平坂黄泉が正輝達よりもいち早く先に前に出てしまった。彼の目は見えておらず、全て聴覚に任せている。未来日記こと正義日記の音声で、誰かがここにきて斧を振り回して殺すという未来予知を聞き、颯爽と現れ出てきた。
響の方はかなり遠くに離れているため絶対に青ロープと接触することはないのは良かったが、
「何をやってるんだ!殺されてしまうぞ‼︎」
助けるはずの人質がそう叫んでいる。こんな状態で普通の一般人に助けられても、人間じゃない化け物相手に返り討ちにされるのが目に見えている。
それでも黄泉は、
「コノ私ガ、悪ヲ懲ラシメ、アナタ達ヲ救イマス‼︎」
(ダメだこりゃ…)
黄泉の方は助ける前提で向かってきたのだから、逃げる男ではない。正輝の方は仲間になる前に自分の為すべきことをするようにとはいったものの、彼の正義感のせいで契約のことをすっかりと忘れている。
「あのさ、まさかあれって?」
「黄泉が俺の指示を聞かずに出て来てしまった」
「マジかよ…」
バカップルの二人はそれを理解しているが上で身勝手に突っ込むことなく正輝の元に合流している。
「こうなったら私達も変身して「動くなっ!今ここで力を出したりしたらこっちまで青ロープと同様に恐怖の対象にされるぞ‼︎」」
さやか達もまた動こうとするものの、正輝に止められた。ここで下手に力を出したりすれば人質達はシンフォギアではない異能な力をを使っている正輝達にも化け物だと非難され、恐怖してしまう。平坂黄泉を助けに正輝達が動こうにも青ロープの側にいる人質のせいで動けない状況にまで陥っていた。
「いやぁぁぁっ‼︎誰か、誰か助けてぇ‼︎」
「なんで、普通の人間が手すりに触れただけで斧に変わったんだ⁉︎」
「化け物に殺される…いやだ、死にたくないっ‼︎」
ただの一般人が能力者相手に勝てるわけがないという絶望。人質側からしたら助けにきてくれたと安心するよりも、逃げることもできずに目の前で人が殺されてしまうという恐怖心の方が上回っている。
人質はただの普通の人の助けてではなく、青ロープの言っていたシンフォギア奏者の助けが欲しかった。
『何が出てきたと思えば…所詮こいつらと同じ一般人か』
「助けてぇ!パパぁぁっ、ママぁぁっ‼︎」
結界に取り残された人質達は逃げ口のない常態に、阿鼻叫喚としていた。たとえ普通の人が横から入って助けにきてもこの状況をどうにかできるわけがない。
静かな状態の中、取り残されて迷子になっている子供が泣き叫んでいる。
(おい、誰かあの子を助けないと…)
(早くなんとかしてくれよ!なんで奏者が来てくれないんだっ⁉︎)
(ノイズもいるのに…こんなのって)
人質の方は子供のことを助けたくても、自分達のことで精一杯だった。
青ロープは子供の方に首を向けている。
『小煩い餓鬼が』
そう言うと、青ロープは壁に右手を当てる。壁だけだったものから大砲を作り出し、その子供に向けた。
人質の目の前で子供を殺そうと準備している。音に気づいた子供は殺そうとしてくる青ロープを見てようやく、自分の置かれている状況を理解した。
子供はもう泣くのをやめて、身震いすることしかできなくなった。正輝達の方も動けない状態、青ロープは人質の意思などお構いなく目の前で殺人を犯そうとしている。
人質と正輝達も真っ青になっている。
黄泉は子供を助けるために彼の声を聞き、青ロープへと走って接近する。
『そうか…なら子供よりも先にテメェから死ねやぁ‼︎』
「早く逃げろ黄泉っ、お前じゃそいつには勝てない‼︎」
標準は子供から平坂黄泉へと変更される。大砲は六ヶ所作られており、全ての砲撃が彼に向かって飛ぶことが予想される。
正輝は逃げろと叫んでいるものの、聞く耳を持たなかった。
救いの方法とするならば黄泉の正義日記にDEAD ENDフラグの報告が来ていないことを祈るしかない。しかし、たとえ未来日記の予測にDEAD ENDフラグが来たとしても黄泉は悪を倒すために臆せずに向かっていくだろう。
(俺が囮になる!みんなはその隙に)
(⁉︎士郎‼︎)
士郎もまた動いた。このまま何もせずに手をこまねくわけにもいかず、しかも子供を殺すような奴を黙って見過ごすわけにはいかなかった。
しかし、砲撃を魔術で防ぐわけにもいかずできることは囮になって攻撃を遅らせることしかできない。そうして飛び込む士郎の横を、誰かが高速で移動する。
『はがっ⁉︎』
青ロープによる砲撃は二人が止める前に不発に終わった。眼鏡をかけ、スーツの格好をしている男がロープの死角から奇襲をし、彼の拳一つで吹き飛ばされたからだ。
士郎と凛達が一番よく知っている人物。
「葛木先生っ…⁉︎」
