悲鳴が目の前であがり、僕は全身に返り血を浴びる。
あはははははっ、殺しちゃった、殺しちゃった。あーあ、殺しちゃった。つい、うっかり、思わず、気が付けば、知らない間に、咄嗟に。
このイベントを僕は待ちに待っていたんだ。何せ、このイベントは死すらも自己責任だ。死んでしまったなら、それがどんな理由であれ、そいつが悪い。それがこのイベントで定められたルールの一つだ。
どうせ、どこかの馬鹿が責任を逃れるためにそうしたんだろうし、小さな島への道のりにどんな危険性があるか分からないがそれで怪我を負っても、ソイツが悪いのだという意味に捉えているのだろう。
だけど、残念ながらこのルールには穴がある。
だって、殺してしまったとしてもそれは死者の責任ということになるのだ。
幼い頃から人を殺してみたかった僕が、この絶好の機会を逃す訳がないじゃないか。
「……ッ」
「あれ? まだ生きてるの? 死んだと思ったのに」
殺したと思っていたのに、残念。
「まぁ、目も潰してあるし、足も切り落としたし、放っておけば死ぬか」
呟いて、視線を移す。そこには、息を切らしながらもこちらを凝視する人間がいた。既に僕が人を殺したことを察しているようだ。
「……見られちゃったか。仕方がないから死んでもらうよ」
宣言だ。宣戦布告だ。目撃者は殺す。それが僕の生き方。生存競争に勝ち、そういうことがあった事実すらも消し去る。何の記録も記憶もなく、僕は勝つ。
不戦勝。それが僕の美学だ。
戦わずして勝つ。戦った記録も記憶もなしに勝ったという記録と記憶を僕だけに溜め続ける。
今追いかけている少年を含めれば、これで僕の僕だけの不戦勝記録は丁度五十人目。
ああ、楽しみだ。どうやって殺そうかな。殺し方はどうしようかな。どこに放置しようかな。どこを切り落とそうかな。どこを潰そうかな。ああ、楽しみだ。楽しみだ。本当に楽しみだ。
楽しみだ。愉しみだ。樂しみだ。嬉しみだ。楽味だ。煕みだ。熙みだ。熈みだ。佚みだ。楽しみだ。愉しみだ。樂しみだ。嬉しみだ。楽味だ。煕みだ。熙みだ。熈みだ。佚みだ。楽しみだ。愉しみだ。樂しみだ。嬉しみだ。楽味だ。煕みだ。熙みだ。熈みだ。佚みだ。楽しみだ。愉しみだ。樂しみだ。嬉しみだ。楽味だ。煕みだ。熙みだ。熈みだ。佚みだ。楽しみだ。愉しみだ。樂しみだ。嬉しみだ。楽味だ。煕みだ。熙みだ。熈みだ。佚みだ。楽しみだ。愉しみだ。樂しみだ。嬉しみだ。楽味だ。煕みだ。熙みだ。熈みだ。佚みだ。楽しみだ。愉しみだ。樂しみだ。嬉しみだ。楽味だ。煕みだ。熙みだ。熈みだ。佚みだ。楽しみだ。愉しみだ。樂しみだ。嬉しみだ。楽味だ。煕みだ。熙みだ。熈みだ。佚みだ。楽しみだ。愉しみだ。樂しみだ。嬉しみだ。楽味だ。煕みだ。熙みだ。熈みだ。佚みだ。楽しみだ。愉しみだ。樂しみだ。嬉しみだ。楽味だ。煕みだ。熙みだ。熈みだ。佚みだ。楽しみだ。愉しみだ。樂しみだ。嬉しみだ。楽味だ。煕みだ。熙みだ。熈みだ。佚みだ。楽しみだ。愉しみだ。樂しみだ。嬉しみだ。楽味だ。煕みだ。