Justice中章:歌姫と蘇生と復讐と   作:斬刄

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60話カードと役割

正輝達はルヴィアと歩きながら、カード回収の内容についての話を聞かせてもらった。

 

時計塔の指示から、ルヴィアと凛の2人で冬木市にある七種のカードを回収に向かうように言われ、そのカードにはとんでもない化け物(英霊)が持っているために、その処理を二つのステッキ(ルビー、サファイア)を貸し出していること、そのステッキで変身することで回収を進めて行くことも。

 

『魔力を無制限に供給し、マスターの空想を元に現実に奇跡的に具現化させるのが、私とルビー姉さんの機能です。

 

カード回収は7つあるのですがその内『アーチャー』『ランサー』の二つを回収しています。カードの制作者、用途、構造解析も不明でしたがこのカードは実在した英雄の力を引き出すことが可能です。

 

英霊と成った者の力、通常の武具を超えた兵器…それが宝具です。私達はそのカードを介することで英霊の座にアクセスし、英霊の持つ宝具の力を一瞬だけ具現化させることができます。

 

英霊を倒さねばカードを回収することが出来ません』

「そういう訳なので悔しいですが、サファイアを持っている貴方にはカード回収を行う時、私の指示に従って貰いますわ」

「はい」

「なら俺はどうなんの?一応魔術は使えるが…」

 

美遊と言う少女については、サファイアに選ばれたという明確な理由がある為納得はしたが、正輝の方は聞かれいない。

 

「貴方、投影魔術とあの変な変身だけですか?」

「…まぁ他にもあるよ。でも魔術というより科学兵器寄りのものだぞ?例えば軽傷の回復を2分か3分程度で完治できるとか」

「…貴方、本当に魔術師ですの?」

「工具を自分で作って、それを魔術に組み合わせる人だっているだろ」

 

正輝には魔術と同等の便利な物を持ち合わせている。リリカルなのはで使っていたBLUE、RED、BLACKといった武具を。

フェイトを庇ってジュエルシードの暴走を止める時にBLUEを使用して抑えることができた。

 

一方、魔術師は様々な言語で魔術を唱えてその力を発揮する。ただし、その力を公にすることは絶対に許されない。魔術にも等価交換、ホムンクルス、家系と血筋…更には魔術師が集まり、聖杯戦争という願望器を手に取るために触媒を使ってマスターの臨む英霊を召喚し、殺し合うこともあった。

 

(確かに武具を作成して、それを魔術に併用する魔術師もいますが…魔術並みの高性能の技術兵器と並行して使う魔術師など聞いたことありませんわよ…)

 

「私と凛、貴方の三人で支援しますわ。最低限の投影魔術ができるのであれば、敵の動きを良く監視して伝えることぐらいは出来ますし…ですが、ちゃんと自衛もできるのですの?それによっては」

「あぁそれなら問題ないから安心してくれ。着いたら2人にも投影魔術だけじゃなくて、一応科学技術のことも話しておく」

 

ルヴィアも家に連れていこうにも、遠坂とは違って冬木市には家自体は無いため次の朝に工事して、豪邸が建てられることとなる。ルヴィア達三人は、ホテルで宿泊することとなった。

 

正輝は1人部屋、ルヴィアと美遊の2人は一緒の部屋として分けられる。

 

(確かに並行世界ではあるな。話によると凛の他にもいるそうだし…聖杯戦争も起きてない)

 

美遊の存在も未だ不明なままで、ルヴィアという人も遠坂凛の知り合いであることは正輝も知らない。しかも、

 

 

(なんか…こう、凛よりもやり辛い人だなぁ…)

 

正輝自身の能力を提示して何とか上手くはいったものの、うっかりの凛よりもルヴィアは性格が微妙に似ているとはいえ凛よりもお嬢様みたいな喋り方や振る舞い方をしているために話しにくい相手だった。

 

*****

 

こうして、一泊分はホテルに泊まることになったが、部屋で休む前にルヴィアが正輝の科学兵器のことで呼ばれた。

 

