Justice中章:歌姫と蘇生と復讐と   作:斬刄

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77話殺人鬼調査と征服王への勧誘(4日目)

「二手に分かれて聞きに行くぞ。不味くなったら俺に念話で連絡、それでいいな?」

 

朝起きた正輝達は、既に旅館での朝食を済ませている。

 

自室に戻り、正輝は机の上に地図を広げた。

街に駆り出した際に購入し、寝る前に殺人鬼の起きた場所に付箋を貼っていく。

 

本当ならこの地図は今後起きる聖杯戦争の調査と聖杯の在り処、そして船に帰るために周辺の理解が必要だと思って購入したもの。まさか、姉探しの為に使用するだなんて思ってもなかったのだから。

 

「まぁ、やっぱり街は広いからな…事件が起きた箇所を優先的にやる」

「それで構わないが、時間がかかるのでは?」

「それでも、何も情報がないよりは幾分マシだ。

じゃ、お互いに気をつけて行動しよう」

 

 

*****

こうして三人は襲撃場所にいる住民に聞き込みをしつつ、旅館付近の喫茶店で合流しようと連絡していく。

しかし

(どれもこれといった情報がねぇ。ひとまず、聞いた話をまとめると…)

 

殺人鬼の襲撃した場所や、事件に関係した少年少女について聞いた話を整理しても、姉の決定的な手がかりがあまり見つけられない。

中には事件の被害に巻き込まれた子供も現場に居合わせた子達にも接触することができた。

一つ目は小さな子供3人組から聞いた情報。

【銀髪の男性が女の子を連れていた】

 

これは実際に彼らが目で確認し、命の危機に脅かされ、感じたいたのだから。彼らが冗談や嘘を言っても意味はなく、本当のことを言っている。

一緒にいた男性が大人びていたことだった。

 

(ウチの姉にそんな知り合い覚えがないし、もしかしてハセヲのことか?いやでも…もしそうなら必ず黒沢の方に連絡来てるよな?)

 

正輝の中では銀髪といえばハセヲの印象が強く、そうでなければ大剣を持った銀髪男のサーヴァントなど聞いたこともなかった。

二つ目は

【その女の子は公園でおじさんと話していた】

(おじさん?ウチの姉に歳を取った人と話すことなんて滅多に見かけないし)

正輝には嶺の知り合いにおじさんがいるなんて聞いたこともない。

仮にいたとしても、

 

そして最後の情報は住民からは

【その女の子が、高校生と同じくらいのチャラいヘッドフォンのお兄さんとも知り合っている】

という話を聞き、書き込みが本当だったことも知ることができた。スレ民からは関係ないこと言うなと書かれていたが、実際に少女が話していたのを見かけたという話もあった。

(試練編後とボスラッシュの時、二人には協力してもらったが…その二人か?でも赤の他人って可能性もあるよな…)

 

ヘッドホンの知り合いなら花村陽介がいるが、ただヘッドホンをつけた人なんて、他の住民ならいくらでも該当する。その証拠だけで探っても、もし人違いなだけだったら、結局徒労に終わってしまう。

関連性はあるのかもしれないが、信憑性が低い。

 

三人は喫茶店に集まり、正輝とアーチャーは紅茶を、杏子はジュースを飲んで互いの情報を伝える。

「二人ともどうだった?」

「我々も君と同じだ」

「こっちはアタシと同じくらいの子が描いた絵を渡しておくな」

「おう、ありがとな…でも」

 

杏子からもらった絵には殺人鬼(気絶中)、子供達と長い剣を持っていた銀髪の男性が、その少女を抱えて部屋から出ていく絵、他にも長くて黒い髭のおじさんと、白髪と黒髪を混ぜたおじさんが少女と喋っている絵を見せている。

「で、どうすんだよ。

日が暮れてしまうぞ?」

「今日はもう帰ろう…次の日にまた調査するぞ」

その情報は確かではあったが、決定的な手がかりが足りない。集めた情報をまとめ、しぶしぶと喫茶店を出ると

 

