麻紀の方は着々と復讐のための準備を進めていた。誠達を連れて、船内へ転移して帰る。
「さて、ここが僕の船…ん⁉︎うわっ‼︎」
イリヤの世界から帰って麻紀の船で待っていた赤ロープは、強制的にクリスタルで封じ込めた。言葉、世界、誠の三人をまず生きたまま封印され、時間を止められたかのように動けない状態になっている。黄ロープが三人の他に連れてきた人達も同様に、その状態のままになっていた。
『黄色ロープ、こんな連中を仲間に勧誘するとは思わなかったぞ…頭でも湧いてるのか』
『えー、赤ロープくん。何やってんのさーせーっかく仲間を連れてきたのに』
「そうだよ!戦力がまた集まったんだよ!なのになんでその邪魔をするんだい⁉︎」
もしこんな人達を決戦編に持ち込んだら、船から脱走してなのはのいる世界で殺人沙汰諸々の犯罪が同時多発しかねない。
だから、赤ロープは忠告した。
『おい黄色ロープ、簡潔にこう言えば分かってくれるか?
お前はその疫病達のせいで【舞台】を汚すつもりか?』
『…その可能性があるってこと?』
『これ以上ないくらいの取り返しのつかない程にな。少なくとも管理しきれないくらいに』
伊藤誠達をそこに連れて行ってから、黄色ロープの舞台が酷くなることを。
『麻紀くん』
「な、なんだい」
『さっき勧誘した仲間は…今のところはアテにしない方が良いかな。ちょっとばかし赤ロープに手綱を回すから今は諦めてくれ』
仲間に入れて急に諦めろと言われた麻紀は、表情が硬くなったまま止まった。今のメンバーじゃ勝ち目が無いからと、何人も集めて力を合わせて復讐を成し遂げようとのことだったのに。
「え、ええっ…ええっ⁉︎でもさっきまで仮面ライダーの力を与えるとか」
『いいから俺の話を黙って聞く』
「え、あっ、あのっ…」
一旦少し時間を置くと、黄ロープは悲みつつ肩を震えている。
その様子に麻紀が驚いて、心配していた。
『うっ、ううううっ…本当に、ほんっとととうううに申し訳ない‼︎‼︎』
「⁉︎どうしたんだい清き親友!そこまで泣いて謝らなくとも」
『僕らは完全に見誤り、間違ってしまったっ‼︎彼女らは協力する気もなく、利害の一致でさえも手を貸してくれないだろう‼︎‼︎このままだと、仲間の士気を減らしてしまう‼︎‼︎』
「え、えええっ⁉︎」
見誤った、士気が減るという理由だけで力添えができないと黄ロープは言ったが、それならば勧誘しなければ良いだけの話。それなのに黄ロープは、こう言った歪な人間関係のある世界に侵入したのだ。
そんな話を聞いている赤ロープは悲しんでいるような演技をしていることが目に見えているので、黄ロープはそう言いつつ企みを考えている。どちらにしても、
(ま、いようがいまいが…とっくに船内は殺伐としてるんだがな)
リアス達の裏切りや誠治の死が発生、更には麻紀が別の意味で狂人に変貌し、次から次へと船に人員を勧誘している。
当麻達でも、収集できないくらいにまでに。
「そんなっ…」
『まー気にするなよ!赤ロープくんも君の復讐の援助をしてくれるらしくてさ!
どうやら…その代わりとして強力な助っ人と道具を用意してくれたんだって!』
「なんだって⁉︎それは本当かいっ‼︎」
『だから君は自分の部屋に帰って、安心して俺達の吉報を快く待っててくれっ!』
「うん、分かったよ!」
それを聞いた麻紀が上機嫌なまま、安心して自室に戻ると、二人だけになった黄色ロープは赤ロープに質問した。せっかく手に入れた仲間を使えないようにすることに、黄ロープは悲しむというよりも、イラついた声を出している。
『…で?一体どう言うつもりなのかな?舞台を汚すのは嫌だけど、君も君で唐突だよね。先にメールでも送ってくれりゃ、俺もそんなことしなかったのに』
『しなかった?そもそもあんな世界に介入して仲間にすること自体…正気の沙汰とは思えない。一体何考えてるんだお前は…最悪1stにまで目をつけられる羽目になるぞ?