「それじゃあ、早速見せるか…BLUE起動」

 

青色の球が液体のように手からこぼれて行く。床は全く濡れておらず、球から青い正方形のブロックへと変形した。

 

「サファイアも、流石に見たことないだろ」

『はい。液体を魔術で操作する魔術師は過去にいましたが、貴方のそれは全く異なるものです。それには、全く魔力の反応がしません』

 

正輝が手を掴む動作をすると、ブロックが突然変形して剣へと変わっていく。掴むのをやめて手を開くと大楯へとコロコロと形が変わっていった。

 

「これ以外の機能にもさっき具体例で言ったように、こいつは傷の回復もできる。火傷や擦り傷、打撲とかの怪我は長くて5分かぐらいで完治可能だ」

「凄いですわね…」

「俺の思考をそこの球体が読み取って、適応な武器へと変えてくれるからな。だから自分の周囲を守りたいと思った時は…こんな風になる」

 

瞬時に盾状から正輝の身を守るためにバリヤ状に変形される。

 

『貴方の場合は魔術は魔術、科学兵器は科学兵器で分けてますね』

「そうだよ。二つを組み合わせてってのは流石に難しいからな。ただ投影魔術だけしかないわけじゃなくて、こういうことができるから役に立つよって話だ」

正輝は青い球以外にも赤、黒の球を取り出した。それぞれを起動させて赤は鉈、黒は遠距離用の武具に変形する。

 

「とまぁこんな風に、自衛もちゃんとできるから安心しろ」

「一応聞きますが、その三つは英霊を相手に何とかなるのですか」

「倒せるって言われたら難しいが、時間稼ぎや援護することは可能だ」

 

これで正輝の科学兵器の話は終わったため、次はやることについて話し合うこととなる。

 

 

「既に美遊の方は終わりましたわ。次は貴方をどうするかについてです」

 

 

美遊は正輝の兵器のことを話す前に自分で何をやるかを2人で相談し、既に話を付けている。正輝に関しては最初に何でもやりますから住む場所を下さいとは言っていたが、実際にルヴィアに何を命じられるのかまだ何も言われてないから分からない。

 

「…案外、美遊のことは早かったな。じゃあ美遊はどんなことを命じられたんだ?」

「えっと、これを着るように言われました」

 

ルヴィアが美遊に渡したものは、メイド服だった。生活の保護をする代わりに、その仕事着を着つつルヴィアの身の回りのお世話やカード回収の手伝いをしなさいという条件となっている。

 

「私はレディースメイドという扱いということで、話がまとまりました」

「おう、そうか」

 

メイドの仕事やカード回収だけではなく、彼女には学校にも行くようにと言われている。

既にルヴィアが手筈は整っていた。

 

「貴方はまぁ…オーギュストのように執事を出来るかどうかも怪しいですし。では、今後は美遊の家庭教師をしなさい」

「家庭教師?でもあの子がもし頭良くて、運動神経も優秀なら必要ないんじゃ」

「確かに学びの方もありますが、主に社会的な面でのことです。頭も運動神経も冴えていても、人間関係やマナーなどを経験して知ることも重要ですわ」

(あーなるほどね。どんなに優れてもこの子が無自覚に失礼な事を言って、相手を挑発し、困らせたり最悪激怒させるような事に発展したらそりゃ大変だもんな。んでも…なんか気がかりなんだよな)

正輝は美遊の家庭教師をする理由を教えることに納得しつつ頷いたが、何か引っかかっていた。美遊もそうだが、ルヴィアは大丈夫なのかと。

(ん?んんんんっ?え、確か社会的な面って言ったんだよな…ルヴィアは大丈夫なの?)

