転生先は異世界―あ、これチートだわ―   作:Anonyme

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08.白亜

 ゴブリンを狩り終わったユウヒは街へと向かった。すぐにギルドに向かってはあまりにも早すぎると疑われるのと、少し目立ってしてしまう事を考慮し、街見学で時間を潰すことにした。

 金は残り銀貨四十九枚と多少贅沢しても数日間では消えないだろう。北側にある喫茶店や武器屋などが集まっている場所へ向かう。元は違う世界の民だったユウヒにとって珍しい物ばかりである。大抵の家は木造建築であり、ビルなどの高層な建物は見当たらない。高層な建物と言えば、街のどこからでも見える王様が住む城くらいだ。

 

 この王都の名はグランディア。その名の通り、グランディア家が王族としてこの町を管理している。冒険者ランクがA以上、または伯爵以上の序列を持つ者は身分証明書の拝見だけで入ることが出来る。他にも国家商人や近衛兵などのさまざまな人々が出入りするが、その説明は置いておこう。

 グランディアはこの世界の中心と言われている街だ。魔術に関しても最先端な技術を持っており、唯一学校という機関が設けられている。この世界にも学校という機関は存在しているが、地球と比べて何十個もあるわけではない。

 

 十歳からという条件であり、難関な試験と多額の入学金が必要である。多額の入学金というのは、一人当たり金貨十枚。平民の平均生活費で約一年半と暮らすことのできる金額だ。

 そのため、入学するものはほとんど貴族などの地位を持った家庭の子供であるが、優秀な人材を確保するために特待生制度というものも存在する。特待生にも順位が設定されており、順位が高い程無料に近い値段で入学することが可能だ。

 

 ユウヒは入学の事も視野に入れながら街を歩いていた。ユウヒには同年代の友達と言える子が一人もいないため、少し寂しさを感じていたのだ。

 周りには宿屋や武器屋、飲食店などがたくさん並んでおり、まずはどこに行こうか迷っていた。剣や防具に関しては創れば何とでもなるのだが、それは性能自体の話である。ユウヒにはセンスというものがなく、せっかく創れてもダサいと言われるのは恥ずかしい。

 

 まずは参考に武器屋に入ることにした。あらかじめ異空間から先程稼いだ銀貨の袋を取り出し、腰に巻き付けている。

 全身真っ黒で顔も隠している小さな客の入店に店主は顔をしかめた。ユウヒもその表情に気付いたが、それもそうかと思いつつ店内を回る。

 この店は片手剣専門店であり、斧や槍などは売っていない。武器一つ一つに専門店があるような感じだ。周りを見渡すが、大抵は大人用に作られた剣ばかりであり、まだ小さなユウヒがそんなもの付けても滑稽の一言だろう。

 

 しかし入った以上、何か買わなければいけないなとユウヒは思いつつも、店内を見回ると短剣がいくつも並べられているのが目に入る。そういえば先程のゴブリンの部位採取の時に少し苦労したと感じていたユウヒは短剣に近寄った。

 周りの片手剣の数と比べて、約一割あたりしかない短剣。それらを見渡すと、ある一つの短剣が目に付く。一目で惹かれてしまったような感覚。他の短剣と見比べても外見上は何の違いもない。

 

 ユウヒはその短剣に手を伸ばし、柄を持って鞘から抜こうとする。しかし、ユウヒの力を持ってしてもその剣は抜ける事はない。

 ユウヒはスキル《鑑定・改》で覗き見ると、どうやら魔法によって鍵が閉められているようだった。それだけなく、ユウヒのオリジナルスキルでもアビリティが文字化けして見れないようだ。

 それが逆に魅力的に感じたのだろう。ユウヒはこれを買う事に決め、店主の元へと差し出した。

 

 

「これを買いたい」

「ほう、何でそんな物買おうとした。抜けなかっただろ?」

 

 

 どうやら店主もユウヒの行動を終始見ていたようだ。他に客がいないのもあるが、怪しい格好をした少年が何をしでかすか分かったものじゃないため、ただ監視していただけの事だろう。

 

 

「惹かれた。ただそれだけだ」

「抜けない剣に惹かれるなんて変わったやつだな」

「こんな剣を作ったおっさんのほうが変わってると思うよ」

 

 

 店主はその言葉を聞いて眉を動かす。本来であれば武器の製作者など分かるわけもなく、むしろ名乗っていない自分の名すらも分かるわけない。商人から買った武器や何処かから仕入れた武器を店頭に並べられるのはよくある行為であり、珍しくも何ともないのだ。

 勿論、ユウヒもその事を知っているが、スキル《鑑定・改》は相手の名前も武器を作った者も見る事ができる。この短剣の製作者は『エリアル』。ユウヒの目前にいる男の名前と一致したということだ。

 

 

「そうか。それでその剣を買ってどうするつもりだ?」

「どうするって……剣は使う物だろ?」

「抜けない剣をどうやって使うって? 馬鹿な事はやめろ」

 

 

 ユウヒはその剣に口角を上げていた。口元も隠しているため、エリアルから見たらずっと無表情のままだと思われているだろう。

 ユウヒはこの会話中に新しい魔法を創造していた。それがたった今完成したため、自然と口角が上がってしまったのだ。

 

 ユウヒが今創った魔法名は《開錠》。その名の通り、ロックされていた鍵を解除するための魔法だ。試してはいないから確定ではないが、魔法でロックされたものだけではなく、普通の鍵で閉められたものも開錠できるだろう。

 ユウヒはその短剣に向けて《開錠》を使用し、鑑定を使う。先程までロック状態だったものが見えるようになったためどうやら成功したようだ。

 アビリティ《不壊》《砥石》の最高傑作ともいえるダブルアビリティだ。不壊で壊れる事はないが、壊れる事はなくても切れ味が落ちていく。しかし、砥石によってその砥ぐ必要すらもなくなり永久に使えるものである。

 

 ユウヒはその場でもう一度鞘を握り、軽く力を入れて剣を抜いた。

 その短剣は最高の出来であり、切れ味も凄まじいものだ。先程ユウヒが使用した剣に比べて、同等以上のレベルを持っている。

 

 

「これでいいか?」

「ほう……やるな小僧」

「いくらだ?」

「ただで持っていけ。そいつの名前は『白亜(はくあ)』だ」

「これ程の一品、いいのか?」

「出来通りの相場で買い取れる程の金を持ち合わせているのか?」

 

 

 実際の相場では安く見積もっても金貨三枚は超えるだろう。この世界での短剣は飽くまでもサブ武器や剥ぎ取り用としか見ておらず、これがちゃんとした武器であればより価格が上がる。

 ユウヒに即金でそれ程の金を払えることはできない。いや、即金で払えるとしたら伯爵以上の地位がなければ難しいだろう。

 ユウヒは金を払えない申し訳なさがあったが、ありがとうと伝えた後、白亜をマントの下に隠してから異空間へとしまった。そのまま店から出ようとすると、店主のエリアルから声がかかる。

 

 

「坊主、名は?」

「あー……、クロって呼んでくれ」

 

 

 ユウヒは微妙な顔をしつつも、先程ディアルからもらった名前を使用した。まさかこんなところで役に立つとは思わなかったとマスクの下では苦笑いの表情をしている。

 エリアルは覚えておく。また来いよと返し、今度こそユウヒは店を出た。

 

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