58話欺瞞と並行世界
旅行が終わり、3日間くらいは次の予定が決まるまでの間にシンフォギアの世界にまだ残ることとなった。
響達はまだ家にいるが、正輝の他の仲間の方は船内や買い物などで出かけたりすることもある。
「よっし、これで一通りの問題は確認したか」
正輝と秋瀬或、アーチャーの三人は二課の指示とは関係なしに、FISの事件で被害にあった場所をまた再確認をしていた。クッキーマンで助けた野球の少年達の生存の確認や、マリア達と米国との貿易先であるスカイタワーで出た犠牲者を調べている。
彼らがもし今後関わってくるのであれば、正輝達や二課側も何も知らないわけにもいかなかった。
(本来は、もっと早く終わらせるつもりだったんだがな…)
楽園が介入してこないのならば、予定ではすぐに彼女らを捕らえて、被害を最小限にさせる算段を付けていた。どちらにしても二課とマリア達は間違いなく接触し、戦闘になるのだから。
クッキーマンによるトラブルはともかく、イレギュラーことロープ陣営の介入の所為で、正輝達の作戦がことごとく戦術によって潰されると思ってなかったのだから。
幸い、マリアがテロ活動の為に利用したQUEENS of MUSICの被害者は、退場したおかげで誰も犠牲になることはないから調べる必要性はまず薄い。ライブに来ていた客が人質になり、もし襲うような事態になれば、死者は大勢出ていただろう。青ロープが召喚したキメラも、翼とクリスが倒していなかったら、無力な一般市民はなす術なくノイズとキメラに駆逐され、多くの犠牲が出ていた。
「何か色々と街を回っているそうだね」
「まぁ…やっておかなくちゃいけないだろう。
だって俺は、ツヴァイウイングの事件後の悲惨さをマスター・オブ・ザ・リンクで知ったんだからな」
(そうだよな…立花)
当事者ではない周囲からの一方的な敵意に苛まれ、被害者やその家族もろとも理不尽に責められていた。響は学校でいじめられ、家族と親友である未来など心を開ける人があまりいなかった。
「でもよ、これは罪滅ぼしとかってわけじゃねーよ。もし関係者が出てくるのだとするなら…全然何も知りませんでしたって訳にもいかねーだろ?
だからさ、それを知るにしても俺達の出来ることからな」
この調査は二課の指示ではない正輝達によるものであるため、それで政府が嗅ぎ付かれても後々面倒になる。ノイズの自然災害にあったとはいえ、FISといった人的組織が原因であるために調べれる範囲でやっていくしかできなかった。
「この事件に巻き込まれて、響さんのような影響を受ける人も考えられるからね」
「響のようにまだまともに話し合えるのならともかく、最初の頃のクリスのように聞く耳持たない奴とかだったら…まぁ少なくとも敵意を向けられるだろうな」
結局未来が暴走していた時に巻き込まれていた海外からの哨戒艦艇と船員については流石に調べることは出来なかったが、それ以外については何とか大勢の人物を調べる事ができた。彼らの事件後の影響まで流石に踏み込むのは無粋過ぎるため、そこまではやらなかった。
「なぁ黒沢、秋瀬…このやり方じゃ甘いと思うか?」
「確かにどういう人達が巻き込まれたかはこれで把握したよ…範囲は絞れたけど、やっぱり彼らが事件後にどうなっているのかも幅広く知っておかないと難しいよね。
なら二課の人達に頼んでみる?」
「んなもん、ノイズのは機密事項だからでおしまいだ。詳しい事情はもう二課の連中に信じて任せるしかないだろ」
正輝達はやれるだけのことをした、そこから先を調べようとしたら今度は政府には目をつけられ、二課と正輝達の間にまた疑心暗鬼が生じてしまう。
「俺らがやれんのは、残念だがここまでだ」
「仕方あるまい。我々だけで下手に動いても徒労に終わるか、事態が悪化するだけだ」
「…なら、仕方ないね」
結局調べがついたのは巻き込まれた人達だけという曖昧な詮索しか出来ず、ツヴァイウイングによる事件と響のことで知った二課がちゃんと管理している事を正輝達は祈るしか何も出来なかった。
*****
正輝達が船に戻ると、メールには既に次の世界に行く準備が用意されている。嶺と加藤の二人は正輝よりも早く連絡が来たため、既に別世界へと向かっていった。
正輝が向かう世界は未来日記と同様に介入条件がメールで連絡されているが、今度は名前や世界の概要説明、介入条件が正輝一人だけで、それ以外は黒で塗りつぶされていた。どういった世界なのか、正輝が介入しなければわからないようになっている。
「これ…まーた俺しか行けないのかよ…一体何が原因なんだ?…また未来日記とかだったらまさかゼウスとかの神様がらみとか?勘弁してくれよ…」
『次の世界は衛宮士郎や遠坂凛などの特定の人物がいるのと、何かしらの抑止力で制限されている』
(能力については記載されてないし…士郎達のいるIFみたいな特殊な世界ってことか?)
