響達が向かおうとする前に、正輝が仲一旦船に戻り、放送室にて仲間に収集をかける。正輝とアーチャーの二人では対処しきれない相手を挑むこととなるため、作戦を立てていた。
「俺とアーチャーだけじゃ対処しようがないから…チーム分けするぞ」
なお艤装をもってない浜風や、一般人である平坂黄泉と、戦場マルコ、美上愛、秋瀬或の5人は除外される。未来日記を持っているとはいえ、身体能力の面では不利である。(一応マスター・オブ・ザ・リンクによってノイズの炭素化はされないが、戦闘面が普通の一般人並みであるため入れることはできない)
チームは三つに分けられた。
正輝チーム
岩谷正輝
アーチャー
衛宮チーム
衛宮士郎
セイバー
遠坂凛
天羽奏チーム
巴マミ
佐倉杏子
暁美ほむら
美樹さやか
アーチャーと正輝は元々二課と面識があるため、指示を聞きながら目的を遂行する。衛宮チームは投影魔術や宝具を使ってきた赤ロープ対策、奏チームは青ロープ対策とする。
「お前らは留守番、堕天使の二人は待機な」
「分かったわ」
堕天使組であるレイナーレとミッテルトは保険として船に滞在することなり、響達の方は二課からの指示で従っているからノイズ退治やFISとの対決は任せる。正輝側の方はネフィリム、邪魔をしてきたロープの排除ということとなる。
「俺とアーチャー以外にも仲間を何人か配置しておいた。もう心配はいらない」
仲間達に、指定位置を指示する。後は、責任者である弦十郎に報告することとなる。船から本拠地へと転移し、弦十郎に話をするために向かっていた。
*****
「ネフィリムが出てきた時に、その相手を任せて欲しいと?」
「予兆みたいなものを…響達の身体を喰らおうとしている光景を見てしまったんだ」
ノイズが出てきているために、弦十郎は戦いたくてもできない。前に変身前のクリスを助けるために向かっていたが、本拠地が潜水艦である以上ここを離れるわけにはいかなかった。
「予兆が違うかもしれないんだが、あいつらとネフィリムをぶつけるのは不味いって思ってならないんだ。
ネフィリムの出現と同時に、俺が前線に出る…予兆を見た場所がカディンギルの跡地なんだ。ロープの連中はこっちで対処する…いいか?」
元々ほぼ前線で戦っているのは正輝であるため、なぜそんなことを言うのか聞いている弦十郎は不思議に思った。正輝本人の言い分を聞き、信じることとなった。
「あぁ、分かった。何か考えがあるのだろう…だが無茶はするな」
「なんの問題はない。前のような乱入者が出てきて邪魔をされないようにこっちも対策はしてある」
*****
こうして、立花響達と正輝はカ・ディンギルの跡地へと向かっていく。アーチャーは前と同じように周りが見渡せる場所へ移動して、様子を伺っている。
(誰か介入してきたら…分かってるな?)
(了解した)
(こっちもちゃんと用意できてるよーっ‼︎)
アーチャーだけではない、他のチームが気づかれないように隠れている。正輝が二つのチームに透明外套を投影し、結界だけのデバイスを与えている。赤ロープ相手に逃げていたクッキーマンは飛行機に乗り込んで、FISの動向を観察しているから、マリア達が乱入した時でも対処ができる。
カ・ディンギルの跡地にて待っていたのは前に決闘だと響達に言っていた切歌と調の二人ではなくウェル博士だった。彼はソロモンの杖で、ノイズを召喚している。
響達は聖詠を歌って変身し、シンフォギアを纏う。響達は召喚されたノイズの集団を蹴散らしていた。正輝の方はウェル博士の懐に入り込もうと試みるが、ノイズが彼を守る壁になっている。
その気になれば猛攻し、偽・螺旋剣でノイズを一気に一掃することはできるが、彼が戦っている最中にロープの存在が横から入ってくる可能性がある。
どんなことがあっても対応できるように温存していた。
「調ちゃんと切歌ちゃんは‼︎」
「あの子達は謹慎中です。だからこうして私が出張って来ているのですよ。お友達感覚で計画遂行に支障が来たら困りますので」
(あぁ、こいつの言う通り…調と切歌はまだこもったまんまだ)
クッキーマンの知らせからも、二人が謹慎になっていることがわかる。飛行機内にはネフィリムの姿もないため、その化け物もここにいるのは分かっていた。
「何を企てている!FIS‼︎」
