Justice中章:歌姫と蘇生と復讐と   作:斬刄

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今回は矛盾が多いかもしれないので、後々修正します。



24話互いの正体

艦娘の全員は既に衣服を着ており、みんな別々の所にいる。

朝潮は浜風と一緒に布団に入って寝ており、摩耶の方は一人の気分になりたかったために彼女だけ海辺に行って外の空気を吸っている。残った榛名と五十鈴は正輝と互いのことについて話していた。

 

 

「名前の方は岩谷正輝だ。と言っても何者であるのかと何で手から剣が出たのかを始めないといけないんだったな?」

「はい、そこから話さないと困ります…」

「まず何者かっていうのは…人間でもあり転生者でもある。転生者っていうのはまぁ、前の世界で死んだ人が別の世界に移動して生きるってな訳。

 

とりあえず俺が人間であることは分かっててくれ。次は俺が使っていた異能…魔術についての説明しよう」

「魔術、ですか?」

正輝は魔術について必要最低限のことを二人に説明する。魔術は本来、人には明かしてはならないが、それは士郎達のいる世界であるため別に艦娘達に明かしても何も問題はない。

 

魔術の性質だのや、詠唱、基本骨子など長々と言っても専門用語が多く。艦娘にはややこしくて分からないため、とりあえず魔術を使えることで火、水、雷、土などの多彩なものを扱えれる。ファンタジーとかで言う異能力みたいなものと正輝は説明した。

 

そう言って一つのポーキナイフを投影して、目の前で作り出す。

「剣を出せたのはその魔術の一種で自分の想像したものを創り出すことを投影魔術って言うんだ」

「じゃあ空に大量の剣を出現させたのも」

「あー…確かにあれは魔術を使いこなせば使えるようになる。でも、かなりの鍛錬が必要なんだ」

 

 

正輝は何度も鍛錬している衛宮のように上手く投影できるわけではない。正確に狙えるというわけでもないのであそこで必中したのはかなりの集中力が必要であったからだ。

 

陸ならまだしも、海上で戦ったこともなく安定してない場所で使うのは至難。だから、正輝は気が滅入って倒れたのである。

 

「えーっと。はい、質問です。なぜ空から落ちてきたのにあんたは無事でいられるの?」

「あーその質問ね。これはBLUEって言って、俺の身体を守ってくれるんだ。これは魔術ってわけじゃない。俺が作ったものなんだ」

 

ナイフの投影を破棄した後、持っていた青い球体を右手で、左手には赤と黒の球体を見せた。

 

「青い球体はバリアになったり、自分を守るためのゴムにもなることがきる。変形自在だ。赤いのは攻撃特化型で、黒いのはまぁ…遠距離武器用かな?俺は青い球の方を使って衝撃を防いだ」

 

それぞれの球体を武器に変更させて、3人に見せた。青い方は弾力性のある物体に変形したり、二つの刀に変わることができる。

赤は肉包丁みたいな形の武器に変わり、黒の方は遠距離攻撃用の武器が多く入っていた。

 

「じゃあこっちの質問な?君達は何者?」

「…私達は艦娘という存在です」

 

*****

艦娘が現れる前の話。

深海棲艦が海上から出現し、人間を襲ったことから始まる。その時、人間側の対応は何もできなかった。ただされるがままに砲撃を受けて、多大な被害が出てしまったこと。

 

そんな中、艦娘という存在が船で運転している間に見つけた。彼女らを集めて統括し、深海棲艦という敵を阻止するために、艦娘を指揮する提督が存在した。

 

その提督を集めるための大本営

提督が悪さをしないように監視する憲兵

 

艦娘は海域を散策することで他の艦娘を見つけ出したり、建造で新たな艦娘を作ることもできる。

「用は力のない一般市民を守る正義の味方みたいなもん?」

「まぁ、半々ですね。正義の味方っていう言い方は半分は合ってます」

現に深海棲艦と言う存在は人々を襲うこともあるが、提督を攫おうとしている。どうしてそんなことをするのかは分かってはいないが、今現在も艦娘と深海棲艦による戦いは続いている。

