作者『あっはっはwまっさかーw………マジやん』
なんてことがあったりもしました。18位にありましたね……どうりでお気に入りも伸びたわけやわ……
「リハ、一回ぐらいしかできないが……問題無いか」
「平気平気。むしろやらなくていいよ、うん」
会場へと到着した二人は、先ほどまであった車内の雰囲気はそこになく、いつも通りであった。
他の人たちはすでにステージ衣装へと着替え終えており、未だに私服でいるのは翠ただ一人である。
「いっそのこと、この格好でいっちゃう? いっちゃう?」
「冗談言ってないで早く着替えてこい」
「うぃうぃ。あ、その前にちょっち挨拶してこよ」
てってけといった擬音が合いそうな走り方をして目的の楽屋へと向かう翠。
だが、すぐに奈緒のもとへと戻ってくる。
「どうした?」
「場所、分かんね」
「…………はぁ」
翠は奈緒の背に飛び乗り、目的の場所を伝えて運んでもらう。
「よっす。三人とも」
訪れた場所は城ヶ崎に気に入られてバックダンサーとなった島村たち三人だ。
ドアの前に奈緒を待たせ、ノックもなしに翠がドアを開けて入っていくと着替え中だった――――なんて事もなく、沈んだ表情で座っている三人が出迎える。
ドアの音に反応して顔を向けるが、そんなことでテンションも上がるはずなく。
「あ、翠さん……」
「ごめんなさい……挨拶に行かなくちゃいけないのに」
「…………」
「午前中はやる気満々って感じだったのに、緊張してる?」
翠が声をかけても弱々しく頷くだけであった。
「別に気にすること無いのに」
「でもっ! ……私たちのせいで美嘉ねぇのライブが失敗したらどうしようって……!」
「それは美嘉の責任だろう」
『…………!』
あっけからんとして切り捨てる翠に三人は驚いた表情を向ける。やり方は強引だが、三人に少し元気が戻ってきたことを翠は内心喜ぶ。
「美嘉がお前らを選んだんだ。失敗なんて気にしてんなよ。楽しまなきゃ損だろ? 何のためにいままでレッスンやってきて、振り付けを覚えてきたんだ」
「…………でも、やっぱり心配です」
「そんなら一つ、先輩である俺が緊張をほぐす方法を教えてしんぜよう。何人もの人に教えてるけど、未だに使ってる人いるから」
手のひらを合わせ、にっこりと嬉しさを表現するように笑顔を浮かべながら続ける。
「ステージに上がる前、掛け声として好きな食べ物を言う」
「それだけ……ですか?」
「当然、笑顔を忘れるなよ? しかめっ面とかもってのほかだ」
もっと実用性のあるアドバイスだと考えていたのだろう。狐につつまれたような表情をして互いに顔を見合わせる。
「さっきも言ったと思うけど、振り付けを完璧に覚えてきたんだろう? 楽しまなきゃ損だ。失敗なんか気にしてんな」
背伸びをして一人ずつ頭に手をポンと置いていく。
そして、用は済んだとばかりに、たったかと部屋を後にする。
残された三人は翠の手が触れた部分に手を伸ばして触れる。
「…………ふふっ」
「…………あはは」
「…………クスッ」
もう一度三人は顔を見合わせて、笑みを浮かべる。そこには先ほどまで感じていた不安など、初めからなかったかのように。
「あ、……ライブ、始まっちゃってますね」
「本当だ」
「それじゃ二人とも、いこっか」
☆☆☆
「確か、直前になって小日向美穂が教えたんだっけ。だいぶ弄ってるから念のためにと俺がやったけど……心配なかったかな」
翠の目の先にはライブの様子が映されているテレビがあり、そこには城ヶ崎の後ろでミスする事なく楽しそうに笑顔で踊る三人の姿があった。
「九石、そろそろ準備しておけ」
「大丈夫大丈夫。奈緒は心配せずに今まで通り、近くで見ていてよ」
「…………ああ」
「んじゃ、いってきまー」
最後に、と言って翠はスタッフに用意してもらったチョコレートやクッキーをいくつか手に持ち、ステージへと向かう。
「お疲れ様、三人とも」
翠がステージ脇につくのと、ダンスを終えて三人がステージから降りてくるのは同時であった。
未だ冷めぬ興奮のようで、目をキラキラとさせながら楽しかった、凄かったと翠に詰め寄って感想を口にする。
「もうすぐライブも終わるけど、体を冷やさないようにね。俺もそろそろ出番だから」
「あっ、すいません!」
