怠け癖の王子はシンデレラたちに光を灯す   作:不思議ちゃん

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49話

 勉強、仕事、学校とやることが多すぎるはずであるのに。

 疲れはするが疲労が溜まらないことに首を傾げつつも日々を過ごしていくCPの面々。

 

 本日もいつもと変わりなく。

 

「何がロックにゃ! ただロックって言ってるだけにゃ!」

「みくちゃんだって可愛い可愛いばっかりじゃん!」

 

 二人は言い争っていた。

 その様子を見て他のメンバーは心配そうであったが、翠だけは楽しそうであった。

 

「あの、翠さん。本当に大丈夫なんでしょうか?」

「何が?」

「今日も言い合ってますし……その、合ってないんじゃないかな、って」

「んっふっふ、美波もまだまだ甘いの」

「は、はぁ……」

 

 気持ちの悪い笑い方に若干引きつつも、含みのある言い方に首をかしげる。

 

「心配せんでも大丈夫大丈夫。……おーい、駄猫にだりぃな。ちょっとこっちにおいで」

「「…………」」

 

 翠に声をかけられた二人は先ほどまで騒がしかったのが嘘のように大人しくなる。

 そして、まるでこれから処刑でもされるかのような落ち込みっぷりで翠の元まで寄ってくる。

 

「駄猫はさ、寮暮らしだよね?」

「…………そうだにゃ」

「だりぃなはさ、実家から……だよね?」

「…………そうだけど」

 

 それぞれに一度だけ質問しただけであるが、二人は何を言われるのか薄々感づいているのか。

 心の中でどうか違ってくれと祈っていた。

 

 しかし。

 

「んじゃ、今日明日にでも二人は一緒に住んでね。駄猫の部屋にだりぃなが行く形で」

「そんにゃぁぁぁぁあ!?」

「嘘でしょ!?」

 

 神とは試練を課すものである。

 二人の願いは届かず。嫌な予感が当たる形となった。

 

「異論反論は認めないので…………頑張りたまえ?」

「なんでそこで首をかしげるのさ」

 

 双葉のツッコミをスルーし、翠は笑うだけであった。

 

☆☆☆

 

「…………なんなのにゃ、その荷物の数は」

「私の私物。これでも結構減らしたんだけどなー」

 

 出来るんなら今日中と翠から言われたため、ならさっそくとばかりにやってきた多田。

 前川はその荷物の量にウンザリしつつも手伝って部屋へと運んで行く。

 

「へー、こんなんなってるんだ」

「あまり散らかさないで欲しいにゃ。…………ナニコレ?」

「ああそれ。コレクション。集めるの好きでさー」

 

 ふと、なにを持ってきたのか気になった前川は一番上に置かれた段ボール箱を開け、自分で思っている以上に冷めた声が出た。

 

 それを気にした様子もなく、多田はポスターを壁に貼るため、画鋲で刺していく。

 

「カベを汚すにゃー!?」

 

 

 

 

 

「ああっ!? なんで目玉焼きにソースかけるのさ! 普通、醤油でしょ!」

「な、なんにゃ……」

「みろよ、輝子。調味料一つでアレとか面白いと思わない?」

「……ふ、ふひっ。そんなことよりもなんで翠さんがここに?」

 

 その後も朝食で勝手に調味料をかけては口論になったり。

 

 

 

「だから衣装を合わせるにゃ! 仲のいい写真を撮るんだから!」

「そっちが合わせればいいじゃん!」

 

 仲の良さを出す感じの写真を撮るのだが、方向性が違う衣装をそれぞれ着ては言い合い。

 結局、衣装は二人とも着替えず。そのまま仲のいい感じを出して写真を撮ることになったり。

 

 

 

「ん? スーパー?」

「そうにゃ。この時間は惣菜が安くなってるからここで買ってるにゃ」

「そんなに?」

「栄養バランスとかも考えて、一日三十品目以上食べるようにしてるにゃ」

「…………へぇ」

 

 相手の意外な一面を見たり。

 

 

 

