Justice中章:歌姫と蘇生と復讐と   作:斬刄

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68話正輝VS黒正輝(後)

「わ、私が、もう一人っ…⁉︎」

「二人が正輝って人を知ってるなら教えてほしいな?後ここがどこなのかも」

『そんな、だ、だってイリヤさんは…え、え、ええええっ⁉︎』

 

イリヤと同じ赤い瞳に白い髪、イリヤそっくりの子がもう一人立っている。彼女はバーサーカーを従って美遊達を助けたのだ。突然出てきたもう一体のバーサーカーに向けられ、紫の服を着ているイリヤの方は声をかけられるまで気付かなかった。

 

(でもどうやってこの鏡界面に…そもそもサーヴァントまで使役して何者なの?)

「えっと、正輝さんのお知り合いですか?」

「そうだよ。やっぱり、正輝のことは落ち着いてからでいいかな」

今はバーサーカー同士で戦っている。

敵はもう1人のイリヤのサーヴァントに任せて、この状況を皆が話す必要があった。

 

「とりあえず手短にどんな状況なのか話してくれる?」

 

 

*****

 

 

「なるほどね」

 

イリヤ(紫)はこれまでの話を聞きながら頷き、どんな状況なのかを把握した。

 

正輝もイリヤを助ける為に黒正輝と戦い、美遊は最後の敵であるバーサーカーを相手に苦戦していた。宝具を使っても倒すことができずに襲われそうになっているところをイリヤに助けてもらい、隠れている最中にバーサーカーが出現して現在に至る。黒正輝が分身を使っている事実も発覚し、時間がないこともこれで発覚した。

 

「なら、凛達や正輝のこともあるから早急に倒さないといけないね?」

「…どうやって倒せばいいのかな」

 

 

助けようとしても味方のバーサーカーが接戦して戦っている為にイリヤ達も援護がしづらい。

 

「じゃあ、敵のバーサーカーもこっちも同じだと思うから言うね?

あの敵は12回殺さなきゃいけないの」

「蘇生能力のストックがこれで分かるなら、その全てをっ…!」

『無茶です美遊様っ!その身体であと8回殺すのは幾ら何でも無理がありますっ!』

 

美優は魔力切れで一度変身が解けてしまい、イリヤが助けてなかったらバーサーカーに潰されそうになっている。

 

「うーん、それも難しいかもしれないね?」

「えっ、どうして」

「だって黒正輝っていうのがまた邪魔をしてくる可能性もあるでしょ?絶対良いところで奇襲を仕掛けてくるでしょ」

 

これまで黒正輝は何度もイリヤ達の懐を狙い、殺そうと襲ってきていた。セイバーによる凛達の砲撃も彼の介入によって不発、イリヤの暗殺を仕向けていたのだから。

 

「それでも、介入の方は私1人で対処できるし、最悪私のバーサーカーと貴方達2人でどうにか押し勝てると思うよ?」

「えっ!で、できるの⁉︎」

「だって私のバーサーカーは最強だものっ!偽者なんか負けないよ!」

 

イリヤは召使いことヘラクレスを得意げに話し、何とかなるという絶対的な自信を持っていた。無難にバーサーカーというサーヴァントがいるなら、トドメも任せて終わらせた方が事態も解決できる。しかし、

 

「ありがとう。でも、大丈夫…」

「あれ?いいんだ」

 

しかし、イリヤはバーサーカーの助力を必要としなかった。正輝の知り合いとはいえ、カード回収をやっていたのはイリヤと美遊の2人がやっていたこと。

 

 

 

「友達を見捨てたままじゃ、前へ進めないって」

 

そんなイリヤを見て、美遊も付いていく。

 

「私も、一人じゃできないことも一緒なら上手くいくって」

「そう…バーサーカー!」

 

イリヤの指示を受けているバーサーカーは敵のバーサーカーを押し倒し、そのまま下がっていく。イリヤ(紫)は美遊とイリヤの戦いを眺めつつ、魔術で編んだものを岩陰に隠していた。イリヤと美遊のステッキが光り、2人の少女は前へ進んだ。