 

*****

 

 

「で、互いの正体を話したところで俺をどうする気なんだ?」

「まぁ、貴方を殺そうと襲ったところでまた返り討ちになるだけだろうし」

摩耶と五十鈴は人間である正輝に対して何度も撃ち続けていたが、指揮していた榛名と朝潮は人に向かって撃ったことがなく恐れていた。

 

二人だけだ正輝を襲ったところで敵うはずがない。

 

「ん?疑問に思う点が一つあるんだけど。鎮守府で働いて提督に尽くすはずなのになんで肝心なお前らはその鎮守府に抜け出したんだよ?」

 

内容を聞いた正輝は榛名に質問した。

五人がその鎮守府にどうして出て行ったのか理解できなかった。鎮守府には五人以外にも他の艦娘達がいたはず。

 

その疑問に五十鈴が過剰に反応し、正輝の襟を掴む。

 

「あんたねぇ‼︎」

「やめて、五十鈴さん。彼は私達のことについて何も知らないから疑問に思ってもおかしくありません」

 

正輝が投げかけた疑問に五十鈴は苛立った表情を見せるが、正輝の方に顔を向こうとしない。

かなり機嫌を悪くしていた。

話の方は完全に榛名任せになった。

「鎮守府に抜け出した理由…ですか。では教えます。なぜ私達が鎮守府を抜け出して海を彷徨ってたかを」

 

 

 

ーーー2年前

 

「また碌に敵戦力を倒すこともできず、逃したのか。しかもおまえだけ大破のままボロボロにして…戦艦の癖にこの役立たずがっ‼︎」

 

大声で怒鳴りつけられていた榛名はビクッとなって怯えている。提督は椅子から立ち上がって青ざめていた榛名の顎を手で掴む。

 

「あのさぁ、どうして俺の思うように動いてくれないわけぇ?将来、元帥の位になろうと出世したいのにさぁ」

 

そう言うと思いっきり押し倒し、提督に肉体的な暴力を強いられていた。どうして暴力を受けているのかという理由は、ちゃんとした成果が果たせてないからである。

 

提督は出世の為にほぼsランク勝利か完全勝利を望み、かつ最小限の被害を求めている。

と言っても、ちゃんとした燃料や弾薬を補給してもらえず疲労状態だろうが大破状態だろうが行けと命じられる。

 

榛名の身体はアザだらけになって痛々しい姿になっていた。足りない資源で戦っても悪い結果になるのは当たり前のこと。

それでも、いい結果を出さなければ彼は手を出す。最悪、実戦経験のしたことのない駆逐艦を使って『捨て艦戦法』を何度もやらされている。

 

正規空母や戦艦は知った上でついて行ってくれる駆逐艦を轟沈させることも厭わない。

今回、捨て艦戦法を使って駆逐艦が危険に晒されたが榛名はその子を守るので精一杯だった。

 

無事その駆逐艦はなんとか帰れたものの、榛名はボロボロの状態で戻ってきたためにこうして殴られたりしている。

 

「申し訳、ございません…」

「お前はいつもそればかりだな!前回も前々回も土下座して頭を下げるだけ!そんなことにしか使えないのなら無能極まりないな‼︎この役立たずが!そもそも轟沈同然の奴をなんで戦艦のお前が守るわけぇ⁉︎捨て艦の意味ねぇだろうが!」

 

もう榛名の心と身体はボロボロになっている。捨て艦によって犠牲になった駆逐艦を何度も見てきた。

 

 

「榛名…これ以上失望させるなら艦娘達に夜架は無しという約束は破棄するけど…どうしよっかなぁ〜」

「⁉︎それだけはやめてください‼︎」

「だったら成果をあげられないお前は一体何なんだろうな。戦うために存在する兵器を、この提督である僕が約束を守ってあげているのに!」

 