「あの飴はもっと可愛さを出して売り出していくべきにゃ」

「いいや、ロックな感じを出すべきだよ」

「可愛さ」

「ロック」

「か・わ・い・さ!」

「ロ・ッ・ク!」

 

 仕事で売り出していく商品の方向性に揉めたり。

 

 

 

「あれ? 何してるにゃ?」

「遅くなるから買い物できないかと思ってね」

「料理できたんだ。何を作ったにゃ?」

「得意料理なんだけど、カレイの煮付け」

「うにゃぁあ!? みくは魚が大嫌いにゃ!」

「……そう言えば、翠さんがそんなことを言ってたような」

 

 遅くなる相手のためを思って作ったのに、その料理は自身で食べ。前川は食パンを齧っている。

 

「…………」

「…………」

「…………」

「…………その、悪かったにゃ。これ食べて元気出すにゃ」

「あー……ごめん、パス。私、ミント系は辛くて食べられないんだよね」

「にゃ!? あんなにロックとか言ってたのに!?」

「あれはキャンペーンだし仕事だったから!」

 

 それぞれが苦手なものを知ったり。

 

 

 

「…………ん……?」

 

 夜、目が覚めた前川は多田が寝ているはずの布団が空になっていることに首を傾げていると、シャワー室の方から電話する声が聞こえ。

 お母さんというセリフから、飾ってある家族の写真へと無意識に目を向ける。

 お互いに何か感じるところがあったのか。

 電話を終えた多田もすぐには戻らず、二人はしばらく何かを考えていた。

 

 

 

 

 

 この数日でとても濃い日々を過ごした二人。

 

「はい、醤油にゃ」

「……ん、ありがと」

「んふふ、なんだかんだで仲良くなってよかったと思わん?」

「…………ふ、ふひっ。も、もう、何も言わないよ」

 

 相手の事を考える余裕がでてきたのか。多少なり雰囲気は良くなっていた。

 

 

☆☆☆

 

 

「そこをなんとかお願いしますよ」

「ですから、翠はいま休業中でして。仕事を一切取っていないんです」

「でしたら、誰でもいいので歌って踊れる子を紹介して欲しいのですが」

「……武内、誰かいるか?」

「……いえ、皆さん他の仕事がありますし」

 

 武内Pと奈緒は少し困っていた。

 仕事の依頼なのだが、翠は休業中であるし、CPの面々も他に仕事などが入っている。

 今回ばかりは無理だと話し、ドアを開けたところに。盗み聞きでもしていたであろう前川と多田が立っていた。

 

「その話、詳しく聞かせて欲しいにゃ!」

 

☆☆☆

 

「その、……ごめんなさい」

「別にええんやない?」

「…………えっ?」

「翠。可愛い後輩だってのは分かるが、あまり甘やかすな」

 

 あの後、前川が武内Pが待ったをかける前に仕事を引き受けてしまった。

 今は前川と多田、武内P、奈緒の四人に加え、どこから湧いたのか翠もいた。

 

「その仕事っていつなのかな?」

「二日後、ですが」

「曲は?」

「ありません」

「んん……まだ分からぬ?」

『…………?』

 

 言っていることがよく分からない四人は首をかしげる。

 

「確かに、歌詞のある曲はないが…………この二人の曲はあるだろう?」

『…………あっ!』

「奈緒は……あのとき居なかったし、分からなくても仕方ないか。まあ、始め話した通り……二日で歌詞書いて、振り付けもそのときのノリで考えておいで。見て修正加えるから。今は時間が惜しいし、さっさと二人は帰って歌詞考えといで」

「「……はいっ!」」

 

 バタバタと走って出て行った二人を見送り、武内Pは口を開く。

 

「翠さんは初めから分かっていたのですか?」

「んひひ、どーだろね?」

 

 含みのある笑い方をした翠はそのまま部屋から出て行ってしまった。

 

「……また、何かやらかしたのか?」

「……やらかした、と言うよりは……また、予知めいた事を」

「…………」

「…………」

「「…………はぁ」」

 

 苦労の絶えない二人のため息は、その原因となる奴には届かず。儚く消えていった。

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