Justice中章:歌姫と蘇生と復讐と   作:斬刄

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愛の歌(後)

音楽室内

先程の爆発音で異変を感じた集達3人は、すぐさま綾瀬達と竹成に連絡する。しかし、

 

「駄目だ…繋がらない」

 

竹成には全く繋がらず、集から他の皆との連絡も取れない。

 

『やっと繋がった!集は無事⁉︎』

「…何か起こってるの」

 

なんとか、いのりの持っている通信機につぐみの連絡だけが届く。

つぐみの声から、察するに焦っていた。

 

『またあいつらがやってきたのっ‼︎今食堂にいるからそこで合流し…』

 

祭を人質にして右手に拳銃を構えている麻紀がやってきた。既に学内は麻紀の襲撃によって戦場と化し、襲うことを理解する。

 

「やぁ、君達3人を殺しにきたよ。

汚名を晴らす為にね」

「祭っ…⁉︎」

「余計な動きはしないように。

どうなるか、分かってるでしょ?」

 

近くにいた祭に銃口を向け、人質にする。

また祭を危険に晒され、集は顔が真っ青になっていた。

 

「集は、私が守るっ…!」

「…自分達の置かれてる状況がまるで分かってないね?」

 

この中で冷静な判断ができるいのりは懐にあった拳銃で、素早く麻紀の額を撃ち抜く。しかし、

 

「そうすると思ってたよ」

 

それは分身体たった。

額を撃っても結晶体が崩れるだけで、本体は安全なところにいる。別の分身体がいのりを取り押さえ、銃口を向ける。

 

「さぁ、どちらを生かす?」

「やめろ…二人を離せ!」

 

祭といのりの二人は拘束され、身動きが取れない。ヴォイドを取り出そうとしても、手の届く範囲に麻紀、いのり、祭の三人しかいない。

 

「ふーん、なら自害してくれないかな?

そうすれば二人は助かるよ」

「ぼ、僕の命で…二人を」

「集!駄目っ…!」

 

麻紀は武器化によって生成したナイフを捨てる。

 

彼は震えた手でナイフを取ろうとした。

自分が死ねば、二人は助かるとナイフを手にとって、このまま自害することを選ぼうとする。しかし、自害しようとすると集を見て、麻紀の気が変わってしまった。

 

「…いや、やっぱり駄目だ。

それじゃあ君の不戦勝になってしまう。

本当の意味で勝ったことにならない。

 

 

だから、選択肢は二つに一つだ!

君にも失った絶望を味わってもらう‼︎」

 

集がナイフを手に取る前に、麻紀がナイフを拳銃で破壊。自分で死ぬことよりも、目の前で大事な人を殺されてからの方が勝負と試合に勝つことが出来ると考えていた。

 

今動けるのは集だけしかいない。

片方を助ければ、もう片方が死ぬ。

集にとって祭も、いのりもかけがえのない人なのだからどちらとも選べない。

(もう僕は、これ以上誰も失いたくないのに)

 

 

ーーーー

 

彼の走馬灯の様に頭に過ぎる。

王の力を手にし、何時もの日常から非日常へ変わっていたことを。

 

「大丈夫…私を信じて。私はもう、貴方のものだから」

「お前は、自分自身を超えた…それは誇って良い事だ。

来い集、俺達と共に。

お前には、やれる事があるはずだ」

 

葬儀社と関わり、結局流れるままに手を貸すことなった。最初は誘いに断ったものの、力を見られたことで結局間接的には関わっていく。

 

「平穏な日常が大事なら、自分で守れ」

 

急にいのりが学校に入ったことも、友達の力を使ってでも目的を達成させるしか出来ないことも。力を見られた八尋に騙され、GHQに捕虜にされ、ヴォイドに関わったことで葬儀社と協力する。

作戦の最中に逃げることもあった。集を支持するみんなが涯の為に命を賭けていたのか、その頃の集はまだ理解できていない。

三人に一人は死ぬ作戦に、彼は拒む。

 

「言うだけなら簡単だよ。僕は参加を辞退します」

「おいお前!好き勝手囀ってんじゃねぇぞ」

「僕はみんなの為に言っているんです!あの人について行くのはおかしいって!」

「ちょっとちょっと、今ここで厄介なのは君と涯どっち?

