Justice中章:歌姫と蘇生と復讐と   作:斬刄

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逃避への誘惑

まず、規律として新たに制度をすぐに出すという竹成達の判断は正しかった。今でもレッドラインは迫りつつあるのに、上に立つものとその周りが機能しておらず、誰も何も考えないまま怯えて暮らし、みんなの不安を募らせる方がよほど不味い。

 

『…後は提案が左右するというわけか』

「どちらにせよヴォイドによって支配されることになってしまう。

そこんところは、まぁ無理もないがな…」

 

可能であれば協力者側の資材も譲渡するという嬉しい情報もある。制度を決めた以上、躊躇いと後悔のないようにやっていくしかない。

 

そして、竹成は今後のことで忠告も言われた。

 

『麻紀…奴らが動くと感じたらすぐに行動しろ。対処が遅れば、それが命取りになる。

感づく前には必ず増援も用意しておけ。

勿論、連絡手段が止められる前にだ

 

あの黄色ロープが、麻紀よりも極めて危険な存在だ』

 

正輝達の件で、対処が遅れれば命取りとなる。誰にも邪魔されることなく思い通りにしようという証拠であり、もし黄色ロープが連絡手段を封じられることになれば、それは最悪な事態が起きていることを意味する。

竹成もそれを理解しつつ、協力者との連絡を終えると明日の為に眠りにつく。

 

次の日

色々揉めていた制度の発表を設けた。昨晩に集達が議論を重ねた結果として用意した制度を明かす。朝に生徒達全員を集め、聞こえるように集がマイクを使って発表する。

 

【ヴォイド制度】という取り締まりとして、この状況化で優位に使えるヴォイドを保持していく。たとえ、ランクの低いものであっても武器の性能次第では重宝される。

 

集は八尋の案ではなく、竹成の案を使った。

この決断にどう影響するかはまだ分からないが、何も決められないままよりは幾分かマシだった。内容はヴォイドランク制といった区別化を緩和化させたものだが、生徒達の不満も案を聞いているうちにそれなりにはあった。

 

勿論、生徒一人の自由時間をレッドライン解放のためとしてその分拘束されるからだ。生徒達全員には自分自身のヴォイドの説明が記載されている紙を配布するが、紙自体にはヴォイドの性能しか分からないようにする。

 

一人一人のランクを記せば、それが原因となって自棄を起こす人が大勢出てくる。

 

ランクヴォイド制は完全に集が持つヴォイドというツールで力でレッドライン脱出のために完全支配しようという形だが、一人一人のコントロールしつつ役割をハッキリとさせていく。

 

なんとかしてクラスの人達同士は知恵を絞り、案を出し合って有効性を見出すようにしなければ意味はない。そうすることで活路を見出し、現状を打破できるものであればそれを採用していく。

 

出来なければ、全員がこの学校での生活を維持することはできない。集の発表により学内のローカルネットには、不安と辛辣な言葉が飛び交っていた。

 

ーなんでそんな面倒な制度を

ーーどうせ上手くいかないだろ

ーーーまた厳しくなるの?

ーーーーしっかりしてくれよ生徒会

 

これなら八尋のランクヴォイド制のように分かりやすく白黒はっきりとできる区別、という方法が正しかったのだろうかと。

 

ランク制度で決めるのではなく、実力主義としてのし上がることができるように用意した。ランクもヴォイドの性能も見込めない者の対策としてはヴォイド以外の役割分担を貸すこととなる。

また、ワクチンや武器弾薬については遠征という学校の外に出て、病院と施設にあるワクチンや資源を入手していく。他の学校からの生徒も同じことも当然考えるため、生き残る為に力づくで奪い奪われることもある。

 

(この状況で全員が幸せは土台無理だ…出来ることをするしかねぇ)

 

人に見つからず早めに資源を回収し、見つかったらすぐさま撤退すること。

 

制服を見られて調べたりしても不味いため夜に動く場合は必ず黒服、朝か夕方頃に動く場合は帽子と身軽な格好を着用させる。

 

ワクチンの減少はなるべく抑えられ、必要な人材も麻紀が動く前に確保していく。学内のローカルネットは竹成と生徒2名が監視し、怪しい情報をチェックしている。区別のない制度なため、管理はかなり徹底していた。

 

*****

 