提督の暴力は続いている。まだ彼は性的暴行はしていないが、このまま悪い結果を残し続ければ彼の憂さ晴らしに他の艦娘がと脅かされる。

 

「提督、遠征の報告をしに…⁉︎」

遠征で帰ってきた五十鈴が疲れながらも提督室に向かっていたが、そこで見たことに驚いて報告書を落とす。

「やめてください‼︎これ以上するなら憲兵を呼びますよ‼︎‼︎」

暴力をやめようと提督の腕を掴む。

しかし、

「五十鈴…誰に向かって命令してる。

いっそのこと武装を全部回収して、戦えなくしてもいいんだぞ?誰のお陰でここにいられると思ってるんだ?

 

電探を奪ったのがそんなに憎いか。提督反逆罪でお前を処罰するぞ?」

「つっ…⁉︎」

「それに、僕の行いを元本営が許している。それはつまり僕のしてることが正しいってことだ!

 

高い評価を見て彼らは喜んでるんだ?何一つ悪いことなんてしてない。まぁ、あちら側は艦娘を人間として思っているかどうかは定かだけど」

 

戦略の一つとして五十鈴牧場というものがある。

 

手に入れた五十鈴をなるべく強くして改造し、電探という貴重なものを装備される。その艤装を剥ぎ取り後は使い捨てとして扱われる。

 

特に、提督によって性格が悪ったり思い通りにならない、相容れない反抗的な態度をとる五十鈴だと改造した後に艤装を没収してかつ即座に解体する。

 

奪われてもなお鎮守府にいられたのは彼女が提督に目をつけられてなかったから。そんな脅しをされたら、五十鈴はもう手を離すしかない。

 

五十鈴は悔しく思いながらも手を離そうとしたその時、

 

 

《ドンッ》

 

摩耶がドアを蹴破って提督の部屋に入る。艤装を持ってきていた。

 

「おいクソ提督…今まで他の艦娘達に押さえつけられてたけどもう我慢ならねぇ!

 

 

 

 

 

挙げ句の果てには何度も榛名を虐めてんのか…こんなこと続けんなら、摩耶様一人の犠牲でてめぇを!」

「!やめて!」

榛名は止めようとするものの足を挫いてこけてしまう。このまま摩耶が提督を殺したとしても

 

 

しかし、隣にいた長門が摩耶を背負い投げて、押さえつける。

本来摩耶は提督殺しをしているために解体送りになるはずだったが、

「あんたまで…そいつの肩を貸すってのかよ‼︎私はもう解体されようが構わないんだ‼︎」

 

摩耶を止めたのは榛名と一緒に行った長門だった。摩耶はなぜ長門が提督の手足になっているのか理解できない。

 

「お願いです。我々をどうか罰さないでください。私達一人一人は貴重な戦力です」

 

長門は仲間である摩耶達を庇い、頭をさげる。

 

「…どういう意味だ?殺そうとした奴らを許すわけがないだろう。命を狙っているこの艦娘をこの鎮守府においておくわけにはないし」

「だからと言って我々の戦力を無駄に無くすほど貴方は愚かではないはずです」

「じゃあ摩耶を解体するのが、愚かだって?僕の行いが無能だって言いたいのか?…頭を上げろ」

長門は直後に提督に頬をぶたれた。しかし、その先の罰は無い。長門による罰はそれだけで済んだ。

「長門っ⁉︎」

姉妹艦である陸奥が長門のことを心配して近づく。戦艦として優秀な彼女らは歯向かったとしても徹底的に裁くつもりはなく、使えるだけ使うようにする。

 

「あーあっ。つくづく気に入らないよお前ら。なんでさー、僕の出世の為に思うように動いてくれないのかなぁえぇ?はたかれても怯えや悲鳴を一つもあげないのかよ」

 

 

摩耶の処分は牢屋に一週間の謹慎というものだった。提督が行っている悪行が大本営に知られると憲兵に連れて行かれてしまう。彼は自分の都合の悪い部分を伏せるためにあえて摩耶の罪を軽くした。

