Justice中章:歌姫と蘇生と復讐と   作:斬刄

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東京脱出作戦

 

竹成から手配された物資はダンボールに詰めた爆弾と、重火器が送られている。火気厳禁と記入し、それぞれのダンボールに黒ペンで仕分けする。

生徒達は手配された機材を組み立てていく。

決行日の1日前までまでに完成させることが必要だった。親切に設計図も用意してくれているため、一人一人が協力して完成させる。

 

塗装と溶接については、あらかじめ遠征で行かせた時に工場から取ってきたものもあったかため、すぐに取り掛かることができた。命を懸けて特攻するよりも、用意してくれたものを積み上げて攻略する方が無駄死にするより幾分かはマシだった。

しかし、

 

(武器庫の物とは違って、変わった物ばかりだ)

(本当にこれで大丈夫なのかよ?)

 

一部の生徒はただひたすらに機械を組み立てていく作業に多少の疑問を持っているが、それでも集達を信じて指示に従って動いている。

 

決行時に役に立てるヴォイドを指名し、使用して良いかどうか本人を呼び出しつつ許可を取っている。

 

竹成にも、必ずやるべき事はあった。

 

「集、本当に力になれなくてすまなかったっ‼︎」

「えっ⁉︎竹成さん、急にどうしたの」

 

集を呼び、唐突に頭を下げる。いのりと祭の二人が集の心を支えてくれていた事を聞いて、制度に賛同した集の助けになれなかったことを謝ってる。

 

「落ち込んでいるお前に、何もしてあげられなかった」

「だ、大丈夫だよ。結果的には何とかなったし、祭が生き残ったのも竹成さんが助けてくれたお陰だよ。

体育館であの竹成さんの発言がなかったら、今頃みんな…ここに思い留ることはしなかったと思うんだ」

頭を上げてと言いつつ集は慌てている。

麻紀と黄色ロープの強迫観念で追い詰められ、正常な考えになれないまま流れに任せて留まることもなかった。

 

「許すというよりは…むしろ、僕のいない間にみんなをまとめてくれて本当にありがとう」

「集…」

 

集は竹成を許すどころか、感謝していた。

ようやっと頭を上げ、集の顔を見る。

 

「だから作戦が万全に出来るよう、また管理をお願いします」

「あぁ…顔の見えないアイツのことを信頼してもらってるんだ。俺に任せとけ」

 

明るい顔で期待の目を向けられると、集の返事に応じるように竹成は頷く。彼が部屋に戻ると、加賀美が背後から声をかけた。

 

「なぁ、いいのか」

「集を…仲間に勧誘しなかったことか?」

 

集のような心そのものを武器として扱ってるわけでもない仮面ライダーの力では、あの黄色ロープに届かないかもしれない。同盟を組んでいる嶺や正輝に、黄色ロープの能力については教えても、弱点を言ったところであまり意味はないのではないかと。

 

「本当ならこの世界であの黄色ロープを仕留めれるのなら考える必要はなかったんだけどよ…あれだけ多くの生徒に責められて、今度は俺達の揉め事に巻き込む事は出来ないだろ。

 

 

悪いが…またアイツの弱点を探すしかない。

申し訳ないと思っている。」

 

もし仲間にしたら集の心が、また、前以上にズタボロにされてしまうような最悪の状況に巻き込まれることだってある。

加賀美の他に、蓮と真司、剣崎、咲耶が集まっていた。

 

「…他も、それで問題はないな?」

「騙したり、無理矢理入れたところで協力するとは限らないからな。

 

それに彼を連れて行こうとしたところで奴の脅威性が下がるわけじゃない。一時的とは言え、力が使えなくなったこともあった」

 

集を仲間にすれば黄色ロープを倒せるかもしれないが、ロン毛とメガネの生徒二人に襲われた時に力が使えなかったのも、黄色ロープが仕向けたものだ。

 

