転生先は異世界―あ、これチートだわ―   作:Anonyme

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10.ストレス解消

 ユウヒが再びギルドへと入ると、またもや視線が集中する。

 一度目来た時とは違う人たちもいたが、まだ集会場に集まっていた者はさっきも来た奴だと噂するように話し始めた。

 それを無視しつつも依頼報告をしに行く。窓口の前へ立つと、受注時も対応してくれた人が対応してくれるようだ。ユウヒは無言でリュックを渡すと、窓口の人はそれを確かめ始める。

 

 

「はい、確かにゴブリンの耳十個確認致しました。残りの四つは換金する方向でよろしいでしょうか?」

「それで頼む」

「ゴブリンの耳は四体で銅貨一枚分となりますので、依頼報酬の銅貨五枚に加えると、合計で銅貨六枚となります」

 

 

 違う窓口に行かなくてもこれくらいの量ならすぐに換金してくれる。

 ユウヒはありがとうと言いつつ、腰に巻き付けた銀貨の入った袋に放り込むと、チャリンという音を奏でた。

 

 

「他の依頼を受けて行かれますか?」

「いや、今日のところはいい。また明日来る」

「分かりました。それと申し遅れましたが、今日からあなたの担当をさせていただくことになったコトハと申します」

「こちらこそ頼む。俺の事はクロと呼んでくれればいい」

「分かりました、クロさん」

 

 

 ギルドで対応してくれる人はほぼ固定であり、もし休みの場合は別の代役が対応してくれる。固定の方がその冒険者のレベルなども分かっていけるため、ギルドとしても何かと都合がいいらしい。

 年上相手にさん付けされることにむず痒さも感じるが、話を続けるのも何かと面倒だと感じて黙認することにした。

 

 要件も済んだため、ギルドを出る。

 ギルドから離れると、案の定誰かがついてきたことに気付いた。ユウヒはあえて裏路地へと入り込み、誰にも見られないように配慮する。獲物が釣れたように急いでユウヒが入った裏路地へと入っていく。

 ある程度裏路地を進んだところで、軽く暴れられる空間を発見する。ここまで来れば人も来ないだろうと振り向くと、いかにも悪そうな顔をした男が三人突っ立っていた。

 

 

「わざわざこんな誰にも気付かれないところ通ってくれてありがとなガキ」

「何かご用でしょうか?」

「その腰についているものをちょっともらおうと思ってな?」

 

 

 ユウヒはその言葉に反応し、咄嗟に股間を抑えた。

 こいつらの狙っているのは銀貨が入っている袋であり、もちろんそういう事ではない。ユウヒもそんな事分かっている――というか、あの時はあえて音を鳴らしたのだろう。こういう奴を釣るためにした行動である。

 ユウヒもあれだけの視線を感じたり、嘲笑(ちょうしょう)の表情をされれば、少なくとも少しは腹が立つ。少しくらいはストレス解消したいという事だ。

 

 

「そこじゃねえよ! 変なとこ抑えんな!」

「まぁ、落ち着けって……おいガキ、金さえ払ってくれれば何も手は出さない。早く金を置いていきな」

 

 

 もう一人の男が本来の目的をユウヒに告げる。

 腰に携えた剣を抜き、脅すように構える。

 

 

「生憎ですが、あなた達に上げるものは何もありません。回れ右してワンと犬のように吠えてください」

 

 

 この世界に犬がいないが、馬鹿にしているのは十分に伝わったらしい。

 剣を抜いた男がユウヒに斬りかかった。残りの二人はこれは死んだなと言わんばかりにニヤニヤと笑っている表情が伺えた。

 上段から叩き切るような振り下ろし。ユウヒは軽く跳躍し、振り下ろされる前の剣柄を蹴り上げた。男の腕にはダメージはなく、綺麗に剣だけが放物線を描いて飛んでいく。

 綺麗に着地したユウヒは手に軽く力を入れ、腹に一撃を放った。

 

 

「ぐはぁっ……」

 

 

 めり込む程の勢いで放たれた拳は大人を一撃でダウンさせる。狙った場所はみぞおちではない。それ程の力量差があるという事だ。

 倒れていく仲間を見た後ろ二人の笑いの表情が消える。

 表情を変えている暇があるなら、せめて防御の体勢でもしておくべきだっただろう。ユウヒはすぐさま身体強化魔法を使い、一歩踏み出すと残り二人の目前へと移動する。男の横に飛び跳ね、横っ腹を軽く蹴ると声にもならないような悲鳴を上げる。

 蹴り飛ばされたことにより、もう一人の男に突進して連鎖反応を起こす。突然の事に突進された男も耐え切れずに吹っ飛び、壁へと衝突した。

 

 男三人が気絶していることを確認し、手の埃をはらうような仕草をする。

 ユウヒの表情はどことなくスッキリとしていた。そろそろ家に戻らなければいけないということもあり、男三人を放置して転移魔法で家の近く――誰からも見られないところへと転移した。

 

 マントとマスクを脱いで、異空間へとしまう。ここからはクロではなく、ユウヒという田舎貴族の息子としての時間である。

 自宅へと戻ってドアを開けると、そこにはメイドのリアがいた。

 

 

「おかえりなさいませ、ユウヒ様」

「うん、ただいま。いつもご苦労様」

「ユウヒ様からそんな声をかけていただけるなんて感激です。本日はどちらへ?」

「ちょっと適当に散歩してきただけだよ。明日も出かけるから、母上達には適当に言っておいて」

「分かりました、お風呂に入られますか?」

「そうするよ、ありがとう」

 

 

 さすがはメイドである。家事もこなし、タイミングよく風呂を沸かしておいたらしい。

 ユウヒは両親がまだ帰ってきてないのを確認すると、せっせとシャワーを浴び、風呂へと浸かる。本日掻いた汗を流し、ようやく一息つけると脱力感が生まれる。

 本日のように王都に行けるのも、メイドのリアが黙認しているからだ。

 留守を預かっているリアであるが、勿論ユウヒの世話役も仰せつかっているはずだ。ユウヒに何かがあればリアの責任となるだろう。

 黙認しているリアであるが、ユウヒがどこに行っているかも分からない。ましてや片道六時間とかかる王都に行ってるなんて検討もつかないだろう。それなのに黙認してくれるとはユウヒにとってはすごくありがたいものでもあり、怪我をして帰るわけにもいかない理由でもある。

 

 ユウヒは明日の事を考えながらも、風呂に入っている水で遊び始める。水を糸状にしてリボンを作ってみたり、星の形にしてみたりと小さい頃魔力コントロール修行の一環としてやっていた事だ。

 ある程度遊んだ後に風呂から上がると、両親達が話している声が聞こえてきたため、どうやら帰ってきたようだとユウヒは気付く。

 すぐさま服を着て、両親の元へと向かった。

 

 

「父上、母上。おかえりなさい」

「俺の愛しき息子よ。今日も元気にやっていたか?

「はい、本日も本を読んでいました」

「ユウヒは本当に勉強熱心なのね」

 

 

 ユウヒに近付いてきた両親は、頬を触ったり頭を撫でたりと心からユウヒを愛しているようだ。

 こんなにも大切にしてくれる両親に嘘をつくことに少し自己嫌悪するが、その代わり立派な魔法剣士になると改めて心に誓うユウヒであった。

 

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