転生先は異世界―あ、これチートだわ―   作:Anonyme

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14.これからの事

 カリフを食べ終えたユウヒとアイリスは、アンに言われた通りに喫茶店リアルの向かい側にある宿屋へと向かった。

 宿屋という看板が立てかけてあるだけであり、外見上は特に何の特徴もない店だった。いざドアを開けてみると、すぐそこにはカウンターのような場所があり、店番をしていると思われる男性が立っていた。

 

 

「いらっしゃい、宿の利用か?」

「ああ、アンの紹介で来たんだが」

「なに、アンちゃんの紹介か。そりゃおもてなししないとな」

 

 

 どうやらアンとは中々いい関係らしく、気合を入れなおすかのように服を腕まくりしていた。

 

 

「一部屋でいい、この子の部屋だけ頼む」

「何泊だ?」

「三泊頼む」

「一泊銅貨三枚のところ、アンちゃんの紹介で二枚だ。食事、貸し風呂のオプションはどうする?」

「ありがとう。食事は朝と夜、風呂付で頼む」

「一食ごとに銅貨一枚、貸し風呂は使用ごとに銅貨二枚だ」

「それじゃあ、とりあえず朝と夜分の飯付きと、毎日一回の風呂で一泊ごとに銅貨六枚。三泊分だから×3して合計銅貨十八枚といったところか」

 

 

 すらすらと合計金額を述べるユウヒに宿屋の男は混乱した。

 この世界では読み書きの練習するものは多いものの、数学についての勉強するものは極端に少ない。勉強するとしても加減算だけであり、乗除算はこの世界では知られていないのだ。

 

 

「お、おお? ちょっとまて。今計算するから――――えーっと……あ、合ってる」

「それじゃあ銅貨十八枚先払いで、部屋がどんな感じが見たいから、少しだけお邪魔させてもらうよ」

「おう、ゆっくりしていけ。部屋は二階の奥だ、この鍵使え」

 

 

 店番の男は鍵を投げるように渡す。ユウヒはそれをキャッチした後、カウンターの奥にある階段で二階へと昇った。

 言われた通りに二階の奥の部屋に向かい、鍵を使って扉を開ける。

 部屋に入ると畳六畳程の大きさであり、周囲の気配を確認するがどうやら他に誰も泊まっていない様子であった。喫茶店リアルといい、この店といい、儲けが出ているのか心配になってくる。

 

 家具はベッドと小さな箪笥一つ、中央には小さな机とその上に部屋を照らす明かりが設置されている。

 必要最低限の家具だけが設置されている感じであり、不便性は感じないがどこか味気無さを感じる。ここにずっと住むわけでもないため、当分の我慢である。

 ユウヒとアイリスはお互いに向き合った状態になって座ると、ユウヒは被っていたフードとマスクを取った。ユウヒは家族以外の人に初めてあり、素顔を晒す事に少しだけ恥ずかしさを覚える。

 アイリスも自分だけ被っているのは失礼だと思ったのだろうか、そそくさとユウヒに続いてフードだけではなく、羽織っているマントごと脱ぎ始めた。

 

 

「それじゃあ、確認な。アイリスは俺の従者となる、間違いはないな?」

「はい。まだ首輪はありませんが、クロ様の従者となります」

「確認が取れた上で、いろいろと説明することがあるんだ。まず一つ目は俺の名前についてだが、クロというのは王都だけで使ってる名前だ。俺は王都の住民ではなく、ここよりずっと東側にある――ベルフ村という小さな村の住民だ。そこでは一応貴族の息子であり、本当の名前はユウヒ・シルフォードという名前だ」

「ユウヒ・シルフォード……ユウヒ様?」

「二人きりの時はそっちで呼んでもらったほうが助かる。誰かがいる場合はさっきの同じ通り、クロって呼んでくれ」

 

 

 アイリスは人差し指で自分の唇を軽くいじりながら軽く俯く。それは彼女が考えている時の仕草であり、どうやら現在頭の中を整理しているようだ。

 少しすると、アイリスは顔を上げて分かりましたと返事をした。

 

 

「次はこの街の住民になるクロとしての話だ。この街ではその名前で冒険者をやっていて、今日の依頼報告でDランクになる冒険者だ」

「Dランク?」

 

 

 アイリスはユウヒがまだDランクであるということに不思議に思う。ユウヒの強さを知ってしまったアイリス。なぜあれ程の強さを持っているのにDランクなのか不思議に思うのは当然のことだろう。

 

 本当の戦いで全力を出したことのないユウヒである。今までの狩り――ユウヒから見ればウォーミングアップにも満たないものであり、自分が全力を出せるほどの本当の戦いというものを経験したことがないのだ。

 五歳である今でもSランクすらも凌ぐほどの強さは持っているであろう。

 

 

「俺の実力を知っている者は少ない。俺自身も自分がどれだけ異常なのかは理解しているから、できるだけこの力を隠しておきたいんだ」

「分かりました。決して口外はしません」

「ありがとう。最後に俺が王都に来た目的なんだが、まず一つ目は冒険者となって俺が今どれくらいの実力であるかを確かめる事。二つ目は十歳から学校に入学するための資金稼ぎ。その他にもいろいろとあるが、大きな目的はその二つだ」

「学校――ですか?」

「ああ、今はアイリス知り合えたから違うけども、俺には同年代の知り合いと呼べる奴がいなかったんだ。もう少し交流を広げていきたいのと、いろいろな知識に関しても学んでいきたいと思っているんだ」

「なるほど……それで学校へ行くということですね」

「ああ、クロという名前ではなく、田舎貴族ユウヒ・シルフォードとして通う予定だ。あくまでも現段階の予定だから、十歳の時になれば気が変わってるかもしれないけどな」

「分かりました」

「それじゃあ、俺はそろそろ家に帰るが……一人で大丈夫か?」

「家というのは、ベルフ村ですか?」

「ああ、俺は転移魔法を使えるんだ」

「転移魔法?」

「あー、見てもらったほうが早いな」

 

 

 ユウヒは座ったまま目の前のテーブルに手を当てると、転移魔法を発動する。その瞬間に

テーブルは姿を消し、ベッドの上へと転移した。

 アイリスは突然テーブルが消えたことにより、驚きの声を上げる。狼人族は動体視力も良く、狼人族の目で捉えられないものはないと言われている程だ。

 転移魔法は高速で移動しているのではなく、瞬間的に移動させているのだ。床からベッドへと動く軌道など見えるはずもない。

 

 

「こういう事だ。いくつか発動に条件があるが、これで家まで瞬間的に移動できるわけだ」

「なるほど……分かりました。お気をつけてください」

「ありがとな。それ服はここに置いておくぞ。夜飯は食いたくなったら下に行けば、作ってくれるように伝えとくからな。ちゃんとお風呂も浴びるんだぞ、その時は耳とか見られないように十分注意してな」

 

 

 ユウヒはいろいろと注意事項を言うと、異空間から今日買った服を取り出して床に置いた。

あまりにも普通に使っているが、異空間魔法もユウヒが作ったものである。

普通なら驚くべきことなのだろうが、アイリスはユウヒのことでいろいろと驚いていたらきりがないと理解したのであろうか、もう驚く表情は見せなかった。

 

 アイリスは元気よく返事を返し、ユウヒは再びフードを深く被りなおしてギルドへと向かうことにした。

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