空気読もうよ?」

 

集自身が思ったことを言うと、周囲の人から動揺され、笑われる。

いのりは集に対しては、出会って親しいというわけではなく涯の指示で集に近づいたこと。

 

「みんなの命を背負って、何の重みも感じられずにいられると思うか…俺は鈍感でありたくない。みんなの気持ちに応えたい」

 

恙神涯にはチームを統制できる覚悟と、それに足る信頼も持っている。

彼の弱音と本心を盗み聞きし、ぶつかり合ったことも。

葬儀社に信頼され、生徒会長となってみんなを纏めるまではずっとヴォイドの力で戦ってきた。

地球に落ちていく衛生を止めたことも。

アポカリプス・ウイルスに感染した八尋の弟、寒川ジュンの命を救えなかったことも。

いのりを化け物だと拒絶し、元どおりだと思っていたことも。

 

立ち上がってはまた落ち込み、集はそんな繰り返しを続ける。

 

今度は遺伝子共鳴によって、ロスト・クリスマスというアポカリプス・ウィルスの再来をGHQの組織は企てていた。その原因がテロ組織である葬儀社のせいだと嘘の情報も拡散される。

八尋の弟のことで落ち込んでいた集は、『力なんて欲しくなかった』と弱音を吐く。

そんな集に涯は銃を向き、『二度と顔を見せるな』と冷たく言い放った。

葬儀社は集なしで作戦を開始し、ヴォイドが無いまま決行したことで被害は甚大となっていた。

涯もいのりにも連絡が取れない集は助ける為に、友達を呼んでヴォイドの力で切り抜けようと考える。

 

「そうやって、また人を道具にするつもりか…」

「何だよ道具って?」

 

その頃の八尋は協力的ではなく、集のヴォイドの力を知った上で横から割って話してきた。

弟を助けられなかったことも言われ、友達も説明を求めている。

 

(僕には、僕にしかできないやり方でやるしかない)

 

友達にヴォイドのことを明かし、今まで取り出したことも謝罪した。

そして助けに向かう組織が葬儀社であり、その組織に属しているいのりと涯のことも友達の前で明かす。

 

「そんな奴らをどうして助けたい…ジュンのことも助けられなかったのに…テロリストなんだろ!そいつらはっ!」

「僕にも何かできるって、信じてくれたから。

葬儀社のみんながいなかったら…今でも僕はいなくていい人間だった!そのみんなが困っていて、僕にはやれることがある。

だから、お願いします!」

普段、みんなの心を開こうとはしない集だったが、葬儀社と関わっていくうちに彼自身が友達を信じて頭を下げる。

「よし、行こう!ここに止まったって助かる保証もないし、だったら動けばいいじゃん!」

「颯太くんらしいね…」

「私にも、無関係というわけではなさそうね」

彼の言葉に影響を受けたのか、颯太、祭、亞里沙、花音の四人は協力することに同意する。八尋もまた

 

「俺だって…ジュンが必要としてくれなければとっくにいなくていい人間だった。同じだろ?お前も」

 

もし集が葬儀社と関わることがなかったら、彼は何不自由なく生活し、心が脆弱で臆病なまま、頭を下げる勇気すら持つことを恐れていただろう。

誰かの心を開くことも、真剣に考えながら発言することも。

 

ーーーー

 

【二人を助けたい】

 

彼の思いはあまりにも傲慢だ。

その我儘で傲慢な願いを叶える為にヴォイドの力を使おうとしている。

優しい王様の指導通りのことをずっとしていたら、その王様に憧れていた祭のような人達は理不尽に死んでいたかもしれない。

 

集は麻紀に向かって走っていく。

大事な二人を、守る為に。

 

ーーー彼自身の思いがヴォイドの力を変化し、透明から虹色へと少しずつ変わっていく。

 

 

麻紀は二人を殺そうと、トリガーを引こうとするが、艦娘達に学校を破壊するよう指示したことが裏目に出て、砲撃が直撃する衝撃で建物が揺らぎ、ちゃんと狙いが定まらない。

 

「ちっ…あぁ、よく分かったよ!

