月夜に潜む狂犬   作:狂犬

2 / 6
思っていたより夕立の口調がやり辛い。

あと一応記載しておくと、本小説は艦これ方式です。メンタルモデル方式ではありません。


第2話

深海棲艦。

 

それは、人類の敵であり、海洋の支配者。

 

とはいえ、深海棲艦でも海域の全てを監視するのは到底不可能なのは当たり前。必ず何処かに穴がある。それに、艦娘によって深海棲艦が近付けない海域だってある。

 

その海域を通り、雲によって所々光が遮られた闇夜の中、横須賀へと向かう一隻のタンカーと4人の艦娘の護衛艦隊が居た。

 

「後二時間で鎮守府正面海域に到着します。皆さん、警戒を怠らないで下さい」

 

「「「はい!」」」

 

護衛艦隊の旗艦である軽巡洋艦〈神通〉の指示に元気良く答えたのは、駆逐艦〈睦月〉、〈吹雪〉、〈響〉。

 

彼女達の任務は、横須賀鎮守府へと弾薬と燃料を輸送するタンカーの護衛。

 

タンカーのルートは終始艦娘によって解放された安全域を通るが、深海棲艦の襲撃の可能性はゼロでは無い。その為、彼女達護衛艦隊がタンカーに付いていた。

 

「…こちら響。レーダーに艦艇を捕捉した。九時方向、数一…この反応、艦娘みたいだけど、反応が妙だね…電探の故障かな?接近中」

 

ふと、タンカーの右後方の位置に付いていた響から報告が入る。

 

「こちらでも捕捉しました。確かにこの反応は艦娘だと思いますが…一人でこんなところに…?通信を入れてみます」

 

そう言って、神通は右耳を押さえ、通信回線を開いた。

 

「こちらタンカー護衛艦隊旗艦、神通。此方に接近中の艦娘さん、応答願います。繰り返します。こちらタンカー護衛艦隊旗艦、神通。こちらに接近中の艦娘さん、応答願います」

 

しかし、ノイズが走るのみで応答は無い。

 

「…もしかして、何かあったのでしょうか?」

 

「そうかもしれませんね…吹雪さん、様子を見てきて貰っても…」

 

 

その時タンカー周辺の海面が、二つの飛来音と共に水飛沫を上げる。

 

 

「砲撃…まさか!?」

 

「目標増速!!速い…!!真っ直ぐ突っ込んで来てるよ!!」

 

「こちら神通、聞こえますか!?直ちに攻撃を停止して下さい!!そちらが攻撃しているのは味方です!!」

 

突然の砲撃に戸惑い、混乱を起こす護衛艦隊。

 

そして。

 

 

『知ってるよ。そんな事』

 

 

通信に、返答が入る。

 

『こっちの要求は一つだけ。タンカーの中身を少しだけ分けてくれない?そうしてくれれば、私も何もしないから』

 

しかし、その返答は一方的な要求。いきなり砲撃しておきながら、護衛対象が運ぶ物資を分けろと言われて、すぐに了承する者はいるだろうか。

 

「その要求は飲めません。そちらの所属と艦名を明かして下さい」

 

『…佐世保の亡霊』

 

「なっ…!?」

 

『そういう事だから。断ったから、無理矢理奪わせて貰うわ』

 

そう言って、通信は切れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃあ、始めましょうか」

 

通信を切った夕立はマフラーで口元を隠し、更に増速。艦娘最速である島風をも思わせるスピードでタンカーと護衛艦隊へと接近。既に視界にタンカーの光を捉えている。

 

そして、右手に持つ連装砲の引き金を引き、砲弾を発射。

 

角度を付けた放たれた二発の砲弾は、山なりの軌道を描き、回避行動を取っていた吹雪に命中。背中に背負う巨大な機械、〈艤装〉を損傷させ、一撃で中破にした。

 

しかし、彼女達もただの的では無い。応戦を開始し、多数の砲撃が降り注ぐ。

 

それの砲炎を見た夕立は、連装砲の砲口を更に上へと向け、発砲。

 

 

次の瞬間、夕立に直撃する砲弾と夕立の発射した砲弾が〈空中で正面衝突〉。空中で爆発し、残りの砲弾は全て夕立から外れた海面を叩いた。

 

 

タンカーまで二キロに差し掛かり、護衛艦隊を目視。軽巡洋艦一、駆逐艦三。

 

そして、最大戦速。更にその身を加速させ、マフラーと特異色の長髪が更に棚引かせ、回避行動。身を屈め、四隻から発射される砲弾の嵐をを掻い潜る。

 

最初に狙うのは、旗艦と名乗った神通。その姿を認め、真っ直ぐと突撃する。

 

