花咲く干物妹!うまるちゃん   作:Hai人

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うまるちゃんを見終えてつい書いてしまった……。


第一話:うまると引っ越し

 それは、いつもと変わらない平日のことだった。

 

「えっ……転勤……?」

 

 俺、土間タイヘイは目を見開き、目の前にいる課長の叶に迫った。

 叶は険しい表情で静かに頷く。

 

「ええ……そうよタイヘイ」

 

「待ってくだ……待ってくれよ叶!! 何でそんなことに……」

 

 思わずプライベートの時の口調になってしまうが、構わずに理由を問う。叶は目線を落としながら答える。

 

「実は、私たちホテルのサービス事業にも手を出し始めていたでしょ? で、今この旅館から応援要請があるの」

 

 俺の会社は《ダイヤモンド・サービス》という名前で、あらゆるサービス系の業務を担当している。といっても接待とかそういう類いではなく、他会社の経営サポートやシステム管理などを行っているのだが、最近は業績が伸びてきて、ホテル会社にも手を出し始めていた。

 叶は手元にある資料を俺に差し出す。俺は黙ってそれを受け取り、一枚一枚に目を通す。

 

「叶……この旅館の名前、何て読むんだ?」

 

 俺は、旅館の名前のところに書いてある《喜翆荘》という文字を指差しながら訊ねた。

 

「きっすいそうよ。石川の湯乃鷺温泉の辺りかしらね」

 

「聞いたことないなぁ……」

 

 そう言いながら俺は資料をめくる。経営状況や業績を見ると、そこまでいいわけではなく、このままでは最悪の事態にもなりかねないものだった。掲載されているホームページも陳腐なもので、パソコンが不得手な人間が作ったのだと伺える。

 ここまで読んで俺は察した。つまり、こうして毎日パソコンに向き合っている俺を欲しがっているのだ。

 

「要するに……経営回復のために、俺を欲しがっているわけですね」

 

「まあそういうことよ。本当なら本場かアレックスにしたかったんだけど、一番優秀な人にしてくれと社長に言われたからね……。喜翆荘のオーナーと知り合いなのよ、うちの社長」

 

「俺はそんな優秀じゃないっすよ」

 

「謙遜しないでタイヘイ……あなた高校の時は100点連発してたじゃない」

 

「それとこれとは話が違うよ叶。ーーーでも、これって社長命令ですか?」

 

「……ええ。しかも、その社長さんが常連さんなのよ。だから、断るわけにはいかなくて……」

 

 つまり、俺に拒否権はないわけか。

 別に転勤そのものに関しては抵抗はない。確かに生まれてこの方ずっとこの東京に住んできたので離れてしまうのは辛いものがある。だが、そこまで執着があるとは言えないし、別のところに住居を構えるのも面白い。

 ただ問題がある。一緒に同居している妹のうまるだ。うまるはきっと反対するだろう。妹は自炊も出来ないだろうし、友達の家に預けようにもとある事情でそれは出来ない。よって必然的に連れていくしかない。となれば妹は怒るだろう。何せこれから田舎に行くのだ、何もない田舎に。

 ただ拒否権がないのならば仕方がない。俺は叶に向き直った。

 

「分かった……いや、分かりました課長。その話、承ります」

 

「…………そう」

 

 叶は凄く寂しそうな顔をして俺を見つめた。何で彼女がと思ったが、そういえば長い間俺と叶は一緒だった。寂しくないわけが、ない。俺だって、何だかんだでこの多忙な日々が好きだった。妹と世話と会社の両立のこの二つの生活は嫌いじゃなかった。

 

「期間は、どれくらいですか?」

 

「分からない……でも、経営が立て直ったらきっと帰ってこれるわ。その時には、連絡して」

 

「そうですか……出発は?」

 

「明後日よ。それまでに荷造りお願いね。あと、住まいは既に用意してあるから心配ないわ」

 

 声のトーンは暗いが、叶は気丈な顔をしている。俺は話し終えた叶の肩に触れた。

 ビクッと全身を震わせた叶は顔をわずかに赤らめていた。

 

「叶……大丈夫。俺はきっと戻ってくるから。だからさ……席、取っておいてくれよ」

 