君は、どちらとも要らないってことがよく分かった‼︎

命令権発動!

 

各駆逐艦は、そこの二人に向かって砲撃しろ!」

「集っ!」

 

今度は麻紀が命令権で艦娘達に指示し、集達に向かって砲撃が放たれた。

王の力は、持つ者を孤独にさせる。

今までその力は多くの人の心を武器にして戦ってきた。

このままいけば、大砲によって三人とも死ぬことになるだろう。

 

「これで君達はおしまいだ」

 

ーそれでも僕は、誰も失いたくなんかない

 

王馬集の手に施された神秘な力は、決して他の誰かに砕かれることのない心の象徴となる。心を軽んじることをせず、紡がれた絆から生まれた彼の王の力は、また更に別の力を宿して人の心を守護する。

物質にさせるというのであれば、ヴォイド同士以外の外部からの破壊を無効とする。

 

故に、【ヴォイド同士を除く如何なる物理的な物の干渉では、決して壊れない】

 

砲撃がヴォイドを破壊し、そのまま破壊されると思っていたはずが、無傷のままになっていた。

 

「⁉︎そ、そんな馬鹿なっ‼︎」

 

いのりから取り出したヴォイドの剣は、七つの色によって輝きを増し、祭のヴォイドは学校の至る所を修復していく。

だが、ヴォイドの力を見ても、麻紀はまだ勝てると理解している。

 

(その力が幻想である以上、防ぐことはできない!直撃すれば一瞬で)

 

物による干渉で壊れないとしても、幻想殺しで破壊することは可能。麻紀はショットガンを生成し、ヴォイドを破壊することを優先する。

しかし、

 

「な…な、んだって」

 

手に取る前に、既に撃たれていた。

集はあの映像を見て、一発でヴォイドが粉々になっているのを鮮明に覚えている。映像を証拠に使われたことも、その銃が危険であることも。

 

「…その武器が、ヴォイドの力とは相反して危険なことはあの映像のおかげでよく分かったから」

「そ、んなっ…」

 

左手にハンドガンを持ち、麻紀を撃った。

 

麻紀本体ではないとはいえ、その分身体は破壊される。結晶は崩れ、返り討ちにされている様子をしっかりと見ていた黄色ロープが驚く。

 

『いや…えぇ…?んな展開アリ?

こんなの俺でも予想外だわ』

一方、黄色ロープは観戦という形で遠くから集が予期せぬ覚醒を発揮しているのを見ていた。本来王の力にそんな要素は無く、彼自身が予定外な覚醒をするとも思っても無い。

 

銃火器でぶっ放されても、物の衝突で破壊されることは絶対にないという異常な現象はあり得なかった。何故なら、ヴォイドがこのように変異するだなんて【原作】にはなかったのだから。

 

 

『へ、ヘイヘイヘイヘーイっ…ちょっとお邪魔するよ』

 

黄色ロープが介入し、ちょっかいを出そうと動いた。麻紀に集を殺して欲しいという指示を出したのは黄色ロープであり、このまま生きてもらうのは危険だと判断した。

 

『いやー流石に予想外だわ…うん。

ウチの麻紀がごめんねー?

でも何言っても止まないからさ…でもこうして返り討ちにされちゃったし。

ってことで!俺からも麻紀に言うからさー、ここは痛み分けってことで許してくれな』

 

黄色ロープは催眠ガスと暗殺用のナイフを手に持っていたが、集は何も喋らないまま振り払う。喋り終える前から既に警戒し、黄色ロープが仕掛けてくる前に攻撃する。

 

集の心を壊そうと脅かし、祭といのりの命を狙い、生徒達を恐怖に陥れようとした彼らの言葉に耳を傾けれるわけがなかった。

 

『おー、あぶ…は?えっ…?』

 

攻撃されるのを予測したのか、回避する。

黄色ロープは隙を見せてくれない以上、不意打ちが出来なかったが、後ろに避けることに成功する。

しかし、自分の様子に驚いた。ちゃんと避けたはずなのに、身体に亀裂が入っている。いのりのヴォイドで斬りつける範囲が長くなっていることに全く気づかなかった。

 