「遠征のおかげで、ワクチン量がなんとかなりそうだな」

「武器弾薬は?」

「一応、ノルマ分は既に達成している」

 

竹成の働きで、分身体の狼を飛ばしていた。

本体からの距離は制限されているが、それ以外の水中や狭い場所の捜索にはうってつけだった。

 

「俺のヴォイドである狼も遠征で活躍してるんだ。脱出の計画もなるべく早めに済ませるに越したことはない」

「でも、竹成さんは働きすぎだよ」

 

ヴォイドを併用しつつ、竹成は電話を欠かさず連絡を取っていく。

情報聴取の中心として働いている。

 

「言ったろ、俺も可能な限り尽力するってな」

 

竹成他の生徒達の点呼を取っていたが、人数が減っていることに気づく。ワクチンが確保できているのも一応それが理由だ。

 

(麻紀のやつ…こっちの生徒に手を出してるようだが…今のところは厳選してる方にはまだ手を出してなさそうだな)

 

 

正義側の結界に閉じ込めて、勧誘しているのだ。心が弱まっている彼らに付け入り、ウィルス感染と家に帰りたいという恐怖を麻紀達が利用している。

 

(こればっかりは黙った方がいいかもな…集と八尋辺りには言っておくが)

 

大規模に人数を集めているというわけでもないため、多少のことには目を瞑るしかなかった。彼らを集めてどうする気かなのかは、竹成には分からないがその理由を知るにはもう少し先の話となるだろう。

竹成も全生徒の管理ができないため、麻紀達が大きく行動しない限りは口を出すことはできなかった。

 

 

*****

 

双眼鏡をつけて見張っている人と、端末を操作して集と竹成にイラついている人がいた。

 

「チッ…気にくわないな」

「何が?」

 

苛々しているのはダテ眼鏡をかけていた難波広秀と、双眼鏡で見ているのはロン毛のかませ犬こと数藤隆臣。

二人は、のんびりと外の見張りをしていた。

過去に、葬儀社を差し出すというデマを知ったことで、その情報で生徒会長の座を引きずり落とそうとした。が、横から割って入ってきた集が解決したことで二人の信頼も落とされている。

 

今の二人の役目として警備員という形で、外側から学校に入ろうとする侵入者を見張る仕事をしていた。二人とも前科持ちとはいえ、ヴォイドランクの高さもあってか、過剰労働を強いらせなかった分まだマシだった。

 

「あの知らない男のこと?」

「部外者のやつがいきなり側近になってるんだぞ。明らかに怪しすぎる」

「でもさー、今の俺達って何もできなくなってるし」

 

それなりには上手くいっているはずだったのに、この学校で踏ん反り返っている集と、ポッと出での竹成という部外者の竹成もなにかと気に入らないと感じていた。ヴォイドの力というインチキでのし上がり、彼がみんなを導いていることに。どうせ隣についてる竹成も、どうせまたインチキで信頼を得ただけの男だと嫌悪する。

 

問題解決へと前進してはいるが、二人にとってつまらない展開ばかりで、だからと言って今となっては何もできないまま不満が募っていた。

 

『んっんー、足りませんなぁ…刺激が』

「⁉︎誰だ、貴様…‼︎」

 

そんな呟きを横で黄色ロープが聞いていた。

全く気づかなかった二人は黄色ロープから離れ、難波は懐に持っていた護身用の拳銃を構える。黄色ロープは銃口を向けられても動じることなく、そのまま立ち上がった。

 

「な、なんなんだよこいつっ‼

︎急に出てきやがったぞ!」

『まぁまぁ落ち着いて、二人ともステイステイ』

 

二人を落ち着かせようと近づくが、警戒心が和らげることはない。自分の身を守るために侵入者だと連絡しようとするが、

 

『はいストップ。それ以上はいけないよー。

自分の命が惜しくないならね』

「ぼ、僕らに何する気だ⁉︎」

『何もしないよ。ただ俺はちょーっと不満げな二人に交渉をしようかなーってことで』

 

黄色ロープは手を出すことなく、二人に事情を聞こうとしていた。侵入時による警報のアラームもならず、誰かもわからない相手との会話なんて信用できるわけがない。

 

『そもそも!学校というのは生徒達の青春を謳歌できる場所だっていうのに、こんな風に規則で自由を束縛されるなんて…なんとも悲しいねぇ。これじゃあシゲキックスをいくら噛んでも刺激が足りな過ぎて心のストレスが溜まっちゃうってばよ。何も言えずに味のないガムを食わされてるのと一緒だよー

