Justice中章:歌姫と蘇生と復讐と   作:斬刄

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11話決着の時(後編)

「僕は…見守ることしか何も出来ないのか」

秋瀬はみねねと正輝がムルムルと戦っているのと、囚われの雪輝を眺めることしかできなかった。8thが死んで探偵日記ももう使えない、助けに向かったところで我妻に殺されるのは目に見えていた。

 

「いででで…なんつー馬鹿げた怪力持ってんだあんの使い魔は。クソッ」

「⁉︎その怪我は」

 

秋瀬は雪輝を助けようにも、雪輝は秋瀬の手の届かないところで戦っている。正輝の頭からは出血しており、凛から貰った宝石で治療をしている。

これ以上戦うのは厳しい状態だった。

 

「このままいくとあいつらの都合どおりに事が進んでしまう…最悪、奴らを学校ごと殲滅するっていう横暴な手段を取らなきゃいけないが良いか?」

「⁉︎待ってくれ!まだ、見たいんだ。

ここから後がどうなるのか…我妻さんの通りに事が進んでしまうのか。それとも…」

「分かった、こっちの治療が終わったらもう一度学校に行って様子を見る」

もう、秋瀬にとってはこの戦いをただ見届けることしか何もできない。介入しようとしてももう雪輝は我妻のことにしか見ていない。真正面から受け止めて、我妻由乃と本気で向き合おうとしている。

「いいのか?秋瀬は」

「今、僕が行って雪輝くんを支えても…迷惑になるだけだ。正輝くん、全てが終わったら…必ず生きて帰ってきてほしい」

「当たり前だ、こんな所でくたばってたまるか」

 

球体に囚われた雪輝を助けに行こうにも、神の力を手にし、未来日記を持っている我妻由乃に勝ち目はなかった。

 

*****

 

「雪輝を封じ、9thも倒した。異端者の正輝については敵前逃走したが、放っておいても何も問題ないじゃろ。あとは…」

 

ムルムルは逃げている正輝をいつでも機会をうかがって殺すことができる。

存在そのものが異端であるために、殺したとしても死体を消してしまえば因果律になんの支障もないからだ。

 

正輝を相手にしたところで三週目のデウスに元凶だと嘘を教えて裁かれるのも時間の問題。

 

「今死なれても因果律的に困るからのぉ仮死状態にしたものをチョチョイと治して…これで良し」

 

ムルムルが空中に浮かせていたのは3週目の我妻の父親だった。我妻にナイフで刺されており、仮死状態にされている。

 

なぜ刺されているのかは我妻が三週目の我妻を殺そうと家に向かう前に雪輝達が監禁されて苦しんでいる三週目の我妻を助けるために救急車を呼んでいたからだ。その後、2週目の我妻とムルムルが家に到着したものの、救急車と父親が急いで家に駆けつけていた。

 

2週目の我妻が三週目の父親に会えば当然、父親は我妻の成長に異変に感じる。

その際に2週目の我妻が刺していた。ムルムルは父の怪我を治して、学校の屋上に置いた。

 

「さて!3週目のゲーム開始じゃ!2nd、早く三週目の我妻を殺すのじゃ!」

(こいつを殺せばまたユッキーと出会って三週目のサバイバルゲームに参加できる。何も問題はない…2週目のユッキーとさよならして今度は3週目のユッキーと)

それでも2週目の雪輝が必死の思いで我妻を叫び、愛されていたことに心を傷んでいた。岩谷正輝はまた学校に戻って我妻由乃を暗殺して終わらせようと、彼女の様子をうかがっている。ムルムルや我妻には気づかれていない。

(チッ、こっちの神様に頼んで未来日記の無力化にさせてくれたもののかなり手こずった。が…なんとか間に合ったな)

 

我妻は幼い頃の3週目の自分を眺めている。

狂い、壊れ、雪輝に依存した我妻とは違う、壊れてなかった頃の幼い自分を殺そうと前進する。

 

(パパもママも殺していなかった頃の私…)

 

3週目の我妻が目をさまし、目の前にいる見知らぬ人に声をかける。

声を聞いて、2週目の我妻は足を止めた。

「誰?」

「…貴方がよく知っている人よ。そうだ、貴方に自分の未来を教える…」

我妻は殺そうとする前に自分の過去のことを目の前にいる3週目の我妻に伝える。

「み、らい?」

「ええ、貴方の未来がどうなったか知っているの。貴方のママの心の病気はどんどん酷くなって、パパも仕事で帰って来ない。帰りたくなかったのかも。

ママは私にいつも以上に当たってくる…ママの節間をされなきゃいけなくなった。耐えきれなくなった貴方は2人に睡眠薬を飲ませて檻に閉じ込める。

最初は逃げたかっただけ、自分の苦しさを知ってもらいたかっただけ…なのに。でも良かったわね、お前はもう苦しまなくて良い。私の手で楽に「違う、私苦しくなんかないよ…」⁉︎嘘だ‼︎苦しかったでしょ!あんなに辛かったでしょ!」