『ゔぞっ…まじ、デ…⁉︎

や、ヤバイヤバイヤバイヤバイっ⁉︎』

 

黄色ロープに攻撃が通用した。斬られた箇所から身体が崩壊し、窮地に追いやられたことに焦っている。

 

この場から転移魔法を使って撤退していった。

 

「いのりっ!祭っ!」

 

集は振り向いて、二人に駆けつける。集が戦っている間は気絶していたが、どこにも外傷はなかった。

 

「良かった…無事で」

「あれ…私」

 

集が咄嗟の判断でいのりのヴォイドを取り出し、砲撃を防いだのが決定打だった。あそこで動かなければ、砲撃で吹き飛ばされてしまっただろう。

 

「いのりも目が覚めたんだね」

 

今まで王の力で取り出したヴォイドは透明色だったが、今でも虹色のオーラを纏っている。

 

「今までのものと違う…」

「僕にもなんでこうなったか、よく分からない。でも、これのおかげで僕らは生き残ったんだと思う」

 

ヴォイドを取り出す時も以前と同じように取り出そうとした。だが、そのオーラはあらゆる外部からの衝撃を防いでいる。

 

現に、いのりのヴォイドが大砲の弾切り裂いた際に、爆発から身を守れたのもこれのおかげでもあった。

 

「その、ごめん…祭にも心配かけさせちゃったのも…もし二人が来てなかったら、誰も信じてくれないって諦めたら。

 

僕は誰の言葉も信じずに、心を閉ざしてたかもしれない」

「うん、いいよ。

私は、元の集に戻って良かった」

落ち込んでいた頃は合わせる顔もないまま目を背き、話しかけても冷たい反応をとっていた。

今の彼は二人に謝り、目を背けていない。

そんな彼に祭は安堵していた。

 

「…そういえば、なんで祭がここにいたの?」

「…へっ?」

が、集の質問に対し彼女は目を丸くする。

尾行してたことに気づかれないよう返答を考えようと考えた。

「え、ええっと…」

思いつく言葉が見つからず、

「その…近くにいたのならひょっとして僕といのりの話をドア越しに聞かれてた?」

「えっ⁉︎う、ううん!ちち、違うよっ。

集の部屋に行こうとしたら、ノックしても反応しなかったから、探してたの」

「…そう?」

いのりとの話を聞かされたんじゃないかと聞いたが、祭は慌てて誤魔化そうとする。その様子を側から見ているいのりは、首を傾げていた。

 

(…なんで、僕の攻撃は避けたんだろう)

 

集は、話を聞きつつも黄色ロープのことを考えている。前回、竹成蹴りを跳ね返せたはずなのに、ヴォイドによる攻撃は何故か身体を動かして避けようとしたことも。

 

(そういえばあの時も…)

 

集がブーメラン型のヴォイドを投げた時も、黄色ロープは横に避けている。通常の攻撃なら避ける必要がないのに、何故かヴォイドの力だけ当たるのを避けているようだった。

 

その攻撃だけ、無敵が通じなかったから。

 

「それよりも早く、みんなを助けないと!」

「…綾瀬達は食堂って言ってた」

 

麻紀の分身を一人倒したところで、麻紀本人か学内の敵を倒さない限り破壊は止まらない。集はあのロープのことは後回しにし、八尋達の所に向かおうと考えを切り替えた。

 

「そうだね。行こう、みんなを助けに」

「おーい!」

 

龍騎に変身して進んでいた木戸が、集達を発見する。駆逐艦が砲撃したことで出入り口用の大きい扉も粉砕され、音楽室も今に崩れそうになっている。

「これ以上ここにいたら…」

「早くこっちに!急いで‼︎」

 

音楽室を出てると、その部屋の天井が崩れた。ピアノが壊れ、床も落ちてきた瓦礫に耐えきれずに崩れていく。

飛んできた破片は、ドラグヘッダーが防ぐ。

 

「あ、赤い龍が私達を…」

「間に合った…八尋達と生徒達の所に案内する。付いてきてくれ!」

 

 

*****

 

竹成は移動している間に、日向隊と激突したものの一人で返り討ちにする。

 

「がはっ…」

「暫くは眠っとけ」

 

