怠け癖の王子はシンデレラたちに光を灯す   作:不思議ちゃん

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アニメの12、13話を見返したら、原作と少し変わっていたことに気づいた…
ほとんど忘れかけていた事実に少しショック…あ、二期はほぼ忘れてますので見返すのは必須…
ようやっと、次で13話なんだが…長くなりそうだなぁ、こりゃぁ…


63話

「翠さんは大丈夫そう?」

「熱なのか夏の暑さなのかで参ってたみたいだけど、大丈夫だと思うよ」

 

 先に新田への報告を済ませ、双葉も空いている場所に座る。

 

「美波ちゃん、お腹すいちゃった」

「杏ちゃんも戻ってきたから、1つ連絡事項を話してからご飯にしよっか」

「連絡事項?」

「うん。実は翠さんが熱出して倒れちゃったから、後のことはみんなにも手伝ってもらいたいの」

「翠さん大丈夫なの!?」

「さっきまで杏ちゃんが翠さんのこと見ていてくれて、大丈夫だって。プロデューサーさんにも電話したら、仕事がひと段落ついたから明日の朝、ここに来てくれるって」

 

 安心した子もいればまだ心配そうにしている子もいる。新田も大丈夫だと聞いていても実際に見るまでは不安が残っていた。

 

「翠さんのことは明日来てくれるプロデューサーと相談しながらにして、今は私たちにできることをしていこう」

『うん!』

 

 と言ってもすでに風呂も入り、夕食を終えたらあとは寝るだけだが、何かあるとしたら寝る前に翠の様子を誰かが見に行くだけである。

 

「しょーじき、杏は翠さんがいなかったらユニット曲の他に新曲は無理だと思ってたよ」

「みくもそう思ってたにゃ。ユニットとしてデビューしたのも最後だったし、少し不安があったにゃ」

「でも、そんなこと想像できないよねー。もしも(・・・)翠さんがいなかったら(・・・・・・・・・・)、なんてさー」

「にょわー! そうだにぃ! 翠さんに教えて貰って、みんなすぅっごく上手くなったにぃ!」

「我も孤独の時を過ごして来たが、戯れるというのもまた一興」

 

 双葉ふと口にしたことから始まった、これまでと合宿の感想。皆は明日が最終日だというのをきちんと把握しており、少しの寂しさを胸の内に抱いていた。

 皆と一緒に過ごす濃い日々が終わってしまうことを考えながらも、誰1人としてそれを口にはしない。

 

 口にしてしまえば軽くなってしまうような気がしていたから。

 

☆☆☆

 

 翠は普段、ズボラに見せかけてそれなりに様々なことを把握している。しかし今回は様々な要因が重なり、この合宿の日程感覚が狂っていた。

 明日、武内Pが千川も一緒に来るのだって翠が考えた衣装が完成し、それを届けに来るのに加え、皆を346へと送り届けるためである。

 合宿は明日までであり、その明日も実はほとんど練習する時間などなかった。

 決して低い完成度ではないが、翠としては皆のやる気が上がっているいまのうちに、もう少し磨きをかけておきたかったところだと言うだろう。

 そのことに翠が気づくのは明日、武内Pと出会った時であろうが。

 

 

 

「…………あれ?」

「おはようございます、翠さん。体調の方は大丈夫でしょうか?」

「あ、うん……熱も引いたし、大丈夫だけど……」

 

 翌日。朝、目を覚ませば武内Pがおり、目を白黒させる翠。

 これほど分かりやすく動揺を表している翠が珍しいと思いながら、武内Pは飲み物を手渡す。

 

「……あれ? もしかして今日って最終日?」

 

 眠気が少し飛んだのか、武内Pの顔をジーッと見てとあることに気付く。

 

「はい、そうです。衣装も出来たものを持って来ています」

「んー、そっかそっかぁ……」

「何か問題がありましたか?」

「まあ、俺の問題っちゃ問題だなぁ。日程感覚が狂ってた。あの子たちの完成度は十分だけど、もう少し磨けたかな。って」

 

 少し残念そうにしながらもできる範囲で軽く身だしなみを整え、体調に問題がないか体を伸ばして確認をする。

 

「おし、早速服とか見て行くか……いや、その前に朝食だな」

 

 

 

 

 

 CPのみんなに心配されながらも朝食を食べ終えた翠はそのまま皆を引き連れ、広い部屋へと移動する。

 そこにはすでに武内Pと千川が待っており、足元には段ボールが。

 

「ライブ衣装はここに持って来てませんが」

「そりゃそーだわ。こんなとこで来てもどーにもならん」

 

 軽く返しながら翠は段ボールを開けて行く。

 そして中からいくつか取り出しては皆に配って行く。

 

「サイズが合わない方は言ってください。予備がいくつかありますので」

「帰りに近くの海にでも少し寄れる?」

「時間はあるので大丈夫だと思いますけど……」

「んじゃ、よろしく。みんなは服、それ着たままで」

 

 それだけ伝えた翠は自身の荷物を片付けるべく、部屋へと戻っていった。

 

 皆も立つ鳥跡を濁さずよう自身の荷物やゴミなどをまとめ、車へと詰め込んで行く。

 

「おしおし、んじゃ並んで」

 

 突然のことになんのことか理解できていないが、翠の言われた通り皆は一列に並ぶ。

 

「お世話になりました!」

『お世話になりました!』

 

 大きな声で放った後、お世話になった家に礼をする翠に皆も負けじと声を出して続く。

 

「おし、行くか」

『はい!』

 

