交差した骨の尖兵の首魁の一族に憑依転生した。   作:五平餅

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第十一話 見えぬ未来

 コスモ・バビロニアと木星船団公社の事前協議が行われた際、コスモ・バビロニア側は二つの要求を提示した。

 それはエネルギーの安定供給、つまりヘリウム3の安定供給の継続と一国家規模にまで膨れ上がってきた木星圏からの労働力の供出の依頼。すなわち相互経済協力の申し出であった。

 それら提案に対し妥当性を見出した木星側は、すんなりと快諾の意志を表明したが、その代わり、見返りとして以下の事柄を求めてきた。

 

 一つは、木星-地球間における航路の安全を保障すること。

 これはUC0120年10月に公社所属の木星往還船コバヤシ丸が何者かの襲撃を受け破壊されたこと、そして今回の()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、これを鑑みての要求である。

 別に何も航海の最中ずっと護衛しろや航海の際に起きた事故の損害を補填しろと言うのでは無く、単に襲うなというだけのことであるが一度()()()と言う前例がある以上必ず入れておかねばならないことではあった。

 それが例え当人達にとって意味の無いものであっても。

 

 今一つは、モビルスーツを始めとした種々の技術交換と共同研究及び共同開発。

 木星圏でも運用できる小型モビルスーツを共同で開発することで、コスモ・バビロニア側が持つノウハウ(know & How)を提供して欲しいと言うものだった。

 小型モビルスーツに使用する小型の融合炉や、情報処理機能を持たせた構造材のノウハウは、ブッホエアロダイナミクスがアナハイムエレクトロニクスから融合炉を買い取って技術を蓄積したように一朝一夕で手に入るものではない。当然、時間だけではなく資金もかさんでいく。

 だからこそ既に完成している所から丸々技術を教われることができるなら、まさに一石二鳥というものだ。

 しかし、それだけではコスモ・バビロニア側に旨味が無く難色を示すだろうことを予想していた木星側は共同という形で鉄仮面カロッゾ・ロナの専門であるバイオコンピュータの研究開発に資金を提供する提案も行っていた。

 ロナ家の動きを知った時、彼等は当然調査を行った。それは関連するあらゆることにおよび、カロッゾが未だ学生だった時分に発表した論文すら、その対象であった。

 カロッゾはその論文の中で、彼の研究の最終的な到達点のことを語っている。

 SFに描かれるような、人が肉体に縛られることの無い精神のみの存在へと強化変革すれば、人は地球と言う存在を忘れ、縛られること無く宇宙へと進出して行ける。そんな壮大なことが書かれていた。

 しかし、彼の才覚はそれを大言雑言のままで終わらせようとはしなかった。彼が今自らの身を持って試しているラフレシア・プロジェクトとは、その実現の一歩でもあるのだから。

 こうした彼の考えに、木星は―――いや正確に言うならば木星の指導者は目をつけていたのだった。

 

 そして木星側が要求してきたもう一つは、将来的な交換留学を見据えた留学生の受け入れ要請である。

 この要請はコスモ・バビロニア側にとって少しばかり想定外の事柄ではあったが、決して首を横に振る類のものではなかった。

 なぜなら、学生の受け入れは労働力、人的資源の確保という彼らの要求に適うものであったし、受け入れた留学生は木星は勿論、連邦にとっての人間の盾になりえる。ただでさえ、サイド4の市民やブッホコロニーの市民は連邦への直接の人質となっているのに、木星圏の人間を招きいれることによって連邦政府は木星公社に著しく配慮をしなければならなくなるからだ。

 

「人質を差し出すことでヘリウム3供給は確かなものであると印象づけてきたが……」

<はい。裏の目論見は、こちらの内情を探りつつ様子見といったところでしょう>

「……」

 

 カロッゾの鉄仮面越しに聞こえる声にマイッツアーは沈黙する。

 学生という人質の差し出しが意味するものは、木星圏の地球連邦への見方を暗に示しているのではないかとマイッツアーは睨んでいた。

 地球連邦がコスモ・バビロニアを制する力を持っていない、もしくは非常に時間が掛かる。そう彼らは判断した。それは翻ってみれば彼らが地球連邦のみならずコスモ・バビロニアの内情にもある程度見越しを付けているということに他ならない。

 

<彼らがどこまで我々の計画を察知しているか、どこまで干渉してくるつもりなのかを探るには調度よいかと。しかし、問題は我が方が今の段階で学生を募り木星に送り出したとて人質にはなり得ないことでしょう>

「……」

<……>

 

 結局、現段階で人質として用を成すのはロナ家の身内の者でしか無い。しかも、留学という建前がある以上、子供であることが前提であった。

 マイッツアーは孫の顔をそれぞれ思い出す。

 

 カロッゾの二人の子、上のドレルは既にクロスボーン・バンガードの将として一大隊を率いる身分にある。つい先日手元に戻ってきた妹のベラは、将来コスモ・バビロニアの女王としてコスモ・貴族主義の旗印となり人心を纏める役目をマイッツアー自身が望み、これから徐々にコスモ・貴族主義を理解し染させんとする所。

 今は亡き長男ハウゼリーの子、シェリンドンはコスモ・バビロニアの国教とも言える新興宗教のコスモ・クルスで巫女の役割を担い既に大衆の前で活動を始めている。

 

