響達と正輝が廃病院で隠れていたFIS組織を追って、向かったものの完全聖遺物の化け物であるネフィリムと敵組織に組するウェル博士がソロモンの杖を使ってノイズを出現させ、戦うこととなった。
ネフィリムを空飛ぶノイズを使って逃し、ウェル博士はこのまま手を上げて大人しくしている。
翼がそのノイズを撃破し、ネフィリムを回収しようとするが、
ウェルの言葉からフィーネと発しられ、響達は驚いていた。前回ルナ・アタック事件で戦い、そして響に胸の歌を信じなさいと伝え、最期に散った。もし、彼女がフィーネだというのならまた戦わなければならない。フィーネという組織は異端技術を使うことからではなく蘇ったフィーネ自身が組織を統括していた。リインカーネーションという、人間の遺伝子情報内にある刻印を持つ者を器として、フィーネを再誕させる輪廻転成システム。櫻井了子もまた器として選ばれた人物であり、ウェルの話が本当ならば今はアイドルであるマリアに転生しているということとなる。
(ネフィリムを死守できたのは僥倖。だけど、この盤面、次の一手を決めあぐねるわね)
マリアの攻撃によって落とされた翼が復帰し、聖遺物によるフォニックゲインを利用して水面を高速移動する。翼はマリアに斬りかかろうとするが、容易く避けられてしまう。それでも、
「甘くみないでもらおうかっ‼︎」
【蒼ノ一閃】
剣を巨大化させ、剣圧を飛ばす。二撃目の攻撃を避ける様子はなかったが、マリアの背中にある黒いマントによってその攻撃を防いだ。
「甘くなど見ていないっ‼︎」
三度続けで攻撃してもマントがある限り、翼の剣は彼女には届かず吹き飛ばされる。2人とも二課の潜水艦の船体に乗り、マリアはネフィリムの入ってあるケースを上空に投げる。
そのケースは透明化され、消えていった。
「だからこうして、全力で戦っているっ‼︎」
マリアは黒いガングニールの武器を手に取り、両方とも潜水艦の上で戦う。
彼女のガングニールを振り回し、マントが伸び縮みして襲う。対して翼は今の所マリアの身体に手傷を負わせることもできず、剣が届かない。
攻防はしているものの、マントと槍の猛攻が激しいため段々と防戦一方よりになっている。更に潜水艦の船体部分で戦っているため、潜航機能に支障が出る。一気に懐に入る為、翼は持っている剣を収め、両脚についてある刃を展開する。
逆立ちのままその刃で攻撃を続けると、マリアが蹌踉めく。しかし、マントで攻撃を防がれ、体勢を崩す。
「マイターン!」
剣で反撃するよりも先にマリアの槍が翼の身体を吹き飛ばした。前に翼が空を飛んでネフィリムを回収しようとしていた時に、マリアの最初の攻撃で左足に怪我を負っているため、反応が遅くなった。3人ともギアの出力は安定しておらず、このまま翼がマリアと戦い続けるのは危険だった。
「だったら白騎士のお出ましだっ‼︎」
弱っている翼を守るために雪音クリスがクロスボウの形に変形させたイチイバルを構え、遠距離からマリアを狙う。正輝の方は翼の戦いに割り込んで、マリアの相手を今度は自分がやるかどうかを考えていた。
(このまま翼がマリアと戦い続けても、不利になるだけ…だからと言って響達2人に任せるつってもマリア以外の切歌と調が出てこない時点で怪しすぎる…シャドーを使って分身すればいいけど今の俺はその分裂が不調であるが故に弱体化している)
正輝が翼の方に向かえば、マリアを相手することとなる。どこで誰が介入してくるかわからない為力を温存している。翼も心配だが、響達もまた戦える状態ではない。2人が失敗すればせっかく捕まえたウェル博士も逃すこととなる。
クッキーマンの情報によれば身体の不調な者がおり、それを治療しているのがウェル博士だということを念話で聞いている。よってフィーネ組織の優先順位を考えれば、
(てことは、ウェル博士を拘束してかつ弱ってる響達の方も狙うに違いないな)
(では…こちらもそろそろ)
紫の円盤が空から降り注がれ、響達を襲う。響は捕らえていたウェル博士を手放してしまい、クリスはマリアを正確に狙うことができない。
「なんとぉッ! イガリマァッ‼︎」
「
正輝の予想通りに切歌と調が響達を襲ってきた。切歌がクリスを、調が響の相手をしている。
「おい大丈夫かクリス‼︎お前は何が何でもソロモンの杖を絶対に離すなよ‼︎」
「お、おうっ‼︎」
接近戦が苦手なクリスは正輝が投影した干将・莫耶を使って代わりに守ってくれていた。響の方は調が飛ばしてくる複数の紫の円盤を拳で全て防ぐ。
【非常Σ式・禁月輪】
自らを中心にして、縦へ環状展開した回転ノコギリに変形させて突進する。
ソロモンの杖は正輝がクリスを守っているせいで確保できずに切歌と調の二人が博士を助け、逃げ出そうとしているものの。
「お前ら3人をここで逃すとでも思ってんのか?響、絶対にこいつらを逃すなよ」
「はいっ!」
「絶体絶命…デス」
逃げた先には正輝と側にはなれない雪音クリス、背後には立花響。挟み撃ちにされている状態で逃げようとすれば確実にやられる。
(不味いですね…最悪リンカーを直接投入させて危機を脱すれば…)
「切ちゃん、私が囮になるから…その隙に博士を」
「調⁉︎そんなの絶対ダメです‼︎」
2人が迎え撃とうとしても、ウェルを庇って戦うのは無謀だった。守られているウェル博士は2人の後ろから首筋にリンカーを直接投入して、絶唱を使って一気に響達をぶちのめそうと考えている。
「調!切歌‼︎」
「粘ってくれ翼!こいつらを縄で縛って取り押さえた後に俺がそっちに向かう‼︎」
マリアの方はすぐに2人の元に行こうとするものの、距離が遠すぎる。翼も立ち上がって戦おうと構えていた。
(こちらの攻撃に合わせるなんて…この剣可愛くないっ‼︎)
(すこしずつだが、ギアの出力が戻ってきている。いけるか?)