介入条件のうち一つは、正義側リーダーしか介入できないだけは分かったが、それ以外は黒く潰されているせいで見えないから全くわからない。しかし、一番気になるのは神様が開示した情報を信頼できるのかと正輝は疑っている。
「…まさかロープ陣営が出てくるとか、殺者の楽園が出てくるとか言わないよな?」
『信じるも何も、ワシらに嘘をつくメリットがないじゃろ?』
「F.I.S.事件で楽園が出てこないって言っておいて、ロープ陣営とかよくわからない第三者側の連中がいきなり襲ってきたんだぞ。
少なくとも俺達があんたら神様のことを欺瞞に思って当たり前じゃないのか?」
ここ最近の神は、ロープ陣営の出現以来言っていることが矛盾ばかりの発言しかしてこない。本当の事を言っているのか、嘘を言っているのか。
ロープ陣営のことで抗議したはずが、正輝がゴミだと吐き捨てたお祈りするだけ改善メールを返されたせいで、正輝が神に対する信頼は一気に失っている。その報告だけでも、神の言葉をそのまま鵜呑みにするなんて到底出来るわけがない。
『まーた疑っているようじゃが…ワシはそんな意地悪なことしないわい。ちゃんとした報告をすることで、正義側の君達にもその分を達成した報酬を賄っておる。メールで失礼なこともあったから、そのお詫びも与えたぞ?
衣食住だってちゃんと保証してるじゃろ?』
「…そうだったな」
だが、このまま神を疑っても何も始まらない。報酬や衣食住についてはちゃんと間違いのないように与えているのは明白。
神の運営を疑っても、その神様が機能していなければ正輝達を含む正義側は世界の介入以前に、船内に閉じ込められかねない。
(神のことを疑っているとはいえ…まだサービスを提供している間はそれを頼りにするしかないな。だが…ロープ陣営だけじゃない。そのうち第四、第五陣営の登場とかなんてされたら冗談抜きで勘弁してくれよ…)
正輝は困難に頭を悩ませながらも転移装置に手を触れる。
「それじゃあ…行くか」
そのまま次の世界へと介入していく。未来日記とは違い、名前も条件も殆ど不明な士郎達のいる並行世界へと正輝一人で向かうしかできなかった。
*****
「…ゑ?」
(おいちょっと待て、これって)
次の世界に転移したかと思ったら、空を飛んでいる。またシンフォギアに介入した時と同様のパターンに陥っていた。しかも、うっかりが原因というわけではなくそのままその位置(上空)に転移されることが確定だった。
「…ってまた上空かよぉぉぉっ‼︎落ちるぅぅぅっ⁉︎」
自分の身を守るためにBLUEの形を変形させても、間に合わない。落下地点が地面ではなく、公園の森林であることに多少安堵しているものの、それでも不時着は確定である。
(こうなったらクッキーマンに変身するしかないっ⁉︎)
すぐに自分の身を守るためにQUEENS of MUSICに落ちた時と同じようにクッキーマンに変身して防ぐ。しかし、運が悪かったせいなのか、木の枝に何度も激突し、最終的に
(…どうしてこうなるんだよ)
シンフォギアの時は犬○家という頭隠して足隠さずといった状態だったのに、枝に引っかかり過ぎて十字架に縛り付けられたイエス・キリストのような感じになってしまった。声はなんとか出せるが、身体はあまり動けない。
(にしてもなんでまた上空に落ちるんだ…てか、またこのパターンか)
こうなった事態に陥ったのは、上空で空を飛び、いい歳した二人組が痛々しく魔法少女のコスプレの格好をして、空を舞いながら魔法弾を遠慮なく撃ち続けていた事が一つ目のきっかけであった。
そんな事を正輝が知る由もなく、二人の喧嘩の所為が原因で、空間に亀裂が入り転移の時点で巻き込まれてしまった。
だが、落下したのは正輝だけではない。
「覚えて起きなさいよルビィィィっ‼︎」
「お、落ちてしまいますわぁぁぁっ!」
僅かながらも空間に亀裂を作った元凶である赤い悪魔こと遠坂凛とルヴィアの二人が魔法少女の格好から元の服装に戻って、後に落下していった。果たして正輝と出会うのは、二人のうちどちらなのか。介入時にも伏せられた条件、この世界の具体的な物語さえも知らされていない。
それでも、なるようにやっていくしかなかった。
ーーーfate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ
介入開始
次回からシンフォギアG編からプリズマイリヤ編になります。