なんとなく書いた続かない話   作:イマーZ

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超能力を持ったオリ主の話。
サイコキネシスって最強の能力だと作者は思います。


リリカルなのは
リリカルでオリ主


澄んだ美しい海に囲まれた、面積2.5k㎡ほどの島。

降水量も日本にしては少なく、年間平均25.6℃と温暖な気候の島だ。

 

「……暇ね」

 

その島にある色とりどりの花畑の中、気だるげに呟く少女が居た。

少女の名前は天津照代。病的なまでに真っ白な肌と、それと対照的な腰まで届く艶やかな黒髪と真っ黒な瞳が特徴的な9歳の少女。ほぼ無人島であるこの島の唯一の館の主でもあり、この島に閉じ込められている少女だ。

少女の傍らには4つの大きな如雨露がプカプカと宙に浮かび、少女の歩みに合わせて花に水を与えていく。全く持って不自然な光景ではあるが、この光景に驚く者はこの島には存在しない。もはや、この島では見慣れた光景だ。

 

「切れた…ほいっと」

 

水の切れた如雨露に指を向け、照代は気の抜けるような掛け声を出した。すると照代の指先の如雨露の上に水の球体が出来上がり、如雨露の中にポチャンと音を立て入った。照代は空気中の水分を集めて液体にしたのだ。

そう、天津照代は超能力者だ。

HGSと呼ばれる奇病。いまだ研究が進んでおらず判明していない事の多いこの奇病は、患者に異能力を与える。通常HGS患者はフィンと呼ばれる翼を持ち、サイコキネシスやテレパスなどの超能力を個人個人持つ。

そしてそのHGS患者の中でも、とりわけ大きな力を持ちHGSの完成形、新たな人類と呼ばれる存在、それが天津照代なのだ。照代のフィンは巨大な炎の翼のような形状で、世間で超能力といわれる全ての能力を照代は持っている。それも、どの能力も並び立つ者など居ないと言われるほどの能力。そして、照代の最も得意とするパイロキネシス、つまり発火能力は太陽の表面温度すら超える熱を生み出す。

こうした神の如き能力に恐れを抱いた人々によって、照代はこの島にて監視されることになったのだ。

 

「照代ちゃん!! 其処に居るのっ!!」

「……はぁ、小うるさいおばさん」

 

如雨露を引き連れて歩いていた照代に駆けつける白衣を着た年輩の女性。彼女が照代の監視者の1人であり、HGS研究者でもある。

他人の心すら読める照代にとって、彼女はとても嫌いな人間だった。同僚に対して常に罵る思考ばかりで、さらに自分を化け物と見てくる上、日ごろから小言が多く、何かにつけて照代の行動を制限しようとしてくるのだ。

 

「勝手な行動をしないでっていつも言ってるでしょう!! 水遣りなら私に言ってから行きなさいっ!! 来なさい!!」

「……ふぅ」

 

照代にヒステリックに怒鳴り散らすものの、決して手を上げようとはしない。

彼女も照代の力を恐れてはいるのだ。監視の始まった頃は照代に怯えきっていたのだが、照代がその力を振るう事がないと解ってくると、段々とこのような態度になっていった。

照代はいつも通りため息をついて、只、従った。彼女の行動に腹が立たない訳ではない。寧ろ、何度か殺してやろうかと思うことがあるほどだ。けれど、照代は拘束するものを殺して自由になろうとは思わなかった。照代にあるのはただただ、面倒だと思う気持ちだけ。

普通の少女なら、とっくにストレスでその強大な力を振るっていることだろう環境。だが、照代には前世の記憶があったのだ。

照代の前世は、中小企業に勤めるサラリーマンだった。労働基準法を無視したかのような残業、休日出勤で24の若さで過労死した記憶を持つ照代にとってはこの程度の環境は許容範囲内。むしろ、今のスローペースな生活の方がいいと思うほど。

監視する人間達は照代が適当に言う事を聞いておけば、その小さな自尊心を満たしてくれる。照代という猛獣を制御できるという喜びで満たされる。それさえやっておけば照代はこの島の中である程度の自由が許されるのだ。それに、この島では照代と深く関わろうとする人間は居ない。前世で人間関係に面倒さを感じていた照代にとってはこれほど楽なことは無い。

 