 

3週目の我妻はママが受けた折檻に苦しくも、辛くなかったと言った。

分かってくれると信じているから、どんなことをされてもいつかは気付くと。

「ううん、ママは病気なの。パパは仕事が忙しいだけ…私はパパもママも好き。2人はいつか私のことを分かってくれる…全然平気」

(この頃は、この頃は明るい未来を信じていた。私は、どこで、歪んでしまったの…)

2週目の我妻は、3週目の我妻の言っていることに怯えたが、ナイフを持ち刺し殺そうと構える。

 

「それでも、私には会わなきゃいけない人がいるのよ!」

「貴方も、好きな人いるの?」

 

このとき正輝は我妻の事情を知った。

彼女の過去を、なぜあそこまで雪輝に固執したのかを。

父母が原因でもあるが、心が壊れてた時に雪輝と出会い、運命の人だと実感してたのだろう。

(だから、あんな風になったのか…)

彼女のことをヤンデレだの狂った女だの散々否定したが、2人の話を聞いていくうちに憎めないではいた。しかし、それでも正輝は感化されて同情するわけにはいかない。

 

(正輝、因果律の揺らぎが増大している⁉︎)

 

突然、正義側の神様が正輝に念話をして、因果律の異変を連絡する。因果律に大きく影響しているのは正輝という異端者にも該当しているためにそれを聞いて焦る。

(まさか、もう俺たちのことバレたのか⁉︎)

(いいえ違います、これは…あの球体からです)

調整していたムルムルが驚いた顔をして見上げていた。球体に閉じ込められていた雪輝が発生源となり、彼が生じる揺らぎは未来日記所有者の未来を次から次へと変わってゆく。このまま未来が大きく変わるうちに神を決めるサバイバルゲームそのものの存在すら危うい状態となるほど因果律が大きく変異していた。もう、2週目のムルムルでさえも手に負えない状態になっている。

 

「私はユッキーと、いたい。そうよ…だから私はお前を殺す」

正輝が気を散っている間に2週目の我妻が3週目の我妻を殺そうとする。しかし、3週目の我妻を父親が庇った。

娘を守る為に。

 

「パパっ…⁉︎」

 

続いて母親が入ってきて、3週目の我妻を見て泣いていた。無事であることに安堵している。

 

「動くな!ここを爆破したのはお前か!」

3週目の来栖圭吾が介入して、拳銃を構える。彼らが入ってきたことにより我妻はもう詰んだも同然だった。

(私には分かり合える時が来なかった、あぁそっか…ユッキーが未来を変えたから一緒になれたんだね。

やっぱり、ユッキーはすごいや)

来栖圭吾のことを見向きもせずに、3週目の我妻と両親が一つになれたことにしか写っていない。

自分にはそんな時が来なかったから

「羨ましいな、いいな…3人とも殺してあげる。私は、ユッキーが大好きなの。だから」

フード越しに隠していた彼女の顔は、大粒の涙を流して泣いていた。彼女は3人をナイフで殺そうと襲ってくる。

(ユッキーが好き、ユッキーが大好き)

「たとえ死んでも!」

来栖圭吾は、3人を守るために銃を構えて発砲した。

弾丸が彼女の頭に放たれた時。

 

球体の中から叫び声が何度も聞こえ、叫ぶごとに球体にヒビができ、そこから大きくなってゆく。

そして、

 

「由乃ぉぉぉぉぉ‼︎」

 

球体の中に拘束された雪輝が解き放たれ、我妻を抱く。

 

「な、なんで?」

「迎えに来たよ、由乃」

 

来栖圭吾が拳銃で我妻由乃を狙って撃った弾が、雪輝と共に球体から出てきた2週目のムルムルが防ぎ、弾丸を消した。

 

「おぬしは、2週目のわし!」

「久しぶりじゃのう?1週目。玉に封印されて以来じゃ。

まさか重複しておるからと自身に封印されるとはのぉ!」

弾丸を消した後に黒い複数の手が上から抑え、額にあるばつ印のようなものを剥される。

抑えつけられたほうのムルムルの額には1と数字が記されていた。

 