「……やはり、ディナハンか」

 

 ハウゼリーのもう一人の子供、シェリンドンの弟であるディナハンのことを思いながらマイッツアーは呟く。

 大人しく人前に出るのを厭い与えられたことを確実にこなす官僚向きの性格をしていると睨んでいたため、そのような道を歩ませてきたが睨んでいた以外の才覚をも見せ始めているディナハン。

 しかし、だからと言って他の三人の代わりには成れるものではない。 

 

<ディナハン様は御年13。コスモ・バビロニアの建国が成り安定する数年を目処とすれば、年齢的に留学と称しても可笑しくないでしょう>

 

 マイッツアーは頷き、自らのやらんとするこを嘲笑う。

 血縁をもって人質とする。

 

「『歴史は繰り返す』と云うが、まさに古代史にある戦国時代の再来だ」

<……>

「ディナハンには、すこし時間が経ってから話をしよう。あれは聡い子だ。ロナ家の、コスモ・バビロニアのためとならば、わかってくれるだろう」

<―――はい。では、そのように>

 

 木星に対する方針が決まり、話は次の事柄へと移っていく。

 マイッツアーは端末に映しだされたのは、宇宙港の入管が確認した難民の一人に、ベラ・ロナが友人の安否確認のためにあげたリストの中の人物に該当するものがおり、その報告をベラ本人に伝えても良いかという確認の求めであった。

 写しだされた少年のフロフィールに訝しげに眉根を寄せた。

 

「シーブック・アノー?」

 

 聞き覚えがない。マイッツアーは少年の写真をしげしげと眺めるが、やはり見覚えもなかった。

 マイッツアーは、ベラ・ロナがセシリー・フェアチャイルドとしてフロンティアⅣにサイド3から移住してきた時よりその所在を把握しており、密かに彼女の素行を定期的に探らせていた。

 その調査は性向から彼女の交友関係にまで及んでいたのだが、終ぞシーブック・アノーという名が出てきたことはない。

 しかし更に付随した報告書に目を通すとザビーネ・シャルが上げたものには、戦場視察の際に彼女は彼のことをかなり気にしている様子であったと記されてもいた。

 

「ふむ……」

 

 そう言えば、とマイッツアーは年頃の孫娘がエスコートしてくれる相手は学校にいる、と口にしていたことを思い出した。

 確かにそれに対してマイッツアー自身が歓迎の意志を示した。だが、しかし、

 

<戦禍を避ける中の共有体験が強い共同意識をベラ様に植えつけたのかもしれません>

「……吊り橋理論と言うやつか」

<概ね>

 

 会いたい、等と口にするほど愚かではないが、未だ戻って数日。自分を取り巻く状況の違和を払拭し、今に馴染むには短すぎる時間。

 そんなところに“日常”や“寄る辺”を匂わせる存在が接触すれば、どうか? ベラの心にいらぬ波風を立てることになるのは明白であろう。

 マイッツアーは少しの間考え、

 

「ベラには酷だが少し黙っておいたほうが良い。バビロニア宣言の後、折を見て伝えることとしよう」

<他の者も同じようで?>

「うむ、今はな」

 

 こうしてベラ・ロナ、いやセシリー・フェアチャイルドがシーブック・アノーの生存を知るのは今少し先の事になる。

 

 

 ◇

 

 

 雪が降っていた。

 シーブック・アノーは自分の町の気候の変化に身を縮こまらせながら足早に自宅のある通称“タウン”から目的地のあるインバーバ区を目指して坂道を歩き続ける。

 見慣れた町の至る所に赤地に金糸で鷲を描いた見慣れぬ旗や大段幕が掲げられている。

 

「コスモ・バビロニア、ね」

 

 寒さに襟を立て、小さく呟く。白い息が漏れた。

 

 フロンティアⅣに戻ってきたシーブックは、入管で少しの間足止めを食らっていたが開放されるとその足でまずは自宅に向かった。

 施錠した覚えのないドアの鍵を開け中に入る。誰もいないためか肌寒く感じたシーブックは、早々に暖房の電源を入れ、箪笥の中から冬物の衣類を引っ張り出した。

 数日前慌ただしく逃げ出した跡が片付けられていることや暖房器具が出されていること、そして冷蔵庫の中を確認すると残っていたはずのものが無く、見覚えのない食材が入っていたりもしたこと。

 それたのことが父の生存を示していて、彼はホッと胸をなでおろした。

 

 そうして現在不在の父が帰ってくるのを待とうか、とも思ったがテーブルに置かれた書き置きを見つけ父が勤めている会社へと連絡を入れる。

 しかし、返ってきた答えは、

 

[すまないなぁ。今は人手不足で直接現場に向かってもらっているから、誰が出てきているかまでチェックはしてないんだ]

「はぁ、そうなんですか……」

 

 それはどうなんだ? とも思うがそれを敢えて言うことはなかった。

 

[アノーさんと連絡が取れたら、息子さんから電話があったと伝えておくよ]

「そうですか、是非お願いします」

[はいはい]

 

 連絡が取れなかったことは気がかりではあったが、もう一つの気がかりをシーブックは優先することにした。

 