マリアの適合係数が低下しており、マリアの方も戦い続ければ倒れる。
『ネフィリムは回収済みです。戻りなさい』
「時限式ではここまでなの⁉︎」
マリアの方は奏と同じリンカーを投与されていた。二課の方は伏兵が潜んでいるのが分からず、フィーネ組織による新たな異端技術によって全てのシグナルがジャミングされていた。正輝が予測してくれたおかげで2人の奇襲を免れた。しかも、正輝と響達だけではない。廃病院の屋上ではアーチャーが鷹の目で上から全体の様子を監視している。テロリストの4人をいつでも狙えるようにした。
逃げられるとしたらマリアしかいない。
(3人とも逃すわけないだろバカが。アーチャー)
(あぁ。君が投影して作った非殺傷設定用の矢はもう既に用意している)
アーチャーには頭や心臓などの急所を狙ったりせず、足と手を狙うように指示していた。これについては二課の方からも許諾を得ているため、こうして準備している。フィーネの組織全体を取り押さえとも、その組織にいる奏者及び研究者、協力者を捕らえればいい。
アーチャーが切歌と調の2人を狙おうとしていた。
(後から
(了解した)
殺者の楽園側が今回出てこない以上、部外者は出てこないと正輝は思っていた。仮に出てきたとしても普通の転生者か正義側が出てくるのならなんの支障もない。
普通の転生者で邪魔をするならその人の顔や姿などを二課に報告してその人の個人情報を調べてもらう。正義側で敵なら、姉に連絡をして返り討ちにすればいい。
「つっ、何者だ‼︎」
4人を狙う前に赤ロープのした人物が転移して、アーチャーに襲いかかってきた。すぐに弓から剣へと投影を切り替え、反撃する。
(正輝、やはり邪魔者が出てきた)
(分かったよ、増援は必要か?)
アーチャーは敵の武器を見て警戒した。持っていた武器は
(あぁ、そうしてもらいたい)
赤ロープは二槍を操り、広いリーチを利用して攻撃している。アーチャーは黄薔薇だけを防ぎ、赤薔薇は避けている。黄薔薇の攻撃を絶対に守らなければ治らない怪我で追い詰められる。接近戦の方は赤ロープが上回っており、隅に追い詰められた。
(なぜ英霊でもないのにこんな力が…)
「ここまでだ」
「さて….それは、どうかな?」
戦う前に剣を先に投げ、赤ロープの身体に突き刺さる。持っていた干将・莫耶を巨大化させ、身体を真っ二つにする。
「
【鶴翼三連】
アーチャーの攻撃が決まり、防いでいた二槍が真っ二つとなって消え去る。
「…分身か」
斬られた赤ロープの身体は水分身となり、水たまりとなる。赤ロープは武器である槍を失ったものの、
(何かがおかしい…弱い転生者だとしても何故そこまでの技量を持っている)
「流石にお前相手にこの二つはここまでが限界か、なら」
赤ロープの男は今度は転移魔法でまた別の宝具を手にした。今度は槍ではなく黒い剣を右手で持つ。
(次から次へと…)
「…増援を呼んだか」
「動かないで」
「大丈夫ですかアーチャー‼︎」
また戦う前に衛宮士郎とセイバー、暁美ほむら、美樹さやか、巴マミの5人が赤ロープを囲う。既に転生者結界が張られ、逃さないようにした。セイバーの方は赤ロープの持っている剣をみて、目を見開いたまま驚いている。
「なぜ…なぜ貴様がその槍と剣を持っているっ…‼︎」
「セイバー!知っているのか⁉︎」
赤ロープの者が持っている剣は円卓が所持していたものだった。
裏切りの騎士ランスロットが持っていた対人宝具。蛇を倒した逸話を持っているために龍属性を持つ英霊に対して厄介なものだった。更にその宝具は
「なら…もう引き上げるとしようか。時間稼ぎは十分やった」
「なっ⁉︎結界張ってんのに逃げられると思って「結界を張ろうが張らなくても関係ない」」
赤ロープは地面に黒い渦を出現させ、段々と飲み込まれる。
「待て!」
「待てと言われて待つバカがいるか」