今日も今日とてHGSの研究と言う名の実験をさせられ、自由な時間が出来れば花の世話をやるために散歩する。

現状に不満があるとすれば、HGS研究者がうざったいという事と、ご飯が不味いという事だけ。何も考えずに過ごす日々、それが天津照代の二度目の人生だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「綺麗な宝石」

 

フィンである炎の翼を展開し、照代の伸ばした手の先にある物は宙に浮かぶ21個の青い輝きを放つ宝石だった。

昨晩、何時ものように自分の部屋のテラスから星空を眺めていた照代の視線の先に、降り注ぐ何かの機械の破片とこの21個の宝石が映り、興味が湧いた照代がアポート、つまり物質転送で引き寄せたのだ。

 

「親方、空から男の子が…! って奴かしら」

 

宝石をサイコキネシスで机に仕舞った後、冗談を言いながら宝石と一緒に空から落ちていた金髪の少年の頭をぺちぺちと叩く。

その少年の服装は何処かの民族のようで、照代は興味心身だった。

照代の考えではこの少年は宇宙人で、別の星からやってきたものの宇宙船が何らかのトラブルで爆発して飛ばされた。という予想だ。

直接少年の話を聞いて予想があっているか確かめようと、照代はサイコメトリーを使って記憶を読まず、ただ怪我の治療をして自分のベッドに寝かせ少年が目覚めるのを楽しみに待っていた。

 

「……うぅ、う」

「起きるの?」

 

照代の手に反応したのか、少年が苦しそうにうめき声を上げた。その反応が楽しかったのか、照代はさらにぺちぺちと少年の額を叩く。

人との関わりは嫌いだった筈だったが、この少年と早く会話してみたいと照代は思っていた。そこにあったのは、もしかしたら自分のような異常者を受け入れてくれるかもしれないという仄かな期待と、親しい人間のいない寂しさだったのかもしれない。

そんな自己分析をして、馬鹿馬鹿しくなった照代はクスリと笑った。

 

「こ、ここは…?」

「おはよう」

 

そうしている内に、少年は瞼を開けた。少年の瞳は綺麗な緑色をしていて、照代はその瞳を食い入るように見詰めた。前世含め、外国人のような容姿を持った人間と会うのは初めてだった照代にとってはその瞳は珍しくて面白かった。

そして、少年の言葉を理解できた事に照代は驚いていた。何故なら、少年の口の動きと照代が聞こえた言葉は合っていなかったのだ。

 

「あ、あの…き、君は…?」(き、綺麗な子だなぁ)

「……」

 

直ぐに少年の事情を聞き出したいと気が逸った照代は、テレパシー能力を発動して直ぐに切った。少年の自分の容姿を褒める思考がむず痒くて聞いていられなかったのだ。2度目の人生では何かを褒められたことがなかった照代には、そういった思考に対する耐性が無かった。もちろん、長い監禁生活で動かなくなった表情はそのままだったが。視線を少年から窓の外へと移す。

当初の予定通り、少年と会話して聞き出せば良いと思いなおした照代は少年の自分の後ろへと向ける驚愕の視線に気付く。少年は照代のフィンに驚いているのだ。

フィンを展開しているのは能力を安定して使うためで、今、照代はこの島に居る監視者達全てにヒュプノ、謂わば、催眠能力で照代が普段どおりに行動しているように見せかけているのだ。

 

「綺麗な翼…? 君は、一体…?」

「超能力者」

「超能力?」

「超能力よ」

「う、うわあ!?」

 

疑問に答えるために少年の体をサイコキネシスで浮かび上がらせた。突然であり、未知の力に驚いたためか、少年はバタバタと手足を動かす。照代はその必死な動きを面白く思ったが、からかい過ぎて話が聞けなくなるのは不味いと、ゆっくりと少年をベッドに降ろした。

 

「そんな、魔力は全然感じなかったのに…!」

「魔力?」

「あ、いや、…あ! ぼ、僕はユーノ・スクライア! き、君は?」

「天津照代。照代が名前、天津が性」

 

明らかな誤魔化しの言葉。

少年、ユーノが言った魔力と言う言葉が気になったが、名乗られたからには名乗り返すことにした。それに、照代はこの短い間でユーノの事を気に入り始めていた。期待を大きくしていたと言っても良い。

少年の持っている感情は純粋な驚きだけ。今までサイコキネシスを使えば、照代に対する視線は恐れや怯えに変わる人間ばかり。2度目の人生の親ですらそうだったのだ。

 