 やがて目的地のあるインバーバ区のウェーズ通りが見えていた。

 『テスのパン屋』。シーブックが探している少女、セシリー・フェアチャイルドがつい先日まで住んでいた家。過去に一度、彼女がいないだろうかと彼が訪れた時には外までイーストの、パンを焼く良い匂いがしていたのだが、今は入り口に『CLOSE』の札が提げられいた。

 きょろきょろと中をガラス越しに見回し、更には裏手に回ってみても人気(ひとけ)が全くない。

 しばらくそうしていると、年配の女性から声を掛けられた。どうにも噂好きだったらしく、あることないこと口にしてシーブックはそのたびに曖昧に頷くことしか出来ない。

 

「ほら、ナディアさん派手だったでしょう。庶民の暮らしに我慢できなくて出て行っちゃたのよ。セシリーちゃんも今はロナ家に戻って迎賓館で贅沢な暮らしに戻れて嬉しいんじゃないのかねぇ?あの子、高慢そうだったもの。きっとそうよ」

 

 女性の言う彼女の評を彼は内心で否定した。確かに彼女の容姿は女性の言う高慢なお嬢様のイメージに適うほど整っていた。しかし、その中身はそれとは些か違うのだとシーブックは知っている。

 別に自分が悪いわけでもないのに何度も謝罪を口にする彼女。異性の前で熱いからと服をパタパタとさせたり、ちょっとした身体同士の接触を厭わない少女らしい気安さを持っていた彼女。 

 ただ美人コンテストや夜の自転車置き場で見せた気丈さと凛々しさ。そういった内に秘める強さが、彼女をよく知らない女性には高慢さに映ったのかもしれない。

 

 女性が去り、シーブックもまた閉め切られたパン屋の前から歩き出す。

 その頭の中では侵略者であるクロスボーン・バンガードとロナ家、そしてセシリー・フェアチャイルドという少女がぐるぐるとごちゃ混ぜになる。だが、それらは決して融け合うものではないはずだ。

 

「ロナ家、セシリー。……一体どういうんだ?」

 

 シーブックの胸に、確かめなければならない、という強い願望に似た義務感が渦巻いた。

 

 

 ◇

 

 

 新型モビルスーツ奪還の任務を受けてベルファスト基地を一人離れ月へと上がったウォルフ・ライルは、上官の勧められた通り自分が世話になる部隊に挨拶に行った後、モビルスーツを受領するためにサナリィ月支社へと足を運んでいた。

 

「ウォルフ少尉、こちらです」

 

 技術スタッフに連れられて格納庫へとやって来た彼の目に飛び込んできたのは一機のモビルスーツ。額にアンテナを持ち、白地に青赤黄のトリコロールカラーで塗り分けを施されたモビルスーツ。

 ウォルフはその正体を目に焼き付けんと柵まで走り寄ると階下から上まで見上げ声を上げた。

 

「おい、こりゃーガンダムじゃねぇかー!」

 

 喜色満面のウォルフにスタッフは苦笑いを浮かべた。そして首を横に振ると、

 

「いいえ、ガンダムじゃあ、ありませんよ。ガンダムヘッドではありますけれど」

「F90(セカンド)――――それがこいつの名称さ」

「あん?」

 

 随行するスタッフとは違う、知らぬ声に顔を向けると一人の士官が、彼らのいる中二階へと階段を登ってきたところだった。

 連邦軍が用いるツナギを着た歳若い男。

 

「あんた?」

「―――スクレッド中尉」

 

 ウォルフの誰何の言葉とほぼ同時に、案内役の技術スタッフがその男の名を呼んだ。

 どこかで聞いた事がある名だとウォルフは思った。だが、相手に見覚えはない。

 

「こちらは、ベルフ・スクレッド中尉。このF90(セカンド)のパイロットです。連邦軍最強パイロットと噂されるトップエースのお一人。ご存知でしょう?」

「ああ!あの!?」

 

 連邦軍最強トップエースという評がウォルフの脳裏に閃きをもたらした。

 目を見開き、見た目、自分と然程変わらない年のその士官をマジマジと見つめる。

 先のオールズモビルズの乱で撃墜数が三桁に届くとか届かないとか、そんなスーパーエースが現れたことを聞き、同じモビルスーツ乗りとして興味を持っていた。確かその少尉の名がベルフ・スクレッド。

 ツナギ姿の士官は、自身の紹介に照れくさそうに苦笑する。

 

「よろしく、ベルフ・スクレッド中尉だ」

「へぇ! 俺はウォル――っとと、自分はウォルフ・ライル少尉であります」

 

 話では少尉だと聞いていたが、先の功績が認められたのだろう中尉に昇進していたベルフに対し、初対面のこともあって口調を整え直す。が、しかし―――

 

「いいよ。同い年くらいだろ? 上の前だけで」

「おっ、良いのかい? 悪ぃな。苦手ってわけじゃないけど、つい」

 

 そう言われてウォルフはあっさりいつもの砕けた口調に戻ってしまった。

 

「それで? あんたらはF90Ⅱ(セカンド)の見学か?」

F90Ⅲ(サード)の件はお聞きでしょうか? 奪還の任務にこちらライル少尉が就くことになったのでコアファイターへと案内しているところです」

「ああ、あれか」

 