正輝はルヴィアが凛と似ている部分があるというのなら、常識な部分が欠けているのはそちらではないかと口を開こうとするが、思いとどまった。

 

(でも、それをお前が言うかってツッコミたかったけど、スルーしよ…逆ギレされるのが目に見える)

『やれやれですね…』

正輝には美遊の家庭教師を命じられたものの、美遊もそうだがルヴィアもやった方がいいのではないかと複雑な気持ちでいる。ルヴィアが淑女だというのに凛と喧嘩しているのなら、少しでも一般常識を知る必要があるのではないかと。

しかし、突っ込むわけにもいかずそれを側から見ていたサファイアもあきれるしかできない。

 

結局正輝は美遊の家庭教師をすることとなった。美遊には勉強面も見るが、言い回しも人間関係も教えていく。

こうして役割のことも話し終え、もう夜の10時に回っていた。

「もうこんな時間ですわね。そろそろ寝ますわよ」

美遊とルヴィアは寝る支度をし、正輝は自分の部屋に戻っていく。

 

(ふぅ…ようやっと落ち着いた場所で自分の確認ができるようになった)

正輝は携帯をつけて、介入条件を見ようとする。この世界に介入したことで達成方法や規約条件が黒塗りされた部分が明るみになっている。

「メールの条件は…うわ、どうなってんだこりゃ」

 

ーーーーーー

 

介入条件

 

1.介入世界の出来事を見ることはできません。

 

2.船の一時帰還及び船内にいる仲間の転移を禁ずる

 

3.転移以降、住処については自分で決めるように

 

4.正輝以外の殺者の楽園等の転生者は転移不可能となっております(他の正義側の増援要請も不可)

 

5.自身の◾️◾️◾️◾️が使用不能になる

 

6.◾️◾️◾️を討伐せよ

 

ーーーーーー

 

(…介入してもまだ黒いところが塗りつぶされたままだと⁉︎)

 

1.は元から解放されていたが、2.と3.と4.の三つはやはりというべきか、未来日記と同様に他の仲間による助けが呼べない。

(仲間も、姉さんの救援も無理ってことは俺だけでどうにかしなくちゃいけないわけか…)

「今ある介入条件は理解した…後は…転生者結界、起動」

結界は正常に起動し、ルヴィア達にバレないように自分の身体の異変を調べていく。

(よし、これでサファイアにも気付かれずに自分の能力のことを調べられるな)

 

膨大な魔力を使っていることが知れたら、また彼女らに話さなければならない。いきなり明かしても余計に怪しまれるだけなので、宝具まで投影魔術が可能だと伝えるのはカード回収で絶体絶命になった時に助けた後で言うしかない。

 

「ちょっと試したい事があるんだがな…投影開始っ‼︎」

 

両手で宝剣を投影する。ピシリという亀裂音も、剣同士でぶつけても変化はない。

 

「次はっと…王の財宝‼︎」

 

空間から無数の宝剣宝槍、かき集めていた銃火器も以前問題なく手で取り出せる。

 

「…問題ないか。パラシュートを投影した時はなんか変だなと思ってたんだが。札も使えるし、パラメーターも異常なしっと」

 

ステータスも確認したが、力が衰えているというわけではなかった。嶺からもらった呪符も使えるようになっている。なんの異常もないと判断した正輝はようやっと一息ついて寝た。

 

次の日に三人がホテルから出たのは屋敷が完成した後のこと、入り口ではルヴィアの執事ことオーギュストが立って待っていた。

 

「おかえりなさいませ、お嬢様」

 

屋敷内はちゃんと綺麗にしており、ルヴィアにとって信頼の置ける人である。もう屋敷の入り口の時点で、ルヴィアが凛よりもどれだけお金持ちであり、優秀な執事までいることが正輝には分かった。

 

(凄すぎだろ…)

「さ、入りますわよ」

 

まだ美遊は次の日に学校へ向かうことになるため、このまま屋敷に過ごすこととなる。カードの反応がまだ汚い間、今後の予定を互いに話していく。

 

「それでは美遊は昨夜も言ったように今後はその服で私の世話、そして学校にもきちんと行くことです。正輝さんは、美遊の家庭教師として勤めてもらうのですが…まず課題として美遊の能力テストのようなものを用意してください」

「えっーと…一般常識とか適性検査とかのものでも?」

「それでも構いませんわ」

正輝の方は課題として美遊のために社会面で準備するようにと言われた。何をしたかもルヴィアに報告しなくてはいけないため、どうすれば良いか考えていた。

 

