「プロデューサー、今日ずっと顔怖いよ」
「なんかさ、疲れてない?」
「……いえ、大丈夫です」
本日の仕事場へ向かう移動中、武内Pの様子をニュージェネの三人は心配するが、大丈夫と返されて何も言えなくなってしまう。
美城常務を納得させる案を考えるため、武内Pは自身の睡眠時間を削っていたからであるのだが、不安にさせまいとそれを口にすることはなかった。
仕事場に着くと関係者に挨拶をしてから控え室へと向かう。
「楓さん、もういるかな?」
「どうでしょうか」
「「「おはようござ」」」
「サインをしなさいん。……ふふっ」
「「「お、おはようございます!」」」
「おはようございます」
ノックをして中に入ると衣装に着替え終えていた高垣が配布する団扇にサインをしており、挨拶をしようとしたが、それは高垣のダジャレによって遮られてしまう。
普段通りに振る舞う高垣を見て、三人は不思議に思いながらも衣装さんに手伝ってもらいながら衣装へと着替える。
「未央ちゃん、それって」
「うん、みくにゃんが言ってた企画書」
出番まで時間があるのを確認した本田がカバンから紙とペンを取り出したのを見て島村が声をかける。
「やっぱり、このままは嫌だからさ」
「うん、そうだよね」
「はい!」
島村と渋谷も紙とペンを用意し、何かいいアイデアがないか考え始める。
「学園祭めぐり……これって翠さんが不定期でやってたよね」
「それ、聞いたことある」
「出演を依頼しても、翠さんの気まぐれらしいです! 羨ましいですよね!」
「いやいや、私たち、その翠さんから直接レッスン受けてたじゃん!
「はわっ!? そうでした!」
「最近、見かけないけどね」
今の現状をふと認識して三人の雰囲気が少し重くなるが、その空気を変えようと本田が明るい声を出して話を元に戻す。
「そ、そういえばしまむーはどういうの書くの?」
「へっ!? えと、まだ考えてて……」
「そんなすぐには出てこないよね」
そう口にする渋谷の紙にはいくつか案が書かれており。
島村は自身の真っ白な紙を見て表情をこわばらせる。
「失礼します。準備の方は……何をしているのですか?」
「えへへ、企画書考えてて。私たちにも何かできないかなって思って」
「けど、なかなかいいアイデアが浮かばなくって」
「すみません、プロデューサーさん」
「いいえ。ありがとうございます」
高垣はサインしていた手を止め、そのやり取りを見て笑みを浮かべていた。
「みなさん、素晴らしいステージでした」
ニュージェネのステージが終わり、武内Pはタオルを手渡しながら声をかける。
この後は団扇の配布があってから高垣のステージとなり、三人の仕事はもう終わりである。
「どうかされましたか?」
だが、スタッフたちは何やら慌てており、武内Pは近くにいた人に声をかける。
「団扇の準備をしているのですが……」
「整理券などは……」
「配布済みです。ですが、団扇の数が少ないのではと思ったファンの方が詰めかけてしまって」
「分かりました。私も列整理に……」
「た、高垣さん!」
声が聞こえてきた方に目を向ければ、ファンが詰めかけて来ている前に高垣が姿を現していた。
「高垣さん、まだ列の整理ができてないので」
スタッフを手で制した高垣は反対の手に持っていた拡声器を口の前に持ってくる。
「みなさ〜ん、ちゃんと並ばないと危ないですよ〜。団扇、た〜くさん用意したので、押さない、かけない、喋らないのお、か、し。キチンと守って並んでくださ〜い」
「それじゃ避難訓練だよ!」
「あら。じゃ、お喋りは大丈夫で〜す」
会場は笑いに包まれ、先ほどまであった険悪な雰囲気はなくなっていた。
その隙にスタッフたちは列の整理をおこなっていく。
「なんか凄いですね」
「なんかいいなぁ」
「すごい……」
三人のセリフが被り、顔を見合わせて笑みを漏らす。
そこへ列整理の手伝いを終えた武内Pが戻ってくる。
「それでは、みなさんは楽屋に戻って休んでいてください」
「は、はい」
「ねえ、私も手伝いたいんだけど……」
「しかし……」
「私も」
「あの、私もできたら……」
配布の準備をする高垣を見ながら、渋谷は口を開く。
だが、勝手にそんなことをさせるわけにはいかないため、武内Pはなんと言ったらいいのか困り、手を首に当てる。
「ダメかな? やれる事はなんだってやりたいし」
「楓さんたち、凄くいい顔してるから」
「はい、ドキドキしました」
「……ということなのですが、よろしいでしょうか?」
「は、はい! ぜひお願いします!」
三人の真っ直ぐな目に折れた武内Pは近くにいたスタッフに確認を取る。
許可が取れたため、三人は団扇の入った段ボール箱を抱えて高垣の元へと向かい、そしてそのまま三人は高垣と一緒にファンの人たちに団扇を手渡していく。
☆☆☆
「大変でしたね」
団扇の配布が終わり、三人はイスに腰掛けていた。
大変と口にするも、三人は楽しかったのか口には笑みが浮かんでいた。
「楓さん、あんな大スターなのにやっていることは私たちと同じなんだね」
「はい。凄く素敵でした」
「あ! 楓さん!」
高垣が向かってくるのを見て、三人はイスから立ち上がる。
「さっきはありがとう。……ここはライトが暗いと思うわ」
「は、はい」
「だから……私が輝かなきゃね」
突然のダジャレに戸惑う後輩を気にした様子はなく、真面目な表情で『輝く』と口にしてステージへと向かおうとする。
「あの、楓さん」
「なに?」
だが、渋谷はそれを呼び止める。
口調から何かを感じたのか、足を止めた高垣は渋谷へと体を向ける。
「美城常務の話、どうして受けなかったんですか? その仕事、翠さんの推薦だって聞きました」
今更ですが、独自解釈あります
ほんと、今更ですが
それとこの二次創作ですが、ほとんど三人称なくせ、突然一人称が混ざってきます