人間を強く憎んでいたせいか、他の仲間との連携も滅茶苦茶で砲弾が一つも当たらない。

峰打ちで眠らせ、持っている艤装を破壊する。

麻紀が見つからない間は、ずっとこんな繰り返しだった。

(倒しても倒してもキリがない…)

 

転移する数の量に違和感を感じた。何分が経つとまた増員を呼ばれており、少なくともあの体育館での戦闘が、前座に過ぎないことに。

 

(一体何人用意してきたんだ麻紀の奴は⁉︎)

「この戦力…先日よりも増やしてやがる。

マジにここを潰す気でいるなっ!」

 

少なくとも学校には分身体のみが残っており、麻紀本人を見つけることができなかった。

 

「いたぞ!集中的に狙え!」

「彼を殺せば処遇が…」

〈clock up〉

(くそっ、キリがないっ‼︎)

 

死に物狂いで竹成を殺そうと襲ってくる。

彼女達が青ざめた顔でブツブツと何かを喋っているが、人の話を聞ける状態ではない。

 

(クロックアップとアクセルフォームで移動しながら潰してるけどよ…)

「学校外か…それとも体育館か」

 

本物の麻紀を探している間にも、艦娘達が横から襲撃する。それでも竹成はしらみつぶしに学校周辺を捜索し、発見されつつも戦うしかない。

 

結局遠回りして人命救助をしつつ移動している。麻紀を見つけるにも時間はかかるが、それでもこの方法を続ければ、いずれは麻紀にたどり着くと信じ、動いていた。

 

*****

 

綾瀬達含む他の生徒達は食堂と近くの教室に留まっている。

 

「お、俺達殺されるのか…⁉︎」

「なんでこんな…あの時は助けてくれたんじゃなかったの⁉︎」

 

麻紀の襲撃に騒然としている生徒達は恐怖で怯えている。ある程度多くの生徒を避難できる場所を決め、ローカルネットを使ってライダー達が校内を回りつつ生徒達を避難させ、何とか合流する。

外に出ていた八尋達も食堂に向かい、後は集達を発見してくれるまで持ち堪えていた。

しかし、

 

「おい!もうこっちはもたねぇぞ!」

「このままじゃ…」

 

圧倒的な人数差もあるため、特攻を仕掛けられかねない。増援が来たら、突破させるのも時間の問題だった。

この食堂から生徒を出せば、彼女達は拘束して彼らを人質に使う可能性もある。

彼女達がこのまま強行突破を狙おうと、突撃したその時

 

〈Start Up〉

 

背後から巧がアクセルフォームに変身して移動し、背後から艦娘達の艤装を破壊する。蹴りや拳で飛ばすが、急所は外しつつ全員を再起不能にする。

〈Time Out Reformetion〉

「…竹成の連絡で駆けつけた。

生徒はこれで全員なのか?」

「あ、あぁ…助かるぜ」

 

アクセルフォームが解除され、通常の変身形態に戻る。残りの生徒達が隅に隠れているが、ちょうど40人くらいいたのを視認できる。

 

「綾瀬っ!八尋っ!」

「集!」

「やっと着いた!生徒達はちゃんと守れてるよな⁉︎」

「あぁ、さっき確認した」

 

確認してた時に、真司と集達は八尋達と合流した。ライダー達の方は周囲を警戒し、他に誰か敵が迫ってないか確認している。

 

「無事だったんだな。

集、もう大丈夫なのか?」

「も、もう大丈夫だよ…」

 

集の手は震え、仲間にヴォイドを使うのを躊躇っている。いくら庇ってくれても、実際本心ではどう思われているのか。

 

もう片方の手で押さえつけながらも、彼は勇気を持ってみんなに聞く。

 

「あのさ…都合の良いかもしれないけど…また、みんなの力をアテにしてくれないかな?」

「そんなの当たり前よ」

「えっ…⁉︎」

 

綾瀬の他にもすんなりと頷いている。

あっさり答えたことに集は目を丸くしていた。

 

「何でアンタがそんな反応するのよ。

もしかしてヴォイドを出して欲しくなかったわけ?」

「いや、そういうことじゃないんだ。

僕自身みんなを使ってちょっと力を使うのが後ろめたかったから…」

「…ヴォイドすら無かったら、大勢の人間が死んでたかもしれないわよ。今までがそうだったんだから」

 