 安心させるように俺は微笑むと、叶は顔を震わせて、やがて両手で覆った。そこから漏れる嗚咽を聞きながら、俺は新しい生活のことを考え始めていた。

 

「転勤か……」

 

 

 

***

 

 

「はっ、やぁっ、ていっ……よしっ!! アイテムドロップしたぁーーーっ!!」

 

 俺がアパートに戻り、ドアを開けると喧しい叫び声が耳を貫いた。誰の声かはもう分かっている。俺は取り敢えずただいまと口にし、正に叫び声を発したうまるからの嬉しそうなおかえりが返ってくると、少しだけ心が和むのを感じた。

 帰りに寄ったスーパーで買った食材をキッチンに置き、冷蔵庫に入れる。しかしここの生活がもうじき終わるのは、正直実感がわかない。

 何故なら、リビングへと行くとそこにはゲームをしてぐうたらする、身長40センチほどのうまるが今日もハムスターのフードを被って楽しそうにしているからだ。コーラ片手にプレステ、パソコン、スマホを遊び尽くす、世間でいう引きニート的な生活をしているのだが、これで外に出ると、160センチに大きくなって才色兼備な女子高生に変身するのだから不思議だ。実際兄の贔屓目を抜きにしても可愛いと思うし、よく恋人として間違えられるくらいに、妹らしくない美少女だ。でも、俺はこんなぐうたらした内面を知っているから、恋愛感情どころか悩みの種と化している。まあ、最近はこれが日常であり、別に構わないと思っていた。

 俺はうまるの好きなハンバーグを作りながら今日あったことについて考える。明後日にはもうこの慣れ親しんだこの地を離れなくてはならない。そうなればーーー妹の学校は絶対に変わる。つまり、仲良くしていた人たちと離れなくてはいけなくなるのだ。同じアパートの海老名ちゃん、うまるを慕っている切絵ちゃんをはじめとした人間と、暫くではあるけれど別れを告げなくてはいけなくなる。それをうまるに、今日伝えなくちゃいけない。

 俺は意を決して、皿に盛られたハンバーグと共に食卓へと向かった。

 

「うまるー、ご飯できたぞー」

 

 平静を装って、俺はぶっきらぼうにうまるに声をかける。何も知らないうまるははーいと嬉しそうに座布団を3枚ほど積んだ席にちょこんと座る。

 

「ハンバーグだぁ!! やったぁ~、いただきまぁす!!」

 

 うまるは箸を素早く動かしてハンバーグを味わった。子供のようにはしゃぎながら食べる姿を見て、俺は和まされた。言うのは、食事が終わってからにしよう。そう思いながらハンバーグを噛み締めた。

 

「はぁ~お腹一杯……さて、宴を始めよ~」

 

 夕食を食べ終えたうまるは満足したように笑顔を浮かべながら、何時ものようにぐうたらタイムを過ごすことを宣言した。早速大好物のコーラを持ってこようと冷蔵庫へと向かう。

 だが、俺はそれを呼び止めた。

 

「うまる」

 

「なぁにお兄ちゃん?」

 

 だらっとした声音で俺に問うが、俺は極力真剣な表情でうまるを見た。それを見たうまるは何かを察したかのように、ぎょっと目を見開く。

 

「ちょっと、話があるんだ。だから、そこに座ってくれ」

 

 俺はさっきまでうまるが座っていた、つまれた座布団を指した。うまるは珍しく不平を言わずにそこに座る。俺も反対側に座る。

 

「ど、どうしたのお兄ちゃん……話ってなに?」

 

 おどおどした表情で俺に問う。恐らく今うまるの頭では、何か悪いことをしてしまったのではと必死に思考を巡らせているのだろう。確かに思い出せばキリがないが、そんな話よりももっと大切なものだ。

 そう、俺たちの生活を揺るがしかねないものだ。

 

「うまる……単刀直入にいうぞ。俺は仕事で転勤になって、石川県の僻地に引っ越すことになった」

 

「………………え? ……え? 石川って……あの、北陸の方だよね……?」

 

 静寂が流れる。うまるの、虚ろな声がただただ1DKの狭い家に響く。

 そしてーーー。

 