「また後で話、聞いてもらうから!」
「私も」
「おけおけ。んじゃ、美嘉もはけたようだし、行ってくんね」
三人に手を振って翠はステージへと上がっていく。
「あれ? 翠さん、手にお菓子持ったままじゃなかった?」
「……私もそう見えた」
「は、はい。私もです」
急に現実へと引き戻された三人は、首をかしげる。そこへタイミングよく武内Pが駆け寄って声をかける。
「みなさん、お疲れ様でした」
「あの、プロデューサー。翠さん、お菓子を手に持ってステージに……」
「……はい、よくある事です」
島村の疑問に、手を首に当てながら答える。その表情からは諦めが見える。
『やあ、暇人ども。こんなに集まっちゃって……』
「みなさん、楽屋に戻りましょう。そこで翠さんのライブを観ていただければ」
ステージから聞こえてきた翠の声に三人はそちらへと顔を向けるが、武内Pに促されて早足に楽屋へと移動する。
☆☆☆
「まったく。お前さんらが支えてくれるのは嬉しくないと言えば嘘になるけど……いい加減引退させてよねー」
翠はステージに立つとダンスを見せたり歌ったりするわけでもなく、トークを始める。
先ほどの言葉に大反対であるファンたちは一斉にブーイングをする。
しばらく鳴り止まないブーイングに、分かった分かったとばかりに両手を広げてそれを止めさせる。
「ほんとさー、こんなオッサンのダンスなんか見て楽しい?」
今度は拍手やら口笛が会場一体となって響き渡る。
「まあ、別にいいんだけどさ。それよりも後輩たちのライブはどうだったかい? 楽しかったと思うけど、そんな時間もそろそろ終わり」
誰一人として音を立てず、翠の言葉に耳を傾ける。
噴火する直前の山のように。はたまた破裂寸前の風船のように。ファンはふつふつと胸の内に熱い想いをためていく。
「最後にみんなで盛り上がろっか――――『煌めく星の夜』」
翠が曲名を言い、イントロが流れ始める。そして始まりそうになった時、観客も胸の内へとためにためた想いを解き放とうとした瞬間――――。
「あ、お菓子食べてないからまだ待って」
本来であればあのまま翠は歌い始めているはずなのだが……マイクを入れたまま持ってきたクッキーを一つ口に運んで音を立てながら食べ始める。
「いやさ、手に持ってたのすっかり忘れててさー。そんなに怒らんでもいいやん……」
盛大な空振りをくらった観客たちは『早く歌えー!』や、『責任とって脱げー!』など、好き放題に叫んでる。中には野太い声も混ざって『結婚してー!』や、『一晩でいいから泊まりきてー!』など、翠の貞操の危機になるようなことを叫んでる輩もいるが、それを気にした様子は見せない。
「それじゃ、お詫びとして新曲でも歌う?」
本来、予定にないはずのことを言い始めた翠にスタッフは慌てるが、そんなことはお構いなしに会場は盛り上がっていく。
「まあ……そんなの無いんだけど」
悪びれた様子もなく観客をからかってはチョコを口に入れてケラケラと笑う翠。観客たちもを好き放題に叫びながらも笑顔を浮かべていた。
「さて、それじゃそろそろ真面目に歌わないと。夜道に後ろから刺されそうで怖いし」
ステージを移動して中央ステージへと立つと、今度こそ真面目に歌うぞーと言って両腕をだらんと下げる。
それに合わせて照明もおち、翠を淡く照らしだす。
「そんじゃ、最初の曲はさっきも言った通り――――『煌めく星の夜』」
☆☆☆
「あぅあ……疲れた」
ライブも終わり、奈緒に送ってもらっている車の中で翠は脱力していた。具体的には後部座席全てを使って横になり、毛布にくるまっている。
「さすがだったぞ」
「そりゃ、ね」
疲労からか、眠たげに目が半分ほど閉じており、しばらくすれば寝てしまいそうであった。
「翠、そろそろ降りる準備をしてくれ」
「……………………」
「…………翠?」
もうすぐ着くからと、降りる準備をしてもらうために声をかけた奈緒だったが、返事が無いため耳をすますと、微かに寝息が聞こえてくる。チラリとバックミラー越しにそれを見た奈緒は呆れてため息をついた後、悲しげに顔を歪ませる。
「……………………はぁ」