必ずヴォイドの力を発揮した上で、葬儀社の策略が成功している。集のメンタルがまだひ弱な部分もあるせいか、ヴォイドを使うことに躊躇いがある。

 

「もし綾瀬達や八尋達のヴォイドまで壊れたらって考えると怖いんだ」

「…竹成が言ってたよな。ヴォイドが壊れようと、銃で撃たれても…死ぬことに変わりはないって」

 

ヴォイドが壊れて、あんな風に死ぬのは嫌だと感じる人だっている。最後に死が訪れても、安らいで死ぬのと苦痛のまま死に絶えるのでは全く違う。

それでも、

 

「アンタだけがその力を、王の力で打開できる持ってる。今まではそうだったけど、これからもそれを使うのは不安なの?」

 

危機を切り抜いて来たのはいつだって王の力だった。もう今までの日常も、力をみんなの目の前で明かした以上進むしかなかった。

 

「もうこれ以上誰も死んで欲しくないって今でも思ってる。それでも、この力が僕の持つべき罪だというのなら…それを背負って生きるって」

「だったら力に恐れずに私達に頼るってこともしなさい。

どこでいつ死ぬかなんて、誰にも分かんないわ。

少なくともここにいる全員、何の抵抗もできないまま死ぬつもりはないわよ。

 

それに、集のことをよく知らないで【王は人の心が分からない】って言ってきた連中に一泡吹かせないといけないでしょ」

「…みんな、ありがとう」

 

手の震えは止まり、彼女のヴォイドを取り出す。

綾瀬は自分のヴォイドを両脚にまとい、外に出て空を駆ける。

 

「しゃあ!じゃあ俺達はここを守りきるぞ!」

「わーってるよ」

 

真司は声とやる気を出し、巧は面倒くさそうに返事しつつ食堂の入り口を防衛する。

 

「一人窓から出てきた!」

「撃ち落と…⁉︎耳がっ!」

〈NASTY VENT〉

艦娘の大砲が全く当たらず、空母が艦載機を飛ばした。集に分身が壊されたとしてもまだ戦力差はこちらが上回っていると撤退をしない。

中にいる真司と巧以外にもいる。食堂の外側から狙う艦娘を蓮がダークウイングを召喚し、地上にいる艦娘に向けてナスティベントで動きを封じる。

加賀美はクロックアップで動き、両耳を手で塞いでいる艦娘の艤装を破壊した。

「ここはなんとしても死守する!」

 

生徒の守りを徹底し、残るは学校を破壊する外敵と麻紀を見つけ出して討伐するだけ。

集と綾瀬が加わったことにより、巻き返されていく。

 

「ま、まだだ!

余りの分身体と人数差で勝ってる。

集と他のヴォイドを破壊して…!」

 

麻紀本体は遠くから安全な場所で指示を飛ばしているが、生徒達も見つからず、艦隊達が学校を倒壊するにしても余りに時間がかかり過ぎている。

 

学校の破壊は無視して、最悪集だけを殺せば何も問題ないと分身に指示するが時すでに遅い。竹成の仲間であるライダー達も加勢に入ったことでどんどん体制が崩れていく。

 

集達の周りにはライダーが6人で集まり、分身体を破壊する。カブトとガタックのクロックアップで地上の分身体を、ヒュージョンジャックで飛行状態が可能になったブレイドが麻紀を見つけ次第撃破した。

 

「協力するぞ」

「…あんた誰?」

 

ギャレンは飛んでいる艦載機を破壊し、綾瀬を援護する。

綾瀬は多少警戒するが、

 

「橘…竹成の仲間だ。あの飛んでいるのは任せろ」

(敵意も無いし。確かあの生徒達を助けてくれたわよね。じゃあこっちの味方か)

「そう、じゃあ任せたわよ」

 

仮面ライダーが学校倒壊を阻止され、麻紀の思い通りの行かない展開になってしまう。艦載機がジャックフォームに変身した剣崎と橘に向かって飛んでいく。

 

〈BULLET〉

〈RAPID〉

〈FIRE〉

ーーー〈Burning Shot〉

 

3枚のカードをラウズし、飛んできた艦載機を炎を纏った弾丸で一掃する。爆発は近くにある艦載機にまで被弾し、そのまま炎にまみれて落下していく。

 

綾瀬は再度艦載機を飛ばそうとする艦娘、軽空母と正規空母の武装を破壊し、次々と再起不能にした。

 

「一体何やってるんだっ…あっちは少数だぞっ⁉︎なんで手こずるんだよ!