アーチャー以外の仲間は赤ロープに遠距離で攻撃しようとするものの、攻撃が当たる前に既に飲み込まれ、渦ごと消滅した。
*****
正輝側の方からも異端者が横から入ってきた。雪音クリスの後ろから青ロープが出現し、
「がはっ⁉︎」
「⁉︎クリスちゃ「動くなよ?」」
今度は青のロープを着た者が、雪音クリスを後ろから首を締めている。ソロモンの杖を手から離してしまう。
「いますぐにその手を離せテメェ…」
「この女の命が惜しかったら、ソロモンの杖をそこの3人に差し出しな」
(助かったの?…誰かは分からないけど)
切歌達は青ロープの出現に驚いている。その者の介入は完全に予想外だったが、危険な状態であるが故にこの機を逃すわけにはいかなかった。響は落ちていたソロモンの杖を拾うものの、
「待て響」
「でも、クリスちゃんがっ‼︎」
響はクリスを助けるために3人に差し出そうするが、正輝は拾う前にシャドーを使い、青ロープの首に剣先を当てて脅す。
「さて…テメェの方こそその薄汚い手をどけろよ。お前が雪音を絞め殺そうとする前に徹底的に滅多刺しにすればいいだけだ…」
「そうする前にこいつを呼吸困難で意識不明の重体にさせてしまうぜ?それでもいいのかよ?」
(チッ…)
この場で青ロープを始末するのは容易かったが、雪音クリスの安全が保障されない以上迂闊に手を出せない。結局立花響がソロモンの杖を手渡し、彼らの逃走を見逃すしかできなかった。青ロープの男は雪音クリスを手放し、蹴り飛ばしてどかした。
「クリスちゃん!」
「さてと、時間稼ぎも終えたしこのま「このまま逃すとでも本気で思っているのか?」」
正輝は転生者結界をすぐに展開し、空からはレイナーレ、ミッテルトが光の槍を用意し、正輝の方は無限の剣製を発動して確実に今すぐにでも殺すつもりで向かってきている。
「今ここで死ね…」
正輝の方は相当キレていた。
予想外に厄介な邪魔者が出現したことと、雪音クリスとは恋人の仲であるから酷く傷つけた青ロープを許せない気持ちでいた。
「クリスをあんな目に合わせた罪は重いぞ、クソ野郎が…死んで詫びろ‼︎」
正輝とレイナーレ、ミッテルトが一斉に遠距離から攻撃するが、青ロープの男の地面から壁が錬成されてて勝手に防いでくれる。
「なっ⁉︎地面から壁が‼︎」
「悪いなぁ?俺、お前らとは戦う気ないんだわ」
戦う気が微塵もなく黒い渦を出現させ、飲み込まれていく。
「我が骨子は捻れ狂う…
正樹は投影した宝具で壁ごと青ロープを貫こうとするが、渦ごと消えていった。
「なんなんすかあいつは⁉︎」
(おいアーチャー。襲ってきたやつは?)
(すまない、逃してしまった)
こうして2人の介入によってFISを逃してしまった。神からの連絡によると楽園の介入は無しという話になっており、邪魔をする者としたら他の弱体化された転生者ぐらいしかいないと彼は思っていた。しかし、介入してきた赤と青ロープは正義側と互角に渡り合えている。
「クソがっ…何が、どうなってやがる…⁉︎」
ただの転生者でも正義側でも殺者の楽園側でもない、第三者側の介入によってフィーネ事件をすぐに終わらせることができなかった。
何よりも一番気に入らなかったのは、転生者結界を使ったのに逃げられてしまったことと、転生者なのかどうかが不明であることに苛ついていた。赤と青のロープを着た者の正体は不明、確かなのは正義側と同様にこの世界とは違う別の能力を使った異端者の連中であることだけだった。
レイナーレとミッテルトを船に転移させて戻し、転生者用結界も解除した。
翼と戦っていたマリアと切歌達は既に逃げられており、ソロモンの杖も響がクリスを助けるために渡したことで手放すこととなった。雪音クリスは首に痣があり既に横たわって倒れ、響は飛んでいる飛行機をただ眺めることしかできなかった。
結果的に、あの赤と青のロープによってFIS全員を逃してしまうこととなってしまった。