「おう、また会ったなお前達!」

酒樽を抱えていたライダーと、くたくたに疲弊しているマスターことウェイバーの二人に接触した。

アーチャーは霊体化し、既にこの場から離れている。

 

(…不味いな、アーチャーの存在は明かしてないし)

「あの…二人とも何やってるの?」

「今は詳しく言えんが、ちょっとした集まりを設けようと思っていてな。そのための準備としてまずこの酒樽を用意してきたわけよ。だが、こうしてまた巡り合わせた機会、お前達も来るか!」

「おい、ライダー!

まさか、この二人も連れて行くのか⁉︎」

「あの…悪いけど俺たちにそんな余裕はな…」

(ちょっと待て。確か…スレには令呪の写真があったよな。

 

 

もしかしたら彼らと同行すれば会える可能性も…言えないってことは英霊同士の集いが何かか?)

断ろうとしたが、思いとどまる。スレには、嶺の手の甲には令呪が刻まれていた。

 

仮にもし、その英霊と姉が彼らと接触し、その集いに来ることを約束していたら。

そんな予感もあってか少し思いとどまり、決断する。

(確実とは言えないが、何にしても合流する必要はあるよな…もしかしたら、よし)

「で、どーするんだよ正輝。行くのか?」

「…もしかしたら、その人が俺達の探している人達かもしれない。

一緒に行かせてくれないか?」

「では、二人ともしっかり捕まっとれ!

坊主もそれで良いな!」

「ま、マジかよ…」

(つーわけでだ、アーチャー。

俺のマスター・オブ・ザ・リンクで気配遮断を譲渡しとくから、鷹の目で俺達を見失うなよ)

(了解した…私も君達に追いつく)

 

こうして人気のない場所へと移動した後、正輝と杏子は牝牛の戦車に乗り、飛行しつつ空を飛んでいく。

アーチャーは正輝にリンクされて得た気配遮断スキルと独自の持つ単独行動スキルを使いながらライダー達の後を追う。

 

 

「さて、着いたぞ」

「は?えっ…」

 

その合流地点はセイバー陣営の本拠地であるアインツベルン城じゃなったら、素直に喜ぶことはできたかもしれない。ライダーからは城に潜入するといわれ、正輝は青ざめていた。

 

(確かに行くとは言ったけどさ…どうしてこの場所を選んだ⁉︎)

「あのよ、この城って二人の私有地なのか?」

「んなわけないだろ!まさか敵陣に乗り込むのかよ!」

「応とも、ではつかまっておれ!」

 

イスカンダルは意気揚々に堂々と乗り込む。

城の出入り口を破壊し、ダイナミックに入室していた。

 

(えぇ…そうやって入るの?)

「よう、セイバー!城を構えていると聞いたが何ともしけたところだのぉ。

大体なんだ、その戦支度は。今宵は当世風のファッションはしとらんのか?」

「ライダー⁉︎貴様、一体何しに来た‼︎」

「見て分からんか?一献交わしに来たに決まっておろうが。ほれ、そんな所に突っ立ってないで案内せい!」

(あの二人…やっぱり街で会わなくて正解だった)

街で見かけた二人が城を構え、スナイパーと関わりを持っていたことを今知った。正輝は平然な顔を装いつつも、ケイネスの時のように肩に力が入っている。

 

集いは城の中だと埃がちらつくため、みんな庭園へと移動する。

(やっばい…マジに不安しかねぇ…つーか俺達、なんかライダーの傘下みたいに見られてるし。

 

どうしてこうなった⁉︎)

(全くだな…)

姉を合流したいという気持ちに駆られながらもウェイバー達の知り合いとして間接的に関わり、敵の陣地に乗り組むこととなった。

杏子は気にしてないが、正輝と気配遮断で隠れているアーチャーは頭を抱えていた。

 