あの主人公、こっちで調べたが幼女だろうとこの男が好意を持ってしまえば容赦しない屑だからな。何のためのいがみ合いだ…兎に角。伊藤誠、西園寺世界、桂言葉その他諸々の何名かの管理を俺がするから、こっちの指示以外呼び出すのは断固厳禁だからな。麻紀の携帯で呼び出しても出来ないようになっているから諦めろ。
こいつらの活用方法については、こっちで考えておく』
彼らの管理は赤ロープがやることとなった。
一人ずつ尋問し、協力できるように考えておくと交渉している。
『あぁなるほど!モンスターボールみたいな感じってわけね‼︎』
『そうしなかったら、こいつら纏めて放し飼いにしたら行動次第でロクなことにならないぞ。俺が事前に準備してやるから、頼むからお前は今いる連中の手綱を握っておけよ?
いいな?』
最後の部分だけを強めに発言し、黄ロープがこれ以上余計な事をさせまいと強く念を押す。
『あーもー、わかった、わーったよ。しょうがないなー…んじゃスクールデイズの管理はちょっとばかし君に任せるから…忠告は凄く感謝するよ。んでもさー、それだけじゃ物足りないんだよね。
助力してくれるんだから、何かあるんだろ?』
黄ロープは転移魔法で端末を取り出し、その画面を見せると【ゼルダの伝説 風のタクト】と表示されている。その世界は正輝と嶺の二人と出会う前に麗華が行っていた世界だった。
『ハァ…お前またっ…確か2ndがまだ『正常』だった頃に行ってた世界だったな?』
『そうそう。彼は野放しにしておいたけど…もう絡ませても面白いからね。
魔物とかいたし…ところで、何やってんの?』
『まぁ、ちょっとばかし【決戦編】にはこの女に試させようと思ってな』
赤ロープは結晶化されている桂言葉のクリスタルに手を当てている。もう片方の手にはカードは、バーサーカーのクラスカードを持っていた。それを使う事で【ヘラクレス】に変身するのか、或いは別の英霊になるのかは所持している赤ロープにしかわからない。
『決戦編は指揮をとるのはお前だけじゃなくて俺も参加させてもらうからな。麻紀とお前が誠達を諦める代わりとしては十分じゃないのか?それと、仮面ライダーの力も渡すんだよな?』
『もちのロンですよー。2ndもまたルールには従ってもらおうかなー?あっちにもちっこいリンクの主人公がいたよねー…仲間はずれはいけねーだろ?』
かつて岩谷正輝が衛宮士郎、鹿目まどか、そして立花響といった介入世界の各主人公を必ずを連れて行かなくてはいけないという規約の通りに。
*****
誠達を見送りにされてしまったとはいえ、赤ロープまで協力してくれることにより一層誠治を殺した張本人である綺羅と命を狙おうとした魅杏を殺すことが出来るようになる。
上条達はずっと部屋にいる。他の世界に転移して問題を解決していくというものではない。
ーーー麻紀は誠治の死からもうこの調子になっていた
『上条達四人は、すぐ司令室に来てくれ』
麻紀が自分の部屋からそれぞれの場所に声が届くように船を改造している。制限を掛けなければ、道中に背後から襲われてもおかしくないからだ。
上条達は麻紀のところへと向かっている。
「よく来てくれたよ、待っていた」
「…何が待っていただ」
四人とも麻紀の顔を見て、嫌々そうな顔をしていた。一人で世界に転移して仲間という駒を集めている。誰を集めているのかは当麻達は知らないが、何か碌でもない事を企んでいるというのは考えていた。
「お前、今度は何を企んでいるんだよ」
「やだなぁ。まるで僕が悪人のようじゃないか?」
「あんたのそれが今まさに悪人が行おうとしている所業なんだけど?」
当麻達は麻紀が一体何をしているのかは何も知らせていない。麻紀の朗報を聞いたところで当麻達には何の得にもならなかった。正輝達とかの協力者に麻紀が何をしているのかを連絡できればともかく、船のシステムのせいで連絡が出来ないようにされている。
「…一つ行っておくが死んでいった誠治の復讐でも企てているのか?綺羅っていう人を殺して…そんなことしたら今度こそ俺達は」
「無駄だよ。たとえ、僕の離反をしたところで楽園を倒すこともままならない君達は集中砲火を受ける。
楽園だけじゃなくて、僕らの仲間にもね。
こいつらは裏切り者だと。命令権を幻想殺しで解除してもいいけど、僕には頼りになる強力な助っ人がいるのさ?