ヴォイドの力を恐れ、使われる前に無力化された集を暗殺する可能性だって有り得る。

 

「すまないな、みんな」

「気にするな。俺達も仲間に入れるかどうかも総意で納得している。

お前がそう決めた以上、もう何も言わない」

 

加賀美達は船に戻り、竹成は気合を取り直しつつ残って仕事へと向かった。

「さて…生徒達のモチベーションが上がってきているわけだし、俺も手伝いに行くとするか!」

 

メンタルケアの仕事は少なくなり、決行前まで生徒と一緒に部品を組み上げていく。

後日には、今度は颯太が集に謝罪してきた。

 

「俺…あの時、何の反論も出来なくて本当にごめんっ!」

「…」

王満集は無言のまま、颯太をジッと見ている。

 

祭を巻き込んで、頭を下げたところでそう簡単に許せるわけではない。落ち込んでいたところを助けれず素直に誤った竹成については今まで案に協力していたからこそ、対して問題はなかった。

 

 

「僕は、颯太のことをまだ完全には許しきったわけじゃない」

「そう、だよな…ただ謝るだけなんて虫が良すぎるもんな」

 

だが、彼はあの場所で庇ってはなかったが同情しかしておらず、祭といのりのように救い出すこともしなかった。

集は近づき、颯太は一歩下がる。

また何かされるんじゃないかと恐怖しつつも警戒している。集は前の頃のように怒り狂うわけでも、顔面を思いっきり殴ろうとはしない。

集は手を差し出した。

 

「だから…もう一度握手しよう。仲直りには握手だって、颯太が言ったじゃないか」

 

ヴォイドランク制度を決める前に颯太と相談していた頃、二人で叫んでいた。

 

「…でも、本当に良いのか?だって俺」

「僕らはこのまま別れちゃいけない、そう思うんだ。それに、先に手を差し伸ばしたのは颯太じゃないか?」

 

彼は真剣な目で颯太を見る。また、殴られて見限るんじゃないかと覚悟していた颯太だったが、

 

「泣かないでよ、颯太」

「だって俺…もしこのままだったらと思うと」

「もう一度、友達になってくれないかな。僕の方からも迷惑をかけてしまうこともあるけど…それでもいい?」

「当たり前だ…」

 

前まで颯太はランク制で不満を抱き、祭を危険に晒しかけた。それでも集は、彼のことをこれからも友達だと手を取り合おうとする。

二人は、仲直りの握手をした。

 

*****

 

決行日1日前

 

竹成のメールに準備用の資料が送られる。

この日には手配された機材は既に完成させている。備品には最新型の爆薬とドローン兵器、移動式大型散弾銃(三式弾)を完成した。

一人一人に爆薬を手に取りつつ、後衛にはヴォイド使用の許可を取った人と移動式散弾銃を操縦する生徒が構えている。

 

集が部屋に戻ると、突然大きい声が聞こえた。急いでドアを開くと、そこにはいのりは悲しい顔をして震えていた。

 

「どうしたの、いのりっ⁉︎」

「集っ…」

 

辺りの物は散乱し、彼女の身に何があったのかと近づく。外傷的な怪我はなかったが、頭を抱えて精神的な面で追い詰められているようだった。

 

「…時々、私じゃなくなってしまう時があるの」

(あの時も…確かそうだった)

 

集は、いのりが過去に乗り移られていることが何度かあった。

 

前に力を与えたいのりが化け物だと言ったことも覚えている。ヴォイドが必要な時に、いのりではなく自分の姉に似た人がいることを。

 

しかし、桜満真名は桜満集の姉であり、もうすでに亡くなっている。何故いのりの中から真名が出てきたのか、それはまだ集には分からない。

 

今でもいのり自身の人格が、桜満真名に上書きされていく。そんな恐怖が彼女を襲っており、集は彼女を抱きしめた。

 

