怠け癖の王子はシンデレラたちに光を灯す   作:不思議ちゃん

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時系列的にはアニメ後ですな


息抜き 前半

 場所は346内にあるカフェ。

 いつものように甘ったるいコーヒーを飲む翠と、対面にはパソコンをいじる奈緒の姿が。

 

「なー、奈緒さんや。最近はヒマですよな?」

「お前がさらに仕事をしなくなったからな。そんなにヒマならば今からでも仕事を入れられるが? ん?」

「奈緒、そういうことじゃあないんだよ。これから面白いことをしに行こうといった提案ではないですか」

「知らんがな」

 

 何かを企んでいるのか、ニヤニヤと笑みを浮かべながら話しかけてきた翠に、パソコンをいじる手を止めた奈緒は疲れたようなため息をついてブラックコーヒーへと手を伸ばす。

 

「…………それで、今度は何を企んでる?」

「いやいやいや、企んでるだなんてそんな。……ただ、ケーキバイキングがある店をかな子と智絵里が取材するらしいから、さ」

「なるほどな。……お前がメールで『大事な話がある』とか送ってくるかと思えば、やっぱりこういったことか」

 

 全てを話さずとも翠が何をしたいのかを理解した奈緒はパソコンを閉じてカバンへとしまう。

 

「まだ待ち人が来てないから大丈夫だけど?」

「…………お前一人じゃないのか」

「そりゃあ。情報提供は俺だが、発案も俺だし」

「お前じゃないか」

「そこに気づくとは……!」

 

 大げさなリアクションをとる翠だが、そのことに対して一切触れずコーヒーを啜り、翠の言う待ち人が誰かを考え始める。

 奈緒の反応に、つまらないと抗議の声を上げ始めた翠を鬱陶しく思ったのか。カバンからアメ玉を数個掴んで放り投げる。

 それらは綺麗な放物線を描いて地面へと落ちる……ことはなく。

 頂点へと達する前にそれは何処へと消えた。

 

「…………」

 

 視線を下へと向けると、そこには手にアメ玉を持って笑みを浮かべている翠の姿……ではなく。

 

「うぎぎ……は、離さないかなぁ……!」

「こ、……れらは俺んだ……っ!」

 

 人影がもう一つ増えており、二人は器用にアメ玉の袋の両端を持って引っ張り合っていた。

 

「翠、さんは……、他の全部とったから……! 一つくらい……!」

「ふっ……、それは、ムリィ……っ!」

「やめんか」

「んぁ……」

 

 膠着状態にあったが、奈緒が介入することでそれは終わった。

 腰に手を回されて奈緒に抱きかかえられた翠はものすごく残念そうな声を漏らし、双葉の手に渡ったアメ玉へと目を向ける。

 

「んで、翠の言ってた待ち人は双葉のことか?」

「ん、そうだよ。取材の二人とユニット組んでたじゃん? ちゃんとできてるか心配なんだって」

「べ、別に杏はそんなんじゃ……」

 

 否定してはいるものの、その目は泳いでおり、誤魔化そうとしているのは誰の目にも明らかであった。

 

「あと、ヒマそう(・・・・)な人に声かけた」

「……翠さんの言う『ヒマそう』って、本当に予定がない人にしか声かけてないと思うんだけど」

「もしくはわざわざ仕事先まで電話かけて予定を取り下げたりしているな」

「「…………」」

「ヤダなぁ。そんな見られると照れるって」

 

 白い目で見られているというのに翠は気にせず甘いコーヒーへと手を伸ばす。

 カップを持ったところで一言ボケるが、それによってさらに冷たくなった視線から逃げるようにコーヒーを啜る。

 

「お、お待たせしましたっ!」

「ん、大丈夫大丈夫」

 

 翠が振り返った視線の先にはいつものゴスロリではなく、白のフリルを基調としたワンピースを着た神崎が立っていた。加えて髪型もおろしてストレートとなっているため、双葉と奈緒は一瞬誰だか理解できなかった。

 

「待ち人も来たし、行こっか」

「それは私もか?」

「え? 行かないの?」

「…………私もなんだな」

 

 諦めのため息をつく奈緒に、神崎と双葉は同情する。

 346に所属するものはアイドル、プロデューサーなど関係なく翠の被害に巻き込まれるため、アイドルだけ、プロデューサーだけの繋がりではなく、346として一つの意識となっている。

 それは新しく入ってきた人たちも例外ではなく、翠の洗礼を受けたものは皆、受け入れられていく。

 そのため、業績などが右肩上がりになっていたりするが……それは誰もが認めたくはない事実であった。

 

「奈緒、車出せる?」

「元からそれが目的だろうに」

「いいじゃんいいじゃん。いつものことだし」

「確かにそうだな……お前に言われると腹立つな」

「酷い酷い」

 

 軽口を叩きながらもカフェでの会計を済まし、仕事のことや最近あったことなどを話しながら車へと移動していく。

 

☆☆☆

 

「二人の取材が始まるの、人が多い昼時だからその前には入っとこうか」

「人も少しだが並んでいるし、タイミング的には丁度いいのか」

 

 目的地へとついた四人は、すでに片手の数ほど並んでいる目当ての店の列の後ろへと並ぶ。

 双葉と翠も車の中で軽い変装をしており、顔が知れている奈緒も念のため変装をしている。

 