それに仮に出ていったところで、他に所属しても生き残る為の人殺し、要するに楽園討伐として当然行わなければならない」
あのまま誠治を正輝に渡せば、前までの元の麻紀に戻っていただろう。それでもあの性格だから当麻達は苦労するが、今の状態よりは幾分かマシだった。
上条達にとって、今の麻紀は非情で狂っており、気に入らなかった。前に上条が麻紀に殴っても、彼の考えや行動が全く更生することはなかった。むしろ当麻が殴ったことで、悪化させてしまった。
「それは置いておいて、仲間がまた増えたんだ」
「紹介するって…貴方以外誰もいないじゃない」
「何言ってるんだ、野蛮すぎるから部屋に放り込んでるよ。いいかい、僕らにはまだまだ多くの仲間が必要なんだ。正義を執行するためには目的を達成することが大事なことなんだ」
「…貴方の自分勝手な復讐を遂行し、成功させるための間違いでなくて?」
黒子が麻紀に対して呟く。
仲間が増えたと言っても、この場に当麻達以外は誰も連れて行こうとしない。その話を半信半疑で聞こうとしてるものの、美琴は麻紀の言葉に苛ついている。
麻紀は黒子の返答を無視して、そのまま話を続けている。
「これは清き親友からの頼みだよ。その人の言い分を聞くのはごく当たり前じゃないか?」
「で、結局俺達を呼んでどうしたかったんだよ?仲間が増えたって知らせだけか…」
「それだけじゃないよ。実は清き親友が調査してくれたおかげで新しい情報を見つけたんだ」
麻紀は、これから行うであろう決戦編のルールの一部分を紙で印刷して、その紙を配って当麻達に見せる。
それは、四人にとって目を疑うかのような内容だった。
【ルール:リーダーは、半日だけ自分の仲間一人だけの五感を無理矢理ジャックすることができる】
*****
一方のリアス側は、麻紀にこき使われ使える人材を勧誘して船に乗せるようにしていた。
実力はあのライザーのレーティングゲーム以降も伸びしろに向かいつつあった。ただし、一番問題なのは眷属内の隔たりがあること。小猫や朱乃、アーシアの三人は特に何も問題はなかったものの、木場と一誠の二人にはあの事件以降変化があった。
木場は、正輝達の仲間に入るセイバーと出会って以降リアス達に黙って一人でに麻紀となんらかの交渉をしてきたり、ライザーの眷属を相手するときも敵を纏めて一掃していた。
強さの秘訣も黙秘なまま、リアスの指示に従うこともあまりなく、ほとんど独断行動をすることが多くなっている。
「それだけならもういいでしょうか?最悪眷属に外してもらっても、僕は構いません」
「祐斗!」
彼の内にある殺気が尋常でなく、彼の頭にはエクスカリバーに対する怒りで頭が一杯になっている。リアス側の要件を聞き入れているとはいえ、セイバーと彼女の持っていた聖剣の出会いが彼の憎悪を肥大化させている。
一方の一誠は麻紀の異様な変貌に身を引いて恐れてしまった。前までは勝気で、レイナーレと擁護している正輝をぶちのめしたいと単純だったが、もうそれどころではない。一つの憎しみのせいで、リアスは眷属を守れなかった麻紀を敵視して殺そうとした。その結果、堕天使を憎むどころか他のところまでリアス達を敵視されて泥沼化している。このまま麻紀がやりきるところまでいったら、本当に不味い方へ向かってしまうと。
『一誠にはあの使えない艦娘は好き放題やっていいよ?あ、てことはつまり君の言うハーレム王になれるんじゃないの?艦娘は幾らでもいるんだから、増やすこともできるし。
良かったじゃん!夢が叶えられて‼︎』
『ふざけんな!こんなんで俺が納得できるわけねぇだろ!』
艤装が使えなくなった小さい子や中ぐらいの子が沢山いた。ただ単にどんな手段でもハーレム王になりたかった一誠がもし何も知らなかったら喜んで受けていただろう。
しかし、こればかりは一誠でも良心を痛んだ。身体中は傷まみれ、二度と戦えなくなった艦娘が送りつけられた。
身体的の機能は問題なく、戦えなくなった艦娘だけが取り残されている。
