月夜に潜む狂犬 作:狂犬
今日の夕立の一日は、昼から始まる。
太陽が上から照らす中、夕立は起床。頭を軽く振って目覚ましし、ボロ小屋の隣の部屋へと移る。
隣の部屋には山盛りの弾薬が入った木箱、複数の燃料入りドラム缶、工具箱、その他諸々が所狭しと置かれていた。それら全てが、さまざまな方法で強奪した資源であり、貴重な貯蓄を保管する部屋となっていた。
その中に紛れて置かれているのは、夕立の艤装と武装。
夕立は工具箱を手に取って艤装の側に寄り、艤装の点検を開始する。
複数のレンチを使って艦橋を模した艤装の一部を解体し、部品の状態を確認し、損傷が皆無、もしくは軽度の場合はクリーニングする。中度以上の損傷が見える部品は、予備の互換性がある部品に入れ替え、廃棄する。
両手の汚れも気にせず、今度は艤装についている単装砲の状態チェック。砲身の状態、内部機構、砲台の回頭に不具合が無いか調べる。
最後に、夕立の愛用する連装砲〈12.7cm連装砲B型〉を点検。砲身の状態は勿論の事、装填機構、内部機構をチェック。更に燃焼排莢方式(※1)によって生じた、砲身内に残る灰の排除を行う。
砲身を取り外し、専用クリーニングの棒で砲身を清掃。すると砲身から灰が床へと落ちていく。
30秒程クリーニングし、砲身を取り付けて固定。動かして不具合が無いか確認する。
「…良しっ」
点検を完了し、両手に付いた汚れを近くの布で拭き取る。
その時、夕立の腹から〈クルル…〉と音が鳴る。
そうなるのも当然の事だ。起きてから何も口にしていないのだから。
「…」
夕立は布を元の位置に戻して隣の部屋へと戻り、手作りの弓矢を持ってボロ小屋から出る。
ボロ小屋の位置は、無人島の森の中。しかし50m進めば砂浜に出る位置にある。
しかし、夕立は逆に森深くへと進んでいく。今回は魚を狙うのでは無く、森に住む鳥や獣を狙う。
進む事十数分。草木を掻き分けて静かに進んでいた足を止め、ゆっくりとその身を屈める。
夕立の視線の先にいるのは、水辺にて羽を休めている数羽の大型の鳥。
音を立てずに可能な限り接近し、ゆっくり弓矢を構え、狙いを引き締める。
「…!」
そして、矢を放った。
放たれた矢は、微妙に吹いていた風に流されつつも、正確に一羽の喉元に命中。致命傷となり、そのまま水辺に倒れる。無事だった鳥達は慌てて飛び立っていった。
それを見ていた夕立は、自身が仕留めた鳥の元へと向かい、手に取って毛を毟り取りつつボロ小屋周辺へと戻る。
ボロ小屋周辺に戻った夕立は、調理の準備をし始めた。
周囲から適当に枝を集めて一箇所に固め、その内の一本を仕留めて毛を毟り取った鳥に突き刺し、枝の塊の側の地面に刺す。
そして、枝の塊に微量の燃料を垂らし、そこに艤装点検で出た廃材で代用した火打石を叩き、着火。火加減を調整しながら焼き鳥を作る。
数分もすれば良い焼き加減の丸焼き鳥となり、それを食べ始めた。
多少生焼けもあったが、夕立は問題無く完食。火も鎮火させてボロ小屋の中へと入り、夜を待つ。
(※1)・・・燃焼排莢方式
発砲時に発生する熱量によって薬莢を完全燃焼させる排莢方式の事。これにより廃莢口を必要とせず、連射能力を高める事に成功しているが、砲身内に灰が溜まる事による不具合が発生しやすい欠点がある。その為、燃焼排莢方式を使用する砲台は、定期的な砲身のクリーニングが必要。