正輝とアーチャーはスレで指定された服を買いに店へ向かう。二人とも着替え、ローブを羽織りつつ倉庫街へと移動する。
「じゃ、何かあったら連絡しろよ」
「正輝もな」
普通に向かえば、間違いなく他の英霊やマスターに気づかれるため、二手に分かれ潜入。正輝はマスター・オブ・ザ・リンクを使用して、二人にも気配遮断の効力を与えた。
「隠れてるのが複数…表にいるのが3人か」
倉庫街に潜入すると、激しい戦闘が繰り広げられている。まずセイバーことアルトリア、相対するは赤と黄色の槍を持つランサーが激突している。
剣と槍をぶつけ、火花を散らす。
(おー、やってるやってる)
しばらく様子を見ていると、セイバーは赤い槍が魔力を無力化する力が込められていると気づく。鎧が無駄だと判断したセイバーは鎧を外し、風王鉄槌で懐に入るが、
「クッっ…⁉︎」
「セイバー!」
それをランサーが読んでいたのか、今度は別の槍で返り討ちにされるその隣の白い長髪の女の人はセイバーに近づいて治療魔法を施しても、怪我は治らない。
もう一方に持っている黄色の槍は不治の効果が込められている。
セイバーの直感スキルが高いお陰で軽傷だけで済んだが、もう少し踏み入れば治癒不可の大怪我を負うこととなる。
戦闘を継続することは可能だが、彼女らの目の前にいるランサーを倒さない限り宝具を封じられたも同然だった。
【かつてシンフォギアの世界で赤ロープが投影し、アーチャーを襲撃したことも】
そう考えているうちに、空から二つの牛に繋げた車が飛行し、二人の元に割って入り、名乗りをあげる
「双方武器を収めよ、王の御前である!
我が名は征服王イスカンダル。
此度の聖杯戦争においてはライダーのクラスを得て現界した‼︎
汝等とは聖杯を求めて相争う巡り合わせだが…まずは問うておくことがある!
汝等、一つ我が軍門に下り、聖杯を予に譲る気はないか?さすれば余は貴様らを朋友として遇し、世界を制する快悦を共に、分かち合う所存でおる」
騎士の戦いにいきなり横槍して、加えて聖杯戦争をしているというのに何を言っているんだこいつと二人は征服王に敵意を向けている。
「俺が聖杯を捧げるのは今生にて誓いを交わした新たなる主君ただ一人…断じて貴様ではないぞライダー!」
「その小娘の一太刀を浴びてみるか!
征服王!」
マスターに忠誠を尽くしているランサーにそんな戯言に聞く耳を持たず、騎士との決闘を邪魔されたことで敵意を持っている。
セイバーも決闘を邪魔され、自分を王だと名乗れば小娘扱いされたことに、更なる反感を買うようになる始末だった。
「待遇は応相談だが…」
「「くどい!」」
「はぁ…こりゃ交渉決裂かぁ、勿体無いなぁ…残念だなぁ」
当然、征服王の誘いに乗るわけがなかった。
隠れている正輝からも
(一体何がしたいんだコイツ…というより、よくこれで各国を征服出来たな)
策略家でもない考え無しの介入に呆れ、本当に征服王なのかと耳を疑っていた。
「何を考えてやがりますかこの馬鹿はぁぁっ!だいたいお前はぁ!」
『そうか、よりによって貴様か』
敵前の真っ只中に殴り込み、配下になれと土台無理な交渉をしたのだから、マスターであるウェイバーにしてはこの突拍子も無い行動に一番頭を抱えている。
『一体何を血迷って私の聖遺物を盗み出したのかと思ってみれば、まさか君自らが聖杯戦争に参加する腹だったとはねぇ…ウェイバー・ベルベットくん。
君については特別に課外授業を受け持ってあげようではないか。
魔術師同士が殺し合うという本当の意味、その恐怖と苦痛を余す所なく教えてあげよう。
光栄に思いたまえ』
ウェイバーはその言葉に絶望するが、正輝には教師が彼との内情をペラペラと余裕げに語って、自分の腑抜けさを気づきもせずそのまま公言しているようにも思えた。
(いや…生徒に聖杯戦争用の聖遺物を盗まれる教師もどうかとは思うんだけど)
『おう魔術師よ!察するに貴様は、この坊主になり変わってマスターとなる腹だったらしいな。
だとしたら片腹痛いのぅ!