 スタッフの言葉にベルフは視線を格納庫の奥へと向ける。釣られてウォルフも見れば、そこには戦闘機らしきものが垣間見えた。

 

 

 コックピットのシートに座りマニュアルを片手に計器を操作する。

 モニターにはモビルスーツ本体とコアファイターそしてブースターの合体状況を示す画面が映し出されていた。現在、コアファイターとモビルスーツのバックパックの役目も兼ねるブースターを示す表示がグリーンなのに対し、モビルスーツ本体は赤く[LOST]と記されている。

 ウォルフはそれをコツコツコツと指で叩と、

 

「しっかしさぁ、何で持ってこれなかったんだよ? クロスボーンが侵攻してきたのはフロンティアⅣで、サナリィがあるのはⅠだろ? スタッフが全員逃げてくる暇があるんなら一緒に持ってこりゃ良かったじゃねぇか」

 

 そうすれば自分がわざわざ潜入任務なんぞしなくても済んだのに、と言いたげな声を上げた。

 

「その予定だったんですよ。実際そういう方向で一時的にF90Ⅲ(サード)所有を軍に移したんですが、それが仇になったんです。あっちに残る連中が新型があるなら防衛に使うと言って悶着があったらしく、結局送り出さなかったらしいんです」

「……むちゃくちゃだな。そんな混乱してたのかよ」

 

 上層部が逃げ出し、退役将校なんてものが幅を利かせているフロンティアⅠの今の現状をウォルフは知らない。

 

「幾ら新型だと言ったって、コアファイター(こいつ)が無くちゃまともな戦闘なんて出来るわけないのに」

「……一応、、コアブロック(こいつ)が無くたって自律起動は出来るんだろ?」

「それは勿論。でなければドッキングシステムが作動しませんから。ですが、それとこれとは話が別です。それはパイロットである貴方のほうが分かるでしょう?」

 

 共にセットアップ作業をこなしつつも話に付き合ってくれる整備スタッフに、「まぁなぁ……」と気のない返事を返すウォルフ。

 任務を思い溜息が漏れた。

 

「こりゃ、思った以上に大変かもなぁ」

 

そんなウォルフの言葉に答えを教えてくれる親切な人物など何処にもいなかった。

 

 

 ◇

 

 

 もう明日にでも全人類圏にコスモ・バビロニアの建国を宣言しようとするに至っても未だロナ家の面々は迎賓館を仮住まいとしていた。

 そんな中、日々の勉強とモビルスーツのシミュレーションや実地訓練を終え、ようやくプライベートな時間を得たディナハン・ロナが一人、充てがわれた自室でソファに浅く腰掛けてながらテーブルの上の端末に向き合っていた。

画面上では高速でスクロールしている何かが映っている。彼は、ただじっとそれを見つめていた。

 

「…………ん」

 

 不意に画面の動きが止まる。そこに映し出されていたのはクロスボーン・バンガードが制圧した各コロニーから提出された住人の戸籍データであった。その一部の色が変わって、検索事項に該当があったことを示している。

 予想はしていたのだ。彼、もしくは彼らがいるであろうことは。何しろ既に出会っているのだから。だから、探索の手を伸ばしてみたのだが、どうやら当たりクジを引いたようだった。

 

 宇宙世紀に入り戸籍制度というのは、全世界的に実施はされていたが内実ほぼ形骸化したものとなっていた。

 これは度重なる戦乱と混乱の果てに戸籍原本の喪失が続き、そのために戸籍の復元、新規登録の認可を容認し続けてきた弊害であった。不作為の消失に意図せぬ重複、そして悪意ある捏造。

 かつて何の後ろ盾も持たないナディア・ロナがブッホ姓を名乗りつつも何食わぬ顔でシオ・フェアチャイルドと結婚、サイド3に移り住めたのは、そうしたものが常態として黙認、放置されていたからだった。

 また、こうした問題を政府、議会共に理解しながら放置し続けているのは、彼らを支持する富裕層や議員等にとってそれなりの旨味があるからでもあった。どういう事かと言うと、こうした戸籍の捏造・改変は彼らの家系に、いわゆる“名家”という泊をつけるのに利用されるのだ。

 勿論、社会的評価というのはその者の成した功績の積み重ねによって下されるものだが、人々が少ない情報の中からその判断を下そうという時、由緒ある家系、即ち“名家”である、もしくは“名家”の出身というブランドは大きなアドバンテージとなる。

 それは、“名家”の謂れとなった偉業や功績を成した先人と同じ資質を期待する故の評価でもあり、家庭環境、そこで施されたるであろう教育によって一定水準以上の能力を備えた人物へと育成されているだろうことを期待してのことでもある。

 だから『“名家”の出であるということ(イコール)その者の高い能力を約束する』という図式が人々の中に成り立ってしまう。

 そうした民衆の固定観念を利用するため世に出よう、もしくは出た者は自らを“名家”にせんと目論み、財力によって戸籍そのものを買い取る。そうすることにより自らの血を“名家”へと挿げ替えるのだ。