「大丈夫、僕がついてるから」

「うん…ありがとう」

 

集はいのりを優しく抱きしめる。いのりの異変に薄々気付いていたが、この事を他の誰かに話しても信じてもらえるか曖昧なもので、彼女を元気付けることが精一杯だった。

 

それでも集が強く抱きしめてくれたことで彼女の抱えていた恐怖が少し和らい感じている。

彼女もまた、集を強く抱きしめた。

 

*****

 

計画決行日

 

レッドラインが迫るまで3日くらい準備が整うことができた。作戦を阻害しようと黄色ロープと麻紀達のことを警戒しているが、彼らは一向に出てこない。

 

「あいつらは…やってきてないな」

 

襲撃の件が大きかったか、準備の時にも邪魔されることはない。

生徒達は指定された場所へと集まっていく。

 

「もう一度計画を説明する。

ゴースト部隊のコントロール装置はこの東京タワーにある。僕がヴォイドを使ってタワーの支柱に高圧電流を流し込む。

 

成功すれば、ゴースト部隊を無力化出来るはずだ。

 

僕が突破口を開く。

君達は通信機の指示に従って各部隊の足止めをお願いします、指示は僕、竹成さん、八尋、つぐみに振り分けて指示を出します。

 

指示については各チームに割り振ってるから、それに従って動くように。

インセクトを抑えて、僕が突っ込んで止める。成功すれば僕らはウォールから出ることができる。

みんな、頑張ろう」

 

今は集が生徒全員に連絡ができるようになっており、作戦が始まれば計画は終わる。

勝利条件はゴースト部隊を機能停止にする事で学生全員が脱出すること。

また、計画決行をシャドウに連絡すると、彼からの伝言もあった。

『作戦を行う際は、四人を主軸として通信機を使い、各生徒達に指示を出して行動するように動け』

「そろそろ連中も動く…用意はいいな?」

 

隠れながら行動している学生達は、ぞろぞろと動いていく。自分の身を、脱出の為に何日間か用意してきた罠を用意した。

 

『作戦開始っ!』

 

まず竹成、集、八尋、つぐみの4人の耳に通信機器をつけたまま、シャドウの指示を聞く。その指示を聞いて、4人が各生徒達に指揮系統をする。

 

「オートインセクトの数は20!

予想通りだよ!」

 

ビルの物陰に隠れ、罠を起動するタイミングを計る。その罠にかかったインセクトは転倒してしまう。倒れている隙を伺い、脱出を試みるという作戦だ。

 

『リーダー1はnk5、JK4に設置した爆弾を起動させるように指示』

「中山さんと城ケ谷くんはそろそろ起動の準備!」

一人一人の名前をアルファベットで省略し、シャドウは竹成達に指示を飛ばし、指示を聞いた竹成達は散らばった生徒達に伝達する。リーダー1〜4というのは番号ごとに集、竹成、つぐみ、八尋の順番毎に連絡していた。

 

「おい、本当にこれで問題ないんだろうな…?」

『あぁ、計画通りだ』

 

竹成もシャドウの戦略については、指示通りに動いているが今のところ竹成の作戦を採用している。

ーーーーーーーー

・つぐみ、または竹成のヴォイドで敵を撹乱。

・ヴォイドが使用不可の場合は用意できる罠を仕掛ける。地雷のような各脚部の破壊可能な罠を設置、移動を無力化させる。

 

 

達成後に各生徒達はゴースト部隊から距離を話して隠れつつ移動し、集は主電源を止めて脱出を試みる。

 

ーーーーーー

 

竹成の作戦はこういったものだった。

夜に黒い服を着て見えないようにしても、人間相手ならともかく機械では欺くのが難しい。

最低限の動きを止めるために装備よりも脚部を破壊して道を作る。

今のところ、この作戦通りに事が運んでいるものの次にどう動くかは見当がつかなかった。

 

(何重にも策は立て、学生も手を貸している。

計画通り…だって?これがか?

