怠け癖の王子はシンデレラたちに光を灯す   作:不思議ちゃん

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……記念話、まだ書いてなかったよなぁ……


48話

 思い立ったが吉日ということわざがあるように。

 翌日から翠による勉強会が始ま……る前に。

 先にデビューすることが決まった二人に説明を行う。

 

「これが君ら二人のデビュー曲のイメージ。作詞はまだしてない」

「…………なんだか嫌な予感がするにゃ」

「…………珍しく私も同意見だよ」

 

 嫌な予感は当たるものなのか。

 

「二人には作詞をしてもらいたいと思います。だけど、今からテストに向けて勉強だし、仕事や学校もあります。ってことで、色々と含めて考えた結果、君らに考える時間があるのは締め切りの二日前です」

「うにゃぁぁぁ! 無理にゃ!」

「そうだよ! 二日で作詞をしろって!」

 

 あまりの事に敬語を忘れるほどであったが、翠は嬉しそうに笑うだけ。

 

「まあ、落ち着け。目の前のことから消化していかないと潰れるぞ。取り敢えずは試験勉強だ」

 

 そこで待ってましたとばかりに、先ほどからいたCP以外のメンバーへと皆の視線がいく。

 

「俺一人じゃさすがに手が足りないので、助っ人としてしきにゃん、ふみたん、ありす。後は杏と美波の二人にも手伝ってもらう。……駄猫もいけるか?」

「学校の成績はそこそこにゃ」

「メガネかけた優等生だもんな。私生活の姿は」

「な、なんで知ってるにゃ!?」

「まあ、余裕があるときは他を見て。分からないことがあったら先の五人か俺に聞いてくれ」

 

 橘と鷺沢は一ノ瀬がおとなしい事に首を傾げていたが、それに気づいた一ノ瀬から説明があった。

 

「にゃはは。翠さんから提案というか取引があってねー。一回、参加するとデートしてもらえるんだ〜。今日もこれが終わったらケーキを食べにごー」

 

 大人しくはしているが、言葉の端々から嬉しさが滲み出ていた。

 それを聞いた二人……いや、新田と双葉を加えた四人は翠へと目を向け、無言の圧力をかける。

 

「…………分かったよ。四人も連れてくよ」

 

 折れるしかなかった翠はため息をつきながらも首を縦に降る。

 

「休憩時間もあるし、俺からおやつの差し入れもあるから頑張ってくれ。それじゃ、さっき渡した紙に赤点を取りそうな科目から順に上から書いていって。赤点とらなさそうな子は勉強したい科目ね」

 

 教えてくれと頼まれた五人も翠に言われた通り紙に書いていく。

 人並み、もしくはそれ以上に出来ても完璧ではないため。教えながらも時間を見つけては翠に教わるつもりであるのだ。

 翠もそれを理解しているからか、一人で紅茶を飲みながら待っている。

 

「んじゃ、誰でもいいから紙集めて俺にちょうだい」

 

 この中では年長者である鷺沢と新田が分担して集め、翠へと手渡す。

 それを受け取った翠はパラパラ〜っと流し読みをしただかでテーブルの上に放り投げる。

 

 そして面倒臭そうにしながらもそばに置いてあった無駄に重そうなカバンの中から大量の紙の束を取り出し始める。

 

「んじゃ、誰からでもいいから順番に取りきて」

 

 先ほどからの翠の行動に戸惑った様子を見せるCPの面々であるが、一ノ瀬、鷺沢、橘は慣れた様子なのか。

 さっさと立ち上がって翠の元へと向かう。

 それに続いてようやくCPの面々も後ろに並び始める。

 

「しきにゃんはコレ。ふみたんはコレとコレ。ありすはコレ」

 

 受け取りに来た人を見て、紙の束から何枚か抜き取って渡していく。

 人によって枚数は異なるが、少なくても三枚。多くても六枚であった。

 

「んじゃ、書くものと消しゴムは用意した?」

 

 混乱のままでいるCPのみなは翠に言われるがまま。時折、知っているであろう四人を見ながら準備を進めていく。

 

「今から十分おきにタイマー鳴らすから。一枚にかけていい時間は十分ってことね。全部終わった人から紙持って来て。……んじゃ、スタート」

 

 掛け声とともにタイマーが進み始め、みなは渡された紙に目を向け、鉛筆、又はシャーペンを走らせる。

 

 少なくとも三十分は時間が空いた翠は一人で紅茶とお菓子を楽しみながらとある書類に目を通していく。

 

 

 

 

 

 三十分が経ち。

 渡された枚数が少なかった一ノ瀬と橘、双葉、新田が紙を持って翠の元へ向かう。

 

 それに気づいた翠は、読んでは所々に赤ペンで何かを書き込んでいた書類をそばに起き、順番に紙を受け取って採点していく。

 

「しきにゃんは受ける意味なくない?」

「ん〜、楽しいからいいじゃん」

「そう。二問、間違いな」

「えっ!?」

 

 完璧であった自信があったのか。

 二問間違えがあったと伝えられ、驚きをあらわにする。

 

 何を間違えたのか気になった三人は一ノ瀬が持つ紙を覗き込み……言葉を失う。

 

