しいなって思ってたけど……こういうことかー……」

「やっぱり、かわいい僕の嫌な予感は当たるんですね……」

「もう、お金が欲しいなんて言いませんから菜々はお家に帰りたいです……」

「はぁとも帰っていいかな☆」

「お前ら、仕事だよ? お金もらえるんだよ? なら、よろこんで体張ろうぜ!」

 

 テンションの低い5人とは対照的に翠のテンションは高く、今にも走り出しそうな雰囲気があった。

 

「それと、すでにカメラ回ってるから」

「んにゃっ!? そういうことは早く言うにゃ!」

 

 それなりに重要なことをさらりと言う翠に5人は文句を言うが、誰も取り繕うとしない。

 

 このようにしていつの間にかカメラを回されているのは何回かあり、カットされることなく放送されたりしているのだが、素のアイドルが見れたうえ、それが好印象に繋がるといったことがあったため。

 初めは文句を言っていた(一部の)アイドルたちであったが、ファンや仕事が増えたために微妙な表情をしていた。

 

「取り敢えず、翠さんが考えた企画だってのはみんな理解した」

「目隠しして車に乗せられた時点で半ば確定でしたけどね……」

「かわいい僕もそこは納得したからいいんですけど……」

「1つ聞きたいにゃ……」

「ここはどこだ☆」

「見て分からんか? バンジーだ」

 

 現在、とある吊り橋の上。

 そこで5人は横一列に一定の間隔をあけて並んでいつでも飛べるような状態でいた。

 頭にはヘルメット。そこから顔が見えるようにカメラがあり、手には押すと『ピンポンッ』といった音とともに解答権が得られるあれが持たれていた。

 

「簡単に説明すると、今から問題を出します。1問につき時間は大体俺の感覚。答えを間違えればバンジーしてもらいます。正解したら他の4人がバンジーします。時間が来たら全員バンジーしてもらいます。場所はここだけじゃなく、いくつか回ってやっていき、一番正答数が少ない人には罰ゲーム待ってるんで、そこんとこよろしく」

「んにゃっ!?」

「マジか☆」

「そんなの聞いていないですよ!?」

「それあたしの代わり他にもいたよね!」

「菜々はお家に帰りたいです……」

 

 今回の企画についてだいぶ端折られながら説明を受けた5人の反応は大体似通っていた。

 しかし、面白いことをするのに何もしないわけもなく。

 

「取り敢えず、みんなは1度体験しとくといいよ」

 

 翠のセリフとともに、1人に1人、バンジーのスタッフが近づく。

 

「慌てると事故るんで、大人しく飛べ!」

 

 意味をすぐに理解できない5人はスタッフに誘導されるまま足を踏み出し、大人しく落ちていく。

 

 女の子らしい悲鳴から始まり、アイドルとしてどうかと思われるような悲鳴まで。

 顔を映すカメラはリアルタイムで近くにあるテレビ画面で見られるようになっており、翠はそれを見ながら悲鳴を聞いて腹を抱えながら笑っている。

 

 改修が終わった5人は初めと同じ位置に立たされる。

 

「それでは第1問」

 

 落ち着く時間も与えず、翠はどんどん進めていく。

 

「元素記号でHは水素。Oは酸素。ではH2Oは何でしょう」

 

 ピンポンッと安部が回答権を得る。

 いじられ続けたためか、復帰が早かったようである。

 

「二酸化炭素ですっ!」

「さよなら」

「ああああぁぁぁぁあ〜っ!!!!」

 

 自信満々に答えたものの、間違えるといった期待を裏切らない展開に翠は大喜びである。

 

「はい、時間切れです」

 

 セリフの一瞬後に4人からピンポンッと音が聞こえてくる。

 

「ちょっ、早すぎないかにゃ!?」

「言い忘れてたけど、時間じゃなくて回答人数で締め切る時もあるから。……ってことでいってらっしゃーい」

 

 文句を垂れる4人だが、翠の宣告とともに落とされる。

 

「正解は水でした。こんな簡単な問題をみんなは間違えるなよっ!」

 

 皆が引き上げられた後、カメラに向かって決めポーズをつけながら答えを言い、次へと移る。

 

「第2問! 時速5キロで進むと1時間かかる道があります。30分で行くには時速何キロで進むといいでしょう!」

 

 ピンポンッと音が響き、前川が回答権を得る。

 

「時速10キロにゃっ!」

「はいはい。正解正解」

「なんか冷たくないかにゃ!?」

 

 そんなやりとりがある間にも答えられなかった4人は絶叫しながらバンジーしていた。

 

 

 

 その後も3問ほど出題され、正解したのは前川が1つ、輿水が2つであった。

 現在5問のうち、前川と輿水で2つずつ。解答なしが1つである。

 撮影を始めてから30分ほどしか経っていないが、現在移動を始めていた。

 5人は当然向かう先を知らないが、先ほどまでのバンシーで疲れ果てていた。

 

「よし、お前ら。服を脱げ」

 