本当にこれで大丈夫なのかっ…⁉︎)

 

協力関係の相手を信じなくてはいけない竹成ですら、この作戦が問題ないかと不安になる。

 

「けどよ、これっ…囲まれるんじゃねぇか‼︎」

『ちょっとこれどういう事っ⁉︎』

 

先行している生徒がゴースト部隊に囲まれている形だった。つぐみと八尋もシャドウの指示に困惑している。

 

すぐさま竹成の他につぐみ、八尋の三人が一斉にシャドウの連絡を繋げる。生徒を囮につかって、目的だけを達成すれば良いと思っているのではないかと。

 

「このままだと指示を聞いた生徒が!」

『いいや…全ては予定通りだ』

「何を言ってるんだ!早く助けねぇと不味いだ…⁉︎」

 

竹成が反論しようとした途端、近くにあった高層ビルが倒壊し、周りにいるインセクトの数機が巻き込まれて破壊されていく。

 

「シャドウ、お前これ…」

『言ったはずだ、予定通りだと。

ようやく始まったか』

「建物を使って、集まったところを…でも逃げ込んだ生徒だって!)」

『大丈夫、みんな。

作戦は上手くいっているよ』

 

今度は集まっていた機体が複数破壊されていく。

瓦礫に飲まれ、粉々になっていた。

 

「まさか…ドミノ倒しに」

『それだけじゃない。

他のところも見てみろ』

 

まず、シャドウが集に内緒でつぐみのヴォイドで生徒に似せた人を用意しつつ陽動を仕向けていた。二機との間に偽物の人が隠れ、挟み撃ちの形にさせる。相打ちの危険性を鑑みなかったが故に偽者に欺かれて自滅、滅多撃ちにする事で壁を貫通し、お互いを撃つ形となってしまう。

 

またある時は、先陣切った生徒(ヴォイド)をゴースト部隊が廃ビルの中に次から次へと入ったところを解体に巻き込ませる。

さらに次の建物は支えになっているなっているところを爆弾で設置し、傾向けていく。

逃げようとしても行き止まりのまま、倒れていくビルに潰れていった。

 

様々な方法と少人数で相手を罠に嵌め、数を減らしていく。無人機故に決められた方法でしか動こうとしない故に目標を殺すことしかできない機体はそのまま罠へ突っ込んで自滅していく。

 

『武装しても勝てないなら…近くにあった建物で機体を破壊できる』

「まさかこれは建物を…地の利を使って。なんて奴だ…⁉︎」

(嶺が紹介した人は無能じゃあなかった。

それどころか予想以上に⁉︎)

「でも…まだ残っている機体だって」

『君達があらかじめ準備を用意した以上…よっぽどのことが起こらない限り5機程度、どうという事はないはずだ』

 

生徒達に近づいてくる機体は予め用意したオート式の砲台を設置、近づいた敵機体二体に向かって散弾銃が発射され、木っ端微塵にする。

 

(おいこれ…もしかしたら!)

(やれる!いけるかもしれない!)

『最後まで諦めないで下さい!

喜ぶのは僕があれを止めてから‼︎』

 

集がいのりのヴォイドを取り出し、レッドライン近くにいる機体を一掃する。

彼の片手には高圧電流を流すヴォイドを手にしていた。

 

『仮に動けたとしても脚部と武器が大破した以上、もうどうにもできない。

増援がいない以上、残る部隊だけで桜満集を止めることはできない…これでチェックメイトだ』

「いけ!集‼︎」

 

インセスト部隊を無力化し、これ以上の援軍が来て増やさない為に主電源に高圧電流をぶつけた。ゴースト機は機能を停止させ、電池が切れたかのように途切れていく。

 

機体は止まり、生徒達は喜びの声を上げる。

東京脱出作戦は成功した。

 

*****

 