 

 

「うぇえええええええええぇぇぇえええええぇぇえええええっっっーーーーーー!!!!?」

 

 

 

 

 

 うまるの、渾身の叫び声が家はおろかアパートまでも揺るがした。近くにある料理器具が床に落ちていった。俺の鼓膜がどうにかなりそうだった。それくらい、うまるの叫び声は大きかった。まあ、こうなることはわかっていたけれど。

 

「やだやだやだやだやだぁ~~~!!!! どうしてなのお兄ちゃん!? どうして石川県なのーー!!」

 

「し、仕方がないだろ! 仕事なんだから!! 石川の旅館に派遣されることになったんだよ……」

 

 泣き叫びながらうまるは抗議する。しかし、こればかりはどうしようもない問題だ。俺だって行きたくないのだ。

 だがそんな気持ちなんてうまるは知ることはなく、泣き止むどころかベッドにダイブでぐるぐる転がって抗議し始める始末だ。

 

「何でお兄ちゃんは社畜みたいになってんの!? 何でうまるも行かなくちゃ行けないの!! お兄ちゃん一人でいけばいいじゃん!!」

 

「お前俺なしで生活できんのかよ!? グータラして終わる始末だろ!! あと俺は社畜じゃない!!」

 

「うぐっ……じゃ、じゃあ海老名ちゃんのところで生活する!」

 

「海老名ちゃんはお前のそのぐうたらっぷりを知らないだろ? そうしたらぐうたら出来なくなるぞ。あと、海老名ちゃんは独り暮らしだから迷惑かけるわけにはいかないだろ」

 

「じゃ、じゃあ切絵ちゃんの家に……あ、家知らないや。それにあの子にはこまるで通しているから学校行けなくなるし……うまるの姿でもぐうたらできないし……。シルフィンだと何かと大変そうだしな……うぅ……だめだぁ~~……」

 

 うまるはどうやら策が尽きたらしくベッドにうつ伏せになった。うまるの場合、外面と内面で使い分けているため、色々と面倒な関係になっている。ある人には完璧なうまるを、ある人にはぐうたらな《こまる》を見せているため、ばれたときには周りは絶対に困惑する。そのため、俺以外の人間にはうまるを任せることはできない。そもそもうまるの自業自得ではあるのだが。

 

「つまりお前は、俺と一緒にいく以外に選択肢がないんだ」

 

「えぇ~……どうにかならないのお兄ちゃん……?」

 

「すまん、こればっかりは……」

 

 俺は頭を掻きながら答えた。うまるはなおも諦めずにうんうんと頭を悩ませていたが、もう解決策なんかありもしない。その結論に達したうまるははぁとため息をついた。

 

「出発は……?」

 

「明後日だ。だから、明日海老名ちゃんたちのところに行こう」

 

「……うん」

 

 うまるはすっかり元気を無くしたようだ。声に覇気がない。明日はうまるの待ち望んでいた休日だというのに、ベッドで死んだように動かない。

 

「ごめんな、うまる……俺、頑張ってここに戻ってこれるようにするからな」

 

「……お兄ちゃんのせいじゃないよ。転勤なら、仕方ないよ。でも、明日はぐうたらしていいかな?」

 

 珍しく聞き分けがいいな。俺は少し驚きながらも、嬉しく感じた。うまるは、優しいのだ。昔から、ずっといい子なんだ。

 俺はうまるの頭を撫でながら、首を縦に降った。

 

「挨拶は、忘れるなよ?」

 

 

 

***

 

 

 次の日、俺はうまると共に海老名ちゃんの部屋に来た。海老名ちゃんはしゃくりながら泣いてくれた。うまるは安心させるように肩を何度も叩いていたけれど、やはり泣き止むことはなかった。無理もない。海老名ちゃんの唯一の友達が離れていってしまうのだから。俺も何だかんだで仲良くしていたのでとても寂しい。無論うまるも凄く寂しそうだった。