 そして、また逆に“名家”の跡を買うことは、それだけの財力と影響力を持っていることを人々に簡潔に示すことにも繋がっていた。

 マイッツアーの父、シャルンホルスト・ブッホがロナ家を買うことができたのも、こうした背景の下、そのための便利な道具として戸籍制度が維持され続けていたからに他ならなかった。

 

 しかし、新興サイドであるフロンティアサイドにおける戸籍は、それ本来が持つ役目、すなわち人口動態、人の出入りを示す役割をきちんと果たしていた。

 これは4基のスペースコロニーがほぼ同時に建設が行われた結果、その移民希望者の募集に際しても一元管理が行われ、またその対象も地球からのではなく他のサイドや月など戸籍の捏造をわざわざ行う必要性のない人々ばかりであったからである。

 それ故、フロンティアサイドに住まう人々の戸籍データは、本当に()(さら)で、後々移住してきて追加されてきた住人のデータすら管理、監視し易くしていたのだ。それを裏付けるようにロナ家が出奔したナディア・ロナとベラ・ロナ、フェアチャイルド一家を見つけたのは彼らがフロンティアⅣに越してきた時であった。

 

「やっぱりオリキャラのみ、なのか?」

 

 ディナハンがこうして彼らを探している理由は、とある不安が持ち上がったからだ。

 それは、彼の持つ異常、場違いな工芸品(オーパーツ)『Gジェネアプリ』が見せた限界、もしくは機能(ちから)の制限、そして暗に示した()()()によって連鎖的に浮かび上がってきたものだ。

 

  ◆

 

「……開発できない?」

 

 彼がそれを目にした時、思わず呟いた言葉がそれだ。

 ここで彼の口にした【開発】、【ユニット開発】という言葉の意味を少しばかり説明しておく必要があるだろう。

 この【開発】とは、ゲーム【SDガンダム Gジェネレーション】シリーズの用語だ。あるユニット―――モビルスーツから技術的関連があると設定されているモビルスーツを作り出すことを指している。ただゲームの見た目上、『作り出す』というよりも『変化する』と言ったほうが、より適切かもしれないが。

 それは例えば、ジオンのザクⅠからザクⅡFを、ザクⅡFからザクⅡ改を。あるいはザクIからザクⅡJを、ザクⅡJからグフを。といった具合に系譜に繋がったモビルスーツを一つ一つ作り出していくというものだ。

 勿論、これには色々と条件と制約がある。一つの機体からは一つの機体にしか変化しない。先の例で言うならばザクⅡ改とグフを作りたければ、最初にザクⅠを二機用意する必要がある。

 またゲーム上、機体にはそれぞれ【レベル】というものが設定されており戦闘で敵を倒す事で上がっていくのだが、ある一定のレベルに達しなければ新たなモビルスーツへと変化することができないようにもなっている。

 

 ディナハンの視線の先のモニターにはスーパーにディフォルメされたF90Vの姿絵が映し出されていた。それを見つめつつ訝しげに眉根を寄せる。

 『Gジェネアプリ』には、ゲームを模した機能があるのは以前にも触れた。彼はその全てを試し効果を見聞きし体験したわけではないが、自身の身体能力の異常、言い換えるなら超常的な変化と現実の状況がアプリ上に反映されることから、コレが()()であると確信していた。

 

 しかし、上手く事が運ばない。 どういうことだろう? 敵性技術だからか? と考え始めた。ディナハンは確認の意味も込めてクロスボーン・バンガードのモビルスーツで同じ確認をする。

 デナン・ゾン。デナン・ゲー。エビル・S。ダギ・イルス。ベルガ・ダラス。ベルガ・バラス。ベルガ・ギロス。ビギナ・ギナ。ビギナ・ゼラ。

 そのどれもが幾つかの(一部のモビルスーツには真っ黒に塗りつぶされたシルエットだけの姿絵もあるにせよ)開発先のモビルスーツの姿絵を表示している。F90Vのように何も候補を表示しないということはなかった。 

 彼の脳裏に或るモビルスーツが思い浮かぶ。交差した骨を冠した白いモビルスーツ。その入手がこれで俄然難しくなった。

 

「これは、面倒になる。……いや、」

 

 そんなこと以上に予想と違う【Gジェネアプリ】の動きに、懸念が脳裏に浮かんできた。

 それは、端的に言えば超常と現実との整合性。異常が何処まで現実に反映されるのか、そしてそれは本当に――――未来を変える力足り得るか?という不安。

 

  ◆

 

 無念のうちに凶弾に倒れた父、父を愛していたが故に心を壊した母。

 未来を知っていても結局は何も出来ず、唯々諾々とそれを受け入れるしか道を見いだせなかった彼の悲しみと憤り、苛立ちと嘆き、苦しみと絶望、後悔と喪失感。それは余人には決して分からない。

 歴史という潮流の中の一粒の砂にもなれないと理解した時、彼はその先を諦め流されるだけの存在になった。

 だから、目の前に差し出された歪な力に手を伸ばしたのだ。だから彼は縋ったのだ。

 

 この力があるなら願いが叶う、と。圧倒的な力があるなら覆せる、と。決して犠牲を無為なものになどさせない、と思いを込めて。

 