余のマスターたるべき男は、余と共に戦場をはせる勇者でなければならぬ。姿を晒す度胸さえない臆病者なぞ、役者不足も甚だしいぞ!』
更にはサーヴァントになる筈の征服王にまでからかわれる始末。正輝はランサーを確認し、臆病者と主人を侮辱されたことで、動くのかと思っていたが、彼もまたその程度で動く事はない。見下していたランサーのマスターも、黙ったままである。
「おいこら!他にもおるだろうが!闇に紛れて覗き見している連中は‼︎」
(えっ…バレた?)
(バレてねーよ)
(我々以外に他も隠れているのは確かだがな)
正輝が感づかれたかと思ったが、杏子にツッコまれる。集っているのは確かだが、正輝達以外にも隠れているのは本当のことだ。
「聖杯に招かれし英霊は今ここに集うがいい!なおも顔見せを怖じるような臆病者は征服王イスカンダルの侮蔑を免れぬものと知れぇぇ!」
イスカンダルの叫び声が轟く。その声は、隠れているマスターだけではなく英霊にも届いた。その内の一人である征服王の叫びに応じた英霊、英雄王が出する。
「我を差し置いてー」
そう、登場して喋ろうとする時を見計らって彼の目の前にすぐさま正輝達は出てきた。突然現れた3人に目を見開いたが、まず一撃正輝のラリアットを受ける。
英雄王は強烈な一撃をモロに受け、目が昏みながらも何とか意識を保とうとするが、続けて二撃目のアーチャーのラリアットを受ける。
最後に反撃されまいと目を見開くが、時既に遅し。
杏子の幻術によって欺かれ、そのまま三撃目のラリアットを受けた。幻術を解く道具など宝物庫には幾らでもあるのに、それを用意する隙を与えてくれない。
かといって宝具で全包囲を守るなんてことも不可能。アルトリアのように対魔力があれば、杏子の幻術魔法は効かない。
もしくは英雄王の財宝に幻術に対抗できるものがあれば、その魔法を防ぐことは可能。
しかし、それは手に持ちさえすればの話だ。
武器として射出しても、本人には効果がない。
「グッっ⁉︎」
宝の持ち腐れとは、正にこのことだった。
王の財宝を展開できず、防ぐ間も無く吹き飛ばされる。
英雄王は白目を向いて倒れ、霊体化した。
突然出てきた3人組(正輝達)はすぐにこの場から退散し、倉庫街にいる彼らは混乱する。
「お、おいっ⁉︎何が起きたんだ⁉︎」
「坊主、よく見えてなかったのか?」
マスターの視点では早すぎて何が起きたかサッパリ分からない。英霊は3人が飛び出していたのは分かったが、姿までも隠れてて見えていなかった。
「あれは一体…」
「ほんの一瞬ですが、あの3人は今さっき出てきた英霊を襲っていましたね」
「じゃあ、あれってアサシンか?でも」
「アサシンは既に脱落している。仮にもしアサシンが生きて、かつあの3人が暗殺者だというのなら…分身を囮にし、他のマスター達を欺いた。
だが、このまま死を偽装しつつマスターを捜索せず、サーヴァントを狙ったのは一番の気がかりだがな」
アサシンの脱落が嘘であったとしても、アーチャーを出し抜いて不意打ちを食らわせるほど暗殺者が優れていたのだ。マスター達はアサシンが生きていると認識し、逆にアーチャーと敵対していると考えた。
『申し訳ありません。見失いました』
「そうか…分かった」
切嗣と舞亜の二人は先ほどの襲撃を確認はできても、出てきた人数しか分からないままだった。
*****
正輝達が拠点に帰り、テレビを見ながらスレで報告をすませる。テレビをつけると、ニュースには子供の行方不明のことが流れている。
(スレの言っていたことは、本当だったな…)
情報通り倉庫街でサーヴァントが実際に戦闘をしており、英雄王も征服王の叫びで乱戦に介入してきた。
スレの情報が確かであると同時に、何処に行くかをまたスレで入力する。
(…次は図書館か)
正輝が結果を確認した上で、3人は眠りについた。
次の日
「図書館に行くぞ、ただしアーチャーは買い物な。
流石に他のマスターにバレるとヤバイ」
正輝と杏子の2人で図書館へ向かうことになった。図書館には調べる用のパソコンと、様々な本が建てられている。
(一応、種類分けされているけど…かなり広いな。あと端末の使い方はっと)
「もう済んだかー?」
「あぁ、行くぞ」
この広い場所で闇雲に探すのは時間がかかるため、端末を使いつつ、携帯のメモ機能で記載する。
「ほぉ、これで本が何処にあるのか分かるのか?