 そして車に乗り込みこのまま帰るのだが、翠の要望で途中に近くの海へと寄ることになっている。

 もう少しだけ長く、そして楽しいことが待っていることにCPの面々は喜びを露わにしている。

 

 海へとついた一行は海辺ではしゃいだり、砂で城を作ったりなどして楽しんだ。

 

「たっちゃん、たっちゃん。これ良さげ? ねえ、良さげ?」

 

 それを見守る武内Pへと翠はコソコソと寄って行き、とある写真を見せる。

 それはここについてすぐ、皆が海を見てはしゃいでる姿をおさめた写真。風が吹いた瞬間のため1人だけ動きがあるが、写真としては十分であった。

 

「はい、いいと思います」

「なら、これ新曲のジャケットね」

「……このために新曲のジャケットは決めないように言っていたのですか?」

「さぁ? どーだろ?」

 

 にひひと含みのある笑みを浮かべるだけでこれ以上はおしまいと、写真を撮ったカメラを武内Pに押し付け、翠も彼女たちのもとへ遊びに向かう。

 

「いい写真ですね、それ」

「はい。みなさん、いい笑顔です」

 

 武内Pと千川は写真を見た後、写真に写る子たちとともに遊んでいる翠へと目を向ける。

 

「彼女たちの笑顔は輝いていましたが、翠さんと触れてその輝きは一段と良くなった気がします」

「そうですね。このまま仕事の方もやる気になってくれたら嬉しいですけど」

 

 このとき、千川は武内Pにあの時のことを話すか迷っていた。

 翠が武内Pに対して怒った時、それを自分自身にも向けていたわけを考えていた。しかしその答えが出ることはなく。誰かに話して相談しようと思っていたが、何故だか誰に話しても納得のいく答えが出ることはないと感じていた。

 

「どうかしましたか?」

「いえ……みなさん、とても楽しそうだな、と」

「はい。いい笑顔です」

 

 今もまた話すべきか悩んでいたが、そのまま口にすることはなく終わってしまった。

 隣に立つ武内Pは翠から受け取ったカメラで楽しそうに遊ぶ彼女たちと翠の姿を撮っているため、千川も小さく息を漏らし、彼女たちの遊ぶ姿に目を向ける。

 

☆☆☆

 

「それじゃ、気をつけて帰れよー」

 

 日も沈みかけ、空がオレンジ色に染まる中。ようやく各々は家や寮へと帰っていった。

 昼は車の中で買ったおにぎりやらパンを食べ、346へはおやつの時間にたどり着いていたが……昨日約束したアイスの件を双葉に持ち出され、翠は武内Pと千川、奈緒に金とアイス、飲み物が書かれた紙を渡しておつかいを頼む。

 

 その後は翠が美味しいといっていたアイスを皆で楽しんでいたが、途中からはCPだけでなく、楽しそうな雰囲気を察してフラフラと寄ってきた他のアイドルたちも参加し、ちょっとした大所帯になっていた。

 

 流石に時間も時間であるため、CPの面々はキリのいいところで家に返し、小さい子たちも遅くなっては大変だと返し、残った大人組でこれから飲み会へ行く流れとなっていた。

 

 目的としては目前まで迫ったライブの話やCPの完成度についてである。

 本来であれば自分たちもレッスンを見てもらいたかったが、翠も彼女たちに付きっ切りでレッスンをしていたため、そこら辺のところが同業者として、そしてこれから迫ってくるかもしれぬライバルとしてきになるところなのだろう。

 

「たっちゃんは来るとして、今西さんも来れるかな?」

「確認してみます」

「私も行くからな」

「酒飲めないのに?」

「お前にどうしても聞きたいことがあってな」

「何かあったっけ?」

「熱を出したと聞いたが?」

「…………おし、奈緒。お前も酒飲もうぜ」

 

 誤魔化す気満々であるのが丸分かりなそれに奈緒が引っかかるわけもなく。

 飲みにいったアイドル全員にも話は行き渡り、お酒の席であるのに皆から怒られるハメとなった。

 

☆☆☆

 

 夜も更け、日付が変わるような時間。

 人によってはまだ起きているかもしれないが、翠から『夜更かしをして体調崩したら付きっ切りでレッスン』と皆に伝えられているため、346だけでなくアイドル全体で仕事や何か理由がない限りは十分な睡眠をとるようにしている。

 当然、CPの面々にも伝えられているはずだが、姿見の前で振り付けの練習をする1人のアイドルが。

 

「……もっと、……もっとしっかりしなきゃ……! 翠さんに、甘えてたから……!」

 

 その表情には後悔が浮かび、自身を追い込んで行く。

 合宿のときにみんなのまとめ役として選ばれ、慣れないだろうからと翠が手を貸していた。

 自分はほとんど翠に言われたことをやっただけであり、ちょっとした気配りも気づけば翠がやっている。

 

 今覚えば、翠にどれだけ甘えてきていたのだろう。

 レッスンはともかく、日常生活におけるあれこれなど自分でも周りに気を配ることができたはずだと。

 

 甘えていた。

 知っているはずなのに、分かっていたはずなのに。

 翠は自分たちのことを気にかけてくれているのに、自分は翠のことを何も見ていなかった。

 

 後悔しないよう、そして任されたまとめ役を。

 翠が安心して任せられるようにならなくては。

 

「……もっと、頑張らなきゃ」

 

 どこか濁った目をしているが、新田美波は僅かな休憩を終え、再び自主練を始める。




美波は翠さんがいたため負担が減って原作のシリアスが多少減ったが、結局は翠さんのせいで…
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