オーバーロードと至高の這いよる声優さん   作:オルセン

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本文中にミスがあったので修正いたします(´;ω;`)

✕ カードの枚数は計14枚。
◯ カードの枚数は計22枚。

すまぬ・・・すまぬ・・・。



這い寄る混沌の<化身>

「DIOはしばらく無理ですよ」

 

「あれっ?」

 

 変身ができないと言われ、ポーズを取ったままのモモンガが間の抜けた声を出した。

 

「なんで……あっ、そうか。再詠唱時間(リキャストタイム)

 

 MMORPGほぼ全般に言えることだが、魔法やスキルなどプレイヤーが能動的に使用するタイプの技能には基本的に再詠唱時間(リキャストタイム)というものが設定されている。これは同一の魔法やスキルを連続で何度も使用できないようにするためのシステム的な制限であり、基本的には低レベルの技能ほど短く、高レベルになるほど長く待たなければ再詠唱できないようになっている。

 ちなみに、この世界においても再詠唱時間(リキャストタイム)は存在しており、制限を無視して技能を連続使用することはまず不可能である。

 

「なんてこった、失念してたな……」

 

「実は、僕もさっき魔法を使った時に気付いたんですけどね」

 

「NPCが自我を持ったり、アイテムの出し入れが四次元ポケット的なものになったりと色々トンデモな変化をしてるのに、何故か再詠唱時間(リキャストタイム)は理不尽にゲームのままなんですよねぇ……。それで、次に変身できるのは何分後ですか?」

 

 モモンガの質問に対し、テラーは腕組みをして考えこむ。先程変身してから数分ほど経過しているが、ほとんど誤差の範囲である。なぜなら……。

 

「次ですか……約900分後です」

 

「きゅ……ひゃく!? 90分じゃなく!?」

 

 つまり、次にDIOになれるのは今から15時間後である。モモンガは無いはずの頭痛に襲われ、座り込んだ。

 

「え~……? 予想以上に長いな……」

 

這い寄る混沌(ニャルラトホテプ)の変身スキルはちょっと特殊なんですよ。ところで、DIOに変身してどうするつもりだったんです?」

 

「実はですね……」

 

 テラーに問われたモモンガは、現在第六階層の円形闘技場――ナザリックでは『円形劇場』(アンフィテアトルム)と名付けられている場所にアルベドを含めた6人の階層守護者を待たせていることを伝えた。あれから既に1時間は経過している。そろそろ痺れを切らし始める者が出てきてもおかしくはない。

 

「成る程……。変身して『精神異常感染』が発動しないようにしてから僕を紹介してしまおうってことですか」

 

「ですけど、流石にあと15時間も放置しておくわけにはいかないですね……。仕方ない。今日はとりあえず解散させて、明日もう一度集まってもらいましょう」

 

 ため息をつきつつ<伝言>(メッセージ)を使おうとするモモンガに、テラーが待ったをかけた。

 

「その必要は無いです、モモンガさん」

 

「え?」

 

「忘れちゃいました? ユグドラシルで一緒に狩りしてた頃、僕けっこう頻繁に変身してたじゃないですか」

 

 そういえば……とモモンガはゲーム時代の戦闘風景を思い出して呟く。確かに本人の言うとおり、テラーは15時間どころか1戦闘毎に一回の割合でコロコロと変身を繰り返していた筈だ。

 

「あれって、どうやってたんですか?」

 

這い寄る混沌(ニャルラトホテプ)の変身スキルの名前は<化身>(アヴァター)っていうんですけど、実はこのスキルって、変身先の<化身>(アヴァター)ごとに()()()()()として登録するタイプのものだったんですよ」

 

 テラーが「つまり、」と言いかけたところで、モモンガは彼が言いたいことを理解したのか、説明に割り込んで発言した。

 

「つまり、再詠唱時間(リキャストタイム)による制限がかかっているのはDIOだけで、それ以外の<化身>(アヴァター)になら今すぐにでも変身できる……?」

 

「 Exactly 」(そのとおりでございます)

 

 とても良い発音で肯定の意を示しながら、テラーはアイテムボックスに手を入れた。取り出したのはカードの束である。

 

「テラーさん、それは?」

 

「タロットカードです。これ自体は特別な効果は無い普通の占いアイテムなんですけど、外装用のイラストをホワイトプリムさんに無理言って描き下ろしてもらったんですよ」

 