 明日は見送りにいきますと泣きじゃくりながら言った海老名ちゃんは、そのまま部屋に戻っていってしまった。若干の後味の悪さを残しながら、一度家に戻った。

 他にも挨拶しなくてはならない人たちもいるが、正直メールアドレス以外に知っている情報はない。しばらく俺達は黙ってそれぞれの知人に一言告げた。お世話になった切絵ちゃんに関しては、うまるの携帯に俺の分の言葉も添えてもらった。反対に本場にはうまるが俺の携帯を使ってメッセージを送った。

 一通り終えると、俺達は早速荷造りを開始した。うまるはぐうたらしながらだったが、何だかんだで手伝ってくれた。うまるの私物はめちゃくちゃ多かったけれど。

 数時間がたち、トラックに詰め込むと、部屋の中は、本当に空っぽだった。ベッドと机があるだけで、普段散らかっているポテイトやゲーム機、その他もろもろが一切無くなっている。二人ですんでいて凄く狭く感じた家だったけれど、こうしてみると、広く感じるものだ。何か大切なものを失った気分に、なりかけている。

 

「何にも、無くなっちゃったな……」

 

「そうだね~……本当に引っ越すんだね」

 

「ここでやっぱり引っ越しませんという流れはさすがに勘弁だな……」

 

 何もない部屋に流れるのは当然沈黙。うまるはぺたんと座り込み、ため息をつく。俺もそれに倣って隣に座る。

 

「……静かだな」

 

「うん……何か、何もしたくなくなる感じだね」

 

「そうだな……いつもうまるがここで騒いでいてさ」

 

「それで、お兄ちゃんに怒られて……」

 

 そう、この妹との共同生活はいつも煩かった。妹のぐうたらっぷりに俺が怒り、家事に専念していた。安息なんてほど遠いもので毎日毎日大変だった。でも……こうしてみると、それがないのが気になってしまう。俺は、その生活を受け入れていたんだろうな。無意識の内に。

 

「もう、この部屋とお別れなんだな……」

 

「うまるはこの部屋は好きだよ。ゲームがあって、アニメがあって、漫画があって……お兄ちゃんがいて、楽しかったよ」

 

「それだけじゃないだろ? 海老名ちゃんや切絵ちゃん、本場とかもいたろ」

 

「シルフィンもいるよ。ゲーム友達だけどね」

 

「そっか……お前、友達たくさんいたんだな……」

 

 それを知ったら余計、行きたくなくなった。うまるのその大切な友人関係を絶ってしまいかねないからだ。うまるの友達は優しいから大丈夫だろうけど、やはり変化がないとは言い切れない。でも、もう変えられない。

 

「うまる……今度行くところはかなりの田舎だ。それでもいいか?」

 

「……まあ、仕方ないよ。ゲームだって今あるので我慢するし、ぼんばーに買ってもらえばいいから、うまるは我慢するよ」

 

 驚いた。言った内容はどうであれうまるからそういう言葉が出るとは。やはりもう観念しているのだろう。でも……それがうまるらしくもあった。うまるはわがままなところもあるけれど基本的には素直で従順だ。俺はすまないと心のなかで謝りながら頭を撫でた。

 

「よし、いい子だ。よし、じゃあ今日は焼き肉でもいくか」

 

「焼肉!? やったぁ~!! うまる焼肉気分だったんだよー」

 

「そうと決まれば、行くぞ」

 

「おぉ~!」

 

 俺達は早速外を出て、近くの焼肉屋さんへと向かった。最後の夜だ、奮発して上手い肉を食べまくった。うまるもスッゴク美味しそうに食べていたので来た甲斐があった。前は俺のせいで失敗してしまったけれど、今度は上手く行き、美味しく食べることができたから余計気分がいい。

 よく考えたら別にうまると別れる訳じゃない。うまると常に一緒なのだ。ならば、こういう時間を過ごすことはきっと向こうだって出来る。一緒にいる限り、楽しい時間を過ごすことは出来るんだ。

 俺とうまるは焼肉屋を後にし、すぐに寝た。明日の朝はとても早い。だから、遊びたがっているうまるを強引に寝かせたのだった。

 

 

 

 

***

 

 

 海老名ちゃんの見送りを受けて俺達は電車で東京駅へと向かった。うまるは電車は嫌いだが、今日は妙におとなしかった。文句を言っても俺を困らせるだけだと、分かっていたから。そううまるが大人しいとちょっとやりにくいが、煩くても困るので何も言わないでおいた。