「助けてくれて、ありがとう。君が僕を介抱してくれていたんだね」

「どういたしまして」

「う、うん。ところで、このくらいの青い宝石が僕と一緒に無かった? とても大事なものなんだ」

 

ユーノは言葉と共に両手でひし形を作った。その形状によく見覚えのある照代は直ぐに21個の宝石を、仕舞っていた机からサイコキネシスで取り出してユーノの前に静止するように浮かべる。

 

「ぜ、全部ある! よ、良かったぁ…! …ってどうして遠ざけるの!?」

 

手を伸ばして、宝石を掴もうとするユーノから照代は宝石を遠ざけた。ユーノから非難の声があがるが、もちろん苛めるためではなく、ユーノから話を聞くための交換条件にしようと思ったからだ。

先ほどの誤魔化しから、ユーノは自分の秘密を喋らずに何処かへ行くつもりだと、照代は当たりをつけていた。

 

「1つだけ教えて」

「え、な、何を」

「君、宇宙人でしょう?」

 

ズバリと真実を言ったつもりの照代の言葉に、ユーノはズゴー! とでもいいそうな勢いでベッドに沈んだ。

その反応に、首を傾げて間違っていたのかと疑問符を浮かべていると、1つピンと来るものが照代にはあった。先ほどの魔力、という言葉だ。

 

「なら、魔法使い?」

「っ!?」

 

今度こそ真実を言い当てたらしい。ユーノはぎくりと身を硬直させた。

そんなユーノの反応を見て、あまり突くのはやめてあげようと考えた。照代の持つ魔法使いのイメージは一般人に魔法使いという事がばれてはいけないという事。例えば、秘密のばれた魔法使いは蛙にされたりオコジョにされたり、魔法の国に連れ戻されたり、いろいろと厄介な事が起こるイメージだった。

 

「まあいいわ。はい」

「あ、ありがとう。……き、聞かないの?」

「話したくないなら、聞かないし探らないわ」

 

浮かべていた宝石を、ユーノの前まで戻した。

不思議な冒険か何かが始まるかも、と少しだけ期待していたが、それでユーノを苦しめてまで知ろうとは思わなかった。照代は基本的に他人をどうでもいいと思える人間ではあるが、積極的に不幸にしてやるとはさすがに思わない。

ユーノは宝石に胸にかけた赤いネックレスを近づけてその中に仕舞った。どこに消えたのか、とか色々と疑問は残るものの約束したとおり探ったりはしない。

 

「ありがとう。いつか、このお礼は必ずしに来るよ」

「もう、行くの?」

「うん。実はこの宝石は危険なものなんだ。早く届けないと」

「送っていってあげようか?」

「大丈夫、帰れるくらいの力ならあるよ。本当にありがとう照代。さようなら」

 

そう言って立ち上がったユーノの足元から、いかにもな魔方陣が出現し光を放つ。目を開けていられないほどの光を放った後、ユーノの姿は何処にも無かった。

ほんの僅かだけの邂逅。突然来て一瞬で居なくなったユーノ。それを残念に思う。もっと会話できるように宝石を隠せば良かったのか、其処まで考えて照代は意外に自分が会話に飢えていた事に気がついた。自分ひとりで、誰とも会話せずに生きていけると思っていただけに、少しショックではあったものの不思議と不快ではなかった。

できれば、もう一度現れて欲しい。そんなことを、照代は願った。

 

 

 

 

 

 

何かが居る。照代が気がついたのは深夜、ベッドで眠りについていた時だった。

照代の監視のために島に配置されている人数は26人。その人間とは違った不自然な気配。それを照代の超感覚は捉えていた。

その何かの正確な正体を捉えるためにテラスに病院着のような寝巻きのまま出る。背中からフィンを展開し、監視者達に騒がれないようにヒュプノをかける。

フィンである炎の翼に照らされた暗闇の先に、照代は視線を向けた。

 

「グルルルル……!!」

 

照代が育てている花畑を踏み荒らしながら、その黒い影は現れた。もう一体の小さな気配も感じてはいるが、此方は気配が希薄で花畑の何処かを走っている事しか解らない。

黒い影の方はガス状にでもなっているのか、その輪郭は照代の超感覚でも捉えきれない。ただ、黒い影は照代の住む館に向かって突進してきているのだ。

 

「死ね」

 