通信を確認していたルルーシュは、成功したことに紅茶を飲んで一息つく。思惑通りに事が運び、犠牲も最小限に収めた。

 

「どうだった?」

「雷光とドローンを期限通りに守り、この作戦において成果を出した。後はバレる前に残った備品を竹成が回収し、全員が脱出すれば何も問題はない。

 

条件はクリアされ、脱出もこのままいけば成功するだろう」

 

ルルーシュは映像から、成功した生徒の歓喜の声が聞こえている。浮かれずに、証拠物を回収してくれれば後は何も問題はない。

 

そのままの雷光を提供したわけじゃなく、部材として生徒達に作らせた理由は、そのままのものを手配したら黄色ロープに協力関係を取っていることがバレてしまうからだ。

部材も別物にし、雷光の性能が維持できるような形をロイドに頼んでいた。

 

「それに、嶺達との協力関係のおかげで大きな収穫も得た。麻紀、そして手を組んでいるあの黄色ロープという存在についてだ」

 

嶺に協力要請をしなければ、ルルーシュが麻紀側の状況を知ることは出来なかっただろう。

 

「…王の力、確かヴォイドといったな」

「扱いを間違えれば身近な人を殺しかねない代物だ。ギアスのようにな」

 

ギアス然りヴォイドの力もまた、人を孤独にさせる。違う世界とはいえ集を見て、自分と同じようにこれからも過酷な道を辿ることになると共感していた。

 

「黄色ロープとやらが完全に無敵というわけではないということが明白になったわけだ。しかし、集を船に勧誘して連れて行くわけではないのだろう?」

「その力に類似したものが通用するのか…本当にその力のみ例外で防ぐことが出来ないのか。

 

その点に関しては後でまた、検証すればいい。ヴォイドの力は味方側につけば確かに強いが、同時に諸刃の剣にもなる。

 

…仮にもしヴォイドの力しか効かなかったのら、危険人物だと判断して竹成が介入する前に既に処分していたはずだ」

「となれば、慢心でもしたのか?」

「慢心しても問題ない理由が必ずあるはずだ。彼を生かしても何ら問題ないという事は、一つや二つの弱みを明かしたところで何の支障の無い程の自信がある。

 

ヤツの能力、単なる反射や通信傍受、能力封印だけじゃない。まだ裏に切り札があることは覚悟しておいたほうがいいな」

 

ルルーシュは無敵と強力な支援だけではないと、黄色ロープを疑っている。もしもその隠していた力が、正輝と竹成達に見せていた能力以上のものを隠し持っているのだとしたらと危険視している。

 

「単純な攻撃、魔法だけでは通用せず…唯一ヴォイドの力だけが通用した、か」

 

心を重んじて覚醒した集と、それに油断して撤退していった黄色ロープ。

集は人の心を尊い、絆によって王の力を進化させた。黄色ロープは脅威なる力で多くの人の心を踏み台にしたこと。

 

ルルーシュは携帯電話を使って、この船にいる調査班に連絡する。

 

『今からデータを送る。

送られた資料、映像に目を通しつつ黄色ロープのことをについて調べて欲しい。奴の能力だけじゃない、発言や何か不自然な…いや、些細なことでも気づいたことがあったらそれも併せて私に連絡するように』

『了解しました』

 

能力だけじゃなく敵を煽る発言も調べ、性格と弱みを見出していく。

竹成と麻紀の戦い、その事情を知るだけでもルルーシュ達にとっては大きな功績だった。

 

*****

 

ゴースト部隊はそのままショートして動けず、計画は成功。無事、生徒達はそのまま生還することができた。

脱出の計画なんて何人かは無理だと思っていたはずが成し遂げた。生徒達は喜びの声を上げ、続々と多くの生徒達が東京から脱出していく。

 

「行こう、いのり」

「うん」

 