 

だから同情してんだよー。

君達の不遇さに』

「な、何言ってんだこいつ…」

 

あまりのことに二人とも、頭が追いつけていけない。

 

『ねぇ君達、あんな亀みたいにノロノロと動くことしかできない連中よりもこの状況から一抜けして脱出したいと思わなーい?』

「なっ⁉︎」

「…何か知っているのか?」

『知ってるよ。教えてもらう代わりに、二人にちょーっと協力してもらいたいことがあるんだけどいい?』

 

誓約書と情報を交換することに、二人にある力を贈呈することとなった。黄色ロープにはいつの間にか紙とスーツケースを所持している。

 

『あいつらにやられたままじゃぁ…カッコつかないでしょ?』

スーツケースを置き、その上に紙とペンを用意して机がわりにした。二人は口の中にある唾を飲み込み、名前を書いてサインしようと手を出そうとするが踏みとどまる。この状況から抜け出せれるならと思っているが、そんなうまい話があるわけがないと。

「なぁ…やめたほうがいいぜ。こんな」

「だ、誰がお前の言うことな『ねぇ知ってる?毒には毒を持って制すようにって言葉あるのならさーっ…

 

インチキにはインチキぶつけば良くね?

君達だって…惨めなままじゃ終われないだろ?』⁉︎」

 

彼らにとって、他の連中に馬鹿にされたままこの学校から出る前に去っていくのも、上手くいっているはずなのにあの二人が悠々とやっていることに気に入らないのも事実だ。

 

「それじゃ、二人にはあることをやってもらおうか?」

 

フードに覆われて顔は見えないが、少なくとも二人の行動を見て密かに笑っていた。

 

 

*****

 

一週間後

 

学校の正門側で監視をしている生徒から連絡集達の元に届く。映像には男の姿が映っており、胸元には葬儀社のエンブレムが刻まれていた。

 

「アルゴ⁉︎」

 

集と綾瀬がその映像を凝視し、知り合いがやってきたことに驚く。竹成からしたら、名前を聞いても一体誰なのか分からず二人に聞く。

 

「なぁ、アルゴって誰だ?」

「私達と同じ葬儀社なの」

 

遠征中に発見し、彼を学校まで連れていく。

少なくとも集達からして彼が仲間であることは分かるが、肝心なのは彼が今のこの状況に納得してくれるかどうかが問題だった。

 

「警備及び遠征所属…縁川雅火、及び宝田律。お客様を連れてきました」

「ご苦労。ゆっくり休んでくれ」

 

人数不足だと掛け持ちする人もいるが、一人一人の許容を聞いた上で時間を決めている。

二人に不満はなく、仕事をこなしている。

 

会議室にいるのは、集達と竹成がいる。颯太は缶切りの仕事だけではなく、代理として竹成の仕事も地道にやっている。

「あの、竹成さん…これっ持ってきた」

「おう。ありがとう」

集は前回のことで颯太を気に食わないと考えており、お互いまだ距離をとっている。

颯太は集の顔色を見て怯えていた。

 

「久しぶりですねアルゴさん。

生きててよかったよ」

「あぁ…にしたって随分と物々しい様子だな。一応、話はそこの二人に聞かせてもらったぜ」

「この学校に制度が出来て、生徒達を統治しているからな。存亡がかかっている以上、みんなピリピリしている」

葬儀社に関与している集と綾瀬、つぐみの三人は笑って向かい入れている。が、初めて出会う八尋と竹成はアルゴのことを信用して良いのかどうか疑っていた。

 

「…ところで、この学校の生徒会長は供奉院 亞里沙って娘じゃねぇのか?」

「違うの、今の生徒会長は集よ」

 

生徒会長の座を降りる彼女から、今後生徒を導いている集の方が適任者だと認められている。ヴォイドの力が、この状況を突破できる活路だとこの学校内にいる誰もが思っている。

 

「彼女に何か用でもあるの?」

「爺様からその子を外に連れて帰るよう命令されている。なぁ、何処にいるんだ?」

 

その時、竹成のドライバーから連絡が来た。

連絡相手はちょっとした問題が生じているため、急ぎで来るように言われている。

 