その姿を捉えた照代は、すぐに黒い影をサイコキネシスで圧縮した。自分の大切な花畑を荒らされた照代にとっては黒い影の正体など関係なく、抹殺の対象だった。

周囲の空間ごと急激に押しつぶす。何の手加減も無く放たれたサイコキネシスはダイヤモンドを形成する圧力にすら匹敵し、その力の中心に居た黒い影はひとたまりも無く押しつぶされた。

 

「…ふん」

 

黒い影の居た場所、サイコキネシスで円形に抉られた地面まで照代はテレポートで瞬間移動し、もう一体の不埒者を探すために周りを見渡す。

 

「危ないっ!!」

「?!」

 

照代の前に躍り出た小さな影が、緑色の魔方陣を展開した。数瞬遅れて、その魔方陣に衝撃が走り光を撒き散らす。

魔方陣の先、其処には先ほど照代が殺したはずの黒い影が健在していた。黒い影から伸びる触手のようなものが、この攻撃の正体だ。

 

(押し負けている…?)

 

小さな影が作り出した魔方陣に段々と食い込んでいく黒い触手。

それを見た照代は再びサイコキネシスを、今度は下から打ち上げるように放つ。埒外の力に黒い影は抵抗できずに吹き飛ばされ、上空で無防備にその腹を照代にさらした。

花畑から離れた敵に、手加減する理由はない。照代は黒い影に向かってフィンである炎の翼を大きく広げ、翼から莫大な熱量を誇る炎を何発も打ち出す。レーザー状のその炎は、音を超える速度で真っ直ぐに黒い影へと向かいその体に大きな穴を開け、やがて穴だらけになった黒い影はその破片すら残らず消滅した。

 

「まだだよ、物理的な攻撃じゃ、ダメなんだ…! あいつの、動きを止めて」

「…ユーノ、なの?」

 

苦しそうに呟く小さな影、その正体はフェレットと呼ばれる動物だった。その声は照代が少し前に出会ったユーノと同じ声。

その姿の変わりように照代は驚きを隠せなかった。もしや、自分の前で魔法らしきものを使った罰としてこのような姿になったのかと、罪悪感を感じ、謝ろうとした照代の前に再び黒い影が舞い降りた。

上空で消滅したはずのそれは、その体を再生させ大きな衝撃音を響かせながら、照代の花畑をさらにグシャグシャにする。

舞い散る花びらに、照代の怒りは爆発した。サイコキネシスで黒い影を持ち上げ、パイロキネシスを発動。黒い影を中心に炎を球状に収束させていく。それはまさに炎の檻だった。黒い影を包んだ炎は黒い影以外にその猛威を奮わず、照代のサイコキネシスによりその中心へと熱量は向かう。1万度をゆうに超える炎は何者の存在も許さない。小型の太陽が地上に出現したかのように周囲を夜から昼へと塗り替えた。

 

「照代! 炎を一旦止めて! 封印する!」

「っ!」

 

それでもさらに炎の温度を上げていた照代は、ユーノの言葉で漸く冷静になった。直ぐにサイコキネシスを黒い影の居た場所を空間ごと固定するように切り替え、作り出していた炎を、その熱量を一切逃さぬように自分のフィンへと集め、周囲に被害がいかない様に抑えた。

炎の治まったその場で、照代は再生の正体を見る。照代が攻撃をやめ、何も無くなったはずの場所に青い宝石が出現、それを中心に黒い靄が湧き立ったのだ。

 

「封印すべきは忌まわしき器、ジュエルシード、封印!!」

 

ユーノから伸びる緑色のが黒い靄に直撃した瞬間、照代の攻撃を何度受けても復活した黒い影はあっさりと消滅した。残ったのは以前ユーノへ返したはずの青い宝石のみ。

自分の攻撃が全く通じなかったというのに、ユーノの攻撃であっさりと消滅した事に照代は悔しさを感じたが、これ以上花畑を荒らされるよりはずっと良いと思いなおし、フィンを閉まった。それと同時に、サイコキネシスをやめたため、空中に浮かんでいた青い宝石はポトリと地面に落ちる。

周囲を見渡せば、照代が懸命に育てた花々は見るも無残に踏みにじられ、無事な花は一輪も無かった。

 

「ありがとう、照代。って、泣いてるの?!」

「別に、泣いてないわ」

 