「企てる?人聞きの悪い…我々が望むのは人類の救済‼︎月の落下にて損なわれる無辜の命を、可能な限り救い出すことだ‼︎」
FISは前のフィーネと同じように月の落下によって救済を行おうとしている。月の公転軌道は各国機関が3か月前から計測中になっており、ウェルの言った通りに月の落下という結果が出たならばその機関が黙っているわけがないと翼は反論する。が、対処方法の見つからない極大災厄なんて知られたら、余計に周囲を混乱するだけ。
混乱を招く前に、その事実に黙ることしかできない。その言い訳として虚偽や不都合な真実など幾らでも方法はある。そして、その真実を知る連中は誰かのことを助けるのではなく自分達だけ助かろうとするようなものである。
「それが目的なら…なおさらお前らの動向は見過ごすわけにはいかないよなぁ‼︎」
「ネフィリム‼︎」
ウェル博士がネフィリムを出現させたと同時に、青ロープが響達の後ろから襲ってきている。地面から大砲を作り出し、彼女らに向かって撃ってきた。
『奏者の背後から青いロープの人物が出現‼︎』
(出たなネフィリム、そしてロープ野朗‼︎)
大砲の弾は響達に向かってきているものの、彼女らに対しては全く効いてない。
「おい大丈夫か!」
「この程度の攻撃、どうということはないっ‼︎」
飛んできた砲弾を全て破壊していた。それを見た青ロープは大砲での攻撃をやめ、響達に向かってきている。
『奏者達に衝突してしまいます!このままでは…」
今度は影で潜んでいた奏チームが青ロープを結界で閉じ込めて、逃げられないようにする。
「消えたっ…⁉︎」
「そっちの心配すんな!俺の仲間が上手くなってる‼︎」
透明外套で隠れていた奏達によって、結界を発動して青ロープを捕まえる。
一人目は奏達に任せることとなった。
(よし、まずは一人!)
響達を守るために前に出ている正輝に対しては襲ってくるという魂胆だと思っていたが、
(しかし、さっき狙っていたのは俺じゃないだと⁉︎ならロープの連中の目的もまたフィーネ組織と同様に)
青ロープが襲っていた方向は明らかに響達の方だった。
*****
「やっぱり攻撃系は向いてないかぁ〜」
「お前が正輝を手こずらせた相手か?」
今の所は天羽奏チームが青ロープと衝突している。既に透明外套を外し、武器を構えている。天羽奏とほむら達は既に魔法で変身を済ませており、戦う準備をしていた。
「結界の方は…こっち用の対策か?」
「さっきの渦を出そうとしても無駄よ」
青ロープはすぐさま渦で逃げようとするものの、ほむらが時間を停止する。マグナムを用意し、両腕両足に2発ずつ撃つ。そして、吊り男のタロットで麻痺させる。
「あぁぁぁっ‼︎」
ほむらは時間停止を解除し、青ロープの身体に穴が四つ空いた。身体から染み渡る激痛が届く。彼を逃さないようにし、そこで悶えていた。
「これで貴方は逃げることはできな「俺が逃げられないだってぇ‼︎」」
「⁉︎ほむら‼︎」
銃弾を全て受けたものの、すぐに彼の体が再生されていく。弾の跡は無くなっており、ほむらに襲ってくる。
(⁉︎こいつ、両手が…)
さやかと杏子の二人がほむらを助ける。青ロープの両腕の皮膚の色が銀色へと変色し、鉄みたいに硬くなっている。
「二人とも下がれっ‼︎」
「それを食らったらひとたまりもないな?」
奏が攻撃する直前に彼は壁を瞬時に作る。攻撃は壁に遮られて届かなかった。
(こんなことをしてもあいつは逃げられないっ‼︎)
さやかが魔法で大量の水を作り出し、地道に壁を軟化させる。青ロープは地面から壁を何重にも作り出して、そこに篭っていた。
「くそっ!また逃し「いいや、もう私の水魔法であいつは逃げられない」」
水が壁を通過して、侵食していく。彼が逃げようとする前に既に、さやかが水に細工をして罠を仕掛けた。
もう前のような渦で逃げることはできない。
*****
ネフィリムは正輝が邪魔で餌を食べることができない。響達の方は正輝を襲うノイズ相手に戦っている。
青ロープはこのまま奏チームとの交戦で身動きが取れない。クッキーマンの方はFISの人達が戦いを見ている間、ネフィリムを調べ、その情報を念話で送った。その情報を正輝が聞いて、心の内で怒っていた。
(この化け物が!聖遺物を食わせることで成長するってか⁉︎尚更、響達に食わさせるわけにはいかないだろ‼︎