何か堪えていたものを吐き出すようにため息をつき、目的地に着いたため車から降りて眠る翠を起こさぬように背負う。そして翠の部屋へとつき、ベッドに寝かせて毛布をしっかりとかけた奈緒はリビングへと移動し、冷蔵庫から缶ビールを一本取り出す。
「…………何も、無いな」
プシュッと小気味良い音を立てて開けた缶ビールを一口飲み、周りを見回してつぶやく。
三人掛けのソファーにテーブル、テレビ。食事をするためにある四人掛けのテーブルとイスが四脚。人をダメにするクッション。
他に観葉植物や小物が一切無いために、どこか虚しさを漂わせている。
「私じゃダメなのだろうか」
一本飲みきっただけで奈緒の顔は赤くなり、見てわかるほどに酔っ払っている事がわかる。
ソファーにぐでっと体を預け、顔を埋める。
「何がいけないんだというのだ。中学からずっと一緒にいるというのに……。近くで見守ってきたというのに……。一向に心を開いてくれないではないか」
その後も散々に愚痴を言いつづけていたが、一時間も経つ頃には寝息が聞こえてくるだけとなっていた。
☆☆☆
「…………奈緒、何してんの?」
「…………頭痛い」
翌日、寝るのが早かったからか早起き(現在の時刻――九時)した翠がリビングに行くと、ソファーで寝ている奈緒がいた。
声をかけると、奈緒は普段の翠のように目をこすりながらのそりと上体を起こしたかと思うと頭を手で押さえる。
「酒弱いって分かってるのになんで飲むかなー」
「…………ちょっとな」
珍しいことに、翠が自ら動いて空き缶を片付けてコップに水を注ぎ、奈緒に手渡す。
礼を言って受け取った奈緒はそれをゆっくりと飲んでいき、ホッと一息つく。
「今日は何もなくてよかったね」
「いつもライブの翌日は休みだろう」
「そかそか。俺はちょっと346へ遊びに行ってくるよ。後は好きにしてて」
そういうと翠はリビングから出て行った。
一人残された奈緒は呆然とその後ろ姿を目で追っていた。いつもであればこの時間に起きている事がまずない。下手をすれば一日中寝ていた時さえある。それがどういうことか早起き(九時)をして遊びに行ってくる? 奈緒はこれを夢だと思い、再びソファーへと横になり目を閉じる。
☆☆☆
「たぶん、今日のはずなんだよな」
今日も今日とて髪を後ろで一つにまとめ、帽子をかぶって伊達メガネをかけた簡単な変装で346に歩いて向かう翠は、誰に向けたわけでもなくつぶやく。
「およ? ……あれはあれは」
翠が住むマンションと346の間にある公園。日曜ということもあり、親子連れやのんびりする人がいる中で見知った顔を見つけた翠は、バレないように後ろからそっと近づいていく。
「ふむ、グリモワールも魔力で満たされたか。新たなるものへと変える時がきたようだ」
「ほうほう、絵が上手いですな」
「へ…………ひゃぁぁあ!?」
ベンチに座り、グリモワール――スケッチブックを開いていた神崎の肩越しにそれを見て、翠が感想をもらす。
そこでようやく背後に誰かいることに気付いたのか振り返り見て、驚きの声を上げながらベンチからずり落ちる。
「大丈夫?」
「わ、我は不死身ぞ……感謝する」
助け起こしてもらったことに礼を述べる。一応は変装をしており、神崎も未だに翠だと気がついていないため、上からの物言いとなっているが。
「グリモワールを覗き見たな……?」
「うん。見たね」
「わ、我が名は――――」
「神崎蘭子だよね?」
「ま、真名を言うなぁ!」
神崎が座っていたベンチへと座った翠は、警戒してか向かい合ったままスケッチブックを庇うように立っている神崎をからかってクスクスと笑っている。
「や、面白くて可愛いね。らん……神崎は」
「あ、アナタはアカシックレコードでも持っているというのか……!」
「いや、普通に知り合いだからだよ」
「私と……?」
「……いまなら誰も見てないね」
周りを見回して誰も注目していないことを確認した翠は、一瞬だが帽子と伊達メガネを外す。誰にも見られていないからといって、長いこと外していると人も多いから見つかる可能性が上がるため、またすぐにメガネをかけて帽子をかぶる。
「ほら、隣に座ったら?」
「…………はい!」
正体が翠だと知るとしばらく呆然と立ち尽くしていたが、声をかけられて満面の笑みを浮かべながら頷き、ベンチの一番端へと腰掛ける。