ユーノの言葉で初めて自分が泣いている事に気付いた照代だったが、他人に弱みを見せる事を嫌って瞬時に顔を逸らし袖で乱暴に拭ってぶっきらぼうに言う。

照代は自分の能力に絶対の自信を持っていた。普段、傲慢そのものの監視者や研究者達に対して力を使わないのは、自分よりも格下の人間達が嫉妬と恐れで吠えているだけ。そういった超越者特有の見下しがあったからだ。その自信の源を、あの黒い影には木っ端微塵にされた。

そしてなにより、照代にとってこの花畑は唯一、2度目の生の中で執着しているものだった。自分で土地を整え、種をまいて何度も失敗してやっと綺麗に咲いてくれるようになった花々なのだ。我が子のように思っていた照代にとって、与えられた人生初めての敗北の代償はあまりに大きかった。

 

「ごめん…僕の、僕のせいなんだ…」

 

俯きながら自虐的に呟くユーノを無視して、その小さな体を抱き上げた。照代の急な行動にユーノは小さく悲鳴をあげるものの、罪悪感からか大人しくされるがままにしていた。

ユーノをよく見れば、その小さな体には無数の擦り傷、背中には大きな裂傷があった。そこに右手をあてて治療を開始する。照代の能力による治療は、患者本人の回復力を上げるものではなく、欠損部位を照代の能力によって造り出して埋めるという医者が聞いたら倒れてしまいそうなほど無茶苦茶なもの。あっという間に治っていく体に、ユーノは驚きを隠せない。驚きで感情が乱れているユーノの隙を突いて、照代はサイコメトリーを発動して記憶を読み取る。

 

「この黒いレオタードの金髪のせい…?」

「ど、どうして、それを!?」

「記憶を読み取った」

「なっ! し、思考捜査?! レアスキル…!」

 

ユーノの思考が驚愕の感情でいっぱいになる。そこで、照代はいったんサイコメトリーを切った。こういった感応能力はどうしても相手の思考や感情に影響されてしまうため、照代はあまり好きではない。それにこれ以上続ければ、自分に向けられる猜疑心や恐怖と直面することになる。ユーノからそういった感情を向けられるのは、なんとなく嫌だった。

誰だって、どんな人間だって、自分の心を読まれる事は恐ろしい。当たり前のことで、照代にとっても恐ろしいことだ。

そんな嫌われるかもしれないことを度外視してでも、照代は花畑を荒らされることになった原因を許せなかった。自分に敗北の屈辱を与え、さらには気に入り始めたユーノをボロボロにしたのだ。必ず見つけ出して焼き殺す。そこに容赦の感情は一切無かった。

 

「あれから何が起こったのか説明してくれない? あなたの口から」

「……わかったよ。実は…」

 

ユーノは以前照代と別れた後、直接ジュエルシードを預けるために管理局へと向かった。しかし局内へ入る寸前で金髪の魔導師に襲われ、ユーノの命を助ける代わりデバイスと呼ばれる杖、ユーノの相棒であったレイジングハートにジュエルシードを要求。レイジングハートはこれを呑みジュエルシードを全て渡そうとしたが、此処で異変に駆けつけた管理局員達が現れるものの、別の魔導師による空間跳躍攻撃と転移魔法でジュエルシードをまんまと強奪されてしまったらしい。だが、ユーノは転移魔法でジュエルシードが取られてしまう前に抵抗し、4つのジュエルシードを守りきり、7個のジュエルシードの転移を妨害。だが、その代償に相棒のレイジングハートと転移の妨害に成功した7個のジュエルシードの行方がわからなくなってしまったのだ。

 

「その魔導師たちはどうなったのかしら?」

「金髪の子はその場で逮捕されて、もう1人の空間跳躍砲撃を放った魔導師の所には管理局が逮捕に向かったから、多分時間の問題だと思う」

 

既に法的組織によって然るべき処置が行われていようとするなら、照代の出る幕はない。歯噛みしたくなる気持ちになるが、我慢するしかないのだ。

 

「そして、今僕は残りの7つとレイジングハートを見つけ出すために次元世界を旅してるんだ。もしかしたらと思ってこの島にも着たんだけど、案の定だったよ。本当に、ごめん。綺麗な花畑だったのに…」

「いいわ、あなたの責任じゃないもの。……まだ、旅を続けるの?」

「うん。このジュエルシードは本当に危険なんだ。放っておいたら世界を滅ぼしかねない。そんな事だけは、絶対させたくないんだ」

 