生徒達と一緒に集達も脱出する。

一方の竹成は携帯を確認するが、任務完了の連絡が来ない。途轍もなく嫌な予感がすると、周囲を警戒している。

 

その予想は、的中した。

 

『いやぁー凄い凄い。

マジでビックリしたよー少人数とはいえ、あんな方法で成功するなんて』

 

全員が脱出する前に、黄色ロープが出現した。麻紀側にいた生徒の数人は周囲を見回して、終わったことに喜んでいる。

 

『竹成君がそんな準備をすぐに用意できるとは思えない。てことは、裏に協力者が必ずいるはずだと思うんだけど』

「…麻紀はどうした」

『麻紀は船で待機。

俺と他の生徒を連れて遊びにきたよー!』

 

生徒達の歓声が聞こえる。竹成が本当にやり遂げたことで、もしかしたら解放してくれんじゃないかと希望を抱いていた。しかし、

「そ、それじゃあ俺達を解放して『そんな約束したっけかな』⁉︎」

(やっぱり…生徒を利用しようと企んでいたか)

 

麻紀側についた以上、二度と帰ることは無いと黄色ロープは呆れたような声を出す。彼らはその場から逃げるように誰かに助けを求めるが、その助けも虚しく強制転移されてそのまま船に連れ去られる。

彼らは絶望の顔をし、黄色ロープはそれを見ながら横で楽しんでいる。

 

『ねぇ、竹成くん。他人のことより集達と自分のことを心配したらどうかな?

トロイの木馬って知ってる?』

「⁉︎集っ!」

集のそばには銃を所持している女子生徒がいる。

竹成は集を庇い、腹部を撃たれてしまった。

 

「悪く思わないでね?この人の配下になったもの」

「竹成…竹成さんっ⁉︎」

彼女の目は撃とうとしたと同時に、変貌していく。竹成が彼女の目を凝視すると、異様になっていた。

(洗脳かよっ…だが、致命傷は避けられた)

『あれだけ生徒達にメンタルケアをしておいて、まーったく気づかなかったのかな?』

 

既にその女子は黄色ロープの術中にはまっている。

一般人のような目をしている訳ではなく、彼女の本意で動いている。

 

「まさか…ヴォイドが明かされるよりも前に」

『ま、彼女にはそれなりにスパイをしてもらったよ。

 

知らず、毒を仕込まれたって感じの顔だね〜?まぁ俺的にさ、スパイがバレてない限りは作戦が成功してようが失敗してようが、どっちでも良かったんだよね。

俺の計画に支障はないから』

(そこまで考えてなかった、か…どう扱おうがその子は捨て駒か。そうじゃなきゃ作戦のことを調べようと動いていたはずだからな。

 

何にしても…シャドウとの協力関係や作戦についてバレなくて良かった)

 

もし学校に残っていた生徒達の誰かが内密者だったら黄色ロープがアテにし、情報が漏れた時点で一貫の終わりだった。作戦時に使用した取引物をすぐに回収したことも、シャドウの感は当たっている。

 

「お、おい!なんだあれっ⁉︎」

 

エンドレイヴのゴーチェが次々集まっていく。

生徒達は急いで逃げているが、黄色ロープに属している者は既に強制転移で帰らせた。

その機体が集まり、長い白髪の男がやってきた。

 

「涯…」

「久しぶりだな、集」

 

涯の行方も、生き死にすら分からなかった。

ここまでの苦難の末にようやっと出会うことができた。姿は変わっていても、その声と性格は集と葬儀社の彼らには確かに覚えている。

 

しかし、彼らの思いは裏切られた。集の隣にいたつぐみは既に倒れており、彼女のヴォイドは取り出されている。

 

「あっ…あぁぁぁっ。

僕の、僕の腕がぁぁぁぁっ‼︎

王の力がぁぁぁぁっ‼︎」

(何が、一体何が起きたっ…?)

