怠け癖の王子はシンデレラたちに光を灯す   作:不思議ちゃん

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78話

 ニュージェネの三人が北条と神谷の二人とレッスンをした翌日。

 部屋にはCPのメンバー全員が揃っているが、雰囲気は重く、会話は無かった。

 

「そういえばさ、楓さんのことなんだけど。会社でちょー噂になってるよね」

 

 その空気に耐えかねたのか。

 城ヶ崎妹が誰に言ったわけでもなく、今話題になっていることを口にする。

 

「結構大きな仕事、けったんでしょ?」

「この状況で断っちゃうなんて……」

「ロックな人なんだね」

「綺麗だしかっこいい!」

「うん!」

「神秘の月夜に守られし天使の翼」

「やっぱ、憧れのアイドルって感じだよね」

「素敵です」

 

 それをキッカケに場は少しだけ明るくなり、会話が生まれる。

 

「そういえば、レッスンが終わった後に楓さんを見かけたんだけど」

 

 ふと、思い返した三村は高垣がダジャレを言っていたのと居酒屋に行きたがってた話をする。

 

「イメージと違う!」

「ダジャレと居酒屋好き……」

「ふしぎ、ですね?」

「楓さんに仕事断ったのを聞いてたの、瑞樹さんに早苗さん、美嘉ちゃん、フレデリカちゃんの四人だったんだけど、少し怖かったな……」

「その仕事、翠さんが勧めたらしいよ」

 

 ノドを痛めないようにマスクをしていたため、ボソッと呟いた双葉の声はいつもより聞こえにくくなっていたが。

 なぜかよく通り、皆に聞こえていた。

 

「……翠さん、本当に美城常務の案を了承したんだ」

 

 まだ、どこかで間違いだったという可能性を捨てきれていなかった少女たちは、目を逸らしていたものを見せつけられる。

 

「でも翠さんからの推薦だったら、余計に仕事を断った理由が分からないよね」

「昨日の夜、おねーちゃんがすっごく機嫌悪かったのと、何か関係あるのかな?」

「え? 美嘉姉が?」

「うん。なんか怖かったから話してないんだけど、怒ってるように見えたよ」

 

 不安なのか、城ヶ崎妹はクッションをギュッと抱きしめる。

 

「美嘉ちゃんが不機嫌な理由は分からないけれど、楓さんが仕事を断ったのには何か理由があるんじゃないかな? 意味もなくそうする人だとは思えないから」

「羨ましいにゃ!」

 

 これまで大人しかった前川だが。

 我慢の限界がきたのか、『うにゃー!』と声を上げる。

 

「みくも美城常務にガツンと言いたい! このまま言いなりは嫌にゃ!」

「み、みくちゃん、落ち着いて」

「プロデューサーが待つようにって」

「ガツンとって、何やるのさ」

 

 今にも何かしでかしそうな前川を見て、いつぞやのストライキを思い出し、皆で待ったをかける。

 

「むー……ピーちゃんのお手伝いするとか、企画書を書くとか」

「企画書! みりあも書きたい!」

「それ、前にも書いたけど、結局意味なかったじゃん」

「このままボーッとしている方が意味ないにゃ!」

「それじゃ、まずは作業スペースを確保しない?」

 

 新田はいつの間にか用意していたモップを手渡し、他の子達にも掃除用具を渡していく。

 

「でも! みくは企画書」

「みくちゃん」

 

 不満そうな前川のセリフを遮り、優しく声をかける。

 

「お掃除だって立派なお手伝いよ。部屋がこのままなのは嫌じゃない? それに企画書を書くのも綺麗な方がいいと私は思うな。みんなで早く終わらせて、それから考えよう?」

「……分かったにゃ」

 

 まだ少し不満そうであったものの、前川自身にも部屋の汚さに思うところがあったのだろう。

 受け取ったモップをギュッと握っていた。

 

「みーんなでお部屋を綺麗にして、ピーちゃんをビックリさせちゃお?」

「プロデューサーに内緒で」

「ビックリさせちゃおー!」

「じゃあ私、足りない雑巾とか取ってくるね」

「ピーくんに見つからないようにね!」

 

 大人しくしているのは嫌。

 今をどうにかしたい。

 

 心の何処かで思っていたのだろう。

 だが、口にして行動する勇気がなかった。

 そんな皆を前向きにさせたのは前川であった。

 

 

 

 ニュージェネは仕事があるためそちらへ向かってしまったが、残ったみんなで部屋を綺麗にしていく中。

 新田は前川を羨ましく思っていた。

 

 まだ、自分は心のどこかで翠に甘え、頼りにしていたことに気付かされた。

 

 どうにかしたいと思っていながらも何をしたらいいのか分からず、結局は何もしないままだった。

 

 一人で考え込んでいた。

 それで失敗して、同じ過ちを繰り返さないと決めたのに。

 二度と、あのような思いはしたくない。

 

 何もせず後悔するぐらいなら、みくちゃんのように何かしらアクションを起こすべきだった。

 

 李衣菜ちゃんは意味ないと言っていたけれど、あの時と今では状況が違う。

 何もしなかったら失ってしまうのだ。

 

 前川みく(・・・・)が羨ましい。

 

 人はすぐに変われない。

 だから、頼ろう。皆を。

 

 そのことを思い出させてくれたみくちゃん(・・・・・)に感謝しなくちゃ。

 

「ありがとう、みくちゃん」

「急にどうしたにゃ?」

「私も、皆も何かしなきゃと思ってた。ストライキの時みたいに、真っ先に行動したのがみくちゃんだから」

「す、ストライキのことは忘れるにゃ……」

 

 前川の中では黒歴史となっているのか、顔をしかめる。

 

「みくちゃんのおかげで皆がやる気になれたから」

「みくはただ、何もしないのが嫌だっただけにゃ」

「それでも、ありがとう。みくちゃん」

 

 照れくさいのか、顔を背けた前川はボソッと。

 

「お礼を言うのはこの件が上手くいった後にゃ」

 

 そう言って掃除へと戻っていった。

 

「うん。皆で頑張ろう」




美波ちゃんの決意が!
後の話で生かされると!
いいなぁ!(願望)
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