 

 

 

*****

 

ーーーー二ヶ月後

 

 

 

「津川と申します」

 

 

津川は鎮守府にやってきて提督の助力を持ちかけ、大量の資材を提供した。が、そこから先は分からない。そんな悪い噂はあったものの津川が入ってきて以来、提督の暴力は少なくなっていった。

 

「またお前か!何度も邪魔を‼︎」

「おやおや、暴力はいけませんね。

 

もし暴力を行うのなら止めはしませんが…取引は中止にさせて頂きますよ?貴方だって困るでしょう?」

 

 

榛名にまた何度も暴力を振るおうとするが、津川は殴ろうとするその拳を止めてくれている。

提督の言うことには逆らえないが、艦娘がいくら失敗しても、よっぽどのことがない限りは許してくれていた。

 

提督が榛名の顔まで殴ろうとしたところを津川が救ってくれた。

取引によって大量の収入を手にした提督はいきなり上機嫌になったり、艦娘から見て提督のことを気持ち悪く思っており、提督に対する嫌悪感が漂っている。

今回、殴られたのは榛名が単に凡ミスが多すぎた為にこうして提督に叱られている。

叱られるのは当然だと覚悟はしていたがそれでも津川は彼女を守った。

 

「⁉︎榛名さん‼︎」

「大丈夫ですか⁉︎」

 

榛名の怪我に気づいたのは最近着任した駆逐艦の浜風と朝潮。

二人はヨロヨロになっている榛名を背負って入渠の所へと向かう。

 

〈マルヒトマルマル〉

午前1時

前までは何時間も艦娘を働かせてこの時間帯でも動くように指示していた。

だが、津川が来たことにより深夜による作業は廃止され入渠も使われてない。

 

「…随分遅くなってしまいましたね。まだ痛みますか?」

「久しぶりに、暴力を振られました」

榛名の怪我は徐々に回復しているが、まだ何年か前に残っているアザは若干残っている。

 

捨て艦も行わなくなり、五十鈴牧場もまたいらなくなった五十鈴は何処に行ったのかも分からなくなった。

 

 

「最近、緩くなったおかげでこうしてみんなまだ笑えます」

「でも、幾ら何でも隠し事が多すぎです。みんなに信頼されてるのですから少しくらい話してもらっても…」

 

もう津川と言う人物が代わりに提督になってくれれば嬉しいと艦娘達は思っていた。あんな無策にも程がある指示しかできない男よりも津川のほうがまともであると。

 

津川が隠し事が多い。それでも、艦娘達は彼を支持していた。

 

 

*****

 

〈マルフタマルマル〉

午前2時

 

提督がまだ寝ている頃に一体津川が何をしているのか穏便に行動した。深夜の時間帯に行動に出たのは五十鈴と摩耶だった。

「あのさ…不味いんじゃないの?」

「嫌なら私一人で行くぞ」

提督の方針が緩くなったことに疑問を持ち、こうして隠れながら何をやっているのかを探ろうとしている。

そんな彼女ら二人の後ろに

 

「何をやってるんですか?」

「うわっ⁉︎」

 

入渠から出てきた朝潮、浜風、榛名がコソコソしている二人に話しかけ、摩耶が驚いて大声を出してしまう。

 

「ちょっと声が大きい!」

「わ、悪い…ってかなんで3人ともこんな時間にいるんだよ」

「それはこちらのセリフですよ。こんな時間に何してるんですか?」

 

 

五十鈴が3人を納得させる為に説明した。

 

隠し事をしている内容がなんなのか。彼らが何も問題を起こさなければさっさと帰るつもりであり、見るだけ。提督を殺そうとしたりなどの闇討ちは考えてないと。

 

「なんでついて来るの?」

「それはそうですけど…二人を放っておくわけにはいきませんし」

 

 

