パスッ、という音と共に心臓から血が吹き出し、そして倒れた。
自分ではなく、狙いが。的が。ターゲットが。
「ふひひっ、当たった。あたった当たった当たった当たった当たった当たった。ヒャヒャヒャッ」
ああ、これだよこれ。俺はこれが欲しかったんだ。この感覚が欲しかったんだ。ああ、もう最高だ。人を殺すなんて、こんな感覚、めったに味わえない。ああ、最高最高。もう死んでもいいかもしれない。
「なんなんだよこのライフル。発砲音がしねぇし、弾倉は馬鹿みたいにあるし、最高かよ。その上、このよく分かんねぇイベント期間中はいくら人を殺しても構わないってか、へへへっ、こんな最高なことがあんのかよ」
体の震えが止まらない。人を殺すという倫理観の崩壊に体が怯えているのだ。
人が人を殺せば、その時点でそれは人を辞めたことと同義になる、などと誰かが言ったり言ってなかったり、そもそも俺が捏造していただけだったりするが、つまるところそういうことなのだろう。
一度人を殺してしまえば、人間としての理性が失われてしまう。気に食わない人間は殺してしまえばいい、そういうことを覚えてしまう。それが果たしてどれだけの悪なのか、分かっているからこそ俺は興奮を抑えきれない。
「ふへへへっ、ははっははははっははははははっ!!」
まともな思考が出来なくなる。それでも俺はとりあえず逃げる。この場所から逃げて、逃げて、逃げて、そして逃げる。もしかしたら誰か、俺の存在に気付いているのかもしれない。だからその為に逃げるのだ。
まぁ、勿論のこと逃げきれなかったならばそのまま撃ち殺してしまえばいい話なのだが。
と、そんなことを思っていると、偶然一人の少年とすれ違ったた。
適度に急いで入るが、全力疾走という訳でもない、そんな平和的な走り方で、ついさっき撃ち殺した人間と同じ方向へと向かっている。
「へへっ、別にあと一人くらい殺したって構わねぇよな」
ぼそっと呟き、適度な距離を開けてから、振り返って銃で乱射する。狙撃にも乱射に向いている、そんなオールラウンダーの特別製の銃。そんな銃の、最高速度での乱射だ。
それを数分にわたって撃ち続けた。もはや蜂の巣であり、肉片が残っているくらいなのだろう。
そんな風に思っていたが、しかし、そこには何もなかった。
撃ちまくったせいで跡形もなくなったという訳でもない。
「……? 何だ? 何が起こったんだ?」
「君はさ、殺気が見え見えなんだ。人を殺す時っていうのはね、もっと穏やかに、なるべくクールにしないと」
視界が反転する。いつの間にか、つい先程すれ違ったはずの少年が、俺をねじ伏せてた。いつの間にここに移動して、いつの間にこんなことをしたのか、俺には理解出来なかった。
「あがっ!?」
銃口を口の中に突っ込まれる。
「さて、君は既に人を殺しているみたいだ。なら、僕も君を殺す躊躇いがなくなる。この世界でなくとも、どこの世界の人間にも、罪には過剰な罰さえもその後の抑止力と考えれば許されるなんてことを宣う人間がいるからね。個人的にはそんなものには反対だけれど、しかしそういう人間がいて、それが少なくないことも確かだ。だから、僕は無駄な抗いはやめておいて、その多数決の原理に従って君に罰を与える。人間の総意はつまり、僕の総意だからね。正確にはもう一人の僕だけれど」
そんなことを言いいながら少年は何か、行動をしているようだった。
すとんっ、と音がして、両手足が軽くなる。
「さぁ、これで君はもう逃げられない。じっくりと恐怖を味わいながらその時を待つんだね」
「ひ、あ、あんらおほれ」
なんだよこれ、と言おうとしても突っ込まれた銃口が邪魔をして上手く話せない。何が起きたのだ。何が起きれば両手両足が切り落とされるのだ。少年は何も持っていないのだ。そんな、まさか手で切ったとでも言うのか。
「そうだ。そうやって恐怖を体感していくんだ。それじゃあね」
「んぐっ!!」
俺のことばにならない声に、少年は満面の笑みで振り向き一言。
「そうそう、引き金を見てごらん?」
それだけ言って、少年は先へと進んだ。
「ッ!!」
ゆっくりと、数十秒に一ミリ程の進度で、引き金はゆっくりと引かれていった。
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ
死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない
思考がそれだけで埋まる。純粋なる生存本能。
しかし、それを無惨に打ち切る、銃声が一発。
たった一発。まるで神の力のようにゆっくりと引かれていった引き金。たったそれだけで人は死ぬのだ。人間は弱い部分しかない。弱い部分を強い部分だと誤解して、それで何とか自らのプライドを保っているだけだ。
だからこそ、その弱さを受け入れずに他者を傷付けることを選んだ人間は、真っ先に思考が止まる。浅ましく自らの命の延命を望む。
狂った人間は、狂った最期を迎えればいいと思います。十分に本望では。