 東京駅へと向かい、北陸新幹線に乗ると、うまるは新しい住居について聞いてきた。主な質問は、近くにゲームショップやゲーセンがあるか、というものだが、残念ながらそういうものは近くには存在しない。その事を告げると、うまるは不平を述べた。だが、覚悟を決めているようで部屋でぎゃあぎゃあ騒ぐほどではなかった。

 そして数時間が過ぎ、金沢駅につく。ここは最近北陸新幹線が開通したため、駅はやたらと大きい。だが、俺たちがいく場所は、もっと遠い。

 取り敢えず駅を降りて近くのレストランで食事をとると再び電車に乗ること数十分。俺たちはついに《湯乃鷺駅》と呼ばれるところについたのだった。俺たちが住んでいた東京の駅とは天と地ほどにかけ離れていた。まず駅に人はほとんどいない。自動販売機もない。あるのはコンクリートとその上にある、駅名が書かれた白い看板のみだ。まさに、田舎の駅といえるものだった。

 取り敢えず駅を出ると、うまるはグッと伸びをした。ずっと電車での長旅だったので体が凝るのは仕方のないことだ。うまるは珍しいものを眺めるような目をしながら呟いた。

 

「ここが、うまるたちの新しいところ……」

 

「ああ、空気がいいな。さっきの海鮮丼も上手かったし、ここは自然に溢れてるよ」

 

「そうだけど、電車の本数が少ないのは困るね」

 

「確かにな。まあ東京より交通の便が悪いのは仕方ないさ。さ、歩くぞうまる」

 

「うへぇ……こっからあるくのかぁ……」

 

 ぐってりした体勢で荷物を引きずりながら歩く。完璧な外見が台無しになるくらいに、だらしない表情をしている。昼飯を食ってから結構時間はたっているため、疲れが溜まっているのかもしれない。

 駅から歩くこと十分たつと、長閑な自然の風景に新たなものが現れた。ずいぶん大きな建物が見えてきた。それは少し高いところに聳えるようにして立っている。俺は、地図を確認する。間違いない、ここが俺たちの新たな住居だ。

 最後の辛抱だぞとうまるに告げて、長い長い階段を上り始める。疲れた体に鞭を打ちながら、必死に頂上まで上っていく。ぶっちゃけそんなに高い訳じゃないが、疲労した体にとっては、徒歩で地球一周するほどにキツい。

 それでもやっとの思いで上りきり、息を整えると。

 

「着いたぞ……」

 

 目の前には、喜翆荘と呼ばれる、荘厳な旅館があった。どこかの大屋敷を連想させるような大きな入り口、そしてその西側は西洋風のデザインが施され、東側は古風な横長になっているという、和洋折衷な構造になっている。確か資料には、大正時代から存在していたとあった。経営を開始したのは昭和からのようだが。

 なるほど、思ったほど立派だ。ボロいところを想像していたが、清潔そうだし、うまるも快適に過ごせるだろう。

 

「お兄ちゃんお兄ちゃん」

 

「何だ、うまる?」

 

「もしかしてうまるたち、ここで住むの?」

 

「あれ、言ってなかったか? ここで住まわしてもらえるんだ」

 

 もちろん、条件付きではあるがそれは言わないでおく。絶対にうまるは反対するだろうし。

 

「ええっっ!? こんなでっかいところに住めるの!?」

 

「ま、まあな。ただここは旅館だがら、一般の人もいるし全部使えるというわけではないけど」

 

「うまるビクビクしてたよ。田舎って聞いたから、もっとボロいとこかと思っていたら、案外きれいじゃん! とにかくお兄ちゃん、中入ろ!!」

 

「ああ、そうだな」

 

 俺は、うまると共に旅館の入り口へと向かった。外には誰もいないけれど、入ればきっと誰かには会えるだろう。さて、これからどんな毎日が待っているだろうか。それとも、変わらないのだろうか。

 俺は胸の中で、新たな生活を快く迎え入れようとしていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




設定としてはアニメ終了直後ですね。
原作買わなくては……。
次回は、花咲くいろはサイドキャラも出せればと思います。
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