それで目当てのものは見つかったのか?」
「お前なぁ…まだ調べてるよ」
大柄な男と学生服の黒髪の少年が端末で目当ての本を調べている。しかし、その端末の前で長いこと調べている。
(何やってんだ?あの二人…)
図書館の人に聞けば早いのに、なぜか聞こうとしない二人に正輝は声をかけた。
「あの、何かお困りでしょうか?」
「うわぁっ⁉︎」
少年の方は思わず声を出して驚き、滑って尻餅をつく。
その隣には、征服王が呆れていた。
「坊主、この二人とは知りあいか?」
「いっつつ、二人って?
いや…初めて会った」
(あ、こいつら倉庫街の時の)
征服王の格好は世界図面を乗せた服と、青いジーパンを身につけている。服はその少年のお金で支払われたことを察する。履歴を横目で見ると正輝達と同じく地図のこと、ナポレオンやジャンヌのような各国の英雄についての本を記載していた。
「端末の操作がわからないとか、検索できても置いてある場所が分からないから困っていると思っていたのですが。
地図が必要なもので、もし同じ物を探しているのであれば案内できますよ?
この図書館は化学本なり雑誌本なりで分けられていると思うので」
「かたじけない。では案内してはくれまいか…坊主もそれで良いか?」
「まぁ、いいけど…その子は?」
「あー…そうだったな」
返答する前に本人に聞いた上で、念話で相談する。
(ひとまず義理の妹、名前は名字だけ伝えとくけどそれでいいか?)
(アタシは別に問題ねーぞ)
「義理の妹です。
気軽に佐倉と呼んでください。
それじゃあ案内しますね」
*****
図書館で調べ物を行いながらも、ウェイバーも英霊のことで少しずつ調べていく。
征服王は、正輝と一緒に行動していた。
調べる前に
(僕は英霊のことを調べるから、お前は二人と同行してくれないか。あの人達も冬木市のことで調べてるならお前だって参考になるだろう)
(余がこの場所の見取り図を把握し、他の世界のことも併せて把握する。
その間に坊主は倉庫街にいた英霊だけでもついて情報を調べる。
だが、余と別々に行動して問題はないのか?)
(お前の宝具だって地形を把握しておけば、有利になるだろ。聖杯戦争でこんな朝っぱらから白昼堂々と襲ってくる奴はいないし、調べるにしてもお前の近くで読むくらいだからな。
あの倉庫街の件で、アサシンが生きているかもしれないって話にもなっただろう)
(…あれ?アサシンって既に殺されてんの?)
正輝がシャドーを発動させ、聞き耳でウェイバー達の声も聞く。どうやら征服王もこの冬木市について把握しておけば、戦いにおいても有利に動ける(征服王の興味も含めて)から図書館へと向かった。
図書館で調べると旅館に帰り、スレの結果を報告する。
両手に花だとか羨ましそうな反応をしているが、スレ主の正輝は複雑な反応をするしかない。
スレには子供の行方不明もこの聖杯戦争に関係しているが、その内容を見て良し悪しのお知らせが記載されている。
良い知らせは、聖杯戦争の被害が物語とは異なり少なかったこと。
多くの子供が連れ去られ、犠牲になるのという筋書き通りのはずだった。
逆に悪い知らせは被害が少ないことでキャスターが別サーヴァントの可能性があること。
この時点で、介入前から既に別路線へと向かっていた。
「じゃあ、このスレ民の人達でも知らないことが起きてんのか?」
「どうやらそのようだな」
「介入前から既にって…」
キャスターが青髭ではない別のサーヴァントを呼んでいるのだとしたら、この世界は彼らの知る原作とは全く異なる方向へと向かっている。
見知らぬサーヴァントで、スレに出てきた厨のような人が契約するということになればいつ何処で命を狙われてますおかしくない。
「…まず俺達は知らないことが多すぎる。
当分は、このスレを頼りにして動くか」
スレ民や自分達の知らないところで、事が動き始めているが、今の正輝達には彼らの原作知識を頼りに動くしかなかった。