 まず、問題自体が日本語で書かれてはおらず。

 英語から始まりドイツ語、イタリア語など一問ごとに言語が変えられていた。

 

「しっかり問題を読むように。んじゃ、次」

 

 三人も自信があったにも関わらず、予想よりも間違いが多かったのか少し落ち込んでいた。

 

「ありすは少しサボったか? まあ、いつも通り書いてあるとこやっておけ。美波と杏はよく分からんが、美波はケアレスミスが少し目立つな。もう少し落ち着いて問題を読んで解釈すればいいと思う。杏も似た感じだ。何をやったらいいか書いてあるから。間違えた問題を解き直してからまたおいで」

 

 ここまで五分ほどしか経っておらず。

 アドバイスをもらった四人は間違えた問題を解き直しにかかり、翠は再び書類に目を通す。

 

 五分たち、四枚渡されていた子たちが紙を持ってやってくる。

 

 もらったアドバイスは基礎が足りてないからこの問題を解いていけと新たに紙を渡されたり、応用ができてないからこの問題を解けと紙を渡されたり。

 

 

 

 それらが繰り返され。

 一時間が経って、六枚もらった子たちが終わったとき。

 

「んじゃ、いまからしばらく休憩ね。採点はこっちでやっておくから、みんなは各々休んでていいよ。お茶とお菓子はここに置いてあるの好きに食べたりしてていいから」

 

 それを聞いて、みなは喜びの声を上げる。

 耳でそれを聞きながら。翠は受け取った紙に目を落として採点をし、アドバイスを書き込んでいく。

 

「翠さんってすごいんだねー」

「同じ人とは思えないにゃ」

「にゃはは、そうだねー。私よりも上の人なんてそうそう会うことがないから嬉しいよー」

 

 早くも採点を終えた翠は珍しく話に混ざってからかうことはなく。

 再び資料に目を通していく。

 

「翠さんが絡んでこないって、珍しいですね」

「本当ですね。問題を解いてる時からですけど、何を見てるんでしょうか?」

『…………』

 

 お菓子や紅茶を飲んでのんびりしている組と翠が何をしているのか気になる組に分かれた。

 お菓子に意識がいっているものが圧倒的に多いが。

 

 見ている資料が気になったもの……新田、渋谷、双葉、諸星、前川、神崎。そして緒方の七名は翠の元へと近寄っていき、手に持つ資料を覗き見る。

 

『……………………』

「お、どした?」

「何やってるにゃ」

「……? 見てわかる通り、クロスワードパズルだが」

 

 そう、翠が見ていたのは資料などではなく。ただのクロスワードパズルであった。

 何かを書き込んでいたのもマスに文字を埋めていたからであり、決して何かに訂正を加えていたとかではない。

 

「……仕事の資料は?」

「俺が? 仕事?」

「……訂正や添削は?」

「……何の?」

 

 勝手に翠の評価を上げていた彼女たちはまたも勝手にその評価を下げていた。

 それがなくとも翠は自身で評価を上げたり下げたりしているので、とくにどうとでもないのだが。

 

「…………ねぇ、翠さん」

「どしたどした?」

 

 クロスワードパズルのマス埋めに戻ろうとした翠だったが、双葉が待ったをかけるように声をかける。

 

「さっきまで持っていた紙、見せてもらってもいい?」

「…………これだけど?」

「紙が違うから、それはダミーとかでしょ?」

「…………うぅむ」

 

 確信しているという目で見られ、翠は困ったように呻く。

 

 しばらくして観念したのか。翠はため息を一つつくと、双葉たちへ一枚の紙を差し出す。

 

「…………これは?」

「夏フェスの企画案みたいなもの。歌う順番、演出とか考えてた」

「え、これ見せちゃマズイやつじゃ……」

「見せろ言うたのは貴様らじゃ」

 

 ばつが悪そうな顔をしながら翠へと紙を返す。

 

「まったく。だから見せるのを渋ったというのに」

「なんで年寄りみたいな口調なのさ……じゃなくて。そりゃ杏たちも悪いと思うけど、翠さんの普段の言動がこうさせたんだからさ」

「まあ、見られたらマズイなんて一言も言ってないんだがな」

『…………』

 

 一瞬、雰囲気が殺気立ったことに翠は楽しそうに笑みを漏らす。

 

「それより、休憩しなくていいん? 甘いものは脳を回復させるから食べとき」

 

 そう言って追っ払い、みなが離れて言ったことを確認した翠はホッと息を漏らす。

 

「危ねぇ危ねぇ……これ見られたら奈緒とちーちゃんに殺されるわ」

 

 そう言って翠は隠すように置いてあった紙を手に取る。

 

 

 

 書いてあるのはCPの面々の出演に関することである。

 

 

 

 まだ前川と多田のユニットはCDすら出していないというのに曲があてがわれている。

 それを眺めながら、これからのことを考えている翠は自然と頰が緩んでいった。

 

「ああ、とても楽しみだなぁ」

 

 

 

 

 

 この時、夏フェスに参加するアイドル(シンデレラプロジェクトのメンバー含む)全員に悪寒が走ったのは偶然ではない筈である。

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