怠け癖の王子はシンデレラたちに光を灯す   作:不思議ちゃん

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前の話から半年、本編に至っては九ヶ月ぶりの更新……
今年の更新がこれ含めて13話……


83話

 朝、携帯のアラームが鳴り響く。

 

「うぅ……」

 

 うつ伏せで寝ていた安部は顔を上げることなく携帯へと手を伸ばしてアラームを止め、ようやく上体を起こした。

 

「はぁ……年々寝起きが辛くなる……」

 

 眠気を覚ますために顔を洗い、朝食を食べて仕事へ向かう準備を進める。

 忘れ物がないか確認を終え、靴を履いてドアノブへ手を伸ばした時。

 

『菜々にとってのウサミンって何?』

 

 つい最近、翠に言われた言葉が思い返される。

 その質問に対して返すべき答えは前と変わらない。

 

 なのに何故か、その言葉が深く胸に突き刺さるような──そんな気がした。

 

 ここでいつまでも突っ立っていたら仕事に遅れてしまうため。

 外に出て鍵を閉め、気持ちを切り替えるために頬を両手で2回ほど叩く。

 

「安部菜々。ウサミン星から職場へと向かいますっ!」

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

『舞踏会に向けてプロジェクト全体が力をつけていかなくてはいけません。外部にアピールできるよう、より皆さんの個性に特化した企画を考案中です』

『だったらミクたちからも企画を提案してもいいの?』

『もちろんです。一緒に考えましょう』

 

 集まった際、武内Pから伝えられたことであった。

 この状況をどうにかしたい少女たちにとって、それはとても嬉しい事であり。

 

「おっ、さっき話してた企画について、もう考えてるの?」

「うん。アイデアは浮かんだ時にまとめないと忘れちゃうからにゃ」

 

 さっそく、アイデアを紙に書き出している少女が。

 

「……にしても、猫200匹ライブって。もうちょっと現実的に考えようよ」

「そのくらいキュートさをアップしたいってことにゃ」

「李衣菜はなにか考えてるの?」

「もちろん。ロック色を強めて、より尖ったファン層にアピール!」

「李衣菜ちゃんこそ、早くギター弾けるようになるにゃ!」

 

 ギターを弾く真似をする多田に白い目を向ける前川。

 

「でも、考えた案が使われるもしれないって思うと嬉しいにゃ。前回はダメだったし、翠さんから…………」

 

 前川の口からふと出てきた名前に、場の空気が少し重くなる。

 

「翠さん、どうしてなんだろう」

 

 その問いかけに答えられるものは誰もいなかった。

 あれからパタリと翠に出会うことはなく、真意を聞くことができないでいる。

 

「それでも、私たちはやらなきゃいけないんだよ! 沢山レッスンしてくれたし…………お?」

 

 そんな雰囲気をなんとかしようとした本田だが。

 ふとテレビの音が耳に届き、そちらへと意識が向いたのに合わせ。皆もそちらへと目を向ける。

 

『大人気リズもん! よろしくお願いします。キャハッ!』

 

「安部菜々ちゃんにゃ」

 

 前川がそう呟いた後、武内Pが入ってくる。

 

「前川さん、多田さん。そろそろ収録に向かう準備を」

「はい」

「了解にゃ」

 

 テーブルに広げていたものを片付けて荷物をまとめ、2人は武内Pの後をついていく。

 

 

 

「菜々ちゃんだにゃ」

「おはようございます!」

「「「おはようございます」」」

 

 収録場所に向かうと、反対側から安部が向かって歩いてきた。

 互いに気がつき、挨拶を交わした後。

 

「あの時はカフェでご迷惑を」

 

 前川は何時ぞやのストライキの件を謝罪する。

 

「いえいえ。前にも似たようなことがありましたから……。はっ! こ、こうしてお仕事でご一緒できて嬉しいです! 頑張りましょう!」

「はい!」

 

 

 

 収録ではウサミンコールによって安部が僅差で勝利を収め、盛り上がりを見せる。

 その後はCMでボケが滑ったり、ウサミンのお天気コーナーがあったりしたが、何も問題なく収録は終了した。

 

 

 

「お疲れ様でした」

「Pちゃん、ごめんにゃ」

 

 前川としては勝負に勝って爪痕を残したかったが、うまくいった自信がなかった。

 そのことに気づいている武内Pは安心させるように首を横に振る。

 

「いえ、十分です。それよりすみません。自分はこのあと打ち合わせがありまして……」

「それじゃ、先に戻ってます」

「お願いします」

 

 武内Pと分かれた2人が歩いていると、安部と自称エスパーの堀が向かって歩いてくる。

 

「あ、ななちゃんにゆっこちゃん。お疲れ様にゃ」

「「お疲れ様です」」

「今日の勝負、してやられたにゃ!」

「いやぁ、たまたまですよ。……あと、崖っぷちに強いと言いますか」

 

 前川におだてられ、照れている安部。

 後にボソッと小さく呟いたことは聞こえていたようだが、内容までは分からないらしく。前川は笑みを浮かべたまま首をかしげる。

 

「サイキック支援が上手くいきました!」

「そ、そうなんだ……」

 

 その横では堀の強すぎるキャラに多田が引いていた。

 

「ミクは感動したにゃ! ウサミンコールが始まった瞬間から一気に空気が変わって、すっごくキャラが立ってたにゃ!」

「い、いやぁ……みなさんが盛り上げてくださったので」

「それもウサミンキャラあってこそにゃ」

「い、いえ、ウサミンはキャラとかじゃないんですよ? ウサミン星からやってきた、歌って踊れる声優アイドル! 安部菜々……うっ、……です!」

 

 決めポーズの最後。腰を痛めて変な声を出したが、気力でやり遂げる。

 

「かっこいいにゃ! 今日の菜々ちゃんを見て思ったにゃ。菜々ちゃんこそミクのライバル! ううん、目標なんだって」

 

 目をキラキラとさせながら語る前川。

 

「わ、私が目標ですか? えへへ……」

 

 安部は嬉しそうにするが、再び翠に言われた事を思い返し。前川の真っ直ぐな視線から目を逸らす。

 目を逸らされたのは照れているからだと思っていた前川だったが、その表情に影を感じ取り。引っかかりを覚えるが、口に出して問うことはなかった。

 

「なんだか熱い(・・)やり取りですね!」

 

 一人盛り上がっている掘。

 

「…………目標、か」

 

 そんな二人を見て。

 誰に問いかけるわけでもなく呟いた多田。

 合宿をした時にされた話を思い出し。今の自分を客観的に見て、どうなのと考えてみるが。

 ──その答えが出ることはなかった。




ヒカリでデレマスの一挙放送やっていたので録画しました。嬉しみ
今年中にウサミン回(1回目)は終えたいなぁ
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