「何考えてんだ、麻紀のやつ…俺達に散々命令権で指示しやがって。木場も俺達の話よりも、復讐のためとか言って麻紀の話に耳を傾けるようになってきてるし…それで、俺宛に送りつけられたのがこいつらかなのかよ。一体何がしてぇんだよあいつはっ⁉︎誠治が死んで以来…あいつの考えてること、本当に全くわかんなくなっちまったし…知らないうちに他の人まで何人も勧誘してやがる」
余りにも生々しく、見るに堪えない光景に気分を悪くした。身体に関しては問題なかったが、心までは壊れそうな子達ばかりだった。
一誠も、本当にゲスみたいに無理矢理手を出すのも彼自身目覚めが悪い。
「や、やめてください…私が代わりにやりますから!どうかこの子達には」
(これじゃあまるで…俺がやったかのようじゃねぇかよ)
軽巡洋艦の艦娘が庇う。彼女は泣きながらも一誠の目の前で服を脱ごうとする。彼女の表情もまた酷く悲しんでおり、その瞳は怯えている。
弱り切っていた艦娘達らは兵藤一誠に、人間達に恐れているばかりたった。
「しねぇよ…」
「…え?」
「もういいから、さっさと失せろよっ‼︎」
そんな姿を見て、一誠は手を出そうとはしなかった。いつもは服を脱がせて恥ずかしがっている女の破廉恥な姿を見たいと欲求不満だったのに、心が病んでいる女に悪戯するようなことは流石に出来ない。
「一体何やってんだよ…俺」
親友の誠司を殺したのは綺羅という女ではあるが、その引き金を引いたのは他の誰でもない自分達のせいだったことも。もし生かしていれば、裏切るようなことをしていなければ、彼は仲間達にもっとマシな指揮系統や待遇をしていたかもしれない。
一誠はハーレム王になるという気持ちは確かにあったものの、本心ではこんな方法で手に入れたいのではない。麻紀からのプレゼントで見ず知らずの女を手に入れたところで胸糞悪くなるだけだった。
悪魔に転生し、リアス眷属と共に行動してハーレム王になる。
今まで学園ではエロガキ扱いされていたわけだが、弱っている女に力を使って性的暴行をするような性根の腐ったことをしようとは思っていない。なのに一誠のことをどうでも良くなった麻紀の方からは使われる代わりに使えない艦娘をあげるからという暴挙に出ている。
(くそっ…)
貰う艦娘達を諦めて、白い髪のした背の低い少女がそっと近づこうとしている。祐斗がおかしくなったせいで、子猫と話せるのは今の一誠とアーシアぐらいしか話す相手がいなかった。
「…少し、一誠先輩のこと見直しました」
「一誠さんっ!」
「小猫ちゃん、アーシア…どうして」
当麻の後を追って見ていた子猫が、先程を見てああいった行動に出たのに驚いた。麻紀のせいで悠人の暴走だけではなく朱乃やリアスも利用されていることに苛々していた。プライドが傷つけられ、今ではもう麻紀に逆らうこともできなくなっている。
「一誠先輩も、私とアーシア先輩を置き去りにしそうだったから…」
「何言ってんだよ小猫ちゃん!そんなことするわけが…」
「なら…約束してくれませんか。
一誠先輩も…祐斗先輩のようにならないでください。一誠先輩にまであんな風になったら私達はっ…」
(俺は…)
試練編の時に真相を知らないまま、船から出てレイナーレをぶちのめしたいと本気でキレていたあの頃を思い出す。駆けつけだ正輝に反撃され、二度も死ぬことになってしまった。部長を襲われ、復讐心で怒りに飲まれ、みんなして自分を見失ったせいで自分達もまた麻紀の計画の一部にされている。
(部長…俺、どうしたら良かったんですか)
麻紀には命令権としてまず捕らえられた人達に攻撃できないように指示されているが、捕らえる側のリアス達は別。
そのまま付き従えば、付いていっている他の眷属は彼女の知らぬ間に負の連鎖を背負うこととなる。しかし、ずっと部長であるリアスを一番に考えていた彼は、もうどうして良いのか何も思いつかず、分からないまま悩むことしかできなかった。
*****
『彼らこそが!僕と共に歩む新たな希望だよ‼︎』
「ふざけんな!」
美琴の方は麻紀の行動に苛々していた怒りが爆発した。