(とは言っても、美遊に教えることねぇ…そもそも、出会ったばっかりだしまず何させたらいいか。少なくともその子のことを知るためにはまず適性検査からでいいな)

「それでは、カード回収に行きますわよ。 2人とも」

 

*****

 

 

「反応はここであってるのか?」

『はい、ここで間違い無いです』

 

既に三人ともカードがある世界ー境面界と呼ばれるところは飛んでいた。普通の場所には何もなく、ステッキによる魔法で境界回路を一部反転させることによってその世界に行くことができるのだ。

 

「空も周囲も見事に歪んでんな〜それじゃあ俺は敵の動きを「その必要はありませんわ」…へ?」

 

正輝にとっては何処かの校庭だったものの、早速白い髪の女の子が赤いステッキを持って英霊と戦っている。しかも、敵は宝具で目の前の2人を消し飛ばすつもりだろう。

しかし、

 

「クラスカード『ランサー』限定展開(インクルード)

美遊はカードをサファイアにかざし、かつて青タイツが持っていた赤い槍へとステッキから形を変えて、宝具を放つ。

刺し穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルク)っ‼︎」

 

赤い槍はそのまま黒い英霊の心臓部位を貫き、宝具を使われる前に絶命させた。

「『ランサー』接続解除、対象撃破クラスカード『ライダー』回収完了」

(おお…あんな風に変わるのか)

 

一方の正輝は何もできないまま、そのまま遠くから美遊とルヴィアを見ている。正輝が敵の動きを見るよりも、美遊の方が出が早く動いた。

 

 

こうして美遊が【ライダー】のカードを手にとって回収できた事に、ルヴィアが自慢げにしている。

 

「これで1枚目のカードは頂きましてよ!オーッホホホホ!宝具を恐れ、遅れを取るなど、随分と甘かったですわね!遠坂り「やかましぃーっ‼︎」」

 

ルヴィアが得意げにしているところを凛が横から頭をめがけて思いっきりマジ蹴ってきた。

 

「話してる最中に容赦なく蹴りを入れるなど、本当に野蛮で無粋ですわね!」

「うっさいわねっ!自慢だけして何もしてなかったくせにいい気になってんじゃ無いわよ‼︎」

『成長しませんねーこの人達は』

(わー、すごく痛そうだなー)

2人の喧嘩に赤いステッキを持っていた白い子は慌て、ステッキも正輝も呆れている。

「ライダーのカード、か…何つーかあっという間だったな」

 

敵側も宝具を使おうとしたが、その前にゲイボルクを使う事ですぐに終わってしまった。

 

(凛以外にイリヤもいるって…その子も美遊と同じように魔法少女になってるし。これで残りあと6体だけど…思った以上に厳しいな。今思ってしまったんだけど…仲間も呼べないんじゃジュエルシードよりも一筋縄ではいかなそうだな、これ)

 

黒いサーヴァントはメデューサだったのならば、他のサーヴァントも大体予想がつく。

 

(にしても、凛も…そこのルヴィアって人も…あぁ、うん。何となくだけど)

 

仮にその予想が外れようたとしても、英霊自体が難敵である事に変わりはない。

 

「…ホントお互いに似てるな。プライド高いところとかも」

「今なんて言いました?(言ったかしら)」

「イエナニモ」

 

ルヴィアと凛が喧嘩しているところを、正輝はこれ以上余計なことを言うまいと生暖かい目で傍観している。だが、カードを回収したことで悠長なこともしていられない。

「わっ⁉︎地面が割れ、空もっ⁉︎」

『カードを取り除いたので。鏡界面が閉じようとしているみたいですね。

さっさとしないとまずいですよ。凛さん、ルヴィアさん脱出しますよー聞いていますかー?』

 

ルヴィアも凛も聞いてないため、美遊とサファイアで鏡界面から通常界へ戻す。戻ってもまだ2人は喧嘩は続いていたが、2人とも気を取り直して正輝と美遊を含む三人のことを話した。

 