五人は津川のあとを追う。これが二人にバレれてしまえば5人纏めて解体になる。五十鈴は電探を奪われていつ解体されてもおかしくない。摩耶の方は何度も逆らっているから解体されても後悔はない為に向かっている。

 

対して、3人の方は二人の罪を背負わされかねない。

 

「私達も行きます。あの二人について気になる点があるから」

 

3人もまた二人と一緒に取引を行っている津川の正体を知る。彼のことについて半分安心する部分もあるが不安な部分もある。

 

危険であっても彼の正体を知らない限り、彼に鎮守府を任せていいのか3人は不安でならなかった。

 

津川は部屋を出て行く際に、一枚の紙を落としていった。

 

「ちょっとあれ拾うわよ」

「はい」

 

落とした紙を五十鈴が拾って、すぐに戻ってくる。警戒を怠らずに気づかれてないか何度も周囲を確認した。

 

その内容は艦娘一人の取引で2000のボーキや鉄鋼、燃料、弾薬を手に入れることができるという信じられない内容だった。

取引条件として傷一つついていない艦娘が条件とも記されている。

 

この条件に該当しているのは五十鈴牧場と複数いる艦娘の処理及び役に立たないかつ不要な艦娘の取引だった。

 

取引は事実行っていたが、結果的にどうなっていたのかわからない。取引された艦娘はどんなことになっているのか。

 

 

「あ、あれっ…」

 

浜風が指差すと、ドアの隙間から血が流れ出ている。それを黙って眺めていた五人はとても嫌な予感がしていた。

 

 

この静かな空気に、摩耶が先に言った。

 

「なぁ…誰がドアを開ける?」

「な、何弱気になってんのよ!先に言いだしたの貴方でしょ⁉︎」

「それじゃあ、開けるぞっ…」

 

摩耶はドアに近づいて、鼻がつく悪臭がする。血まみれの扉を開くとそこは

 

「あっ、あぁぁぁっ…うわぁぁぁぁぁっ‼︎‼︎」

「⁉︎ちょっと摩耶さん!大声出しちゃダメって…」

「うっ…」

 

扉の先にあるものに摩耶は恐怖で叫んでしまい、隣にいた五十鈴は気分が悪くなり、嘔吐しそうになっている。部屋の中にあったのは艦娘とは言えないほどの酷い状態になっていた。

目の前にあるのは装飾品か、楽器のようなものの、ナニカ。

特に多くの駆逐艦やもう使わない五十鈴、使わない艦娘が犠牲になっていた。

 

【タスケテ】

【たすけて】

 

そんな血文字になって書かれている。意識があるうちに書いたものだった。

腕には割れたガラスを用いてリストカットをして自害する者や、心が壊れた者、全身傷だらけなどの部屋の中は余りにも痛々しいものだった。

 

浜風は部屋にすぐに入ろうとする朝潮の目を手で伏せる。

「見えないです⁉︎一体何があるんですか!」

「みちゃ、だめっ…!」

 

朝潮の姉妹艦もその部屋の中にいた。彼女らは惨たらしい姿になって死んでいた。そんなものを朝潮が目にしたら、耐えられない。

 

提督に逆らったが故の結果だった。

 

「こんな、気色悪りぃことだれがっ…⁉︎クソがっ‼︎全部ぶっ壊してやる‼︎」

「摩耶!こんな場所で大砲なんて使ったら」

「ねぇ待って!さっきからおかしいわ⁉︎摩耶が悲鳴をあげてたに、なんで誰一人私達のこと気づかないの⁉︎」

 

五十鈴は摩耶が悲鳴をあげてしまい、他の艦娘達がそれに気づいて起き上がる筈なのに誰もここに来ていないことに気づく。

 

「そんなわけねぇだろ‼︎だったら!」

 

摩耶は近くにある部屋をしらみつぶしに探してドアノブを乱暴に回し、部屋に入ろうとするが全ての部屋に鍵がかかっている。ドンドンと音を鳴らそうとしても誰も返事が返ってこない。