敵のバーサーカーは、今度は近くにいたイリヤと美遊の方へ全速力で向かう。

 

「約束する。もう絶対友達を置いて逃げたりなんかしない」

「うん、信じる。イリヤのこと、私の大事な友達のこと」

 

ーーー並列限定展開(パラレル・インクルード)

 

 

「うわー…壮観」

イリヤと美遊の頭上には約束された勝利の剣が複数出現し、二人とも同じ聖剣を所持している。それを見たもう1人のイリヤは規格外の力に、目を丸くすることしかできない。いくらバーサーカーが耐性をつけたとはいえ、あんなものを喰らえば間違いなく蘇生能力が尽きてしまう。

 

『イリヤ、及ビ美遊ノ削除ヲ開始』

 

英霊が倒されるのを予見した黒正輝はまた乱入し、二人が杖を使って強力な魔術あるいは宝具を発動する前に奇襲をかける。イリヤと美遊は正面にいるバーサーカーしか見ておらず、それ以外は見えない。こんな隙だらけの標的を、好機だと一斉に飛びかかって仕留めようと襲ってくる。いくらヘラクレスとはいえ、全方位からイリヤを守るにもやはり限界がある。

 

「その手はもう通じないよ?空気を読まない人達にはお仕置きが必要だよね?」

 

ヘラクレスはイリヤ達を助けに行かずピクリとも動かない。まるでこの展開を予想したかのように、英霊はじっとしている。こうなる前に主人が黒正輝の策を予測し、完全にそれが的中していた。

 

ーーーコウノトリの騎士(シュトルヒリッター)

 

瓦礫の中に身を潜めていた鉄の糸で編んだ複数の銀鳥(使い魔)が一斉に黒正輝に飛びかかり、形状を変えて拘束具に変形する。体全体を覆うようにし、一瞬にして無力化させた。

 

「何でもできるよ!二人ならっ!」

「うん、前へ進もうっ…!」

「「二人でっ!」」

 

 

イリヤと美遊の放つ砲撃は、投影魔術で装備させた宝具ごとバーサーカーも消し飛ばす。

聖剣による砲撃を泳ぐかのようにイリヤとの距離を詰め、敵は一回、二回と蘇生回数が減ってゆく。

こうしてイリヤと美遊殺しは失敗に終わり、拘束された黒正輝の分身は何もできないまま敵のバーサーカーが消滅するのを確認し、消えていった。

 

 

*****

 

宝具と神器によって放射した場所は消しとばされ、彼の身体そのものは消し去られるはずだった。正輝は空間の亀裂を作って、最後の劔と約束された勝利の剣を防いだのではなくその亀裂に入って回避した。

 

 

そして、有刺鉄線を覆うかのように周囲に張られてゆく。

 

〈change 3rd mode〉

 

正輝は黒いタンクトップとチノパンの格好をし、左目が黒から白くなっている。シャドーを複数出現させてナイフを投擲した。

黒正輝本体は致命傷を防いだが、残りはやられていた。

 

「ここからは、俺の進撃だ…」

 

黒正輝は無数の剣を投影して射出するが、数多ある剣は鉄網に阻まれて崩れていく。

 

『攻撃ヲ変更、王ノ財宝展開』

 

黒正輝は王の財宝を展開し、今度は本物の宝剣宝槍および魔力で操作された銃火器の銃口を向けていく。贋作の剣は、正輝の何重もの鉄網を展開することで攻撃を防ぐことは可能だった。

しかし、次に放つ攻撃は防ぎきれない。

銃は唯の剣よりも強く、英雄達の持つ宝剣宝槍は普遍的な物質で防ぐことは並大抵ではない。

 

「今の俺には、それは効かない」

正輝の白い眼は、空間を裂いて宝剣と弾丸を飲み込む。ナイフだけではなく、周囲に張ってある有刺鉄線には、尖った部分からは鋭利な刃物の形状に変形して飛んでくる。触手の枝のように再生し、他の鉄網が有刺鉄線へと変わっていく。