 ディナハンの亡き父ハウゼリーが目指していた、祖父マイッツアーが真に目指しているもの。

 それは、人の営みが営々と続いていくこと。それは言い換えれば、()()()()()()()()()()を未来へと続けていくことでもある。

 そしてそれは、生きとし生けるもの全ての家、人類の始まりの大地、宇宙に散らばった人の生まれ故郷、帰る場所、地球を後の世の子供達に後の世の子供達に残すことにも繋がる。

 そう、コスモ・貴族主義社会の構築、そしてコスモ・バビロニア建国も、その実現のための方便、道具であって決して目的ではない。飽くまでも手段に過ぎないのだ。

 

 かつて、増えすぎた人類の重さに圧迫され死に向かう地球(ほし)をその苦痛から解放し、再生への希望を繋ぐだために民主主義によって形作られた地球連邦政府が取った方策は、人口の抑制ではなく生存圏の開拓であった。

 そのため、人は、宇宙に住処を作れるほどに発達した科学の恩恵もあって更に膨れ上がっていく。

 事実、一年戦争で人類の総人口は半分になり、その後幾度かの戦争があったにも拘らず、現在のそれは一年戦争前と変わらぬほどに増加し戻ってしまっている。それも五十年そこそこの短い内に、である。

 地球連邦政府は、それに対しコロニーの新規建造で対処しているが、この人口の伸び率に対してそれが何時まで持つ? コロニーを増設できるラグランジェポイントは有限であり、狭い領域だ。遅かれ早かれ限界を向かえ、飽和することは目に見えている。

 愚かにも人は再び同じ過ちを繰り返そうとしていた。

 

 だから人を減らす。過去を見つめ、学び、考えた。その結果、あの時、地球連邦が取らなかった政策を選択する。

 これがマイッツアーやハウゼリーの論だ。

 地球連邦という仕組みを作り上げた先人達が、宇宙世紀の始まりに際し多くの血が流れることを厭わなかったのと同じようにマイッツアーもハウゼリーも、そしてカロッゾも虐殺者という汚名を着る覚悟を決めたのだ。人の未来に責を負うと誓ったのだ。

 

 ならば――――

 

 地球の再生と保全。人類の永続。

 そのために地球上の人類を全て一掃する。地球圏に住まう人間を少なくし、他惑星、他星系への移住を見越した深宇宙探査、真なる大航海時代の幕開け。

 やがて、人が地球を後にし宇宙に住み始めた時、西暦から宇宙世紀へと変わったように、人が地球圏から、いや太陽系圏を後にし新たな星系に旅立った時世界は再び新たな世紀へと移り変わるに違いない。

 そして人類はその新たな住処で営みを続ける。全人類が、地球を離れ、宇宙を住処にし、新たな大地に足をつける。そして、いつの日か再び緑溢れる故郷へと帰って来るのだ。

 

 『宇宙世紀の終焉、そして次の世紀の始まり。

  過去から今、そして未来へと連綿と続く人類と地球の歴史を【黒歴史】になぞにはさせない。』

 

 ()()実現――いや例え自身が生きている間には実を結ばずとも、最後までの筋道を作り、それを後に続く者達に託すこと――は、世界を敵に回すロナ家に生まれ、【機動戦士ガンダム】を知る自分だけが持てる願いなのだ、と彼は知っていた。

 そして、それはきっと、そんな彼が家族へ出来るの最大の手向けと慰撫となると彼は信じた。

 

  ◆

 

 しかし、ディナハンが頼りにする所の異質な力【Gジェネアプリ】は、そんな彼を嘲笑うかのように振る舞った。

 [STAGE CLEAR]。現実をまるでゲームと見做すかの如く示されたそれを見て、不安になったのだ。

 【Gジェネ】、【SDガンダム Gジェネレーション】と言うゲームの特徴の一つに歴史にIFは存在しないというものがある。一年戦争でジオンが勝利することは決して無い。いくらプレイヤーが自軍を操り、どれほど戦闘で勝利を重ねようと戦争の結果を動かすことは出来ない。ジオンは絶対に連邦に勝てない。ティターンズはエゥーゴに潰され、ネオ・ジオンはガンダムチームに、ロンド・ベルに野望を阻まれるのだ。

 そして―――

   建国後、数年でコスモ・バビロニアは崩壊させられる。

 

 彼が手に入れた力の元となった存在は、決して歴史を覆さない。時代や世界(さくひん)を超えて勢力が入り乱れることが合ったとしても、物語の中で決められた勝者が勝者となり、敗者は敗者となる。

 だから彼は、【Gジェネアプリ】とゲーム【SDガンダム Gジェネレーション】の違いを知っておかなければならなかったのだ。

 今までに歴史のIFはあったのか?と問えば、戦史を紐解き。過去彼等が実在したか否か?と質せば、軍人名鑑を漁り。MS開発はどう行われていたのか?と糺せば、各社各勢力の机上のプランも含め資料を可能な限り集めた。

 その一環としてディナハンは、今現在の戸籍データの調査を行っていたのだった。

 そうして出てきた人物が()()であった。

 

「ふーん、サイド3から。なるほど、たしかにジオンに居たというんなら、そう名乗れなくもないか……」

 

 彼女の言動を思い起こし、独り納得する。――――その時だった。

 

「―――入者です!」

「どちらか!?」

 

 ガッシャアアァンッ! 