それに、黄色ロープは…なんで連絡が出来ないんだ⁉︎」

 

数では麻紀達が圧倒的に勝っている筈なのに、制空権は奪われ、生徒の死傷者もゼロ。

その上、時間が経つにつれて戦闘員の数が段々と減っていく。

 

最悪、肝心の頼みである黄色ロープも音信不通で助けを呼んでも一向に来てくれない。竹成が麻紀を発見次第迫ろうするのも、時間の問題だと麻紀は焦りを感じつつある。

復帰した集の介入によって、形成は逆転される。

 

「て、撤退だ…クソっ!

こんなっ…こんな馬鹿な事がっ‼︎」

 

助けの綱である黄色ロープとの連絡は取れず、戦力増加したはずの陣営も崩れていく。

戦いは数ではないことを思い知らされた麻紀は、悔しながらもこの場から逃げることしかできない。

確信した勝利に泥と塗られたことでその汚名を晴らそうとしたはずだったのに、勝負にも勝敗にも破れてしまった。

 

「て、撤退⁉︎ま、待っ」

「嫌…嫌ぁぁっ!」

 

艦娘達は任務を果たせなかったことで恐怖に怯え、諦めた顔をする人もいる。指示を聞いた艦娘は絶望し、そのまま強制転移で船に戻される。

 

「部長、麻紀から撤退命令が来ました」

「そう…なら戻りましょ」

 

リアス達は学校が壊れようが壊れまいがどうでも良いという印象だった。麻紀の指示ばかり押し付けられてばかりだったためか、彼女達の気分が本調子でない分学校の破壊よりも人数の殲滅を優先していた。

 

集や竹成達と接触しなかったのは、あえて遠い場所で学校を破壊していたことも。

 

「…」

『リアス達は特別に失敗してもお咎めなしだから、テキトーにやって良いよー?』

 

大事な眷属である一誠が暗い顔をしたまま、木場は指示を無視して麻紀と何か企んでいる。この場でリアス達だけが任務が失敗しても、艦娘達のように恐怖で怯えることはなかった。

 

(とても嫌な感じね…)

 

普段なら麻紀に何とかしろと叱る筈だが、今回はそれが無かったことに違和感を抱いていた。何か良からぬことが迫っているかと彼女達は不安げな表情を浮かべつつ、船に転移される。

 

「や、やったのか…?」

「麻紀本人の撃破は出来なかった…けどよ、この状況で引いたってことは俺達の勝ちってことだ」

 

こうして麻紀達は転移して逃げ去り、避難した生徒達からは歓喜の声が聞こえる。集達は黄色ロープを含めた麻紀陣営を退ける事が出来た。

 

「各ライダー達に連絡、木戸と蓮のみ船に帰還。

5人は集達の護衛と、俺から集達の説明と今後のことで話をするからまだ残って欲しい」

 

竹成は、疑心暗鬼に疑ってかかった八尋に対し、理由も言わないまま信じて欲しいと強く言ったこと、葬儀社も口では何も言わなかったがもしかしたら不満があるかもしれないと。

 

(結果的に集は復活して、恐れていた生徒達も最小限に抑えられた…後は全員の団結と俺が集達に話す…か)

 

生徒達もこんな状況に恐怖し、誰かのせいにしようとするはずだったが、今では集達に助けてくれたことの感謝の言葉がちゃんと聞こえている。

 

集が二人のおかげで復活し、生徒達も考えている。

竹成も本当ならば生徒会長の集にだけ話せば良いと考えていたが、疑われている以上は集達の内三人を呼んで話す決心がつく。

 

各々が一丸となって作戦を全うするのは、後もう少しだった。

 

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