増援も用意している!ウェルが出したノイズのほとんどを駆逐した!後は遠くに誘導して、転生者結界を使った後にこの胸糞悪い
正輝がネフィリムをなんとか遠くへ誘導する。青ロープは既に対策済み、邪魔をしてきた赤ロープだけであり、今の所出てきていない。
「僕の!僕のネフィリムがぁぁぁっ‼︎なんであのロープがここに来ないんだ‼︎」
ネフィリムを撃破することで、このままいけば彼らの計画は破綻し、二課の御用となるだろう。
後々マリア達三人が出向くしか方法がないが、響達が残っている。
後は正輝がネフィリムを結界に入れて宝具で消滅させる。FISの彼らによって問題を深刻にするよりは幾分もマシだからだ。
「よし、翼‼︎そのまま響を遠くへ離せ!」
翼は頷き、響達を安全場所へ移動させる。しかし、ここまでやってなぜ赤ロープが割って入ってこないのか。正輝は戦いながらも余りに出来過ぎた展開に疑問を感じた。
(ちょっと待て…そろそろ出てきてもいい頃合いのはずだ。ここまでは上手くいっているはずなのに、それなのに、なんだこの胸騒ぎは…)
『どうした!』
ネフィリムを剣で滅多刺しにしているのに、赤ロープは一向に出てこない。
ウェル博士は発狂しながらノイズを召喚して邪魔をしてくる。
(なにか、俺達が見落としているって言うのか?…致命的な何かが…まさかもうすでに…仕掛けてるのか⁉︎)
もしそうならば立花を襲う脅威は彼女のすぐそばにいたことを。正輝が響達の方を振り向くと翼の表情は、どす黒く口を開いて笑ったのを見てしまった。
(おいアーチャー!風鳴翼の皮を被った偽者を狙撃しろ‼︎衛宮チームは響達の元に向かって…)
気づいた正輝はすぐさまアーチャーと衛宮チームに連絡を取ろうとするが、いくら呼びかけても彼らとの連絡が全く取れない。
(誰かが念話の妨害をしているのかクソッ‼︎)
正輝が必死に駆けつけて、響とクリスにこのことを直接伝えることしかできない。
「立花、そいつから離れろォォォォッ‼︎」
「…えっ?」
正輝は気づいて、響達の方に向かったものの距離が遠すぎるためにもう遅い。そばにいた雪音クリスは背後から峰打ちをされて倒れる。立花響の左腕は、風鳴翼の聖遺物天羽々斬によって真っ二つに斬り落とした。
「…えっ、翼、さ、ん」
「感謝するよ、岩谷正輝。おかげでこちらの仕事が楽になった」
響が下を見ると、自分自身の腕が落ちている。風鳴翼は落ちた響の腕を拾い、倒れていたネフィリムの口に強引に入れて食わせた。ネフィリムはそれを飲み込み、成長していく。
「やった!やったぞぉぉぉぉぉっ‼︎」
ウェルがネフィリムに聖遺物を食べさせたことを喜んでいる。
風鳴翼は徐々に赤ロープへと姿を変貌していった。二課全員と正輝、アーチャー、響とクリスは変わっていく姿を見て騒然としていた。
『なん…だとっ⁉︎なら翼は…翼は一体何処に行った‼︎』
『これから捜索します‼︎』
本物の風鳴翼が一体どこに行ったのか誰にも分からない。現に翼は正輝と二課の目の前で変身して見せた。二課は本物の翼を捜索しているものの、その反応がアーチャーが待ち構えていた場所にいた。
『なんでそんな場所に…我々は今まで気づかなかったのか⁉︎それに黄色のロープ…だと⁉︎』
『それだけではありません!響達や正輝、黒沢さんの通信が届きません!誰かが通信妨害をしています‼︎』
既に翼の身体がボロボロになっており、アーチャーと交戦している。黄ロープが念話及び通信の邪魔をしていた。正輝側や二課側も余りに衝撃的すぎて響の元に助けに向かうことができなかった。
『今度は映像にも妨害がっ…⁉︎』
更に、二課が正輝達と響達の様子を映像で見ることができなくなった。
ロープの連中の真の目的は、前線に出ている正輝を殺すことではなく響達の仲間に変身して響の腕を切り落とすことだった。
だから、正輝を狙うことなく響達を狙うことに執着していた。
「あっ…あぁぁっ、うわぁぁぁっ‼︎」
(冗談だろっ…⁉︎)
響の恐怖の叫び声がこだました。既に彼女の左腕は無くなっており、片腕で失った部分を抑えている。
「立花響。お前の願いは誰かと手を繋ぐと言ったが…まぁ、無理か?
繋ごうとする手は既にネフィリムによってもう食われたんだ。今のお前の姿は、実に滑稽で哀れなものだ」
正輝が見ていた悪夢とは違う形で、最悪の結果となってしまった。