キャスターのマスターが偶然にもこのスカイタワーにいたのだ。前回レイナーレ達のいる世界で凛が唐突に現れたと同様に、彼もまた出てきたのだ。
彼の拳や足に魔力が込められており、キャスターことメディアも何処かにいることがわかる。能力の方は青ロープだったが、行動力は宗一郎が上回っている。
バランスを崩した青ロープは彼の暗殺拳でまた動く前に、タコ殴りにされ地面に転がされる。
「だ、誰かは知らないが…ありがとう‼︎」
結界が薄れていき、青ロープの人質は避難口へと全員逃げていく。青ロープの方は立ち上がろうとするものの、身体の至る部分にバキバキと音が鳴っている。
「…骨の何本かは折ったはずだが」
『けんなぁ…ふざけんなクソガァ‼︎』
青ロープがまた壁に触れると、今度は全ての天井から尖った岩が作り出され、青ロープ以外の頭上から降り注がれる。無関係な人達が完全にいなくなったのを察知した正輝はアイアスの盾を展開し、仲間全員を守り。宗一郎の方は隠れていたメディアが出現し、魔術で防ぐ。
『これなら、まぁ一人は確実に』
岩が砕かれ砂煙となっている状態で、宗一郎は煙の中から青ロープの懐に入り、首を狙おうと襲い掛かってきた。
『なっ⁉︎』
「遅い」
青ロープは両腕で防御するものの、間に合わない。宗一郎の手に込められている魔術はさっいのよりも強力になっており一気に仕留める気だった。が、二人の戦闘に赤ロープが乱入して宗一郎の拳を宝具で止める。
『おい!何しやがるっ‼︎』
『いくらお前が強くてもこいつとやりあうのは部が悪すぎる。それに…よくもまぁ、ここまで派手にしてくれたもんだ。もうここはいいからお前は飛行型のキメラを召喚して、逃げていった人質やここに残っている人を閉じ込めろ』
青ロープの方は壁を作ってスカイタワーの人質を出さないようにしろと命じるものの、まだ納得のいかない様子だった。
『待てよおい…まだ俺は『今のお前にはこいつ相手に部が悪いから邪魔だと言わないと分からないのか?』…クソがっ‼︎』
青ロープは赤ロープの忠告に従い、四体のキメラを召喚して、人質が逃げていく方へスカイタワーを降りようとする。召喚された飛行型のキメラ達は外に飛び出そうとする。
人質はスカイタワーを降りて助けを求めて逃げていくが、青ロープが迫って来ている。しかも、キメラがこのスカイタワーの外に出てしまった。ただでさえノイズがまたこのスカイタワーの人達を襲っているに、道が阻まれたりすれば逃げ場をなくした人達は犠牲者となってしまう。
しかも道を塞いでいるのは、
『そういうことだから、お前の相手はまた俺だ。岩谷正輝』
「今度は、ガヴェイン卿の…」
今度は、エクスカリバーの姉妹剣である転輪する勝利の剣を構えている赤ロープだった。
「違うな、お前は俺一人だけを相手に戦うわけじゃい」
『…敵わないと思って、今度は凛とセイバーをここに置いたか?』
正輝は前回、全力を相殺されたことで赤ロープを相手に警戒している。勝てない相手なら逃げることも方法だが、そんなことをしたら赤ロープは正輝達を追うのを諦めて青ロープと同様に別の人を標的にして襲ってくる。次は戦えない響達を狙ってくるということもありゆる。
「正輝、油断しないでください!もしも宝具だけではなく【聖者の数字】を持っているのなら…‼︎」
聖者の数字とはガヴェイン卿だけが持っている特殊体質。これにより太陽が出ている間、今までの三倍に近い能力を発揮することができた。
『そうだな。宝具だけではなく、スキルも持っているのかどうかと言えば、持っている』
今の天気は晴れとなっている。よって赤ロープはスキルによる聖者の数字で飛躍的に上がっていたことがわかった。もし、彼に宝具だけではなくスキルまだ多様に持っているのならば、いくら正輝とアルトリア、凛がいても勝てるかどうか難しくなる。
『安心しろ、俺は今日ここで全力でお前達を殺す目的ではなく足止めをするためだけに来た。黄色の奴はFISと話をしたいという理由で俺達にお前らの対処を押し付けたんだがな。対処は好きにやってくれとな』
「よく喋るな、お前。いいのかよ、そんなにペラペラと…」
『形勢逆転ができるような展開がない以上、こちらの方の状況を明かしたところで何も問題ない』
赤ロープの言う通り他の正義側の増援ができない以上正輝側に勝算はごく僅かだが、それでも見過ごすわけにはいかなかった。
「俺はこいつを食い止めるから、さやか達は青ロープを追え!レイナーレ達、アーチャーはキメラ達を始末‼︎マルコ達は戦えないから撤退しろ‼︎」
飛び出した1体のキメラをレイナーレ達が、アーチャーも同じようにもう一体を抑えている。
