Justice中章:歌姫と蘇生と復讐と   作:斬刄

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73話大災害前の冬木市へ(本編)

 

正輝は携帯を見ながら、随時スレを確認している。お金は所持しており、携帯から最低限の機能で何とかしている。太陽光発電の充電器も手持ちにあり、食べ物もある程度買っている。

それでも、三人は途方に暮れていた。

 

「「「はぁ…」」」

 

のんびりとしていたが、3人とも今後のことを考えると頭を悩ましている。

 

「ホント、一体どうしてこうなった…」

 

正輝は携帯をつつき、アーチャーはお金の管理、杏子は買ったばかりのお菓子をつまんでいた。

 

5時間前

 

「あれ…ここどこだ?」

 

転移された場所は人気のない路地裏へと転移されている。

奇跡的に正輝達を見られていない。

路地裏は狭く暗い場所で、ギリギリ3人の入る空間になっている。

 

「…ひとまず、二人ともこの場から離れてから動くぞ」

「でも、ここがどこかすら分からねーんだろ?」

「まず広くて日に当たる場所に行く。

ここじゃ周囲や携帯だって確認しづらいしな」

 

3人は日のさす方へ向かい、この路地裏を出る。正輝は携帯を取り出しつつ連絡を試みるも、【電波がつながりません】と表示されるだけだった。

 

「船に連絡が取れないっ…マジか」

「ならメールに何か入っていないか?」

「メール?まぁ…一応見ておくか」

 

ダメ元でメールを確認しても、転移される時間帯以降のメールは入っていない。電話も同様に連絡が出来ないどころか、この世界の時計と携帯の時間を比較しても大幅なズレが生じている。

介入する際の時間変動も機能しておらず、完全に船との連絡が遮断された。

 

「メールもアウト…携帯の時計もズレがあるし。神からの連絡も全く無い。

どうすんだ…これ」

「…先に持ち物を確認するぞ」

 

通信が繋がらない以上、諦めて携帯の電源を切る。手持ちにあるものを取り出し、所持品を確認する。

 

「一応、俺は介入する前に最低限の物は用意はしておいた」

「私はソウルジェム以外は持ってねーぞ」

「ひとまず…何処か泊まれる場所行くか」

 

*****

 

なんとか泊まれる場所を考えて、最悪狭い場所でも問題ないかなと思っていたが、

 

(泊まる場所が見つからねぇ…)

 

当然地図は持っておらず、携帯の機能であるマップも使えない。闇雲に探しながらも3人はようやく見つけた旅館へと足を踏み入れた。

 

「あー、ついたーっ…」

「おーい…旅館に着いてもまだやる事あるからな」

 

長々と街の中を歩き続け、杏子は畳に寝転がる。

 

「今から旅館の地図とその周辺を調べてくる。アーチャーは今後のお金の管理…まぁ終わったら杏子はある程度のお金を渡すので、何でも良いからお菓子と衣服類を買ってきて。

場所は一階の売店コーナーに売ってある。

旅館でもエレベーターがあるから、それに乗って行けば問題ない。

終わったら宿泊部屋に全員合流な」

 

杏子はお菓子と衣服類を買いに、部屋にまだ残るアーチャーはお金の管理後に情報収集。

正輝は旅館の中を歩き回りつつ、旅館の人から情報を得る。

 

「あ、おかえりー」

「随分長かったな、何か分かった?」

「まぁな。

旅館内の地図と新聞を置いておく。

わかった事は、この場所が冬木ってことと、年月日…俺らが今いるこの旅館は大橋近くにあってこと。1994年11月…第五次聖杯戦争の10年前に俺達はいるってことだ。

俺と黒沢の知る限り第四次聖杯戦争は起きてはいるが、実際に起きているかどうか分からない。アーチャーも同じか?」

「私も同じだな」

何も分からないよりはマシだが、これから先どうすれば良いのか見当がつかない。結局この聖杯戦争がどういうことになるのか、分からない。

「二人とも聖杯戦争ってのを知ってんなら、過去に何が起きたか全部知ってるのか?」

「最後にどうなったかぐらいはな」

「俺?さっぱり分からん」

「お、おい…どうすんだよ。

もしこの戦争が帰れる鍵なら…」

杏子は微妙な反応をし、正輝は四次の聖杯戦争に起きた出来事を全く知らない。アーチャーの方は戦争の最後の所くらいしか義理父と神父に聞いていただけ。アーチャーの知る神父と義理父以外のマスターが参加し、アルトリアと英雄王以外のどのサーヴァントが召喚されるのかも分からない。