 

 人の叫び声の後に、ガラスが割れるように響く音がディナハンの耳に届いたのは。

 ビクリと反射行動を示し、直ぐ様腰を浮かせた所で更には銃声が聞こえてくる。場所は少しばかり離れているように思えた。

 

「ディナハン様!」

「大事無い!」

 

 急ぎドアを開け入ってきた護衛の兵士に、そう答えながら彼は直ぐにこの騒動に思い至った。【前世の記憶】に残る出来事。シーブック・アノーが邸内に侵入し、ベラ・ロナにならんと髪を切ってケジメとしたセシリー・フェアチャイルドと邂逅する。

 今がその瞬間だったのだろう。

 

「おじい様は? 従姉上は無事か?!」

「はっ、ただ今確認いたします」

「良い、直接行きます。伴を」

 

 ディナハンは返事を待たずに部屋を出た。ベラ・ロナの居室へと廊下を急ぐ。

 彼の記憶が確かならば、ベラに、同じ屋敷にいるマイッツアーにも怪我はなく、ザビーネ・シャルが撃った弾丸はシーブックには当たらず、彼は無事に逃げ(おお)せる。

 そして、今のところ現実は大凡(おおよそ)彼の記憶どおりに未来を紡いでいる。きっと、そうなるはずだ。

 だから、彼が彼等の身を案じて(はや)る理由はない。そう、心配する必要は無いはずだ。本当ならば。

 

 早足に廊下を進むディナハンの姿を捉えた者達が脇に下がり頭を垂れる中、やがてマイッツアーとベラの会話がディナハンの耳へと届き始める。

 人だかりの先、ベラの居室からだった。

 

「―――その折の暴漢とはな」

「ただの物盗りかと。いえ、だからこそ連邦の体制は正すべきだと、感じました」

 

 ディナハンに気付いた人だかりが道を開ける。

 その部屋へと一歩踏み入れると、彼女の答えに感慨深く頷くマイッツアーの背中が見えた。側には片目をアイパッチで隠した男ザビーネ・シャルが静かに控えている。

 その光景にやはりと思うとともにディナハンは、ベラの口にした言葉にほんの一瞬、顔をしかめた。心にもない事を、と。

 

 成り行きであったとは言え、シーブックと、シーブック達と離れてしまったことで彼女は寄る辺を失った。そして蘇った幼き日の記憶が家族という名の居場所を肯定した。それが血縁という安寧に負け、身を任せて、ただ流されるだけとなっていると気が付きもしないで。

 しかし、彼の生存を知って彼女は自分の愚かしさに気が付く。

 とは言っても自身を取り込んだものは大きく、強大だと知ってしまった彼女が、そこから脱せるはずもなく。だから、彼をかばうように言葉と態度を選んだ。

 ベラ・ロナ。確かに彼女は強い。だが、支えてくれる者が居なくて、たった一人で立ち続けられるほど強くはない。彼女はまだ16歳の少女なのだ。

 だが、自分に巻き付く茨を力づくで断ち切ってくれる者がいたとしたら? もし、白馬に乗った王子様が現れてくれたなら、彼女はきっとその差し出された手に自らの手を重ねるだろう。

 なぜなら彼女は彼に心を残しているのだから。そして――― 

 

 彼女はディナハンの願いを阻む敵となる。

 

「ん? おお―――ディナハン。お前も無事か?」

 

 ベラの視線が動いたことに気がついたマイッツアーが振り返り、ディナハンを見つけ優しげな笑みを見せた。

 

「はい、私は特に」

「そうか、それは良かった。実は、物盗りが入ったようでな。幸いにもベラにも私にも怪我はない。――未だ混乱を脱しきれていないとはいえ、警備の見直しと意識の引き締めを行わねばな」

 

 確かに、とディナハンは頷く。

 F91の進入、脱出を簡単に許したり、コスモ・バビロニア宣言時の鉄仮面狙撃テロを押さえ込めなかったりとクロスボーン・バンガードは警戒が甘い。

 こうした、いざ実践となった段階になって露見する問題点は、一大コンチェルンを起こすほどに組織運営に長けたマイッツアーや、コンピュータそのものと言って良いカロッゾをもってしても根絶し難いもの。

 厳しい規律と訓練を施され一端の真っ当な組織となったクロスボーン・バンガードであっても、それは変わらないのだろう。

 いや逆に一定水準以上の者でしか構成を許していないからこその人手不足。それが祟った例とも言えるだろうか?

 

 ふと視線が静かに佇む()()に向いた。長く美しかった髪を無造作に切ったその姿。

 

「従姉上……髪を」

「ベラがな、アイドルとなることを了承してくれた。これはその決意の顕れだと」

 

 マイッツアーの言葉を聞きつつ、ベラ・ロナを見つめた。

 彼女に、はにかむような笑顔を向けられ思い至った。自分の考えが間違っていたことに。

 そう、いくらシーブックが迎賓館にロナ家の人間が、セシリーがいることを知ったとしても、それで直ぐ様彼女の居場所に辿り着くのは余りに都合の良い話だ。

 だが、現実にそれは起こっている。偶然?