 

「くそっ⁉︎どうなってんだ‼︎おい誰か‼︎」

「あ、朝潮…朝潮なの⁉︎」

 

摩耶が助けを呼んでいる間に部屋の中にあった牢屋で閉じ込められていた艦娘達が起き上がる。曙の他に深雪、大潮、長月、皐月、朧。どれも新しく入ってきたばかりの艦娘達が6人も収容されていた。

 

 

「た、助けて!」

「よ、良かった‼︎私達これで助かるのね‼︎」

 

檻から彼が保護していた駆逐艦が必死になりながら助けを求めていた。榛名達は不可解な現状にいたものの、とにかく彼女らを助ける為に五人を呼ぶ。

「そこから離れてください!」

閉じ込められていた駆逐艦達は榛名の言う通りに下がって、砲台が放たれる。

 

「ありがとう、榛名さんのお陰で助かりました!」

 

牢屋は粉々になり、艦娘達が解放された。が、

 

「いやぁ実に良かったよ。

見事に餌にかかってくれた。

 

ん?どうしたんだい?君達の絶望した顔は。追われているのが分からないとでも思っていたのか?

 

それにしても摩耶って子だったか?君の声はなかなか心地の良いものだったよ」

 

解放しているところを津川が現れた。普通なら罰則を犯されるが、この現状を見た艦娘達は強気になっている。

こんなものが大本営や憲兵に知られたら彼は追い出される。

 

 

「おまえっ、こんなことして一体何が目的なんだよ‼︎私らをどうしたいんだ‼︎

なんなんだよおまえはっ‼︎」

「目的、そんなの簡単に言えばそうだな…

 

仕事で使う戦力とか、悲鳴をあげる楽器とかかな?」

「楽器…だと?」

「ん?艦娘というのは楽器に最も適した材料だろ?楽器というのは鮮度と丁重に扱わないとせっかくの音も品もダメになる」

 

艦娘達の方は彼が何を言っているのか分からなかったが、この現状を見て恐ろしいことぐらいは察した。艦娘の死体が転がっているために、どれほど危険な存在かわかる。

 

深海棲艦や提督よりもかなり危険な敵だった。

「こいつを、すぐにでも憲兵のところまで連れて行く」

「で、でも摩耶さ「こいつをこのままにしたら…犠牲が提督ならまだしも、私ら全員をこんなっ…『楽器』だの『材料』だのとしか思っちゃいねぇ奴を置いておくわけにはいかねぇ‼︎」」

「良いよ、良いよ。その善意ある正義感。さぁ存分に見せてくれ。そして私が君の心を何度も折ってあげよう。

 

心の折れる音も素晴らしい」

「…黙れよ、イカれ野郎が‼︎」

 

艦娘達は用意していた艤装を構えて、津川を狙う。

 

「数はこっちの方が圧倒的に上です!臆さずに戦えば彼を倒すことだって!」

「自分の置かれている状況分かってんのかテメェ‼︎」

「全身焼かれたくなかったら手を挙げて大人しくしなさい‼︎」

 

牢屋から解放された艦娘達を合わせて11人。しかも近距離で放てば大怪我どころか最悪死ぬことになる。

 

 

「ハァ…君達はバカなのかい?知ったらマズイものを見られ、艦娘に脅されて自首するとでも?

 

艦娘達が誰も気づかないのは結界を張ったから。そして僕が悠々と立っていられるのは君達を倒せる絶対的な自信があるから。

 

 

バレた以上は、生かして返すわけがないだろ?まぁ証拠隠滅ってやつ?みんなまとめて実験台にするつもりさ」

「もう良い!さっさとこいつをぶちのめすぞ‼︎」

「勝手は、榛名が許しません‼︎」

 

五人は艤装を津川に向けて一斉掃射する。しかし、他の6人の艤装には弾薬が積まれてなかった。

 

「餌ごときに艤装を与えるわけがねぇだろうがバァァァァァカ‼︎」

 