「すまない。

ちょっと問題が発生した。

その話は移動しながらにしてくれ。集、八尋、楪、校条…付いてきてもらえないか?」

「…あぁ、分かったぜ」

 

移動の最中に何人かの生徒が集達に笑顔で挨拶している。二人とも返事を返すように答え、アルゴも周囲の環境を考えていることに関心はあった。

 

そして、連絡を取っていた生徒に接触し、事の事情を聞いていく。

「よう、指定された地域の散策は上手くいってるか?」

「それが、芳しくないようで」

「…ちょっと見せてみろ」

竹成に地図を見せると、確認済み、確認未完了、確認不可のマークが記されていた。

確認済みには具体的に何が入っていたのかの資源が記入されており、今でも探している最中だった。確認不可は輸送船や工場といった場所は潜水服といった準備しなければ回収できないものは竹成が担当している。

 

「ここの地域は俺がやっとく。移動が困難な場所なら必ず役に立てるはずだ。

それ以外は出来るよな」

「ありがとうございます」

「おい、何やって…⁉︎」

 

アルゴが映像を横目で見ると、そこには少年少女達が身軽な格好をしつつヴォイドと武器を常備していた。

 

「おい!こいつら全員、武装してるのかよ⁉︎」

「何か勘違いしているようだがよ…あいつらは、ちゃんとした同意の上で向かわせている」

「なん…だとっ⁉︎」

「これがその証拠だ。同意書の一部だけどな」

 

ちゃんとサインした上で彼らは動いていた。

遠征中に危険な事になっても、それでも問題ないと規約に書いている。

 

「それに、遠征の大部分は俺のヴォイドがやっている。遠いところからワクチンと、武器弾薬を回収してな。でも俺一人じゃ厳しいから、近隣の捜索には人手が必要なんだ」

「おい…それでもし襲われたら」

「まぁ確かに他の連中も、誰だってそうするだろ。生きるためには。

だから迅速にやらなくちゃいけない。

 

それに遠征も、俺から事前講習としてやらせてるけどな。マニュアルも渡してるから何も問題ない。

仮に同意したとしても一人一人に不満もあるかもしれないだろう。辞めたいと思っている人がいるなら、理不尽に強制労働させるつもりはなからな。

 

厳しいなら他の仕事を考えればいい。

役に立たないヴォイドを上手く使えるようにさせる頭脳派もいれば、武器管理や荷物運びの体力派もいる。

人にはやるべき役割がある。

淘汰される人をなるべく少なくするためにも俺達は努力している。

感染が少ないのも何よりの証拠だ。

 

奪われようとした時に、自分の身を必ず守らなくちゃいけない。

そのために必要なことだ」

 

アルゴからしたら納得は出来なくもないが、釈然とはしなかった。

強制的に戦わせているというわけではないが、それでも誰かがやるしかない。

集達のような葬儀社が危険を顧みず行くわけでもなく、寧ろ他の人に行かせてるようで不服ではあった。

だが、無闇に外に出して集をウィルスに感染させるわけにもいかなかった。

他の人達に任せるしかない。

 

「集、まさかお前こいつの言いなりに」

「違うよアルゴ。

僕が決めたことだ…他の誰でもない僕が。

この学校にいる全員の目の前で言ったんだ。

その為に、東京脱出を考えてる」

「私も、集のやりたいことを支えている」

 

前までは亜里沙がお爺さんが来てくれれば救いはあると言っていたのに、今となってはもうその願いが叶うことは叶わない。生きていくために、みんなが一丸となって乗り越えていく方針で考えていた。

 

「それに彼女のヴォイドランクが高い以上、簡単に渡すことはできない。

仮に一人だけ逃げても、その言葉を信用できるかすら分からない。

黙っていたらそれこそ制度の均衡が崩れる。

残念だが、分かってくれるよな」

竹成達側にも事情があるため、簡単に引き渡すわけにはいかなかった。高ランクなものもあるが、逃げていたことがバレれば学校内で不信感が生じてしまう。

「アルゴ!一体どこに」

「…俺の勝手だ」

亜里沙の居場所を聞くことなく、アルゴは勝手に何処かへ行ってしまった。

体制に多少は不服でもある様子で、これ以上聞いても無駄だと。

「…集、彼の見張り役を用意しておけ。

供奉院のもな」

「うん…」

 