 続いてやってきたのはとあるプールであった。

 あらかじめ、当日には服の下に水着を着てくるよう言われていたため、言われた通り脱いでいくが……カメラが回っているのに躊躇いがないのを見て翠は少し引いていたりする。

 

 そして翠を先頭にプール内を歩いていくが、5人はあるものを目にして思いため息をついていた。

 

「さっきと同じ条件だが、今度はバンシーではなく、ほぼ90度のウォータースライダーだ」

 

 本来ならばすべてを貸し切りにして撮影するわけであるが、夏の楽しみを奪うわけにはいかないと。

 使用するウォータースライダーだけを貸し切りにしているため。周りには人が大勢おり、翠やアイドルの登場に人が集まってくる。

 

「見ててもいいが邪魔にならないよう離れて。この番組の放送日はそのうち発表あるから」

 

 プールに遊び来ていたはずであるが、ほぼ全員が言われた通りに離れたところから翠たちのことを見ていた。

 

「さて、気を取り直して始めるか」

 

 そこでもバンシーの場所で出題されたのと似た傾向であり、中学や高校の入試問題に出るような内容であった。

 ウサミンならぬアホミンがアホな解答をしたり、現学生である前川や輿水が凡ミスしたりなどあるが、順調に皆は正解してポイントを重ねていた。…………1人を除いて。

 

「なあなあ、カリスマギャルさん? あなた、もしかしてお馬鹿様だったりするのでしょうか?」

「みんなが早いだけであたしも答えわかってるよ!」

「また場所移動したら最後の1問だけど……絶対に正解しろよ?」

 

 最後の場所はだだっ広い草原であった。

 近くにヘリが止まっており、彼女たちは罰ゲームとやらの予測を立てる。

 

「さてさて。次で最後の問題ですが、少し説明が」

 

 わざと勿体ぶった話し方をする翠に5人は内心で急かすが、それを表に出したりしない。

 なぜなら、そんな事をすれば自分がどうなるのか、大方予想がついてしまうためである。

 

「前にもこんなことがあった気がするが、主に1名様のおかげでポイントがだいぶ離れています。なので最後は少し変則ルールで」

 

 半ば罰ゲームが決まった姉ヶ崎を除いた4人は今のを聞き、不安でいっぱいになった。

 大事な場面で勿体ぶった話し方をするとき、それはすなわち皆が平等に翠のオモチャになる時だ。

 

「美嘉が正解したら全員のポイントを均します。小数点になろうと5人でポイントは均等に分けられ……全員でスカイダイビング! んでもって、他の4人が正解したら美嘉だけがスカイダイビング。正解した人が優勝で」

「あたしはどっちにしても飛ばなきゃいけないのね……」

「道連れ、いた方が楽しいぞ? 主に俺とか、視聴者とか?」

「その提案に乗るのもアレだけど……1人で飛ぶよりはいいかな?」

「は、はぁとは飛ぶの、遠慮しとく☆」

「菜々も飛ぶのは遠慮したいかなぁ〜と……」

「ミクだって嫌だにゃ!」

「かわいい僕は飛んでいてもかわいいままですが……え、遠慮しておきます」

 

 特別ルールのせいか、最後の罰ゲームのせいか。はたまた両方か。

 皆のやる気は今まで以上に高まっていた。

 

「あ、説明し忘れが」

 

 高ぶって来たところで止められ、文句言いたげに5人は翠を睨むも本人は気にした様子がなく、ニコニコしている。

 

「美嘉が正解した場合、点数が横並びだからみんな罰ゲーム受けるけど、同率1位でもあるわけだから、その後にご褒美あるよ?」

『…………えっ』

「最終問題! 三角形の内角の和は180度ですが、二十三角形の外角の和は何度でしょう!」

 

 ピンポンッという音が響き。

 解答権を得たのは。

 

「360度にゃっ!」

 

 前川みくであった。

 

「正解正解。おめでとー」

「どうしてみくのときだけ反応が冷たいのにゃっ!?」

「いやさ、ここは空気読んでみんなで空を飛ばない? その後にご褒美貰えるんだから……なあ、美嘉?」

「…………」

「おい、まさか今の問題……」

「…………分からなかった」

 

 なんとも言えない雰囲気になってしまったが、罰ゲームとして姉ヶ崎がスカイダイビングをするため。ヘリに乗ったのだが……何故かそこには輿水も乗っていた。

 本人も訳が分からないらしく、『えっ……えっ?』と困惑していた。

 

「最終問題の前に飛んでもかわいいままって言ってたから飛んでもらおっか」

 

 と語るのは翠であった。

 

 面白い絵が撮れたことに翠は満足し、前川には翠の弟である碧の作るスイーツ1年分が送られた。

 そしてそれは当然、他のアイドルに知られるや前川の元に集まり。1年どころか1ヶ月も持つことなく無くなったのである。

 

 ……前川の知らないところでご褒美を吹いて回った翠がいたとかいないとか。

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