 

集の腕は、簡単に斬り落とされてしまった。

地面に落ち、その腕を涯が拾っている。

 

竹成は一体全体何が起きたのか、理解できずに混乱していた。

何故集の腕を切り落としているのか、切り離された王の力は涯の腕に宿してしまう。

 

しかし、その光は祭といのりのヴォイドを守った時のような虹色の光は含まれていない。

 

「王だと?忘れたのか?お前は横取りしただけだ…王は俺だった。自惚れるな」

「ど、どういうことだよ涯!なんで集を‼︎」

 

上空にはステルス爆撃機が飛行し、生徒ごと涯の頭上にRM弾を落とそうとしていた。説明を問うよりも、この場から逃げる必要があった。

 

『あーすみません。

ちょーっち、俺に任せてくれません?』

「…誰だ?」

『通りすがりの強者の味方っス!』

 

黄色ロープは敬礼し、涯は若干警戒しつつも鋭い目で見ている。

 

『あの目障りなカトンボ、貴方を狙ってますんで…勝手ながら俺の力であれを止めてもよろしいでしょうか?』

「出来るのか?」

『そりゃモチのロンでございます』

 

黄色ロープは臆せず、そのまま会話を進めている。前に出て、掌を機体にかざす。

 

(…今まで自衛と妨害しかできなかったやつが、どうにかできるわけがない。

それとも何か別の手段があるっていうのか?)

 

『はいはい、結晶化』

「な、にっ…⁉︎」

 

空を飛び回っていた戦闘機は突然出現した結晶に取り込まれ、そのまま転移させる。

一同は目を丸くしている。

 

(あんな、あんな力まで持ってたのかよ…⁉︎)

 

余りにも呆気なかった。上空にいたあの機体を、たった一言で呟いただけで無力化したのだ。何が起きたのか全く理解できず、そこにあった機体が一瞬で結晶に固められている。

 

そんな力も黄色ロープが所持しているとは思ってもなかったからだ。RM弾だけではなく戦闘機ごと、黄色ロープの所有物となってしまった。

 

「涯…なんで集を」

「俺はかつての俺ではない。

選べ、それでも従うか?

或いは俺の敵となり、今ここで朽ち果てるか?」

「どうしちまったんだよ!涯‼︎」

「どういうことなのっ⁉︎」

『涯様に近寄るなっ‼︎』

『そこのちんちくりん!邪魔だ!』

 

混戦と化したこの状況、生徒の悲鳴と機関銃の音が聞こえる。

綾瀬達は困惑し、竹成は怪我を負いつつもその場にとどまっていた。

 

 

(⁉︎集、集はっ⁉︎)

 

竹成はすぐさま集の方に顔を向く。切り落とされて失った腕を抑え、激痛で悶えている。

 

血を流し、混乱した頭を抱えつつ状況を整理する。いのりのヴォイドを無下に使い、集の腕を切り落とした。痛みによる激痛もあったかもしれないが、信じていた人に裏切られたことに彼は悲しんでいる。

 

竹成の頭の中はようやっと状況を理解し、その上でようやっとわかった。

 

 

ーーーー集の腕を斬ったのは、今目の前にいる恙神涯。

それが紛れもない事実であり、涯は忌むべき敵だと。

 

「て…テメェぇぇっ‼︎」

 

激昂した竹成は、集の腕を斬り落としたガイに向かって走ろうと立ち上がる。

クロックアップで高速移動し、最期の壊刄(ジ・エンドオブ・ブレイク)で突っ込もうと動く。ヴォイドは集のように直接触れて取り出す必要ならばクロックアップによる光の速さで加速することで触れることすらままならない。

 

頭部に直撃すれば、涯は死ぬことにはなるが集の腕を容赦なく奪ったこの男の命を考慮する気持ちはもう微塵もない。

 

しかし、クロックアップを発動する直前に竹成の身体に異変が起きる。

 

(な、なんだっ⁉︎)

 

急に身体全身に重りをつけられたかのように、転倒してしまう。

起き上がろうにも、全く身動きが取れない。

 

(強制転移だとっ⁉︎他のライダーまで帰らせて…一体何の冗談だっ‼︎)

 

携帯の画面には強制転移を行いますと表示されていた。

神の抑止力によってこれ以上行動させまいと、竹成達を船に無理矢理帰還させようとする。

既にライダー達は帰らされていた。

 

「ふざ、けるなっ…!ここまできて、ひき、下がれるかっ…‼︎まっ、てろっ!