*****

 

竹成は見張りに向かう前に、仲間を呼ぶようにする。

 

「今回も集達が危険な目にあったら、加勢してほしい。今日は多めに増やしている。もしかしたら…麻紀の連中が本格的に動きそうだからな」

「あぁ、分かった」

 

救援を呼び、竹成のいない時にも対応できるようにしていた。そうした理由は、まだ不信を持ったアルゴが勝手な事をして亜里沙を探し出そうとしているのではないかと疑っている。そしてその混乱に乗じて麻紀が動くのではないかと。

 

真司達は鏡から移動させ、総司達は別の場所で連絡していた。

連絡を取りつつちゃんと仕事をしているか見回り役を見ていると、二人の生徒か役割を放棄していた。

彼らが、竹成を見つけると立ち止まる。

「誰と話していたんです?竹成さん」

「おい、外の見張りはどうした?」

 

彼らが生徒会長の座と綾瀬達に手を出していることは調べているため、信用できなかった。

広秀と隆臣、この二人が顔を合わせてポケットから何かを取り出す。

 

「…やるぞ」

「はいはい」

〈Cherry Energy〉

〈Lemon Energy〉

 

二人の手には果実の絵柄をモチーフにした錠前を手に持ち、そして腰についてあるベルトに装着する。

〈〈Rock On Soda〉〉

〈Cherry Energy Arms〉

〈Lemon Energy Arms〉

《fight power!fight power!Fi-Fi-Fi-Fi-Fi-Fi-Fi!》

 

機械音が流れ、弓兵の格好をしていた。二人の変身を見ている竹成にはそれが仮面ライダーの力かどうかは分からないが、少なくともこの世界の力ではないとすぐに理解した。

 

「その力、お前ら誰に…」

「お前みたいな奴に言うと思うかよっ!」

 

二人が誰かにその力を貰っていたのは確かだった。返信した二人は矢を形成し、それを竹成に向かって射出する。

 

「そっちがその気なら、悪く思うなよ!」

 

空からザビーが主人である竹成に飛んでゆき、 変身用のブレスレットに装着する。装着したザビーを持ち、変身して反撃しようとするが、

 

「変身できないだとっ⁉︎」

「やっぱりこいつ、インチキでのし上がったやつだ!」

「悪いが、俺達の自由のためにアンタにはここで死んでもらう‼︎」

 

持ち前の運動神経で身をかわしつつ、弓矢を避けていた。当たらないことに隆臣が苛立ち、近づいて攻撃する。

後方を広秀が弓矢で狙い撃つ。

 

竹成のポケットから着信音が鳴り、避けながらも電話にとる。

「なんだ!悪いが取り込み中『アルゴと綾瀬達が見当たらないんだ!』なん…だって⁉︎ひとまず集、ちゃんと三人と一緒にいるんだろうな!」

『ちゃんといるよ!他の生徒達にも指示して探してはいるけど、僕らは体育館の方を探してくる!』

(まさか…二人とも待ちきれなかったのかっ⁉︎唯でさえ麻紀達が動いてるっていうのにっ‼︎

 

それに今度は連絡じゃなくて力が使えないっていうのはどういう事だ⁉︎)

 

連絡はできるのに、ライダーの力が全く使えない。力を封じられ、逆に二人が手を出せない竹成を追い詰めようと迫ってくる。

 

『竹成さん!そっちはどうなって…』

「今俺はそれどころじゃっ…すぐにそっちに向かう!その間は頼んだぞ‼︎」

 

竹成は多々逃げているわけではない。

二人を相手に正面から立ち向かうのは無謀だと考え、チャンスを伺う。

一人になった時を狙って。

 

*****

 

「亜里沙は寮でいいんだな?」

『ちょっと待ってってばアルゴ!動く前に話さないといけないことがあったんだから!

それに、何勝手に動いてんの!』

麻紀達のことは、事情を納得した上で話すつもりではあったが、アルゴが勝手に行動したせいで伝えるのに遅れてしまった。

 

「敵を欺くにはまず味方からさ!」

『私達騙してどうするのよ!