津川は五人の砲撃で撃たれても無傷、曙と深雪などの五人の駆逐艦を気絶させて新しい牢屋に入れる。

 

「…逃げれるとでも思っているのか?」

 

鎮守府内に結界を張って、彼らを逃げられないようにする。通信機を用いて、部下に連絡する。

 

「そのまま結界を展開し続けろ。一人たりとも奴らを逃すな」

『『了解』』

 

*****

 

【マルサンマルマル】

 

「くそがっ‼︎なんで海に行けないんだよっ‼︎」

 

結界を張られたことにより、海に出ることができなくなった。彼から逃げるために朝まで待つという方法しかないが、そこまで耐えられる。

 

(深海棲艦以上じゃねぇか⁉︎クソッ!)

 

逃げ場のない状態で正面切って戦おうとすれば間違いなく倒される。とにかく隠れることしかできなかった6人は倉庫に辿り着く。

 

その場所なら弾薬の補給も可能であり、ここを津川が破壊すれば責任問題で追い出せることもできる。

 

「⁉︎大潮後ろっ‼︎」

「えっ」

 

しかし、突然現れた巨大な蛇が大潮の身体を絡みつかせて、連れ去られる。大潮は朝潮に向かって助けを求め、叫び声がこだまする。が、助けに行こうとする前に蛇に飲み込まれていった。

 

「や、いやっ、イヤァァァアッ‼︎‼︎」

朝潮は泣きながら叫んだ。何もできないまま朝潮のめのまえで姉妹艦が犠牲になってしまった。

 

「あぁ!あぁぁぁっ‼︎最高にいい悲鳴だ‼︎やはり鮮度のある人型の品が素晴らしい‼︎深海棲艦ような不完全な化け物は薄汚いからな‼︎

あんな騒音のような声などいらない!

だからと言ってただの人間ではすぐに壊れる!人と似た彼女らなら最高のものを用意できる‼︎君達、僕はここを領域(テリトリー)にしているんだ。土足で踏み入れた君達を生かすつもりはない。知った以上…誰一人生かして返さないよ?」

「なんとか持ちこたえるんだ!」

津川は蛇を操り、呆気ない形で見つかってしまった。こうなれば五人で大量にいる大蛇と津川を倒さなければならない。

大量の蛇が五人を囲んでいる間に、連絡が入った。

 

「どうした?」

『あ、青タイツの男が我々を襲撃して…グハッ⁉︎』

「おい、応答しろ!」

 

すると術師が倒されたために張られていた結界が崩れていく。

「逃げろっ‼︎‼︎」

結界が解かれたことで摩耶達は全速力で海域に入って鎮守府を出て行った。

 

倉庫にある資材を奪って、海へと逃げる。あの男から急いで逃げるために彼女らは鎮守府を出て行った。行くあても無いまま何処か遠くに、別の鎮守府を見つけて着任することを。

 

 

津川の方はしつこく追わないことにした。本気を出して彼らを捕らえようとすれば他の艦娘達にまた更に疑惑の目で見られてしまう。

 

深追いはしなかった。

「チッ、逃したか?

誰かが結界を壊しただと?まぁいい。奴らの選択はどの道敵に轟沈されるか、燃料切れで水没しつつ孤独に死ぬかだ。

 

念には念として他の鎮守府に行かせないために、もしも連中が辿り着いて助けを求めたらこちらの手下を転移させて鎮守府ごと奴らをまとめて潰すか?」

 

逃げることに必死だった彼女らには聞こえてなかったが、彼はそう呟いて帰って行った。

 

*****

 

 

「これが…私達が脱走した理由です。朝潮の方は…気が滅入って。それを浜風が彼女の心の傷を癒す為に努力して。五十鈴や摩耶の二人はあの恐怖で震えてて、ちゃんと動けるのは私でした」

(そうだとするなら相当ヤバイな…ブラック鎮守府だけじゃなく楽園の方も絡んでんのかよ)