「もう少し近づいたらいいのに」
「そ、そんな……」
「それに、話し方もいつも通りでいいよ?」
「いえ、それは……その……」
優しく微笑みながら神崎に色々と問いかけていく。その度に顔を赤くし、手をワタワタさせているため、翠はそれを見てほっこりとしている。
「まあ、無理強いはしないさ。それよりも、まだ346に行かなくていいの?」
「は、はい。午後からなので」
「昼はどうするの?」
「みんなと……その、食堂で食べようって」
「そかそか。なら俺もご一緒させてもらおうかな?」
「ほ、ほんとですか!」
一緒に昼を食べようと言っただけでものすごく喜んでいるが、いかんせんその距離は遠い。
「まだ時間あるし……グリモワールでも見せてもらおうかな?」
「…………だ、ダメです!」
一瞬、悩んだ神崎だったがスケッチブックを抱え、少しでも遠ざけようと翠に背を向ける。
「冗談だよ。それよりもいい天気だ。……眠くなってくる」
今日は日差しも強くなく、心地よい風も時折吹く。いま座っているベンチも木陰であるため、まだ暑くなる前のこの時間帯はとても過ごしやすく、眠気を誘う。当然、それに翠が抵抗できるはずもなく。しばらくすると寝息が聞こえてくる。
「…………えっと」
ほったらかしをくらった神崎はどうしようかと考えたが、手に抱えていたスケッチブックをしまい、真新しいスケッチブックを取り出す。
「~~♪ ~~~~♪」
鼻歌を歌いながら絵を描き始める神崎。モデルはすぐそばで寝ている翠だ。
二人の顔立ちがとても整っており、寝ている翠とそれを
いつのまにやら、神崎が座るベンチから一定の距離をあけて囲うように人垣ができており、中には撮影している人たちまでいる。しかし、携帯のカメラではその幻想的な雰囲気を撮ることはできないのか、納得のいかない顔をして削除している。
「…………おや?」
また新たに一人の初老の男性が足を止める。人垣の間からベンチに座る二人を見て嬉しそうに微笑んだあと、どこかへと電話をかける。
数分後、ベンチの真正面にいた人たちは左右に分かれ、ことの成り行きを見守っていた。
「本当にいいんですかね?」
「あとで私からきちんと説明しておくから」
初老の男性――今西部長がカメラマンを呼んだのだ。
『お願いしますよー』とぼやきながらもシャッターをきっていく。そしてカメラの性能と撮った人の腕がいいのか、カメラマンと今西部長が納得のいく写真が撮れたようだ。二人で顔を見合わせて頷き合っている。
「…………できたっ!」
「…………んぅ」
そこでタイミングよく神崎が絵を完成した声をあげ、翠がそれに反応して薄く目を開ける。
「な、何事!?」
満足気にスケッチブックの絵を見ていた神崎だが、視線を感じてか周りに目を向け、いまの状況を理解するや否やスケッチブックを抱えて立ち上がり、注目されている恥ずかしさからか頬を赤くしている。
「…………ん?
「す、翠さ…………いま、名前で……!」
「…………」
未だに周りを見回してないために状況を理解していない翠は、まだ眠いのか目を閉じて頭を揺らしながらも神崎のことを名前で呼んで問いかける。
名前で呼ばれたことに気付き、目を輝かせて喜びをあらわにする神崎。だが、それとは対照的に目を閉じたままでいるが、動きを止めた翠から”やらかした”といった雰囲気が出ている。
「二人とも、ここを移動したほうがよさそうだよ?」
「…………今西さん? 移動って……なんでこんな人いんの?」
そこに今西部長が近づいていき、二人に声をかける。
ようやく顔をあげた翠は、周囲の状況を把握して首をかしげる。だが、今西部長に急かされて翠は仕方なく立ち上がり、片付けを終えた神崎も名前を呼ばれた喜びの余韻に浸りながらも後につづく。
「そんで……どうしてあんなに人いたん?」
「簡単に説明するとだね、二人の姿がとても絵になっていたからかな?」
「あー……なるほど」
想像してなんとなく理解したのか、納得といった様子で頷く。それほど距離も無いため、十分も歩かないうちに346へとつく。用があるという今西部長と分かれた翠と神崎は食堂へと向かった。
今更ですがこの作品は一応、アニメ二期まで頑張ります
その後も考えていますが、作者の気力次第ですかね?