さてさて、英語に少しばかり学のある人間なら、僕とそれ以外の者達とが違うと分かるだろう。嘘吐きの僕だけはこの世界において異質な存在なのだと、ついさっきまで思っていた。
僕は医者の息子で嘘吐きだ。嘘吐きだと言うからには今のも嘘なのかもしれない。もしかしたら僕は神様で、医者兼父親という役割をそこらの人間に押し付けて、自分の立場を作っているのかもしれない。それにそもそも僕の存在そのものが嘘なのかもしれない。誰かが描いた漫画或いは誰かが書いた小説に出てくる架空で空虚な、そんな登場人物の一人なのかもしれない。だけれども僕は、ここに僕が存在していると思っているからこそ僕はここにいると証明出来る。いやまぁ、思っているのではなく思わされているのかもしれないけれど。嘘吐きの僕は嘘だけで出来ているからどれが本当でどれが嘘なのか分からないし全部嘘なのかもしれないし、そもそも嘘吐きであることが嘘なのかもしれない。
そうだ実は僕は正直者でついさっきまで言っていたことは全部本当のこと、つまりは事実なんだ。なんて言うと怪しさ満点だからやっぱり僕は嘘吐きなのだろう。
多分、人間として未完成で、不自然で怪しい。そんな人間としての未完成作品で、だから僕は多分中途半端な嘘吐きなのだろう。
嘘も吐けば本当のことも言う。言わば僕はキャラ作りの出来上がっていない嘘吐きキャラなのだ。だからまぁ、最初のようにメタフィクションな話も出来るし、話の根幹に関わるようなこともさらっと言えたりもする。キャラが定まっていないキャラというのはある種のなんでもありのやりたい放題なキャラである。キャラ定まっていない間は、どんなことをしたって言ったってキャラが定まっていないと言えばそれで済むのだ。
段落を三つも使ってみたけれど、全部もしかしたらただの無駄話なのかもしれないからそろそろ閑話休題。
目の前にいる少年。やんわりとした笑みを浮かべる青年は、たった今一人の少女の存在を消した。僕の脳にももう彼女の存在は残っていないけれど、それでも僕は消したことを知っている。勿論嘘だけど。口から出任せだけれどね。
そんなことを出来る人間がいることを僕は知っていた。うん、これも嘘だ。いや、これは嘘なのかな。まぁいいか。
「ねぇ、でもおかしいよね」
「おかしい? 何がだ?」
船長役と父親役が、そんなことを尋ねる。おっとわざと間違えちゃった。船長とお父さんだった。
「だってさ、この島にはさ、これまで神様になった人しか辿り着いたことがないんだよ? なのに、どうしてそんな島と大きな島を繋ぐ定期船があるの?」
神様以外誰も辿り着いたことのない島を繋ぐ定期船。そんなものは存在してはいけないのだ。しかし、現実に存在している。そうして僕や他の人間達をこの小さな島まで運んだ。
「いい加減にしたらどうかな、兄さん。ううん、神様」
「神様? 何を言っているのかな。僕は人間として未完成な、ただの嘘吐きだよ。少年」
「そうだろうね。人間としても未完成で、そして神としても未完成なままで終わった、僕の双子の兄さん」
「ははっ、何を証拠に言っているのかな?」
「僕が少女を消したのは、神の力だ。そして神の力は神しか見ることが出来ない」
「なら、君が神なんじゃないの?」
「ならどうしてお前は見れているんだい?」
「さぁね、嘘吐きだから、僕は実は見えていないんじゃないの?」
「流石は嘘吐き。すぐに嘘を吐くね。だけど神の力を持つ僕にはお前の嘘も、見えているんだよ?」
「あははっ、じゃあ、なら説明してよ。僕が神である理由を説明してよ」
「簡単だよ。僕と君は双子の兄弟だった。言ったら、同じ遺伝子で構成された別人だった。その片方がこの小さな島にたどり着き、神の力を手にした。神の力を手にしたのは、この島に辿り着いた人間だ。だけどそれが、同じ遺伝子で構成された別人の僕にも適応された。だから僕も君も、不老不死のまま、こうして毎日を生きている」
「――正解」
あーあ。全く、つまらないな。
仕方がない。僕はもう僕でなくなる。僕は僕から、本来の俺に戻る。
「……久しぶりだな、弟よ」
「ああ、久し振りだね、兄さん。いい加減に、終わらせよう。こんなくだらない全てを、終わらせようよ、兄さん」
「それは、俺を倒してからにしな」
「勿論、そのつもりだよ」
嘘吐きって面白いですよね。だって本音を探そうと言葉を逆にとっても本音にはなりませんから。