 

彼女らの過去を聞いた正輝は頭を抱えていた。敵転生者と最低な提督が絡んでいるのなら艦娘が大勢で反旗を起こして二人に逆らったところで戦死よりもより残酷な形で艦娘達は大量に死んでしまうだろう。

 

その場合、轟沈させたほうがマシなほどの扱いを受ける。死ぬこと以前に正義側を倒すための道具として鎮守府にいる艦娘全員を拉致することも厭わない。

 

「五十鈴の方は前の鎮守府には戻りたくないの…あそこは五十鈴牧場って言って。何人もの五十鈴が犠牲になったから…彼女もその内の被害者なの」

「前はもっとあったけど艤装を剥ぎ取られたわよ。でも、あそこまで酷いことしてたなんて思わなかった。

 

もう二度とあんな場所に戻りたくないっ…!」

「摩耶は何度も提督に反逆したんだろ?よく解体や轟沈されなかったな?」

 

 

何度も逆らっている摩耶は提督を殺せるならどんな罰を下されても受ける覚悟ではいたものの、こうして生きてる。

 

「青タイツの男、まさか…」

 

正輝は謎の青タイツの男をよく知っている。まだ確信としたものではないために彼の名前はまだ口には出してない。

兎も角、彼のおかげで五人は無事に助かった。

 

 

でも、その問題は榛名達だけではない。この事件を放っておけば正義側の方も関与されるのは間違いなかった。

(楽園に艦娘が大量に渡ったらとんでもないことになるな…)

 

厄介なのは、買い取って手に入れた艦娘を楽園によって別の場所で戦わせることだった。

 

集めた艦娘で自爆特攻の捨て駒として扱われるか、魔改造を施して性格や艦娘を歪ませるか。どの道敵転生者側の戦力として扱われるのは間違いない。

 

それを阻止しなければ、今後彼らとの戦闘で面倒なことになる。

 

「できれば、貴方に提督になって欲しいんですが…」

「いや、悪いが断るよ。提督になるっていう頼みは聞けない」

「そう、ですよね」

 

自分他の仲間を背負うだけでも精いっぱいなのに艦娘の管理まで出来るわけがない。

 

「別にやらなくていいぜ。人間に支持される筋合いはねぇよ。むしろ長門の方がよっぽどマシだ。

 

こんな奴が提督になるだって?冗談じゃない。こいつもあの野郎と同じに過ぎないだけだ」

「あ、おかえりなさい」

 

砂場にいた摩耶が小屋に帰ってきた。正輝が提督になるという話を聞いて、彼に対する嫌悪感が湧いている。

摩耶はまだ正輝のことを快く思ってない。

 

「でも俺がお前らのいう提督と同じくらいこっちがクズだったらむしろそっちが大変なことになってたけど」

「はっ、どうだか…」

「二人ともやめてくださいっ!」

摩耶と正輝の二人が喧嘩しそうな空気になって、それを榛名が止める。

ここで揉めても意味がないことはよく分かっている。が、5人が正輝を本当に信頼して良いのかという半信半疑と、正輝の方は提督の問題もあるが楽園の方を倒さない限り、艦娘が敵転生者の手に大量に輸入されれば今後の戦いに支障をきたす可能性が高い。

そもそも提督になる気もなく、一番反抗的な態度をとっている摩耶を見ても呆れるだけだった。

 

「とにかく…俺は提督になるつもりはない。が、二人を倒して鎮守府を変えるぐらいはする。

 

その問題はどうやらこっちの方にも影響を及ぼすから利害の一致ってことで協力する。でもその前に…資材が足りないからここの無人島を回るんだろ?この話はひとまず切ろう。その話を続けるのはまた今度だ」

 

正輝はひとまず話を打ち切ることとなった。彼女らが抱えた問題は1日で話せれないほどの内容である。

二人をどうにかする前に、抱えている問題のうち小さなことから解決することにした。

 

 

 

 

 




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