熙みだ。熈みだ。佚みだ。楽しみだ。愉しみだ。樂しみだ。嬉しみだ。楽味だ。煕みだ。熙みだ。熈みだ。佚みだ。楽しみだ。愉しみだ。樂しみだ。嬉しみだ。楽味だ。煕みだ。熙みだ。熈みだ。佚みだ。楽しみだ。愉しみだ。樂しみだ。嬉しみだ。楽味だ。煕みだ。熙みだ。熈みだ。佚みだ。楽しみだ。愉しみだ。樂しみだ。嬉しみだ。楽味だ。煕みだ。熙みだ。熈みだ。佚みだ。楽しみだ。愉しみだ。樂しみだ。嬉しみだ。楽味だ。煕みだ。熙みだ。熈みだ。佚みだ。楽しみだ。愉しみだ。樂しみだ。嬉しみだ。楽味だ。煕みだ。熙みだ。熈みだ。佚みだ。楽しみだ。愉しみだ。樂しみだ。嬉しみだ。楽味だ。煕みだ。熙みだ。熈みだ。佚みだ。楽しみだ。愉しみだ。樂しみだ。嬉しみだ。楽味だ。煕みだ。熙みだ。熈みだ。佚みだ。楽しみだ。愉しみだ。樂しみだ。嬉しみだ。楽味だ。煕みだ。熙みだ。熈みだ。佚みだ。楽しみだ。愉しみだ。樂しみだ。嬉しみだ。楽味だ。煕みだ。熙みだ。熈みだ。佚みだ。楽しみだ。愉しみだ。樂しみだ。嬉しみだ。楽味だ。煕みだ。熙みだ。熈みだ。佚みだ。楽しみだ。愉しみだ。樂しみだ。嬉しみだ。楽味だ。煕みだ。熙みだ。熈みだ。佚みだ。楽しみだ。愉しみだ。樂しみだ。嬉しみだ。楽味だ。煕みだ。熙みだ。熈みだ。佚みだ。楽しみだ。愉しみだ。樂しみだ。嬉しみだ。楽味だ。煕みだ。熙みだ。熈みだ。佚みだ。楽しみだ。愉しみだ。樂しみだ。嬉しみだ。楽味だ。煕みだ。熙みだ。熈みだ。佚みだ。楽しみだ。愉しみだ。樂しみだ。嬉しみだ。楽味だ。煕みだ。熙みだ。熈みだ。佚みだ。楽しみだ。愉しみだ。樂しみだ。嬉しみだ。楽味だ。煕みだ。熙みだ。熈みだ。佚みだ。楽しみだ。愉しみだ。樂しみだ。嬉しみだ。楽味だ。煕みだ。熙みだ。熈みだ。佚みだ。
――っと危ない、思わずトランスしてしまった。
思わずニヤニヤしてしまう。愉悦してしまう。ああ、本当に愉しみだ。
だけど、その楽しみが、失せてしまう。見失ってしまう。
「……ッ、くそっ」
――愉しみだったのに。
なんてことだろう。森の中にいたせいか、地理条件が悪く、五十人目を見失ってしまった。
そしてそれはつまり、僕の敗北を意味する。敗北。僕にとってそれは、最も嫌いなものだ。
「あはははっ、そっか。そういうことか」
不戦勝だけでは生きていけない。やはり、どこかで決定的な敗北が待っている。向き合わなくてはならない敵がいる。恐らくそういうことなのだろう。どんな人間にもそれがあるのだろう。
例えば僕の場合は、自らの欲に塗れてしまったことを悔いなければならないのかもしれない。――する訳がないけどね。
まぁ、そんなことはどうだっていいか。うん、本当にどうだっていい。どうしようもなく、どうしようもない。もう、いいのだ。
だって、五十人目の不戦敗者は、僕なのだから。僕の美学はこれで終わりだ。美学の終わりで、僕の終わりだ。
銃声が鳴り響いた。
とある少年の脳を貫いた小さな銃声が。
しかし、それも全て自己責任なのだ。
勝者にだって事情はあるんですよね。