今助け、るっ‼︎」

「集!いのりちゃん!」

「祭っ!いっちゃダメ!」

更に重くなり、立つこともままならないまま前に倒れてしまう。

頭部を動かせるのがやっとで、目を集に向ける。

 

集はいのりに助けてもらい、その場から逃げようとしていた。

他の生徒達だけじゃなく綾瀬達は恐怖し、祭も連れて行きつつ急いでその場から離れようとする。

 

「集ぅぅぅぅぅっ‼︎‼︎」

 

 

竹成は集に向けて手を伸ばすが、彼には届かない。

助けることもままならず、結局這いつくばって叫ぶことしか何もできない。

竹成は目の前が真っ暗になり、止む無く竹成と仲間達は船へと転移されてしまった。

 

*****

 

こうして、竹成達含む仲間達は強制転移によって船へ転移された。

船内で待っている仲間達は血まみれの竹成を移動させ、応急処置を行う。

 

「竹成がっ…!」

「回復アイテムを用意しろ!急げ!」

「まさか神があんな方法でっ…一体何を考えてるんだ!」

 

最後の最後まで、竹成は集を助けようと抗った。

ロープ陣営が出てきて以降、用意した抵抗システムにも限界がある。神の力で転移されそうになっているのに対し、システムで争ったが、その行為が竹成の身体をここまで酷く怪我を負った。

 

システムは破壊され、神の力に争った代償に竹成の身体はボロボロになっている。

 

嶺からは癒しと治癒の水、変な紅茶、正輝からは治癒魔術を込めた杖を貰っていた為に竹成に使用して傷を癒す。ライダー達では回復出来る力は持っておらず、精々一般的な治療しか出来ない。

 

旅行の時に同盟して道具を貰っていなければ、今頃命を落としかねなかった。

 

剣崎と真司達は神の強行が発覚したことを同盟先である正輝と嶺、そしてこの元凶をもたらした神に連絡しようとするが

 

「正輝達との連絡はどうなってる⁉︎」

「繋がらない。神の方もだ」

「畜生っ!どうなってんだよ!」

 

メールも電話も正輝と嶺達には繋がらなかった。

船に送還された竹成は血塗れなまま倒れており、大至急治療に専念した。仲間の数人が強制帰還させた神を疑うべきこともあるが、それよりも竹成の手当てを優先するしかない。

 

「集達…大丈夫なのか?」

「今は竹成の治療に優先しろ。

その話は後だ」

 

集とその仲間達が転移された後も集達が無事に助かっているのかどうか。竹成達にはもう、次の機会がない限り知る由もない。

 

「…今後は楽園だけじゃなく、いずれもっと大きな脅威に立ち向かう。

 

 

そうは思わないか、加賀美」

 

天道総司と加賀美新は、竹成の携帯画面に映っている神を見ている。楽園は都合良く手は出さず、ロープ陣営だけ優位になれるこの歪な状況を作り上げている。

 

それがどういう意味なのか、この任務が何より物語っていた。

 

「俺達が倒すべき相手は殺者の楽園だった。けど…

 

本当の敵はすぐ近くにいるかも知れないな」

 

 

 




END:罪と王子
次回:fate/zero 正輝編

罪と王子Ⅱ 竹成編の続編はどうしますか? ※ fate/zero編終了まで

  • 続きから(レッドライン以降)
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