転生先は異世界―あ、これチートだわ―   作:Anonyme

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15.噂の冒険者

 ギルドに戻ってきたユウヒはいつも通り窓口へと向かって、コトハに依頼報告を済ませていた。

 

 

「これで本日も三つ依頼達成です、お疲れさまでした――そう言えば今日はいつもより遅い時間ですけど、何かあったんですか?」

「ああ、ちょっと別のところに用があってな」

「少し心配しましたが、何もなかったようでよかったです。こちらが本日の報酬――合計銅貨二十枚ですね」

「心配してくれてありがとな、確かに受け取った」

 

 

 ユウヒはギルドカードを確認し、ギルドを後にした。

 今回の依頼でDランクへと上がったユウヒである。コトハはランクが上がったのに気付いてはいたが、ギルド員は冒険者のランクを公言してはいけないという決まりになっているため何も言わなかったということだ。

 自分から公言するか、ギルドカードが覗き見されない限り、ランクは知られることはない。それは実力を知られたくないユウヒにとって何かと都合がいいことだった。

 

 いつもの転移スポットへと移動し、すぐに転移魔法を使ってベルフ村へと戻る。ユウヒが焦っていた理由は両親が帰ってきているのではないかということだ。

ユウヒの両親は村の警備を行っており、警備員を率いる隊長と副隊長をやっている。朝一から村の巡回へと行っている。

 アイリスとの出会いがあり、いつもより遅い時間に帰ってきたユウヒ。家へと入ると父親のシンと母親のアリアの声が聞こえてくる。どう言い訳するか迷いつつも、皆が集まっている部屋に入った。

 

 

「た、只今戻りました」

「おお、おかえりユウヒ。今日は楽しかったか? 外で遊んでいたんだろ?」

 

 

 ユウヒはその事を聞くと、一瞬動きが止まる。メイドのリアに視線を配ると、リアが軽く頷いていた。有り難いことに適当に言い訳をしていてくれたようである。

 

 

「そうです父上。家で本ばかり読んでいても健康上よくないため、本日は外で少し身体を動かしていました」

「まだ五歳だというのに健康のことを考えているのね。外に出てもいいけど、森に入っちゃだめよ?」

「分かっております、母上。絶対にベルフの森には入りません」

 

 

 ユウヒはアリアの言葉に対してそう答えた。確かにベルフの森には足を一歩も踏み入れていない。

 王都周辺にある森には毎日通っているが、嘘はついていない。

 

 

「まぁ、俺の息子ならあの森に生息してるモンスターくらい余裕で倒せちゃうだろうけどな!」

「あらあら、それを言うなら私の息子ではなくて?」

「お二人のご子息様なら当然のことですよ」

 

 

 言い争いが勃発し始めるところに、メイドのリアがすかさずフォローを入れる。

 流石は長年仕えてきているメイドであり、この家族のことを分かっているようだった。彼女はシンとアリアが結婚して間もない頃――約十年前の頃にまだ八歳であった彼女は森で迷子になっていた。そこをシン達が見つけて保護して育ててきたという過去がある。

 現在のユウヒの倍近く関わりがあり、この家族にとっては一流のメイドであるだろう。

 

 

 話は戻るが、テーブルには既に食事が並んでおり、どうやらユウヒの帰りを待っていたようである。それを察したユウヒは小走りで席へと座り、皆は食事を食べ始めた。

 

 

「そういえば最近王都で新人冒険者がどうとかって話題になってるらしいな」

「私も聞いたことがあるわ。毎日確実に依頼を三つこなす冒険者って話」

「へぇー……そんな人がいるんですか」

 

 

 シンとアリアの言葉に、興味なさげに口を開くユウヒ。自分の事など噂になってないだろうと思い込んでるユウヒは、自分と同じくノルマをつけている人がいるんだなとしか感じていないようである。

 

 

「ああ、しかもユウヒと同じ五歳って噂だぞ。ユウヒのステータスも凄いと思っていたが、上には上がいるんだなと思ったぜ」

「んっ――げほっごほっ!」

 

 

 ユウヒはちょうどよくパンを口に含んでおり、その言葉を聞いた途端にむせはじめる。

リアはすかさず水を用意すると、ユウヒはぐびぐびとコップ一杯分の水を一気に飲み干した。

 

 

「大丈夫ですか、ユウヒ様」

「あ、ありがとう。ちょっとパンが喉につっかかっただけだよ」

 

 

 動揺を隠せないユウヒ。咄嗟にパンのせいにする。

 

 

「あら、ユウヒも冒険者になればそれくらいやってのけてくれるはずよ」

「い、いやぁ……自分じゃ無理だと思うのですが……」

「こらユウヒ、やる前から無理と決めつけるのはよくないぞ!」

「そうよ、やってみないと分からないじゃない」

「はい、すみません」

 

 

 自分と重ね合わせられるのはまずいと思ったユウヒが咄嗟に否定するが、逆に説教されてしまうという事態に陥る。

 この状況はまずいなと判断したユウヒは、残りの飯を口の中へと放り込む。

 

 

「ご、ご馳走様でした。今日は疲れたためお風呂に入って寝ますね。おやすみなさい!」

「久しぶりに外で遊んだんだから無理もないだろうな」

「おやすみなさい、ユウヒ。ゆっくり寝るのよ」

「おやすみなさいませ、ユウヒ様」

 

 

 その場から逃げるようにして風呂場へと駆け込むユウヒ。ばれそうになって今頃出てきた冷や汗をシャワーで洗い流す。

 ユウヒはゆっくりと風呂に浸かった後、明日のことを考えながら眠りについた。

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