 ホワイトプリムというのは元ギルドメンバーのことである。ギルドにいた時から既にプロデビューしていた漫画家であり、とかくメイド服に対する拘りは病気の粋でもあった。ナザリックに存在している一般メイドたち一人ひとりの原画を41人分全てデザインし、しかもエプロンに施された刺繍も全員分違っているという念の入りよう。当時はあまりの作業量に外装モデリング担当者が発狂しそうになった程だ。

 

「へ~、こんないい物をいつの間に……あれ?」

 

 タロットカードのイラストを見ていたモモンガが、はたと気づく。

 

「これって……DIO?」

 

「僕、記憶力はあまり良くないんで、<化身>(アヴァター)毎に登録してある所持技能を参照できるようにしてもらったんです。つまりカンペですね、これは」

 

 よくよく観察してみると、絵柄の背景に同化するように魔法やスキルが極小の文字で書かれていた。まるでだまし絵のようである。

 カードの枚数は計22枚。DIOは『世界』のアルカナであった。

 

「成る程ー。よく考えてますね」

 

「とりあえずDIOを省いて残りは21種類……。この中からどれにするか決めようと思います」

 

 卓上にタロットカードをズラリと並べ、ふたりで相談を始めた。

 

「レベルが低すぎると何かあった時に危険なんで、なるべく強いのがいいですね」

 

「それなら、90レベル以上のがこれと、これと…………」

 

 

   ▽   ▽   ▽

 

 

 ナザリック地下大墳墓第六階層。その円形劇場(アンフィテアトルム)内において、楽しげに談笑する幾人かの姿があった。無論言うまでもなく、彼らはモモンガから待機命令を受けていた階層守護者たちである。

 

「だからあたしはねー、きっと超すっごいお褒めの言葉をいただけるんじゃないかと思うわけよ」

 

 胸を張って自信満々にそう語る、白いベスト同じ色のズボンを着込んだ少女の名はアウラ・ベラ・フィオーラ。ショートボブに切り揃えられたブロンドの髪から、尖った長い耳が見える。日に焼けたようにも見える茶褐色の肌色から、彼女が闇妖精(ダークエルフ)という種族であることが窺い知れる。

 

「ぼ、ぼくはもう一回頭撫でてほしいな」

 

 遠慮がちにそう発言するのはマーレ・ベロ・フィオーレ。アウラの弟で、同じく闇妖精(ダークエルフ)である。姉のマウラと同じように白のベストを着込んでいるが、こちらは太ももまでの白いストッキングと、一定間隔に折りヒダの付けられたミニスカート――いわゆるプリーツスカートを何故か履いていた。もちろん、彼が男子であることは間違いない。

 

「これだからおこちゃま達は。付き合っていられんでありんす」

 

 そう言ってつまらなそうな顔をする少女はシャルティア・ブラッドフォールン。黒で統一されたボールガウンドレスに身を包み、同じ色調の日傘を自分の頭上にかざしている。よく手入れされた長い髪は透明感を感じさせる銀髪。肌は白磁のような透き通る白で、一見すれば病的でありながら、西洋人形のような美しさが同居していた。彼女は吸血鬼(ヴァンパイア)の真祖である。

 

「そういうあんたはどうなのよー?」

 

 子供扱いが気に障ったのか、アウラがシャルティアに食って掛かる。それに対して彼女は、恥ずかしそうにもじもじしながら言い返した。

 

「そんなこと言わずとも決まっているでありんしょう……。ああ、モモンガしゃま……これ以上じらされたらシャルティアはもう……もう……!!」

 

 アウラはひとりで身悶えするシャルティアを「まただよ」といった呆れ気味の視線で見守っていた。

 

「この淫乱どビッチが」

 

「あ゛あ゛ァ!?」

 

 背後からの吐き捨てるような声にシャルティアが反応し、視線がぶつかり合う。

 最初の声の主はアルベドだった。いつもの女神のような美しい顔は見る影もなく、般若の面をさらに歪めたような酷い表情に様変わりしている。対するシャルティアも額を中心に皺と青筋がビキビキと音を立てて広がりつつあり、陶器の器に深いヒビが入ったかのようである。どちらも常人ならば見ただけでしめやかに失禁ものの人相と成り果てていた。

 アウラとマーレは周囲の空気がグニャリに歪みだすのを察知し、止めようとするが聞く耳を持たず、お互いに「年増」「洗濯板」「腐りかけ」「壁」などと醜い罵り合いを始める。

 

 そんな4人の様子を少し離れたところで眺めていたふたりは、「ああ、また始まったか」と溜息を漏らした。

 

「アノ二人ハマッタク……。毎度毎度ヨク飽キヌモノダ」

 