小動物に成りながらも、その瞳に宿った決意だけは本物だった。

ユーノのその瞳を見た照代も、これから成すべきことを決めた。

 

「私も行くわ」

「だ、ダメだよ! 危ないし、何より照代は管理外世界の人だ、連れて行けないよ!」

「強さには自信があるわ。それに、もう決めたの。ダメと言っても勝手に着いて行くわ」

「えぇえ!?」

 

育てていた花を無残に散らされた照代が、その怒りをぶつけられる相手はもうジュエルシードのみ。それに、もう此処に照代は未練が無かった。もう大切な花畑は滅茶苦茶で此処に残れば嫌いな研究者達に囲まれるだけの生活。だったら、迷う事など何一つ無い。

 

「よろしく、ユーノ」

「滅茶苦茶だよ…もう。…うぅ、よろしく照代」

 

 

 

 

 

 

 

 

どうして、どうしてこんな事になったんだろう。

照代と旅を始めて既に8ヶ月。目の前で起きている事から目を背けながら、ユーノ・スクライアは凄まじい罪悪感と、後悔に苛まれていた。

今思い返してみれば、照代がついて来ると言った時にもっと反対すれば良かったのだ。そうすれば、少なくとも照代がこんなことになる事は無かった。いや、もっと言えばジュエルシードを発掘さえしなければ、こんなに多くの人に迷惑をかけたりなんてしなかった。8ヶ月前、自分を襲った魔導師たちだってジュエルシードになんて惑わされず、今も全うに暮らしていたかもしれない。

目の前の光景を見ていると、ユーノは全ての事柄が自分の責任であるように思えてしまう。何処で間違ってしまったのか、何度も何度も自問自答するが、後悔だらけでどれも正解にしか思えない。

 

「これで解ったかしら、草以下のゴミ虫が。頭が高いわ、頭をもっと地面にこすり付けなさい」

「ぐ、ああっ!」

 

ユーノの目の前には、男性をボコボコに痛めつけてその頭を踏みつけている照代が居た。照代の表情は、初めてユーノと出会った時の様に無表情ではなく、目を細め、にやりと唇を吊り上げて嘲笑している。さらに服装は黒いワンピースに黒いブーツ、黒いストッキングと黒一色。まさに悪役、何処の女王様だと言いたくなるほどその姿は似合っていた。

こうなってしまっては、ユーノに出来る事は現実逃避して照代の気が済むのを待つことだけだった。さらに頭が痛くなるのが、照代に助けられた少女達が、照代を憧れているかのように目を輝かせて見ていることだ。

何度も何度も繰り返されてきた光景。これが最近のユーノたちの旅路には付き物の光景だった。

旅の初めは良かった。照代もこんな女王様な性格じゃなく、人形のように無表情ではあったけど小さな事を発見してはユーノに目を輝かせながら質問してくる、決して今のようにドS的な行動なんて一切無い無邪気な性格だった。それがなんという事でしょう。今では立派なドSになりました。

 

「ユーノ早く行きましょう。ゴミと会って気分が悪いわ」

「…あははは」

 

気が済んだのか、男性の頭から足を退けてユーノの方へ向かってくる照代。その後ろでは先ほど頭を踏まれていた男性が立ち上がってデバイスを照代に向けている。それに気がついた周囲の人だかりから悲鳴が上がるが、照代もユーノも慌てない。

ユーノは照代のドSを最も知っているからこそ、寧ろデバイスを向けている男性に同情した。

 

「ヒャア!! 油断したな、死、 あ、ぎぎっぎ、手、あ、足がぁ?!! ぎゃ、あああああ!!」

 

デバイスを持ち上げていた手と足が力なく折れ曲がり、男性は再び地面に這い蹲った。

 

「馬鹿なの? 貴方みたいなゴミに、チャンスなんてあると思ってるの? とっくに手足の骨は折ってあったわ。今まで痛みを感じないようにしてあげてただけよ?」

 

そう、照代は既に男性の手足をバキバキに折っていたのに、能力で男性に自覚させていなかっただけだ。油断しているように背中を見せておきながら、相手に希望を持たせ、その実既に反撃の余裕を全て奪っている。これが、最近照代が覚えた技、上げて落とす、だ。

これを見るたびユーノは自分の責任を感じて、何とか照代を更正させねばと思う。

 