「射出ヲ無効ト断定。ヨッテ、乖離剣デ殲滅」

黒正輝は今の正輝は脅威だと判断し、咄嗟に王の財宝に入っている最強の宝具ーー乖離剣を取り出して発動しようとする。空間ごと切り裂く対界宝具は、次元を裂く最期の劔でさえも防ぐことはできない。

天地乖離す(エヌマ・エリ)

 

ーーーお前の負けだ

 

黒正輝の身体は突然動かなくなる。さっきまで吹き飛ばされていた無数のナイフと有刺鉄線で変形させた刃物は、槍に匹敵するくらいの極めて鋭い棘と化す。その棘は縦状に変化し、宝具発動を口にするよりも早く黒正輝の身体中に突き刺さる。全方位による散らばった棘は弾丸のような素早さで串刺しにした。

 

棘が邪魔なせいで宝具を出す構えもできず、そのまま剣で身体を支えることしかできない。

 

「防ぐ必要はない、発動する前に潰せば良い」

 

そして、正輝は3rdフォームになって以降、発動し続けているBLACK EYESは目にした能力、技の攻撃力分を換算する。白い目で見た力を剣に流し込み、目は黒へと元通りになる。

 

よって、

最後の劔+(偽・螺旋剣、約束された勝利の剣、王の財宝による宝剣宝槍および銃火器、天地乖離す開闢の星(発動時による平均的な攻撃力)が放たれる剣圧に加わる。

 

 

 

ーーーー最期の劔(ディ・エンド・オブ・ソード)

 

最後の劔とは異なり、真の神器の名を叫ぶ。

拘束状態に、防御と空間移動による回避が不可能な破壊力と攻撃範囲。

黒正輝は完全に詰んだ。

 

『威力、測定不能。超広範囲及び空間属性の無力化により回避、防御、反射…不可能』

 

いくつもの宝具の力を換算させて放った黒い剣圧の破壊力は凄まじかった。黒正輝が用意した空間に亀裂を作ったものも飲み込み、身動きのとれない黒正輝は逃げる事も防ぐ事も出来ない。アイアスの盾は全方位からの楔のせいでそもそも腕をあげることもままならず、シャドーで緊急脱出しても範囲が広すぎて巻き込まれる。

 

黒騎士は押し返していたが、黒正輝の場合だと攻撃を防ききれずに彼はそのまま消えていった。

 

「やっと…終わったのか。にしても、あれが通用しなかったらガチで詰んでたぞ…」

 

黒正輝を撃破しても正輝の身体は疲労しきっていた。片手に持っている神器で身体を支えるのがやっとで、休憩するまでは座り込んで休むしかない。

 

彼はもう片方の手でポケットにある携帯を開くと、メールの件名には【黒正輝 撃破】というのが送られている。

 

「じゃあ、イリヤの元に行くか…黒正輝も倒したことだしっ…」

 

正輝は苦しみながらも、美遊達の方へと向かって歩く。が、進化して黒正輝を倒してもその後遺症として身体は震え、歩くのも引きずりながらだった。

 

*****

『2人とも生きていたんですね』

「まさか黒正輝ってのが何人も襲ってくるわ。本当に危なかったわよっ⁉︎」

ですが、消えたということは美遊が本体をやったというのですね?」

 

こうして全7種類のクラスカードを回収し、文字通り達成することができた。凛とルヴィアは分身の黒正輝に襲撃され、何とか身を守ろうとしてたが、突然分身体が消えたことから2人は無事にイリヤ達に会えた。

 

「それもそうだけど…なんでもう1人イリヤがいるのと、倒したはずのバーサーカーがいるのよっ‼︎」

「えーっと…説明するにも色々とあって。とゆうより、私達も2人と出会ったのは本当に唐突だったし」

「こんにちは。凛と…ルヴィアさんだっけ?」

 