「俺はとりあえずケーキバイキングを」

「野菜を食え」

「そうです! 翠さんはお菓子とか甘いものしか食べている姿しか見たことありません!」

「うぇぇ……だって食べたいもの食べたいし……」

「さすがの杏もご飯はちゃんと食べるよ……。病気になるのが面倒だし」

「俺はいままでこれで病気になったことないし……」

 

 昼をケーキで済まそうとした翠であったが、奈緒に続いて双葉や神崎までもが止めにかかる。

 神崎の言っていることは外れておらず、翠は普段からお菓子などで食事を済ませている。……佐久間がいればその限りではないが、最近は仕事が増えて家に帰れない日が増えていたりする。

 

「翠のおかげ。……というのは癪だが事実、他のアイドルたちの仕事が増えてきている。それに目をつむれば食事の一つや二つ……」

「奈緒さん! そうやって甘やかすと翠さんはダメになりますよ!」

「…………すでに手遅れな気がするけど」

「君ら二人、言いたい放題言ってくれるね……」

 

 話題が翠のメンタルを削っていく内容であるため、いつもならば振り回しているはずの翠が少し疲れた様子を見せている。

 

「……本来の目的に話戻すけど、理想的なのがここに並んでる時に取材きて気づかないまま俺らに取材。タイミングよく呼ばれてからの中で暴露みたいな」

「そんな神がかり的なこと、まず起きないと思うけど……」

「双葉。そう言いたいのは分かるが……そんな神がかり的なことが起きるんだ実際に」

「…………マジ?」

「…………本気と書いてマジと読むほどには」

 

 双葉と奈緒は顔を見合わせ、ため息をこぼす。

 なお、神崎は尊敬の目を翠へと向けていた。

 

 

 

 前に並んでいた人たちが呼ばれて中に入って数分後。

 

「……本当に来たよ」

「さすがです!」

 

 四人の視線の先、カメラに向かって話しながらやってくる緒方と三村の姿が。

 

「あ、知らないの二人だけだから。カメラマンとかには話し通してある」

「…………そこまでやるか、普通」

「何事にも全力さ!」

「なら、仕事も全力でやれ」

「お、こちらへのインタビューですな」

 

 タイミングが良いのか悪いのか。奈緒のお小言を二人によって遮られた形になった。

 

「こんにちはー! 少しお話を伺っても大丈夫ですか?」

「忙しいんで無理です」

「なに言ってるんだ」

 

 三村がマイクを向けながら笑顔でインタビューを始めようとしたにもかかわらず、すぐさま拒否した翠に奈緒が軽く頭を叩く。

 

「すいません。この子は悪戯好きでして……。続けてくださって大丈夫です」

 

 速攻で断られると思ってなかった予想外の出来事に三村と緒方の二人は固まっていたが、奈緒に促されてインタビューを続ける。

 

「それではまず、四人はどういったご関係ですか?」

「銀髪ストレートがイトコのお姉ちゃん、()と同じ小さいこの子が同い年のイトコ。んで、おばさん」

「お・ね・え・さ・ん」

「…………お姉さんです」

「「あ、あははは……」」

 

 目の前のやり取りに苦笑いを浮かべる二人。インタビューをしている相手が同業だとは微塵も思っていないようで。

 

「今回はなにを食べに来たんですか?」

「ケーキに決まっとろう! 他になにを食べるというのだね!」

「取材の邪魔だから、私たちは少し黙ってようか!」

 

 再び翠が答えたが、これ以上やるとバレる可能性が高くなることを危険視した双葉が翠の腰に腕を回し、カメラから離れていく。

 

「バカがすいません……」

「い、いえ! 全然大丈夫ですよ!」

 

 そのあとは主に奈緒が答え、翠は少し離れたところで双葉に加えて神崎にも取り押さえられていた。

 

「「ご協力していただき、ありがとうございました」」

「いえ。いつも応援してます」

「「ありがとうございます!」」

 

 二人は後ろに並んでいる人たちのインタビューへと移っていった。

 

「……なぜに俺を引き離す」

「すぐに正体バラしたいのか?」

「そこらの見極めぐらい……できる」

「間がなければよかったな」

 

 緒方と三村のインタビューが終わって五分もしないうちに店の中へと呼ばれ、席へと案内される。

 

「……なぁ、本当にケーキしか食わないのか? ここは料理も美味しいんだが」

「ケーキだけに決まっとろう?」

「す、翠さんが死んだら私も死にます! 地獄まで追って殺しちゃいますからね!」

「……地獄に行くこと決まってるんだ」

 

 突っ込むべきところはそこでないのだが、翠は敢えて触れずにスルーした。

 それぞれ頼むものも決まり、店員を呼んで注文をする。

 

「んじゃ、ケーキ取ってくるね」

 

 本当にただ一人、ケーキバイキングを頼んだ翠。

 時間が惜しいとばかりにいつもより機敏な動きでケーキを取りに向かう。

 

「……あいつのムカつくとこはな。アレだけで本当に生きていけるのともう一つ。…………太らないんだ」

「「っ!?」」

 

 神妙な顔つきで話し始めた奈緒を怪訝に思った二人だが、最後まで聞いた時。二人の目の色が変わった。

 そして鼻歌を歌いながらケーキを選んでいる翠へと向けられ、再び奈緒へと戻される。

 

「その話、かな子とかには……」

「ああ、話していない。346内でも自身で気づいたもの以外は知らないはずだ」

 

 それを聞いた二人は、この先に起こりうるかもしれない可能性を考え出し、心の中で合掌する。




アニメの記憶が薄れてるから書けないとか……ソンナコトナイヨ?
アニメ見る時間がないのは……本当だが
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