お陰でこっちは滅茶苦茶よ!』

 

アルゴには麻紀達のような存在も話していない。彼なりに亜里沙の叔父上から連れて来いという命令で動いているという事情を持っているが、唐突に動かれてもまだ肝心な事を伝えてない。

 

「で、話ってなんだ」

『実は…』

 

逃げ隠れしながら移動しつつ、アルゴは話さなくちゃいけない要件を聞こうとするが、つぐみの返事が全然返ってこない。

何かにぶつかった音たけが聞こえ、通信が切れる。

時すでに遅かった。

 

「つぐみ…?おい、どうし」

(なんだよっ…これっ⁉︎)

 

アルゴの視界が歪み、足がもたついて倒れてしまう。この混乱に乗じて、麻紀は綾瀬達二人組を捕まえていた。

 

脱走したアルゴもまた、麻紀達に巻き込まれる。

 

『よーし、ツグミ及び綾瀬の確保完了!』

「えーっと…こんなんで、集をおびき寄せるのかい?」

 

麻紀達は体育館にいた。連れて行った綾瀬達を逃さないように拘束具をつけられている。

正面入り口のみ開けれるようになっており、他の出入り口は封鎖した。麻紀と黄色ロープだけではなく、リアス達と大砲を持っている少女達を既に転移させて戦う準備をする。

 

「す、凄い…本当に来ちゃったよ⁉︎」

 

やってきたのは集、いのり、祭、八尋の四人がやってくる。竹成は、力を与えた難波達に足止めされている。黄色ロープが何かしらの方法でライダーの力を封じている事を知っており、竹成の仲間が来ていないこの状況で残る障害が僅かであることに麻紀達は勝ち誇っていた。

 

「今すぐ二人を解放しろ!」

『おお、二匹の海老で鯛を釣れたねー』

「アルゴ!」

「ちく、しょう…がっ…!」

『あとー三匹目、ゲットだぜっ‼︎』

 

 

アルゴはリアス達の暗示をかけられて、身体が全く動けなかった。立ち上がろうとして目麻紀の指示で子猫に腹部を殴られ、意識が朦朧しているところにまた更にリアスが脳に直接魔力を流し込む。

過去に、一誠の家族に暗示をかけて納得させたように。

 

(なんなんだよっ…こいつらは!

俺の頭に、一体何しやがった⁉︎)

 

彼の脳は正常に動いているのに、身体が鉛ののように身動きが取れない。

誰に押さえられたというわけでも、

 

『それじゃあまずは…その拳銃で集君を射殺してもらおうか?』

「よし、これでまた強力な仲間を勧誘し…え?」

 

麻紀には集達を勧誘するはずだと考えていたが、集だけを殺害するとは思ってもない。

 

「ええええっ⁉︎彼は勧誘しないの⁉︎

だって彼がいればヴォイドっていうのを」

『ゴメンねー麻紀君。俺にとって死んでもらわないと困っちゃうの〜』

「そっか…それじゃあ仕方ないな」

 

集は話している間に、いのりに手を差し出してヴォイドを使おうとする。

しかし、

 

「だめだっ…ヴォイドが、使えないっ⁉︎

なんでっ⁉︎」

「えっ…⁉︎」

 

麻紀は躊躇なく銃口を向ける。幻想殺し・武器化によって機関銃へと形成されており、どんな異能力でも消去される。

集も、ヴォイドが使えなかったことに驚いていた。

 

「大丈夫!三人の代わりはいくらでもいるから」

 

今度は綾瀬達を使って集達をおびき出し、竹成も無力化させた。集も力が使えない以上、四人は袋の鼠だった。

 

〈clock up〉

(ダメだ、これじゃあ)

 

もうダメかと思っていたその時、突然別の方向から機械音が鳴って何者かが横から割って入ろうとする。光の速さで動く二人は、麻紀とその分身体が撃ち続けているすべての弾丸を短剣で弾いていく。

そして、

〈clock over〉

 

「えっ…⁉︎む、無傷っ⁉︎」

『ありゃりゃ、また現れちゃったねー』

 

麻紀が撃った透明の弾丸は、前に出ている二人によって遮られた。

弾かれた弾丸は、床に転がっている。

 

「どうやら、間に合ったようだ」

「そうみたいだな」

「⁉︎一体何が…」

「二人は、あの時のっ…⁉︎」

「祭、知ってるの?」

 

竹成よりも先に、まず総司と加賀美がたどり着く。囲まれているこの絶望的な状況に、助けに向かうヒーローは遅れてやってくる。

第二の混戦が始まろうとしていた。

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