それを落ち着かせようと黒子が困りつつも側にいく。
「何が希望よ…あそこまで堕ちていたなんて」
今の麻紀を当麻達で改心させることは全く以って皆無だった。大量の人材を船に連れ込んで、復讐のために人を騙している詐欺師となってしまった。巻き込まれた人達は帰ろうにも帰れない状態で、騙したなと言ったところで帰ることはできない。なにせ、主導権を握っているのは船を管理している麻紀なのだから転移装置も携帯も彼が管理しているのだから騙された他の人達は背くことができない。
「あいつっ…一体何がしたいわけっ⁉︎ちょっと今すぐにでもぶっ飛ばしてくる‼︎」
「落ち着いてください、お姉さま。怒る気持ちは分かりますが…」
「だってあんなの!」
今の彼女は物に八つ当たりしていた。美琴が下手に麻紀を攻撃した場合、彼が寄せ集めた仲間が命令権を使って上条達を数の暴力で襲うことだってある。
彼が世界をめぐって手に入れた戦力を集めて、何か恐ろしいことを考えていた。
「一体どういう神経してんのあいつは‼︎」
部屋から出ようとしたら、船内でもいがみ合って戦闘している状態になる。部屋にこもって絶望する人達や、ここから出せ、元いた世界に帰らせろと叫んでいる。
その争いに麻紀は止めようと動かずに、何も対処しないまま勝手にやれという状態。
「少し、一人にしてもらえないか…気持ちの整理が出来てない」
「当麻…」
今の上条は、本当に落ち込んでばかりだった。リアス達の方は力ある人を誘惑し、悪魔にして勧誘していたが、麻紀の方に関してはもっとタチが悪すぎる。誰であろうと復讐の足かせになってくれるのならば、所構わず遠慮なしに船に詰め込んでいる。
最悪力づくでも。
連れていかれた人が進んで協力できるのかなんて分からないのに。もう真面な思考を持っているのは、当麻達だけしかいなかった。
*****
美琴、黒子、インデックスの三人はすでに寝ており、当麻は一人会議室へと向かっていった。
黄ロープからメールで、会議室に来るように言われ、もし破ったら裏切り者として船内にある条件を解除した後、四人を指名手配して潰すよう命じるという脅しをかけた。
『…はぁい、当麻くぅん。
呼ばれて出てきてジャジャジャジャーンってな』
「お前が…麻紀をあんな風にして、唆しているのか?」
黄色ローブは何処ぞのピエロの真似事をするかのように当麻に話しかける。当麻は誠治の死だけではなく彼らの存在も麻紀を言いくるめて、復讐に面白半分で加担している。
それを止めなくてはならなかったが、もうぶん殴っても彼はどうにもならない。当麻は、悔やむように左手を強く握りしめている。
(クソっ…!)
こうして怒っているのは、船内を掻き乱すよう誘導している黄ロープだけではない。
誠司の死と黄ロープの言葉に狂乱している麻紀のこと、身勝手なリアス達のこと、何も出来ずに無力なままな自分にも。
『いやぁ、気苦労してるねー。初めは呆れられ、口先だけの役立たず。かつては…リーダー的に全くもって無能な男だった。
しかしっ!親友の死に悲しみから麗華をブッ殺すために敵として復讐心に燃えるダークホース‼︎その名も池野麻紀‼︎
前の彼は死に絶え、誠治の死を抱いて生まれ変わってこうしてじゃじゃ馬のように前進しているのさ!無能だった彼が、今じゃ能動的に動き、着実に計画を積み立てている。おぉ!まるで君達が望んでいた有能なリーダーじゃないか‼︎
そんな彼にお前らは一体どこに不満、不備があるわけ?事情もよくわかんない女の子だって緊急同調して【私もっ!】ってほざくかもしれねーよ』
今の麻紀は確かに目的の為に向上しようとしている。ただし、麻紀の行動が仲間の為ではなく、自分の復讐のために自分の手ではなく無関係な人達を利用しているといった姑息で卑怯な点を除けば。
『それにさぁ…口だけしか動かなかった無能が今では組織のためにちゃんと活動し、貢献してるんじゃないか?あの一件で復讐を決めた彼は自分だけじゃ足りないからこうして仲間を集めて尽力を尽くしている。
あれ?ちゃんと貢献してるじゃん!