庭園へと移動し、ライダーは樽の蓋を破壊しつつ、その酒をセイバーと飲み交わしている。

 

「聖杯は相応しき者の手に渡る定めにあり、それを見定める為の儀式がこの冬木における闘争でもある。

だがな、何も見極めをつけるだけならば血を流すには及ばない。

 

英霊同士、お互いの格に納得がいったなら…それで自ずと答えは出る」

「それで、まずは私と格を競おうというわけか?ライダー」

「その通り、お互いに王を名乗って譲らぬとあらば捨ておけまい。いわばこれは聖杯戦争ならぬ、聖杯問答…どちらがより王に相応しい器か。

 

酒杯になれば詳らかになるというものよ」

(あれ、じゃあ俺の姉さんこなくね?英霊同士の集いって訳じゃなのなら…もしかして、アテがはずれたのか)

聖杯問答という英霊の王の集いとして、この城を集いにした。

王としての格付けならば、関係者のマスターはともかくそれ以外のギャラリーは別に不要なのではないかと付いていくだけ時間の無駄だった。

 

携帯のスレを確認すると、英雄王が来ると書き込みが書かれている。驚きつつも携帯をしまうと、そのスレの通り本当に英雄王もやってきた。

(え、マジ…金ピカも来るのかよ。どうすんだよこれ、早くこの場から離れないと。

俺が英霊を持っているのがバレたら洒落になんねーぞ⁉︎)

「戯れはそこまでにしておけ、雑種。

よもやこんな鬱陶しい場所を王の宴に選ぶとは…俺に態々足を運ばせた非礼をどう詫びる?」

「アーチャー、何故ここに?」

「余が町で見かけたのを誘ったのさ。まぁ堅いこと言うでない」

 

英雄王は口にはしたものの安酒で測るつもりかと、王の財宝から金の酒瓶とお碗を用意し、二人に手渡す。あの倉庫のことについて覚えている様子もなく、正輝達のことなどちょっと見ているだけだった。

ラリアットのことで恨まれることも勿論なかったが、聖杯問答が始まっても肝心な姉が来ることはない。

 

(…でもこれ、姉さん関係ないだ…んんんっ⁉︎)

 

話を聞いても姉が来ない以上は誘いに乗るだけ無駄だったのかと正輝が諦めかけたその時、複数もの足音が聞こえ、庭園に客人が大勢招かれる。

 

「うっ…⁉︎」

「アイリスフィールっ⁉︎」

「なにこれ…どういうこと?英霊は七人いるはずなのに…こんなことあるはずが」

 

突如、アイリスフィールの調子が悪くなり、跪いてしまう。様子の異変を察知したセイバーは集いの席を離れ、彼女の元へ向かう。

 

「おう、そろそろ他も来るか」

「…ライダー、貴様。誘いに乗ったのは英雄王以外にも…それだけじゃない、複数もの英霊がいるというのは一体どういうことだ!」

「そのことについては余も驚いた。

しかし、王の言葉は万人に向けて発するもの、傾聴しに来たのならば敵も味方もありはせん。

まぁ見ればわかることだ」

庭園にいた全員がその方向に顔を、視線を向ける。座っていた正輝は目を丸くしつつ驚いた表情で、立ち上がった。

 

「やっほー、遅れてごめんねー」

「は、えっ?姉さん…なのか?でもその後ろにいるのって…は、え、どゆこと?」

 

小さくなった嶺がやってきたのだが、その背後に百鬼夜行のような異様な光景だった。彼女の後ろには鳴上達だけではなく、複数もの英霊がいるのだ。

小さい桜と白黒の髪をしたおじさんも嶺の隣にいる。

 

英雄王とライダー陣営を除く皆が驚き、三人は彼女のことについて何かを知っているかのようだった。

そして、彼女達が今まで何をしたのか、それを知った時もまた正輝達も、スレ民も盛大に混乱することになるだろう。

 

自分達の知らないうちに、既に展開が急変していることに。

 

 

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