*****
ウェルと黄ロープがノイズの襲撃を受けているスカイタワーを見て、二人して呑気にコーヒーを飲んでいる。
側にはソロモンの杖が置かれていた。
「誰もかれもが好き勝手なことばかり…」
『まぁまぁ。正輝達も動かせないように青と赤がしっかりと暴れてるので横やりの心配はありませんよ』
「いつもありがとうございます」
青と赤のロープの方は決戦の時のように正輝達をまた動けないようにし、黄ロープの方はFISと話し合っていた。
(それに、赤のちょっとした頼みもあるからさ)
同時に、FISが起こした事件について黄ロープが管理し、赤ロープに提供するのも仕事にはいっている。今回のことについてもそれに含まれていた。
正輝達を彼らがどうにかしなければ、FISは序盤から既に計画は頓挫し、上手くいくことなく二課に連行されている。
『いえいえ…俺もねぇ、世界をより良くしようと思っているんだ!君と同じように‼︎あっちは赤と青がなんとかしてくれるから心配ないよ。どーせ何人死人が出ようがマスコミはノイズの災害でーすっでだけで後は政府と二課が証拠隠滅として片付けてくれるんだからどーでもいいよ。こっちだって何しようが痛くも痒くもないわけだしね』
ツヴァイウイングによるノイズ災害など、公にしてはいけない不利益な裏事情は全て不幸なノイズの災害ということで真実を覆い隠していた。だから今回の件も、上の連中が闇に覆い隠すだろう。
潜水艦を本拠地とする前の二課本部がリディアンの地下にあり聖遺物に関する歌や音楽のデータを被験者から集めるようにしていた。風鳴翼という偶像を利用し、生徒を集めるためによくやっていた。
(まぁ、そんな裏事情を知らない岩谷正輝が聞いたらガチキレをするだろうね。二課に対して間違いなく)
ノイズに酷い目にあっている被験者を利用し、データを集めていのはこれ以上の犠牲者を出さないためという理由もあり、嘘をついても本当のことが言えなくても誰かのために命をかけて戦っているというのなら納得をするかもしれない。
しかし、正輝からしたら半信半疑の状態になっていただろう。理由はツヴァイウイングの災害が発生する前にノイズ対策の為の対処をなぜ事前に言わなかったのか。対処方法を観客達が知っていたら多くの人がノイズの餌食にならず、被害は最小限に抑えられていた。今はこうして正輝は響達の味方をしているものの裏を知ってしまったら最悪、正義側と二課側との衝突があってもおかしくない。が、黄ロープの方はそんな理由が原因で二つの陣営による単純な戦いが勃発するよりももっと面白いことを考えていた。
『そんな下らないことよりも、今後君達と俺達が会う機会なんだけどさ』
たとえ今回の件でマスコミなどの虚偽の情報を流したところで、既に
二人は互いの要件について話を終えると、仲良く握手していた。
*****
青ロープがスカイタワーにいる無関係な人達を襲おう降りている間、さやか達5人と士郎、宗一郎の7人で追っている。
「逃すかテメェ‼︎」
『しつこいんだよっお前ら‼︎』
青ロープの方は逃げながら壁に手をつけつつ、士郎達の道を塞ぐための新たな壁を作り出している。ほむら達の方は魔法少女には変身していないものの武器だけを用意して壁を破壊する。
「なんだあれっ…⁉︎」
米国政府のエージェントの他にも重火器を持っている武装兵がやってきた。
「なんで私達や無関係な人達にまで撃ってくるのっ⁉︎」
(おい正輝!なんか銃を持ってる奴らが‼︎)
(そいつらは米国のエージェントについて来た連中だ。ここにマリアとマムが来て、交渉をしていたそうだがノイズに襲われている以上どうやら失敗したようだな…)
スカイタワーの中にはまだ残っている人だっている。武装兵達はマリアを追っているのに、無関係な人達が道を遮るために彼らにも銃を乱射してくる。
「やめろぉぉぉっ‼︎」
撃ってくる彼らに士郎が飛び込みぶん殴り、さやか達の方もその武装兵に攻撃した。このまま士郎を見過ごすわけにはいかなかったため、戦うしかなかった。
士郎達が反撃しようとしてくるものの、突如様子がおかしくなった。
(申し訳ありません。つい、私情で動いてしまいまして)
平坂黄泉の洗脳によって棒立ちになってそのまま動かなくなっていた。彼らは持っていた銃を落とし、上を向いてそのままになっている。武装兵は黄泉による洗脳でなんとかしているものの、青ロープは止まらない。
『くそっ⁉︎正面もかよっ‼︎』
「もう逃げられないわよ!」
正面にはメディアが、後ろにはほむら達と士郎、宗一郎が逃さないようにする。青ロープは一階にたどり着く前に諦めて撤退し、渦の中へと飲まれていった。