おめでとう!これで彼は正義厨の役立たずからアベンジャー麻紀にランクアップしたじゃないか‼︎』
「あれのどこに貢献があるんだよ‼︎
あいつ自身の復讐のために…今度は仲間とは言いつつどれだけの無関係の人を巻き込んで、騙されて、元の世界に帰りたいって思ってても帰れない人の気持ちも知らずにっ…今でもあいつに消耗品のような扱いを受けてるかもしれないのにっ…‼︎」
『でもさー、あーしないとリアスとその眷属ごときで正輝や嶺に打ち勝つことなんて到底無理な話なわけなのよ。そこで麻紀は人材を増やすためにどんなものが必要なのかを考え抜いて人選された多くの勇気ある戦士達を連れてきたのさ‼︎
当麻くん、これはとっても必要なことなんだよ。
集める際の問題の過程を一気に吹っ飛ばして、いきなり仲間にするその勇敢孤高たる所業‼︎他の人からはまたこのパターンだと呆れながらも言われるかもしれない…しかし!麻紀の大いなる寛大さと本当の目的、そして戦いの場で叫ぶ彼の執念と咆哮を見て、聞いて、仲間達は彼の意向に感動をして、彼の背中と生きがいを見て喜びながらこう言われるのさ‼︎
【でも、なんかすげぇ‼︎】ってさ。
上条くん…そもそも無関係な連中のことを心配して何になるわけ?一本の矢でも三本の矢集めれば何とやらってなるでしょ?戦争だって数の暴力たったらどうにかなるっていう事例もあったし。
え、そんなことできないって?
んなもん、所詮モブキャラだろ?いちいち気にしてたらキリないし、考えたところでストレスで頭が禿げちまう』
当麻は無理矢理連れてこられて嘆いている彼らのことを侮辱したことに頭にきて、とっさに幻想殺しのある左手で思いっきりぶん殴ろうとするが、黄ロープはそれを回避する。
「もういっぺん言ってみろっ…テメェ‼︎‼︎」
『全く…暴力はいけませんねぇ。そんなことじゃまた前と同じように救おうとするどころか、奈落の底に叩き落としかねないのです。ですが笑えますねぇ…お説教でどうにかなると思っていたのにこのザマ。君が殴るべき、いや暴力を振るっていい相手は殺者の楽園と、誠司の仇である2ndの綺羅…そんでもって人間を見下して差別しているリアス達や艦娘といったような人間差別いや…人種差別するような異族を相手にそういったことをするべきでしょうが。熱くなるのは青春だけど、顔をトマトにして殴るだけじゃ正当化しないって麻紀に教わったんじゃなかったの?
君のお得意の説教と男女平等パンチでも麻紀を改心させることができなくて、さぞ君は悔しいでしょねぇ!』
『迷っているんだろう?君の進べき方法、理念…今までの道が本当に正しかったのか?誠治を助けることができなかったっていう自分のその無力さに。
おかげで、今この船にいる連中が一体どうなっているのか全くわからないまま!まるでホイップクリームの上にめっちゃ肉の濃い油と炭酸飲料水をぶち込んだ改悪版ドロリッチみたいな振っても降らなくても、吸ったところでドロッドロのまっずい味にしかならない結果になったねぇ…?
それとも殴られた麻紀に批判されたからかな?』
「違う、俺はっ…!」
『それとも…壊れた電化製品をひとまず叩けば治るって思ってたのかな?君の拳じゃ今の彼には届かない、とゆうより殴って済むほど簡単な問題じゃなくなってんのはもうわかってるよね?
それと…君のような能天気な奴は、御坂美琴やインデックスのような大事な人を殺されでもしない限りは彼のことを一生理解できないだろうね?まぁ上条さんが説得したところで…まぁ、うん、アレだ!お前に俺の何がわかる!ってパターンだし。
だからこんなことになってしまった君の責任でもあるんでしょ?
お前は、こんなはずじゃないって悔やんでるよね?
君達は今の麻紀を許さないって思ってんだろうけど…それは違うよなぁ?
そもそもの話、さ。
テメェが麻紀に説教する云々以前に、麻紀が大事にしている誠司を保護しつつアホのリアス達を男女平等パンチでぶん殴って制圧しなかったからこうなるんだよバーカ』
そう言って黄ロープは転移して去った。
リアス達の裏切りもそうだが誠治の死の方も未然に防げたかもしれなかった。正輝と手を組んで麗華を追い込めば、彼と対立する必要もなかった。
「…一体どうしたら良かったんだ。
俺の言葉も、この手も、無駄だっていうのかよ…」
最後に黄ロープから言い残した言葉だけが、当麻の心に痛感した。こんな事態になったのは麻紀について何も分かってなかったのも、リアス達が危なげなことを考えていることも、そして何もしていなかった自分達にも原因はある。
【結局この船内にいるみんな、加害者も被害者も少なからず過ちを犯したことには変わりなかった】