或いはこの世界でのマスターが、サーヴァントがその二人ではない並行世界という可能性もある。帰れる方法も知らないことだらけで、3人はため息をつくしかない。ただ、正義側の任務のように聖杯戦争に関与することで解決する必要があるのではないか。

「これ、相当まずいな…」

横に割って入ったとして不用意に動けば間違いなく足元をすくわれかねないとも思った。

仮に聖杯戦争に解決できたとしても、確証もない。

帰れるかどうかも不明。

3人とも、この状況にため息をつくしかなかった。

 

*****

 

1時間後

正輝が携帯を確認している最中にある事を閃き、アーチャーと杏子を呼ぶ。それは、

「あーちょっと、聞いてくれないか。

二人にちょっと提案があるんだけどさ。

スレ立てない?」

「「…は?」」

「んな反応するなよ。俺だって手がかり無いのなら知っている人から何かあるかもしれないだろ?」

「知ってるって、ネットを使ってか?」

「いやっ…やるにしたって私らやり方を知らねーたろ」

「俺がずっと調べてたんだよ。

この旅館にある無料用の通信機器を繋げてな」

 

携帯とにらめっこしている間、旅館にある回線を繋げてネット検索をしていた。船との連絡が断たれた以上、この世界で情報収集の手段を使う必要がある。

 

「よくゲームやニュースのような情報を2ちゃんで話して、まとめサイトとかで上げている。最近じゃあ、聖杯戦争関連のスレがよく立てられてるんだよ」

 

オリジナルの創作や時事ニュースや感想といったものが挙げられている。特にこの世界では【冬木ちゃんねる】というものがネットで多く立てられていた。

 

「しかし、本当に問題ないものなのか?」

「まぁ確かにゲームとか安価で攻略するとか、SS用のネタとかの話で盛り上がってるなら、俺もこの案は無駄かなーって最初は思ってたけど。

やらないよりはマシだろ」

 

チャンネルの作り方もこの世界のネットで調べ、立て方を学んでいる。その時に他のスレでも聖杯戦争について話題が出ている。スレを使えば、今後の展開を知る機会が得られるのではないかと提案した。

「しかし、大丈夫なのか?」

リスクの高い情報集めに二人とも困惑しているが、

「任せなよ、大船だよ」

(不安しかないな…)

 

 

*****

 

10分後

 

「や、ヤバイっ…どうやってブロックするか分かんない。仮にブロックしてもまたID変えてしつこく入力してくるし…どうすんだこりゃ」

「見事なフラグ回収だったな…機械音痴の凛よりマシだが」

 

凛も2chのやり方すら覚えても、家電製品すら正輝以上に扱えない凛は、ステを立てる最初の段階で躓き、同様に慌てているだろう。

何度かアーチャーが凛に教えているのを見ている。

 

「優等生なのにテレビの操作すら分からないからな…ってか、家電製品殆どアウトだったような気がするけど。

 

因みに聞くけど、もう凛って自分一人で出来るよな?まさか…」

「聞くな、察しろ」

「アッハイ…ってマジにこれ何とかしねーと」

 

荒らしのような連中がスレに入ってきた。

次から次へと、救えだの殺せだの命令的で、かなり物騒なことを言っている。

他のスレ民も何とかしろと書き込まれているが、正輝もどうしたらいいか分からない。

 