*****

「嘘、幸せ夢の世界よりも私を選んだってことなの…」

「由乃、このまま僕を刺すんだ。もう分かっただろう?由乃の居場所はここじゃない」

球体から出てきた雪輝は我妻を抱きしめている。二人の近くには我妻の父母と小さい子供の方は我妻由乃が抱擁して泣いていた。

 

雪輝に抱かれている我妻は父母との光景を見て泣いていた。

 

「だからさ、僕が死んで君の居場所を作る」

 

我妻のノイズ音がなり、我妻は画面を見る。いったいなにが書かれているのかは正輝には見えなかったが、雪輝の指示にいつも従っている以上間違いなく雪輝を殺そうとする。

「分かったわ、それがユッキーの望みなら」

(しめたのじゃ!1stを殺してしまえばどうとにでもなれる!)

正輝は邪魔をしようにもまだ、手が出せなかった。ここで雪輝と我妻の二人がどう決断するのか見る。

 

我妻が雪輝を殺した場合、正輝の役目はデウスの言うとおり、正輝の手で我妻を殺して正しい因果にすること。

 

しかし、こんな時に空気を読まずに後ろから狙って攻撃するのは彼にとっては気分が悪く、後味の悪いものを残してしまう。

 

(悪く思うなよ)

 

頼まれた以上は遂行せざる負えない。

もしも雪輝を殺した後、デウスの指示で我妻も殺さなければならない。それは悲しいことだが神には立場上逆らえなかった。

我妻を殺すのは二人がどう決めるか次第だ。

正輝は我妻が雪輝を殺した後に我妻を殺そうと、投影魔術で剣を持って暗殺しようと構えていた。が、

「僕は大勢殺した。でも、由乃だけはこれで」

「バカね、ユッキー」

「えっ?」

(なにっ…⁉︎)

また神になってタイムリープを繰り返すというのに、由乃はありえない行動をした。彼女は雪輝の思いに負けて、

「なんで、なんで…⁉︎」

「私はここに残る。言ったでしょ…刺せないよ。私は刺さない…そういう運命だから」

我妻は自分のナイフで横腹を刺し、自分を殺した。持っていたナイフを落として、我妻は地面に倒れる。

雪輝は我妻の体を支えて、彼女が息絶えることに嘆き悲しんでいた。

 

「ねぇ、キスしてユッキー」

二人は目を閉じ、別れのキスをした。

正輝は投影を破棄し、殺そうとするのをやめた。我妻が自分を刺した以上手を下す必要はない。

(ここが…私の居場所)

「またキスが上手くなったね、ユッ…キー」

「由乃ぉ…」

雪輝が我妻に呼びかけても返事は返ってこない。彼の目の前にあるのは涙を流して散っていった我妻由乃の亡骸でしかない。

「勝者を1st天野雪輝とする!時間がない、すぐに飛ぶぞ1st!」

「ちょっと待って⁉︎由乃、由乃ぉぉぉ‼︎」

我妻の自害によって雪輝は2週目の神となり、2週目のサバイバルゲームはこれにて終止符が打たれた。

「終わったんだな…これで」

正輝と秋瀬は上空に上がっている2週目のムルムルと天野雪輝がこの世界から去ってゆくのをただ見上げることしかできなかった。

 

「俺の手で汚す必要はなくなったかな」

正輝は自分の手を見て、そう言った。

 

*****

 

これにて結末は、原作通りとなりました。この場所は改変しようにも無理があるのでこれが限界です。変わった点としてはムルムルとの対決がみねねと協力して戦うということぐらいしかないです。

 

 

Q3週目のデウスは正輝の力を感じて、戦闘の途中に連れて行かれて消されるのではないかと?

A2週目のデウスと条件を交わしたことによって気づかれないようになっています。たとえ気づいたとして異端者とはいえ、不正をしている2週目の2人を倒す為に戦っているのであえて消さずに眺めるくらいしかしません。

 

Qなぜ二人の未来日記が無力化出来るのか?

A2週目の神様が死んでいるからです。未来日記所有者を観測者によって管理下されていましたが、その観測者である秋瀬も力を無くしており、ただの無力な一般人です。

 

 

と、いうわけでこの世界で救ったのは平坂黄泉と戦場マルコと美神愛、そして秋瀬或でした!そして次回はようやく未来日記編は最後となります。

 

アンケートを提供してくれたひがつちさん。どうもありがとうございました!

 

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