今回、少し(?)無理のある独自解釈あります
作者的にはこの話を通して書きたかったことの一つなので満足ですが
もっと一人一人にスポット当てていきたい…でも文才ない…文才欲しい…
「……そうね。美城常務のお話は確かにいいものだったわ。翠さんが私を勧めてくれたのだから、その期待にも答えたい」
「なら」
「でもね」
高垣や他のアイドルたちほど長くなくても、シンデレラプロジェクトの少女たちにも翠の期待に応えたいという思いが芽生えていた。
だからこそ、翠の期待を裏切るようなことをした
渋谷の急かすセリフを遮った高垣の雰囲気は張り詰めており、三人は初めて感じる空気に飲まれて何も言えなくなる。
「たとえ翠さんであろうと、私にも譲れないものがある」
「ゆ、譲れないもの……ですか……?」
「仕事に大きいも小さいもないの。私たちは目の前にいる人を笑顔にする仕事。ただ
ファンの楓コールが聞こえ始める。
声が聞こえてくる方へ顔を向け、続ける。
「今の自分を支えてくれているあの時の笑顔。それを忘れずに進んでいきたい。一緒に輝いていきたいの」
高垣はステージに向かうため、体の向きを変える。
「自分のあり方、そして譲れないもの。私はこれをもって翠さん……いいえ。
そう言い残し、
「今日は本当にありがとうございます。あの日、あの時と同じ。このステージを覚えてくれている人はいますか?」
ファンの大きな声が会場を埋め尽くす。
「ありがとうございます。ここは私がデビューして初めて上がったステージです。一人で立つステージは心細く、不安でした。でも、そんな私を応援して共に笑ってくださる皆さんと出会いました。そんな大事な場所でこうしてまたライブをできることが何より嬉しいです。楽しんでいってください」
曲が流れ始め、歌が始まる。
この歌は誰もが恋愛をモチーフにしていると思っている。
高垣自身もそう思い、とある人を想って歌って
ここ数日、仕事を断ってから感じていたこと。
──いいえ。
これはきっと、アイドルになってからずっと分かっていたこと。
これは恋でなく──憧れ
この想い。
それは彼──九石翠を超えたいという気持ち。
初めから分かっていたのであろう。
いつまでも大人しくしていないと。
女の子は誰だってシンデレラなのだから。
──一番目立ちたい
そんな
私はあなたの元から巣立ちたい。
まだ、貴方に見守られていたとしても。
そう遠くない日には隣に立ってますから。
──心の底から貴方に笑って欲しいから。
☆☆☆
いきつけの居酒屋。
そこの個室には逃げられないよう、ドアから一番遠い席に高垣が座らされており。
アイドルがしてはいけないような表情をした片桐、川島、宮本、木村、一ノ瀬、塩見、安部がジッと高垣を見ていた。
城ヶ崎姉が不機嫌であったのは、年が一つ違うだけで参加できなかったためである。
あとで説明してくれると言われても『はい、そうですか』と納得できるわけもなかった。
逆の立場であるなら同じことを考えるだろうことは分かっているため、皆もあまり強く言えなかったのだが、高垣が改めて直接話をする場を設けるということでしぶしぶ引き下がっていったのである。
「それで、納得のいく説明をしてくれるのよね?」
「その前に料理を頼みませんか? 店員がいきなり入ってくるような状況を無くしたいの」
問い詰めるような口調で片桐が口にするも、普段通りの様子でメニューを開く高垣に皆の神経がささくれ立っていく。
言っていることに納得している分、余計にである。
頼んだ料理が出揃い、店員が十分離れたのを待ってから同じ問いかけを口にする。
「納得のいく説明をしてもらうわよ」
「……お猪口を一杯だけでいいの。貰えないかしら?」
「楓。誤魔化すのはなしよ」
「ままま、瑞樹ちゃんも早苗ちゃんも、お猪口を一杯だけなら見逃してあげようよ」
そのまま話が流れる可能性を無くしたい二人は甘いことを言う一ノ瀬に顔を向けるが、軽かったのは口調だけであり。纏う雰囲気はとても冷たいものであった。
「楓さんも、これで
「ええ、話すわ」
ここで言い争っても仕方ないと、二人も少し落ち着きを取り戻し。
高垣にお猪口を渡して酒を注ぐ。
「…………私だって、翠さんの期待を裏切りたくなんてないわよ」
一気に飲み干した高垣は顔をうつむかせながら、そう口にする。
「なら、どうして断ったのよ」
「……どうしても、譲れないものがあったの。デビューして初めて上がったステージ。そこで不安の私を支えてくれたファンの笑顔を私は裏切れない」
両手で包むようにして持っていたお猪口をギュッと握りしめ、高垣はうつむかせていた顔を上げる。
「私は翠さんの後輩である前に、ファンを笑顔にする、高垣楓というアイドルだから」
少しの間、静寂が場を支配したがその空気は緩み。
「…………はぁ」
「なんだか拍子抜けしちゃった」
「だったらわざわざこの席、必要なかったんじゃないの?」
長く付き合ってきて、見てきたからであろう。
その覚悟が理解でき、納得してしまったのは。
「私、最悪の場合は楓さんのこと殴る覚悟までしてたのに」
「私も八ツ橋で叩くぐらいは考えてた」
「フレちゃんに周子ちゃん、過激すぎない……?」
すでに気の抜けた面々はすでに冷めてしまった料理を取り分けていくが、一ノ瀬だけは納得していない表情をしていた。
「楓さん、全部話さないでそれはないんじゃないかな〜?」
「……そうね。そう言う約束だもの」
初めから高垣もこれだけで納得しない人がいる事は分かっていたのだろう。
特に同様などせず、少し間を置いて口を開く。
「私は──九石翠を超えるわ」
そのセリフ、例外なく皆は驚きをあらわにする。
「いつまでも頭を撫でられて褒められるのは嫌なの。だから私はもっと上を目指す。今まで何度も言われてきた
その目には先ほど以上の何かが込められていた。
「…………ぁぁ」
どこか気の抜けたような、納得したような声が皆の耳に届く。
それは一ノ瀬から聞こえ、そちらを見れば彼女はとてもいい笑みを浮かべていた。
「そっかそっか、そう言うことなんだ。あはは……ははっ、敵わないや! なら今回の件って……でも、いやまさか……」
「志希ちゃん……?」
一人で何か納得したようにつぶやき始めた一ノ瀬に、近くにいたという理由だけで皆から促され。塩見が恐る恐る声をかける。
「皆、とても愛されてるんだ! 翠さんに! 私たちが気づいていない今でさえも!」
話の流れを断ち切るようなことを言い始めた一ノ瀬だが、その回転の速さを皆知っているため。
言われたことについて考え始める。
「今回の美城常務の件、きっと翠さんには分かってたんだよ! でも
翠の考えていることに気づいた興奮からか、一ノ瀬は纏まっていないが口にしていく。
それを聞いていた皆は断片をつなぎ合わせていき、言いたいことを理解する。
「…………これ、他のアイドルに聞かせていいやつか?」
「そっか……私たちの成長のためなら、知ってるといけないのか」
「知ってても未来が分かるわけじゃないからそんな差はないと思うけど、不安要素はない方がいいしな」
「ううう、脅されようが誰にも言わないよう頑張ります!」
場が落ち着いてからどこまで話す、どこから話せないかの確認を終え、ようやくお酒を楽しめる空気へとなった。
当然、未成年の子に無理やり飲ませようとする人はこの場にいないため、その子たちにはジュースが注がれている。
「そっかぁ……フレちゃんたちはずっと翠さんから見守られていたのかぁ」