・荒らしでも管理者が逐一確認して、ブロックしていけばいい。面倒だが、放置すればスレを悪戯に埋めるような迷惑行為を許してしまう。

 

・IDを限定して今スレで入力している人だけをスレに入れるようにすれば良いだけの話だが、それ以外のIDを拒んでもスレを立てたばかりなために人数が少ないせいで情報も集まらない可能性もある。

 

この二つを思い浮かべていたが、どちらを選んでも悪条件で始めなくてはならない。

しかし、選ばなくても状況は悪化するだけ。

どうすればいいかと困惑している最中、

 

「まぁ流石に乗っ取られるなんてこと」

「…あ」

「今度はなんだ、まさか…佐倉の言う通りのことが起きたのか?」

 

スレは杏子の言葉通り、誰かに乗っ取られてしまった。スレのシステム画面を3人に見せ、ブロックユーザーを設定しようとしても登録できませんと通知が来る。

 

「あの…俺の立てたスレ、乗っ取られました」

「言ったそばからか…」

「少し見せてみろ」

 

アーチャーと杏子が近づき、正輝の携帯画面を見る。英霊が召喚されて聖杯戦争がもう始まっていることも、正輝達が介入する前から既にマスター達が戦っていることも理解できた。

 

「…ブロックしているという時点で、誰かがこのスレを見て、管理しようとハッキングしたのだろうな」

「見えない人を相手にすると大変だな」

「スレを立てた時点でこういう存在が大勢いるのだから諦めろ。しかし、これを見るに本当に期待できるものか?」

 

正輝の提案は効率的な方法だが、他の誰かにスレを見られるという危険もある。だが、このままダラダラと保身をしていたら、何も気づかずに手遅れになる事態がやってくるかもしれない。

乗っ取られたことは気にせず、スレの進行を確認すると、

 

「ちょ、はぁっ⁉︎」

 

提案した内容が余りにも無謀といって良いものだった。

 

【三人が英雄王ギルガメッシュにラリアット】

 

「…英雄王にラリアットって、ってか金ピカにか?」

「金ピカって誰のことだ?」

「あー…杏子は知らないんだったか。

滅茶苦茶強いけど慢心王って。

あ、また来た」

 

正輝が持っていた携帯を差し出し、スレの内容を見せていく。行く衣装はどんなものが良いのかも連絡していた。

 

「まさか…格好まで」

「まぁ、一応。どういうものを着たらいい?ってことで。

結果的にふざけてるけど…」

「アタシはいつもの格好か」

「俺のは執事服か、ってあれ…黒沢くん」

 

アーチャーが結果を見て頭を抱えている。

正輝が格好のことまで何がいいかと聞いたことにも、その結果が望めない結果であることも。

 

「…何かの間違いではないかね?」

「いや、ガチです。魔法少女の格好にならないだけマシだ」

「…なぜこのような格好なんだ」

「安心しろ、姿が見えないように羽織るものも買っておく。

あくまで着るものは何かってだけで、それを見せつけるわけじゃねーし。流石に堂々とやったらバレるだろ」

「で、場所は分かるのかよ?」

「ネットを繋げてんだ。倉庫の周辺とスクショしてあるから何も問題はない。

杏子はソウルジェムしか出来ないからアーチャーだけでもネットを繋げて送っとく…二人ともできるか?」

アーチャーは頭を抱え、杏子はやっと動けとやる気を出している。英雄王にラリアットをするにも、気配を気取られずに飛び込む必要がある。

 

幸運なのは、セイバーのような直感を持っていないだけまだマシではあった。

 

「今更聞くな…まぁ、英雄王を落とすのも中々一興ではあるがね」

「アタシも何も動かねーよりはマシだからな」

「よし!それじゃあ行き先は倉庫街…標的は英雄王!

船に帰れる方法かどうかは分からないが…取り敢えず、あの見下している面にぶちかましてくるか!」

 

正輝達はこの聖杯戦争に関与し、帰れる方法を立てたスレと共に模索していく。この世界での活動を始めた。

 

 

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