「行きましょう。今日のご飯、美味しいといいわね」

「うん。そうだね」

 

何事も無かったかの様に言う照代に、ユーノもいつも通りに返事を返した。慣れてきている自分が少し悲しい。

旅の初めの頃はこんな事は無かった。何時頃だったか、そう2ヶ月目、3個目のジュエルシードを照代と協力して封印した辺りからだった。その頃から、何故か今這い蹲っている男性のような、ヒャッハー! な世紀末魔導師たちとのエンカウント率が上がり始め、最初は気絶させるだけで終わらせていた照代を段々とイラつかせ、今ではこんな感じになってしまったのだ。

照代とユーノは今では次元世界では知名度が高い。照代が次々と違法魔導師たちをボコボコにしていき、さらにジュエルシードとは違ったロストロギアの封印に協力したり、第6管理世界アルザス地方の大地の守護者ヴォルテールを殴り飛ばしてアルザス地方の人たちから追われたりと、当初の目的は何処へ行ってしまったのかという大冒険をしているからだ。

さらに管理局から指名手配されてしまったこともある。その際の手配書にはユーノの顔は凶悪に描かれ、照代は囚われのお姫様の様にに描かれた事もユーノの心労を増やした出来事だ。今では笑い話だが、あの頃が自分の人生で最も酷い時だったと、ユーノは思う。

 

「残りのジュエルシードも後2つね」

「うん。次元世界中を旅してたけどこんなに早く集まるなんて思って無かったよ」

「そうね。本来なら砂漠で宝石を捜すより途方が無いもの。…それでね、そろそろ1回地球に戻らないかしら?」

「ち、地球に? 僕、地球じゃ照代を誘拐した罪で指名手配なんだけど…」

 

照代の提案はユーノにとって予想外であった。照代は地球では監禁されて自由が無かったしモルモット扱いにされていたのだ。そんな所に照代を連れて行きたくなかったし、何よりユーノも行きたくなかった。一度戻って、地球の町を2人で歩いていた時に照代を探していた警察に逮捕されそうになったのだ。それから地球では照代を誑かす悪党扱いである。管理世界での指名手配の件で友人になった執務官には爆笑までされた。

 

「これよ」

「管理外世界でリンカーコアの強奪事件、民間人負傷…! これ、地球じゃないか!?」

「そう、故郷でこんな事されたら気分悪いでしょ。それに、その民間人の写真を見て」

「レイジングハート…?!」

 

照代に渡された端末をスクロールして被害者である民間人の様子を見れば、見覚えのある杖。無くした筈の相棒であり、この旅の目的の1つであるレイジングハートが映っていた。

 

「丁度、アースラが次元航行でこの世界を通るし、乗せていって貰いましょう」

「アースラはタクシーじゃないって、この前クロノに怒られたばかりじゃないか。それに、照代の持ってるロストロギアの件もあるんだよ。逮捕されても知らないよ」

「女の子の手鏡1つで、何て器量の小さい組織よね。全く」

「世界を直接滅ぼしたりしないから等級は低いかもしれないけど、それだって十分凄いロストロギアなんだからね」

 

照代の腰にある大きな鏡。これはある次元世界で照代が入手してそのまま所有権を主張したロストロギア。無名のロストロギアではあったが照代が八咫鏡と名付けた物で、その能力は凄まじいの一言に尽きる。管理局が渡せと言って来るのも当然の話だとユーノは思う。この鏡によって殆ど最強だった照代と並び立てる人間は居なくなったと言ってもいい。

 

「じゃ、次の目的地は地球ね」

「くれぐれも無茶はしないように」

「わかってるわ。ユーノこそドラゴンに単身突撃とかしないようにね」

「君が投げたんだよ!」

 

色々と酷いこともあったが、照代と出会った事は幸運だったとユーノは思う。

もしかしたらスクライアの仲間よりも、照代との方がもう家族になっているのかもしれない。

だから、照代との出会いだけは、それだけはあの忌まわしいジュエルシードに感謝してもいいのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人物紹介

 

天津照代(あまつ てるよ)・・・名前はアマテラスから。能力はHGSを強力にしたもの。特に火を出すのが得意。

 




とにかく強いオリ主を作ろう、というのがコンセプトで話を書いたけど、一話目にてもうオリ主による原作蹂躙しか見えねえので断念。
サイコキネシスとか使えてる時点で、勝てる奴殆ど居ないやん。
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