「で?さっきから気になってたけどその二人はどうしたのよ?しかもサファイアまで持ってるし」

「貴方だってその白い子は何なのですか?これではまるで」

 

凛もルヴィアもお互い知らない人を連れているため、聞こうとするものの。見知らぬ人にこうしてステッキを委ねてしまったことから

 

「まるでステッキに見限られ」

「ええそうですわよ!サファイアを追いかけたら『この方がマスターです』とか訳の分からないことをっ…‼︎」

 

凛もルヴィアも性格のせいで、本来彼女らがやるはずがこの子達にステッキを委ねてしまった。

 

(でも、あの赤い子は本当にイリヤなのか?)

「ちょっと、聞きたいことがあるんだが」

「ほぇ?」

正輝はイリヤに声をかけた。正式名称は流石に言ってくれないかもしれないが、名字だけでも同じであることを確認する為に話しかける。凛だけではなくイリヤも同じであることを。

「…名前を聞かせてもらいんだが良いか?今後もカード回収でもし助け合う時に名前が分からないんじゃ意思疎通ができないからさ」

「あ、うん。えっと…イリヤって言います」

「ありがとう、俺は岩谷正輝だ。それじゃあまたな」

「よろしいですこと!イレギュラーはありましたが、勝つのは私ですわ!

覚悟しておくことですわね遠坂凛‼︎」

 

正輝はイリヤであることを確認すると、自分も名前伝えた。ルヴィアは完全に凛と競う為に、カード回収任務を勝負だと履き違えつつも、正輝もルヴィアを横目で見つつもう何も言うまいとこのまま去っていった。

 

「凛さん…あの人って仲間じゃないの?」

「まぁ本来はそのはずなんだけど…とりあえず対抗馬ってことで」

「ライバルキャラってことだね」

『サファイアちゃんの新しいマスターさんのことも聞きそびれましたもんねー。気になるところです』

イリヤは何か考え込んでいた。サファイアのマスターはそもそもステッキを持っている為に納得がいったが、どうして岩谷正輝という男をルヴィアが連れてきたのかが理解できない。

 

「うーん。あの子のことも気になるけど…でも何だったんだろ、話しかけてきたあの男の人」

『彼の持っている双眼鏡。あれは魔術で作られてますね』

「えっ?あれも魔術なの?」

ルビーがルヴィアのそばにいた正輝のことを着々と話していく。

イリヤも凛も彼の存在には不思議がっていたが、一般的にある道具がまさか魔術で作られているとは思ってもない。

『はい、投影魔術って言ってオリジナルから似せた物をイメージして創りあげるものです。投影した物の外見的な面、魔力面も特に何も問題ありませんでしたよ』

「…ちょっとルビー、なんでアンタがそんなこと知ってんのよ?」

『さっき話しかけた時、彼の持ってた双眼鏡を調べさせてもらいましたーっ♪』

「いつの間にそんなことを…」

 

凛はルヴィアとの喧嘩に、イリヤはルビーが正輝に近づいてそんなことをするとは思っても見なかった。正輝を連れている理由は、少なくともただの一般人ではなく凛達と同等に優秀な魔術師の実力をもっていること。

 

「時計塔から来たって以前に、そもそもあんな人見覚えがなかったわ。第一なんでルヴィアが偶然出会った男が実は魔術師で、しかも投影魔術まで持ってる訳?」

『さぁ、そこは私にもさっぱりわかりません。私が調べたのは彼の持っている物でしたから…その結果から出たのですが、投影魔術ができたとしても何故か想定が甘いせいなのか所々構成がグチャグチャでした』

「そうてい?」

『オリジナルを似せて作るためには、それなりの設計図を用意しなくてはなりません。魔術自体が高度なもので一つでも設計にミスが生じると、仮に投影が出来たとしても数分も持たずに壊れてしまいます。でも、あの投影物は内側からズタボロになっていましたし、あそこまで長く持つのが不思議なくらいです。彼自身も何故か気づいてないみたいですし』