イリヤが2人もいること自体凛もルヴィアも驚いていたが、カード回収はできたのに何故か倒したはずのバーサーカーまで使役している。

「色々聞きたいことがあるけど、黒正輝の妨害は大丈夫だったのですか?」

「うん。協力してくれたおかげで何とかなったよ」

2人とも突っ込みどころが多過ぎて、一体何があったのかを理解しようとしてたが、もう1人の方のイリヤについては後回しにしてもう一つの脅威である黒正輝と正輝のことを聞いた。

「…ところで、黒正輝は美遊が倒したのですか?分身がいつの間に消えたから」

「いや、私と2人のイリヤで最後のバーサーカーだけだったの?」

「え?では誰が…」

「ゲホッゴホッ‼︎‼︎」

 

ここに来るまでの間、正輝は自分の身体がボロボロになっているのに気がついてなかった。血反吐を吐きつつ、正輝はイリヤ達と再会する。

「ま、正輝さんっ…⁉︎」

「ハハッ…そりゃ、無茶したらそうなっちゃうよな。あと、とっくに終わってるし」

 

進化の代償は、全く安くない。BLUEやフォームシステムで身体は全回復できても精神までは治らない。

正輝の意識は朦朧とし、倒れてしまった。

 

「正輝さんっ‼︎」

 

ルビーが正輝の身体を調べている。外傷に問題はないが、精神的な面に負担がかかり過ぎて体内の循環が酷いことになっている。

 

『体の内側がボロボロになって、このままだと大量出血で死んでしまいますっ!』

正輝の状態を見ているがどこにも外傷はない。斬られて血を噴出したわけでもないのに、血が減ってきている。

「内側って…どうして」

「こうして何度も血反吐を吐きながらも、血を流しすぎてるのよっ!

このままだと死んでしまうわ!」

『凛さん!ルヴィアさんっ !』

「分かってますわ!」

 

凛達は所持している宝石を正輝の治療だけに使用する。しかし、

 

「魔術で治せるの⁉︎そもそも血が足りないんじゃ意味が」

『精神疲労の回復と内側の修復です!血の問題は応急処置を済ませてから』

「駄目っ…宝石が足りない。さっきの戦闘のせいで治療するにしてもこれじゃ足りないわよっ⁉︎」

「そんな…このままじゃ」

正輝が死んでしまう。

イリヤを助け、為すべきことを果たしたのに彼はまた最後まで迷惑をかけた。みんなが困っていると、イリヤが持っている大量の宝石を差し出す。

「これで足りる?」

「…⁉︎これなら問題ないわっ!」

「すぐに彼を治療しますよ!」

 

カード回収の報告もしたいのは山程だが、前回身体が動けなくなって全身筋肉痛になっても放置していたが、目の前で懸命に戦って死にそうになっている正輝を見捨てるほど2人の性根は腐っていない。

 

「あの…どうして私達を、助けて「だって正輝はここで世話になってるって聞いたから」え?そんなのこっちは聞いてないけど…」

「あれ?おかしいな、だって正輝はここの世界のことも仕事で私にも色々と話してたんだけど。まぁ、いいか」

 

正輝のことで話の食い違いが起きているが、ひとまずイリヤと美遊の2人と、正輝の命を助けてくれたイリヤ及びバーサーカーに感謝するしかなかった。この事態を凛とルヴィアだけでは、間違いなく達成することはできなかったのだから。

 

『いやー、こんなこともあるんですね。瓜二つのイリヤさんが存在しているだなんて』

「うん、でももう一人の私は雰囲気が違うのかな…」

(みんなして、何の話をして、んだろ…)

 

正輝はみんなの話し声が聞こえないまま急激な目眩に襲われ、貧血に晒されている。意識が朦朧してそのまま気絶し、血を流して倒れた後のことなど全く覚えていなかった。彼はイリヤ達がこうして生きてることに安堵していたが、そこにイリヤが二人いることも分からないまま目を閉じた。

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