 

(いいや。……なるほど、これがニュータイプの勘って奴か)

 

 それを可能にする概念、そして彼がその能力を持ち合わせていることをディナハンは知っていた。

 シーブック・アノーは知らずその能力を開花させつつ在るのだろう。

 

「そう、ですか。それは喜ばしいことです」

 

 そう言うと、ディナハンは年相応に無邪気な笑みを浮かべた。内心の恐れをひた隠しにして。

 




【独自解釈と独自設定】

 ○木星との取引
 F91本編(映画、小説)において木星に関する描写があるのは、映画のコスモ・バビロニア宣言の式典に参加するサウザンスジュピターの館長夫妻のみであるが、
 アニメ雑誌NEWTYPE91年4月号の富野監督のインタビューによればコスモ・バビロニアはサウザンスジュピターを拿捕したことにより労働力の確保が適ったと話していることから、
 本小説ではコスモ・バビロニアから木星(サウザンスジュピター)への要求は、木星公社の存在理由であるヘリウム3の供給と労働力の提供要請ということにした。

 〇小型の融合炉
 クロスボーン・バンガードのモビルスーツの使う小型の融合炉の技術は元々はアナハイムエレクトロニクスから融通されたものであることが小説版F91には書かれている。

 〇マルチプル・コントラクション・アーマー(Multiple Constraction Armer)
 総解説 ガンダム事典(著、皆川ユカ 監修サンライズ)によると、UC0090年代に開発されたミノフスキー粒子を使い金属の成長を制御することで、金属結晶中に粒子サイズの物(コンピュータチップ)を内包させる技術をモビルスーツの構造材に使用したもの、らしい。
 この技術を使ってサイコミュのチップをフレームに鋳込んだのがサイコフレームであり、モビルスーツの小型化はこの技術によって制御用コンピュータを構造材の中に閉じ込めることで容積を減らした結果実現できたとされている。
 F90に使われたヤシマ技研のマイクロハニカム構造との関係は不明だけど、なんとなく妄想はできる。

 ○ベルフ・スクレッド
 スーファミ版F91の主人公(つまりプレイヤーキャラ)であり同漫画の主人公。ゲームの仕様のせいではあるが、異様なまでの撃墜数を誇る。しかしニュータイプではない。

 ○モビルスーツの自律行動
 モビルスーツはパイロットが乗っていなくとも無人で動くことが可能。
 OVA『機動戦士ガンダム08MS小隊 震える山(前編)』ではノリス・パッカード少佐が自身の乗機であるグフ・カスタムに音声入力で起動、歩行をさせるシーンが存在する。

○F90Ⅲがサナリィに残っている
 漫画『機動戦士ガンダムシルエットフォーミュラ フォーミュラ91の亡霊』ではコアファイターに乗ったウォルフが単独でフロンティアⅠに潜入、その後暗礁宙域の隕石の上に立っていたF90Ⅲ本体と換装するシーンがある。
 もし仮にウォルフとは別働隊がF90Ⅲ本体をそこまで運んだとすると、その理由がわからない。ドッキングさせた状態でその場所まで持って行き、コアファイターに分離、潜入任務に付けば良いだけと考えられる。
 あるいはF90Ⅲは駐留艦隊が逃げ出す時に持ちだされたとするなら、暗礁宙域に隠す理由が分からない。仮に戦闘に巻き込まれたため止むを得ずということがあったとしても、それをクロスボーン・バンガードが見逃すとは思えない。
 更に言うならフロンティアⅠへのクロスボーン・バンガードの襲撃はない。(ただし漫画クライマックスUCにおいては、フロンティアⅠが襲われている。しかし、逃げ出した艦隊は交戦後生き残っているため一時的に放出していても回収すると考えるのが合理的)
 他には、サナリィが行っていたF90Ⅲのテストの最中にフロンティアⅣの襲撃の知らせが入ったため放置した、というのも考えられるが、そのままに放置しておく合理的な理由が見あたらない。
 いろいろ考えたが、漫画の描写にあるように何故あんな場所(=暗礁宙域にあるポイント6381。小さな隕石の上)にF90Ⅲが放置してあったのか、思いつかないので独断と偏見により、F90Ⅲの本体はサナリィで眠っていることにした。アンチ・ヘイト。

 ○Gジェネのシステム
 無いとCV製MSが木星圏で技術的に動かせられる理由がなくなるため必要だと【作者】が判断したためな登場している道具。この小説最大の鬼門。

 ○今まで明確に書いてこなかったディナハンの目的
 『宇宙世紀の黒歴史化の否定』&『地球から別星系の惑星に人類を移住させることによる宇宙世紀の終焉』
 これがタグにアンチ・ヘイトが付いている最大の理由。本当はもっと引っ張るつもりだったけど、Gのレコンギスタで宇宙世紀の次の世紀が明示されたので書くことにした。
 ただ、宇宙世紀の終焉は今までも暗に示されてきている。 
 小説F91では連邦軍とは【大航海時代】の船乗り養成機関となっているだとか、リングオブガンダムでは地球or人類の歴史のデータ(=アムロの遺産?)を別の星に持って行ってとか何とか。
 最も明確に書かれているのは、クロスボーンガンダムゴーストでの宇宙世紀が、他惑星で発生した生物の発見、およびそこへの移住で終わるんじゃね?って描写。

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