投影を成功して外見だけがどうにかなっても、その期間が極端に短いという説明にイリヤは首を傾げつつ、よく分からない様子だった。

「えっと、つまりどういうこと?」

『簡潔に言えば…例えば新品の携帯で性能も優秀なのですが、寿命が極端に短いと言った感じです。

 

投影魔術を使うのにしても時間ごとに劣化していくものか、或いは…彼自身が投影魔術のイメージ(脳内)を頼りすぎたせいで、逆に土台となっている基本材質や構成を凄く曖昧にしているのではないかと…それだけではないような気もしないでもないですが。

これ以上のことは流石に私にもわかりません』

 

正輝本人も分からなかった異変をいち早く最初に気づけたのは隠れて解析したルビーだったが、彼の弱体化の原因を知ることはできなかった。

 

*****

 

 

(まさか本物のイリヤ…か。思ってたのと全然違いすぎて驚いたぞ俺)

 

正輝の知っているイリヤは、もっと冷酷な子供で無邪気な顔になりつつも狂戦士を連れてきて、無慈悲に敵を容赦なく潰そうとした。しかし、さっきのイリヤの笑顔や楽しげな表情からそんな風には見えない。小さな少女で、喜怒哀楽といった感情を豊かに振舞っている。しかも、魔法少女の格好をして戦うなど、まるで正輝から見たらイリヤと美遊の二人はなのはとフェイトを見ているかのようだった。

 

「さてと、そろそろ戻…つっ⁉︎」

 

ずっと正輝の持っていた双眼鏡が投影解除をする前に前触れもなく壊れてしまった。破片が崩れ落ち、魔術で作られた贋作は形も残さないまま砂となって消えていく。

「…は?昨夜異常なかったのに何で⁉︎」

投影破棄で戻したわけでも、無理矢理手に力を込めて故意に破壊もしていない。双眼鏡をイメージして造形し、逆に魔術を込めすぎて耐えきれずに形を留められなかったというわけではない。

(まさか投影魔術に時間制限がかけられているっ…⁉︎んでも、双眼鏡よりも最初に投影したパラシュートの方が長い間持ってた筈だぞ。

 

それに、さっきホテルで身体のことはちゃんと確認した筈なのに)

 

パラシュートの投影解除もちゃんとできたのに、双眼鏡は長時間も持たなかった。なのに、

 

(一体どうなってるんだよ…俺の身体は⁉︎)

 

高ランクのある宝剣を投影したわけでもなく、道具を投影しただけでも脆く崩れてしまったことに正輝は自分の異変に危機感を感じた。

 

携帯の画面にノイズが走る。連絡内容に記載されている条件が、未だに黒く塗りつぶされたものが残っているのを正輝はちゃんと確認した。その全てが明らかになって知るは、もう間近にまで迫っている。

 




Q
【SNだと士郎はアーチャーに「イメージしろ」と言われて、最終的には宝具まで使用できるようになって成長したのですが…】
A
士郎がアーチャーに言われる前まではちゃんと『同調開始』としてそれなりに訓練していました。暖房機の故障を直す時に何処が悪いのかも調べていたので、アーチャーと士郎の2人は、基礎の構成や基本骨子をこなしてます。
ただし、正輝の方はいきなりイメージして宝剣宝槍等を作り出しているので基本的な部分をすっ飛ばしています。投影魔術からの合成や改造といった剣以外の物を作ることは可能なのですが、同調も解析もしていない為に、土台がしっかりしていない。
だから言い換えると
アーチャー・士郎
宝剣や無名の剣といった最強の宝具や武具をイメージして投影するが、それに加えて構成や基本骨子を高めるだけ高めて登り上がっていく。
正輝
投影魔術で大体のイメージを想定し、宝具等を消耗品のように使用していく。初めから投影魔術だけしかできない為に投影物を強化する為の特訓をしているというわけではないが、投影魔術から投影改造といった応用として投影物をまた更に別のものへと臨機応変に対応する。
ただし、模造品の剣を互いに投影してアーチャーと士郎の2人でぶつけ合った場合、正輝の剣が二人よりも早く折れてしまいます。
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