「くっ…!!」

 

自身が狙われているのに気付いた神通は、主砲を連射。更に酸素魚雷を発射し、回避行動を阻害させようとする。

 

 

しかし、夕立の行動は神通の予測の上を行った。

 

 

夕立は速度を落とすと同時に膝を降り、空中へとジャンプ。信じられない高さまで跳躍し、砲弾を避けると同時に連装砲を海面へと向け、二発の砲弾を発射。砲弾は海面を進む酸素魚雷に命中し、海中で爆発。

 

「なっ…!?」

 

その出来事に驚きながらも、慌てて主砲を再装填して照準を合わせようとする神通。

 

その時、既に夕立は次の行動に移っていた。

 

右太ももの魚雷発射管から魚雷を抜き取り、右手の人差し指と中指で魚雷を挟み、自ら空中に投げ出した身体を横に一回転。その回転を勢いに、魚雷を神通に〈投擲〉した。

 

魚雷は、一撃であらゆる船体の装甲を貫く威力を持つ。それを水の減衰力が無い空中で爆発したらどうなるか?それは、致命的な威力へとなり得る兵器へと昇華する。

 

とはいえ、本来は〈水雷〉として運用する魚雷を〈投擲兵器〉として使用するとは誰が思うだろうか。

 

投擲された魚雷は神通の目の前の海面で炸裂。強力な爆発と破片が神通を襲い、全ての主砲とカタパルトを破損させただけで終わらず、破片と爆風が服と身体を損傷させる。更に巨大な水柱を起こし、神通の視界を塞いだ。

 

神通の武装を全て無力化させ、身体を海面へと着地させた次の標的は、響。

 

選んだ理由は特に無い。唯、偶然視界に入っただけだ。

 

右腰に付いている単装砲を響へ照準。即時発砲し、怯んでいた隙を正確に突く。

 

砲弾は響の持つ連装砲に着弾。機構を破壊し、装填していた砲弾の火薬が炸裂。暴発し、連装砲をバラバラに解体させた。

こうして夕立は、交戦時間僅か二分で護衛艦隊の火力の約半数を無力化させた。

 

次の標的に定めたのは、本命のタンカー。とはいえ、その巨体さ故に、直接乗り込むのは難しい。

 

 

しかし、夕立にその程度の常識は通用しない。乗り込む道が無いならば、乗り込む道を〈作れば良いだけ〉なのだから。

 

 

タンカーの側面に高速で接近しつつ、海面から二メートル上に位置する装甲に、右手に持つ連装砲の狙いを定めて発射。着弾地点が爆発し、側面に決して小さくない穴を開けた。

 

その穴に夕立はジャンプして飛び込む。しかし勢いを落とすのを忘れての突入の為、かなりの速度だ。

 

「あ、うわっ、わ、わぁー!!!?」

 

当然すぐに止まれる筈も無く、部屋の壁に激突。それだけに終わらず、なんとその身体が壁を〈貫通〉し、その衝撃で転んでやっと止まった。

 

「いたたた…速度を落とすのを忘れてた…」

 

ずり下がったマフラーを口元に戻しながら身体を起こすと、何層も積み上げられたコンテナ群が視界に入った。

 

すぐに夕立は最寄りのコンテナのドアをこじ開けてみると、中には箱詰めされた大量の弾薬が入っていた。

 

「選り取り見取りね。だけど私に必要なのは…」

 

大量の弾薬の中から、連装砲と単装砲の規格に合う弾薬を見つけて、用意していた布袋に入れれるだけ入れ込み、更についさっき使用した連装砲と魚雷発射管の弾薬を装填。

 

弾薬の補給を完了させ、次に狙うのは燃料。

 

コンテナを次々とこじ開けて燃料の有無を調べる。

 

そして17回目のこじ開け。そのコンテナの中身は大量のドラム缶。

 

その中の一個を左手で掴み取り、すぐに側面の穴からタンカーの外へと飛び出した。

 

その時、中破した吹雪と連装砲を破壊された響は損傷した神通へと向かい、唯一無傷で済んだ睦月はタンカーへと上がろうとしていた。

 

「あっ!!」

 

吹雪が声を上げるも、時すでに遅し。

 

連装砲を照準させようとした時には、既に夕立の姿は闇夜に消え、詳細な位置を見失ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その十数分後。

 

「いつもみたいに上手く行ったっぽい。皆」

 

雲が途切れて月光が照らす海の上。

 

「これでまた、暫くは大丈夫。次の補給までに、あいつを仕留めたいっぽい」

 

マフラーを首元に戻し、夕立は自身を照らす満月を見ていた。




魚雷=投擲兵器という、使用方法を間違えてる運用。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。