 硬質の、ロボットが発するような声で、巨体の人外が大きく肩を上下させる。同時に口から冷気が吐き出され、空気が白く染まった。

 この怪物の名はコキュートス。二足歩行の青白い甲虫型の守護者である。種族は蟲王(ヴァーミンロード)であるが、外見はむしろ虫型のロボットというべき佇まいである。2メートルを優に超える巨大な体躯と、鎧のような外骨格。長く丈夫でありながら自在に動く尻尾、そして4本の逞しい腕が非常に特徴的であろうか。

 

「まあ、あのふたりに関しては同族嫌悪というやつでしょうね。本気の喧嘩にさえならないなら別に構いませんよ」

 

 微笑みを崩さず、デミウルゴスが答える。シモベ同士が傷つけ合うような事態は主の望むところではない。そうなれば迷わず止めなければならないが、あの程度のかわいい口喧嘩ならばわざわざ仲裁することもあるまいというのが彼の考えである。

 

「シカシ、先程カラ考エテイルガドウシテモ分カラヌ。ももんが様ガゴ用意シテクダサル嬉シイさぷらいずとは一体何ナノダ、でみうるごす」

 

「ん? ああ……。コキュートス、あれは方便です」

 

「ナニ!?」

 

 デミウルゴスの意外な返答に、コキュートスは一際大きく冷気を吐き出した。

 

「我々ならばともかく、アウラやマーレのような幼子には例え至高の御方の勅命とはいえ、ただ待つという行為は辛いものだからね。ストレスを感じさせずに退屈しのぎができればと思ってああ言ったんですよ」

 

 デミウルゴスは「けっこう暇をつぶせたでしょう?」と言って離れた場所でアルベドとシャルティアを止めようと必死になだめている姉弟を見やる。コキュートスは感嘆の声を漏らし、同じく視線を向けた。

 

「ソコマデ考エテノ事ダッタカ……。流石ハでみうるごす……」

 

「まあ、私とてサプライズには期待しますけどね」

 

 肩をすくめ、冗談めかして言うデミウルゴス。コキュートスはそんな同僚をまじまじと見、問うた。

 

「オ前ガカ?」

 

「いけませんか」

 

 やがてどちらからともなく、クックッと笑い出す。そんな様子を視界の隅で捉えたアウラが非難の声を上げた。

 

「もー! デミウルゴスもコキュートスも笑ってないで手伝ってよー! あたしたちだけじゃこのふたり引き剥がすの無理……」

 

「お姉ちゃん?」

 

 急に真顔になって後ろを見たアウラに、マーレが怪訝そうに尋ねる。直後にアウラは真剣な表情になって全員を見渡した。

 

「みんな! モモンガ様が帰ってくるよ!!」

 

 その声を聞いた瞬間、マーレの表情が引き締まった。直前まで喧嘩をしていたアルベドとシャルティア、笑い合っていたデミウルゴスとコキュートスも揃って姿勢を正す。全員が1時間前と寸分違わず同じ位置に戻り、跪いたところで彼らの支配者――モモンガが姿を現した。

 その高い忠誠心に若干引き気味になる。もうちょっとダラけた感じで待っててくれてもいいのに……と内心で思いながら、咳払いをひとつして彼は気持ちを切り替えた。

 

「皆、ずいぶん待たせてしまったな。すまなかった」

 

「いいえモモンガ様。私達シモベ一同は至高の御方に忠誠を尽くすために生まれた身。待てと仰るのでしたら何時間だろうと、何日、何年だろうと待ってご覧に入れましょう」

 

 代表して発言するアルベドに対して「その忠誠心が重いんです」とはとても言えないモモンガは、「う、うむ。今後も忠義に励め」と適当に言っておいた。その言葉だけでシモベたちの胸がいっぱいになっているとは、夢にも思っていない。

 

「さて……、こうして待っていてもらったのには理由があるのだ。今からお前たちをある人物に会わせよう」

 

 モモンガは耳のあたりに手を当てて、<伝言>(メッセージ)の魔法をかけた。

 

「もう来ていいですよ、テラーさん」

 

 その名を聞いた守護者達は、一斉に息を飲む。これがサプライズだというなら、サプライズという単語の方が身の程を弁え、控えるべきだろう。それ程の衝撃が全員を襲った。

 リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンの効果によって転移してきた人影に、守護者たちの視線が集まる。その先にいたのは……。

 

 魔人であった。

 




謎の魔人……いったい何子安なんだ……。

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